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第二章:聖女を継ぐ者達
第二十八話:魔王なんぞを崇拝する邪教徒め
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エイミーの策は、それなりに理にかなっている。
ルークは世界で誰よりも素早い魔法使いだ。移動のみに専念すればオリヴィアにも匹敵する。且つ、普通に戦えば間違いなく一番強い。
確実に一人で守り切れる上に、南が厳しい場合でも東西の二人よりも早く到達できる。
西は陸地が少なく海が近い。つまり上空からの敵が多くなければ敵の数は相対的に少なくなるはずで、強さ的には三番目のエイミーでも対処はし易いだろう。
東はエレナの独壇場だ。東は山々が連なる山岳地帯で隠れられる部分も非常に多い。ただし、相手がエレナでなければ。彼女は過去の様々な出来事もあって東の地形をきっちりと把握している上に、群れが相手である場合であれば隠れることそのものが意味をなさない。つまり、一匹でも見えるならば精神操作で簡単に同士討ちをさせられる。
だからこそマナスルを守るのであれば、これが最善の構成なのだ。
ただし一つ問題点を指摘するならば、魔物は基本的に霊峰には立ち入らない、ということだろう。
「と言うわけで、普通に村で迎え撃ちましょうか、先生」
「嫌よ」
ルークの提案に、エイミーは即答する。
理由は流石に、ルークにも分かっている。
「でも皆で戦ったほうが楽ですよ。僕たち魔法使いですし」
接敵されれば勇者と違い非常にまずい。
不意の攻撃ならば、ゴブリンに殴られた程度で死ぬ可能性があるのが魔法使いだ。しかしだからこそ、魔法使いは互いにカバーできる集団戦ほど個々の力も存分に発揮されていく。もちろん、強大な勇者が前線に立つ部隊がベストなのは変わらない。
エリーとオリヴィアはグレーズ首都が再び脅威にさらされると言うことで、そちらに向かっている。
勇者が観光以外でここを訪れる理由はないのだから、今は魔法使いだけで対処するしか方法はない。
「魔物なんぞが聖域に近づくってだけでも許されることではないわ。ルークが拒否するなら私だけでも北に向かうから」
「そうですよねー……」
そう言うのも分かってはいたが、リスクは減らすに越したことはない。
例え魔物は全てマナスルを迂回するのだろうと言っても、エイミーがそれを聞き入れるとは思えない。
「まあ、今回は先生の作戦に乗りましょうか。アリエルちゃんはどっちでも良いって言ってたわけだし」
渋々納得するルークにエレナは平然と答え、結局配置はエイミーの提案で決まるのだった。
「ということだから皆! 私達はそれぞれ出るわ! 落とされたら殺すわよ!」
そう張り切って研究所職員やら修行者やらに号令をかけて、エイミーは駆け出した。
――。
ここ霊峰マナスルは、超高濃度のマナが満ち満ちている。
つまり、防衛に於いて魔法使いは絶対的に有利である。
魔法使いは体内にマナタンクと呼ばれる非物理器官を有していて、それに貯まったマナをイメージと混ぜあわせることによって超常現象を引き起こす。マナタンクは人によって大きさが異なるものの、消費すれば随時世界に満ちるマナから補給されていく。
普段世界に満ちる程度の量では全く問題がないが、それが濃い場合は体調に影響を与える。
ここマナスルでは山頂に向かう程マナの濃度が高い為、登り進めるほど強力な魔法を使い続け周囲のマナ濃度を薄めなければならない。
逆に言えば、マナスルに立ち入ってしまえば、強力な魔法が使い放題なのである。
エイミーの案が、理にかなっているという理由の一つである。
「さて、僕は僕に出来ることをするしかないな。先生、見ててくださいね」
北に陣取ったルークは雑多な魔物の大群を前に60cm程の半端な大きさの杖を構える。
3年前、エレナが誕生日プレゼントとして手作りしてくれた少し歪な白樺の杖。
現在のルークの能力を最大限に生かせるその杖は、偶然にも黄金比と白銀比ばかりで作られている。
「ん、私はハズレね。ま、良い夢を見ましょう」
東のエレナの前に現れたのは大型のストーンゴーレムが12体。その奥に、魔法の範囲外に人型の魔物が一体。
そもそもが操り人形であるゴーレムには、幻術は効かない。
主人格である奥の敵を殺さなければ、ゴーレムは徐々に増えていくだろう。
エレナはこの間ルークに贈られた婚約指輪にキスをすると、近接格闘の構えを取る。
「魔王なんぞを崇拝する邪教徒め。貴様らは肉の一片すら残さず粉々にしてやる」
西のエイミーは五人のヴァンパイアと一人のロードを前にそう宣言する。
右手には『聖女の魔法書』の原本を、そして左手には殉教時に使用した因縁のナイフを手にして。
――。
ヴァンパイアは、非常に強力な魔物だ。
身体能力は一般の勇者の平均より少し上程度だが、同程度の勇者では必ず苦戦する。心臓を破壊しなければ死なず、人の血を吸う程に力を増す。
更に魔法も扱い、知能は人間並み。
魔法を使うという事は、マナスルでも活動出来るということ。
エイミーにとっては、最悪の相性の敵だと言って良い。
