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第十五章:帰還、そして最後の一年
第二百二十五話:三人目のイレギュラー
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「きゃ、何を」
「この僕が結婚してやるって言ってるんだ!」
「いや、やめて!」
男は女に襲いかかる。
剣で脅して、力づくでモノにしようと、その二本の剣を振り上げる。
余りにもお粗末な剣。
例えデーモンを倒せるとしても、ただ才能に驕っただけの、中身の無い剣。
レインすら魅了にかけた狐には、逆立ちしても勝てないだろう。
例え、彼女が尻尾を全て無くしてしまったとしても。
だからこそ、レインは男が死ぬ前に、狐を殺そうと動こうとして、サニィに止められた。
「や、やめ、レイン様ぁ」
狐はそう口にして、蹲る。
どこからどう見ても、自分よりも格下を相手に、狐は逃げる様に頭を隠す。
「まだ言うか、良いだろう、レインってのを連れて来い。ぶっ殺してやる!」
頭に血が上った男は、今にも本当に狐に斬りかからんとばかりに声を上げる。
恐らく、狐が魅了を使っていないのは本当なのだろう。男は本能的に彼女が魔物だと察しているのかもしれない。
その怒りは時間と共にどんどんと増しているのが分かる。
「どういうことだ……」
「あの女狐、本当に戦わないつもりですかね……」
しばらく様子を見張る。
どう見ても、美女が男に強姦されようとしている様にしか見えない。
背を向けて蹲る女を、男はその襟を後ろから掴み持ち上げ、剣を使って威嚇する。
二人の良心が、痛めつけられるのを感じる。
明らかに、力は現時点で女の方が上だ。
どんな状況になろうとも、どこからでも逆転出来る。しかし、女は何もせず、ひたすら嫌々と首を振るだけ。
次第に、男は理性を失いかけているのだろう。サニィ曰く、変質した魅了が漏れ出始めている。
その服の胸元を切り裂く。
そして、その胸が露わになった所で、憲兵達が騒ぎを聞きつけて駆け付けた。
「おい! 何をしている!」
「た、助けて!」
「うるさい黙れ! 僕はこの女を!」
その後、男が取り押さえられるまでに、憲兵が二人怪我を負った。片方はかなりの重症で、もう一人は浅い裂傷。
その二人をサニィがこっそりと治療しながら、様子を見守る。
何が起こっているのか、未だにしっかりと理解が出来てはいない。
すると、憲兵に支えられて保護された狐は呟いた。周囲の誰にも聞こえない様に、ぽつりと。
集音していたサニィの耳にしか届かない声で。
「妾は人間にならないと。いつかレイン様を……。レイン様、お慕い申し上げております」
――。
「サニィ、殺すか?」
レインが問う。
今なら彼も魅了の影響も受けておらず、簡単に殺してしまえるだろう。
しかし、一度魔王になって、世界の意思とやらに触れてしまったサニィは思う。
あれの殺意に逆らってレインを想うなど、並大抵のことではない。ましてや、魔物の本質である勇者殺しすら耐えて、人間になろうとしている。
そんな無理はきっと、いつか限界がくるだろう。
しかし、少しだけ、応援しても良いのではないかと、思ってしまう。
きっとこれは、魔王になってしまった自分しか分からない感情だ。
レインは、あれを見ても尚殺せるらしい。
それならば、言えることは一つしかなかった。
「レインさん、ダメだと分かってますが少しだけ、見逃しませんか? もしも暴走した時には、私が責任を持って処分します。だから、最後まで見守ってみちゃ、駄目ですか?」
責任を持てる時間が、あと半年もないことは分かっている。それでもサニィは、思ってしまった。
「駄目だと言いたい所だがな……、あの状況で手を出さなかったのもまた事実だ。……クソ、分からん」
「なら、取り敢えず半年だけ、見守らせて下さい。確実に監視しておきますから」
最後までと何も変わらないことを言いながら、サニィは懇願する。
魔物は敵だ。必ず。
それが分かっていながらも、サニィはイレギュラーの存在も知っている。
魔物の勇者と言える体を持つレイン、勇者でありながら魔王になった自分。であれば、魔物でありながら人間になれる者もいるのではないか。
そんな淡い期待を、せずにはいられなかった。
「分かった。それじゃ取り敢えず半年、だ。その時までに少しでも不審な行動を取れば殺すこと。そして、最後にもう一度確認する」
流石に根負けしたのだろう、レインはそういう条件を付けて渋々納得する。
「はい。まあ、レインさんは渡しませんけど」
それならいっそ殺した方が良いのではと思いながらも、レインもほんの少しだけの期待をする。
あの狐は確かに、唯一殺せなかった魔物だ。
本来であれば、いかな魅了を受けても殺せるのがレインという男だった。
それ程に、あの狐は例外的な存在だった。
そこだけは、納得している。
上手くいけば、魔王が居なくなった世界では、人間と魔物が上手く共存していける可能性すら見えてくる。
「しかし、あの狐までなんで俺なんだ」
ウアカリに向かう途中、ふと気づいたようにレインが呟く。
「までって、他にも気付いてるんですか?」
「オリヴィアにライラ、ナディア辺りは本気も本気だろう……」
「オリヴィアとナディアさんはともかくライラまで気付いてるって、なんでそんな鋭いんですかレインさんは……」
自分が好かれていることを自覚していても全く変わらないように過ごしているレインに、サニィは呆れ顔を向ける。
「クーリアさんは?」
「クーリアは肉体関係のみあれば良いって感じだな」
「……そうですね。まあ、あっさりしてて良いんですけどね……ところで」