そしてロードは、その完全な上位互換。
110年前、『呪い』を振りまいて世界を混乱に陥れた魔王は、このヴァンパイアロードの魔王だった。
ルークは世界で誰よりも素早い魔法使いだ。移動のみに専念すればオリヴィアにも匹敵する。且つ、普通に戦えば間違いなく一番強い。
確実に一人で守り切れる上に、南が厳しい場合でも東西の二人よりも早く到達できる。
西は陸地が少なく海が近い。つまり上空からの敵が多くなければ敵の数は相対的に少なくなるはずで、強さ的には三番目のエイミーでも対処はし易いだろう。
東はエレナの独壇場だ。東は山々が連なる山岳地帯で隠れられる部分も非常に多い。ただし、相手がエレナでなければ。彼女は過去の様々な出来事もあって東の地形をきっちりと把握している上に、群れが相手である場合であれば隠れることそのものが意味をなさない。つまり、一匹でも見えるならば精神操作で簡単に同士討ちをさせられる。
だからこそマナスルを守るのであれば、これが最善の構成なのだ。
ただし一つ問題点を指摘するならば、魔物は基本的に霊峰には立ち入らない、ということだろう。
「と言うわけで、普通に村で迎え撃ちましょうか、先生」
「嫌よ」
ルークの提案に、エイミーは即答する。
理由は流石に、ルークにも分かっている。
「でも皆で戦ったほうが楽ですよ。僕たち魔法使いですし」
接敵されれば勇者と違い非常にまずい。
不意の攻撃ならば、ゴブリンに殴られた程度で死ぬ可能性があるのが魔法使いだ。しかしだからこそ、魔法使いは互いにカバーできる集団戦ほど個々の力も存分に発揮されていく。もちろん、強大な勇者が前線に立つ部隊がベストなのは変わらない。
エリーとオリヴィアはグレーズ首都が再び脅威にさらされると言うことで、そちらに向かっている。
勇者が観光以外でここを訪れる理由はないのだから、今は魔法使いだけで対処するしか方法はない。
「魔物なんぞが聖域に近づくってだけでも許されることではないわ。ルークが拒否するなら私だけでも北に向かうから」
「そうですよねー……」
そう言うのも分かってはいたが、リスクは減らすに越したことはない。
例え魔物は全てマナスルを迂回するのだろうと言っても、エイミーがそれを聞き入れるとは思えない。
「まあ、今回は先生の作戦に乗りましょうか。アリエルちゃんはどっちでも良いって言ってたわけだし」
渋々納得するルークにエレナは平然と答え、結局配置はエイミーの提案で決まるのだった。
「ということだから皆! 私達はそれぞれ出るわ! 落とされたら殺すわよ!」
そう張り切って研究所職員やら修行者やらに号令をかけて、エイミーは駆け出した。
――。
ここ霊峰マナスルは、超高濃度のマナが満ち満ちている。
つまり、防衛に於いて魔法使いは絶対的に有利である。
魔法使いは体内にマナタンクと呼ばれる非物理器官を有していて、それに貯まったマナをイメージと混ぜあわせることによって超常現象を引き起こす。マナタンクは人によって大きさが異なるものの、消費すれば随時世界に満ちるマナから補給されていく。
普段世界に満ちる程度の量では全く問題がないが、それが濃い場合は体調に影響を与える。
ここマナスルでは山頂に向かう程マナの濃度が高い為、登り進めるほど強力な魔法を使い続け周囲のマナ濃度を薄めなければならない。
逆に言えば、マナスルに立ち入ってしまえば、強力な魔法が使い放題なのである。
エイミーの案が、理にかなっているという理由の一つである。
「さて、僕は僕に出来ることをするしかないな。先生、見ててくださいね」
北に陣取ったルークは雑多な魔物の大群を前に60cm程の半端な大きさの杖を構える。
3年前、エレナが誕生日プレゼントとして手作りしてくれた少し歪な白樺の杖。
現在のルークの能力を最大限に生かせるその杖は、偶然にも黄金比と白銀比ばかりで作られている。
「ん、私はハズレね。ま、良い夢を見ましょう」
東のエレナの前に現れたのは大型のストーンゴーレムが12体。その奥に、魔法の範囲外に人型の魔物が一体。
そもそもが操り人形であるゴーレムには、幻術は効かない。
主人格である奥の敵を殺さなければ、ゴーレムは徐々に増えていくだろう。
エレナはこの間ルークに贈られた婚約指輪にキスをすると、近接格闘の構えを取る。
「魔王なんぞを崇拝する邪教徒め。貴様らは肉の一片すら残さず粉々にしてやる」
西のエイミーは五人のヴァンパイアと一人のロードを前にそう宣言する。
右手には『聖女の魔法書』の原本を、そして左手には殉教時に使用した因縁のナイフを手にして。
――。
ヴァンパイアは、非常に強力な魔物だ。
身体能力は一般の勇者の平均より少し上程度だが、同程度の勇者では必ず苦戦する。心臓を破壊しなければ死なず、人の血を吸う程に力を増す。
更に魔法も扱い、知能は人間並み。
魔法を使うという事は、マナスルでも活動出来るということ。
エイミーにとっては、最悪の相性の敵だと言って良い。
そしてロードは、その完全な上位互換。
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