妙に的確に見抜いているレインに呆れた顔を向けていたサニィは突然真顔になる。
「レインさんって、ナディアさん好きですよね?」
「この僕が結婚してやるって言ってるんだ!」
「いや、やめて!」
男は女に襲いかかる。
剣で脅して、力づくでモノにしようと、その二本の剣を振り上げる。
余りにもお粗末な剣。
例えデーモンを倒せるとしても、ただ才能に驕っただけの、中身の無い剣。
レインすら魅了にかけた狐には、逆立ちしても勝てないだろう。
例え、彼女が尻尾を全て無くしてしまったとしても。
だからこそ、レインは男が死ぬ前に、狐を殺そうと動こうとして、サニィに止められた。
「や、やめ、レイン様ぁ」
狐はそう口にして、蹲る。
どこからどう見ても、自分よりも格下を相手に、狐は逃げる様に頭を隠す。
「まだ言うか、良いだろう、レインってのを連れて来い。ぶっ殺してやる!」
頭に血が上った男は、今にも本当に狐に斬りかからんとばかりに声を上げる。
恐らく、狐が魅了を使っていないのは本当なのだろう。男は本能的に彼女が魔物だと察しているのかもしれない。
その怒りは時間と共にどんどんと増しているのが分かる。
「どういうことだ……」
「あの女狐、本当に戦わないつもりですかね……」
しばらく様子を見張る。
どう見ても、美女が男に強姦されようとしている様にしか見えない。
背を向けて蹲る女を、男はその襟を後ろから掴み持ち上げ、剣を使って威嚇する。
二人の良心が、痛めつけられるのを感じる。
明らかに、力は現時点で女の方が上だ。
どんな状況になろうとも、どこからでも逆転出来る。しかし、女は何もせず、ひたすら嫌々と首を振るだけ。
次第に、男は理性を失いかけているのだろう。サニィ曰く、変質した魅了が漏れ出始めている。
その服の胸元を切り裂く。
そして、その胸が露わになった所で、憲兵達が騒ぎを聞きつけて駆け付けた。
「おい! 何をしている!」
「た、助けて!」
「うるさい黙れ! 僕はこの女を!」
その後、男が取り押さえられるまでに、憲兵が二人怪我を負った。片方はかなりの重症で、もう一人は浅い裂傷。
その二人をサニィがこっそりと治療しながら、様子を見守る。
何が起こっているのか、未だにしっかりと理解が出来てはいない。
すると、憲兵に支えられて保護された狐は呟いた。周囲の誰にも聞こえない様に、ぽつりと。
集音していたサニィの耳にしか届かない声で。
「妾は人間にならないと。いつかレイン様を……。レイン様、お慕い申し上げております」
――。
「サニィ、殺すか?」
レインが問う。
今なら彼も魅了の影響も受けておらず、簡単に殺してしまえるだろう。
しかし、一度魔王になって、世界の意思とやらに触れてしまったサニィは思う。
あれの殺意に逆らってレインを想うなど、並大抵のことではない。ましてや、魔物の本質である勇者殺しすら耐えて、人間になろうとしている。
そんな無理はきっと、いつか限界がくるだろう。
しかし、少しだけ、応援しても良いのではないかと、思ってしまう。
きっとこれは、魔王になってしまった自分しか分からない感情だ。
レインは、あれを見ても尚殺せるらしい。
それならば、言えることは一つしかなかった。
「レインさん、ダメだと分かってますが少しだけ、見逃しませんか? もしも暴走した時には、私が責任を持って処分します。だから、最後まで見守ってみちゃ、駄目ですか?」
責任を持てる時間が、あと半年もないことは分かっている。それでもサニィは、思ってしまった。
「駄目だと言いたい所だがな……、あの状況で手を出さなかったのもまた事実だ。……クソ、分からん」
「なら、取り敢えず半年だけ、見守らせて下さい。確実に監視しておきますから」
最後までと何も変わらないことを言いながら、サニィは懇願する。
魔物は敵だ。必ず。
それが分かっていながらも、サニィはイレギュラーの存在も知っている。
魔物の勇者と言える体を持つレイン、勇者でありながら魔王になった自分。であれば、魔物でありながら人間になれる者もいるのではないか。
そんな淡い期待を、せずにはいられなかった。
「分かった。それじゃ取り敢えず半年、だ。その時までに少しでも不審な行動を取れば殺すこと。そして、最後にもう一度確認する」
流石に根負けしたのだろう、レインはそういう条件を付けて渋々納得する。
「はい。まあ、レインさんは渡しませんけど」
それならいっそ殺した方が良いのではと思いながらも、レインもほんの少しだけの期待をする。
あの狐は確かに、唯一殺せなかった魔物だ。
本来であれば、いかな魅了を受けても殺せるのがレインという男だった。
それ程に、あの狐は例外的な存在だった。
そこだけは、納得している。
上手くいけば、魔王が居なくなった世界では、人間と魔物が上手く共存していける可能性すら見えてくる。
「しかし、あの狐までなんで俺なんだ」
ウアカリに向かう途中、ふと気づいたようにレインが呟く。
「までって、他にも気付いてるんですか?」
「オリヴィアにライラ、ナディア辺りは本気も本気だろう……」
「オリヴィアとナディアさんはともかくライラまで気付いてるって、なんでそんな鋭いんですかレインさんは……」
自分が好かれていることを自覚していても全く変わらないように過ごしているレインに、サニィは呆れ顔を向ける。
「クーリアさんは?」
「クーリアは肉体関係のみあれば良いって感じだな」
「……そうですね。まあ、あっさりしてて良いんですけどね……ところで」
妙に的確に見抜いているレインに呆れた顔を向けていたサニィは突然真顔になる。
「レインさんって、ナディアさん好きですよね?」
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