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第三章:王国最強の騎士と王
第三十五話:流石は世界で唯一の師匠のライバル
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「ただいま戻りましたわ!」
ぐったりしている騎士達の耳に、そんな言葉が聞こえてくる。
オリヴィアはエリーと修行を始めて以来、王都帰還時には王城よりも先に騎士の訓練場に顔を出すのが恒例となっている。
真っ先に騎士達の様子を見て、自分も参加し、騎士団長ディエゴと模擬戦をする。
師匠レインとの約束で、騎士団長ディエゴに勝てなければ王都を出てはいけないという誓いを、彼女は一度だけではなく守り続けていた。
そんな王城より先に訓練場に顔を出すオリヴィアを見ていたのも、今現在王が張り切って訓練している理由の一つだ。
「おうただいまオリヴィアにエリー、可愛い娘達よ、俺達は情けないことにもう動けないんだが、どうする?」
王は首と手だけを挙げながら言う。
「私は師匠の娘なら歓迎だけど王様はちょっとタイプじゃないです……」
エリーの即答に、王ピーテルもぐはっ等と言いながら倒れこむ。何とかしてエリーを娘扱いしたいのがここ数年の王の様子だ。あわよくば今年8歳になる弟、王子とくっつけたいという魂胆が見え見えで少しばかり気持ち悪い。
能力を知っていてもそれを隠そうとしない辺り、オリヴィアの父親なのだと納得してしまう。しかし流石に14歳で6年以上の差があるのはどうかと思う、というのが正直な感想だ。
王子はオリヴィアに似て可愛いのだが、今のエリーから見ればどうみても鼻垂れ小僧。
「それならちょうど良いタイミングですし、わたくしとエリーさんの決闘をしましょうか」
そんな王は無視して、オリヴィアは続けた。
前回の決闘からそろそろひと月が経つので、確かにちょうど良い。
「よし、今回も私が勝ってみせる」
「今回も?」
そこで、ようやく空気になっていたディエゴも反応した。ディエゴの記憶ではオリヴィアの全勝で間違いない。
「先々月に勝ったからね! 前回は運で負けたんだから今回は勝つわ!」
「ほぉう、ならばエリー君、私と一試合しないか?」
「わかった。オリ姉の前にディエゴさんにも勝つわ!!」
……。
ごくりと、訓練場から唾を飲む音が聞こえる。
エリーは、間違いなく対魔物戦のエキスパートだ。その殲滅速度はオリヴィアと並びグレーズ1、騎士団長よりも遥かに速い速度で敵を殲滅することを、最早騎士団の誰もが知っている。
「くう、……」
膝を付いたのは、エリーだった。
「ははは、これで私の10勝目だね」
「まだまだ勝てないのかぁ……」
嬉しそうに佇むディエゴに、悔しそうに地面を叩くエリー。
二人の戦績は、ディエゴの10連勝無敗。
「オリ姉よりも勝つイメージが浮かばないよ」
「私は姫様に23連敗してるけどね」
「おかしいってぇ……」
そう言うのも、無理は無かった。
オリヴィアとは最近接戦を繰り返すエリーも、ディエゴが相手だと軽くあしらわれる感覚に近いものを感じる。
師匠を相手にしている時の様な余裕の心を、その能力は受け取っているのだ。
もちろん、オリヴィアがエリー戦で手を抜いているということは全く無い。
それでも、勝つイメージが湧かない。
「流石は世界で唯一の師匠のライバル……」
そう呟く他ないのだった。
ディエゴの戦闘スタイルは凄まじく地味だ。
ただただ堅実。
しかし、逆に彼の戦いには一切の偶然が存在しない。どんなことが起こってもそれすら想定済みであるかの様に動じない。
ただただ王国式剣術を極めただけの存だ。特殊な力は持っているものの、身体能力は勇者の平均より少し上程度。
それでも現在も騎士団で一人だけ立っていられるのは、その鍛錬を一部の無駄なくこなせる様に特化されているからに他ならない。
どれだけの体力自慢であろうと、無駄な動きをすればそれだけ体力は無駄に浪費されてしまう。
ただただ突き詰めているだけの騎士が、最強の騎士ディエゴ・ルーデンスというわけだ。
そして、困ったことに心が読めるからこそエリーはその武の極みに、まず心で負けてしまう。
師匠のただ強いという事実を元にした心の余裕とは全く違う、人間として持ちうる技術を極め続けたが故の冷静さ。それにエリーの心は、常に負けを認めようとしてしまう。
これが現在世界で最強だと言われている勇者の一角、四人の内の一人だ。
「しかし、本当に強くなったね。きっとレインも喜ぶよ」
「私は悔しいよー。マイケルに負けるなんて何事かって怒られるんじゃないかなぁ」
「ははは、マイケルはよしてくれよ。どっちにしろ、私が君に勝てるのももう1年位の話だろう。それ程に君の成長は凄まじい」
「ところで、師匠はなんでディエゴさんをマイケルって呼び始めたの?」
「言ってなかったかな、それは私もまだ若かった頃にね……」
静かな訓練場では、そんな二人の声だけが響き渡っていた。
以前見た時から大幅に激しさの増したエリーのあまりの猛攻と、それを完全に防ぎ切るディエゴの強さに、会場中の騎士達が何も言えなくなっていた。それは、王さえも。
二人よりも更に強いオリヴィアだけが、それを微笑ましく、そしてうずうずと見守っていたのだった。
現在世界最強の勇者と噂されている四人。
その壁は、エリーにとってまだ少しだけ高かった。
ぐったりしている騎士達の耳に、そんな言葉が聞こえてくる。
オリヴィアはエリーと修行を始めて以来、王都帰還時には王城よりも先に騎士の訓練場に顔を出すのが恒例となっている。
真っ先に騎士達の様子を見て、自分も参加し、騎士団長ディエゴと模擬戦をする。
師匠レインとの約束で、騎士団長ディエゴに勝てなければ王都を出てはいけないという誓いを、彼女は一度だけではなく守り続けていた。
そんな王城より先に訓練場に顔を出すオリヴィアを見ていたのも、今現在王が張り切って訓練している理由の一つだ。
「おうただいまオリヴィアにエリー、可愛い娘達よ、俺達は情けないことにもう動けないんだが、どうする?」
王は首と手だけを挙げながら言う。
「私は師匠の娘なら歓迎だけど王様はちょっとタイプじゃないです……」
エリーの即答に、王ピーテルもぐはっ等と言いながら倒れこむ。何とかしてエリーを娘扱いしたいのがここ数年の王の様子だ。あわよくば今年8歳になる弟、王子とくっつけたいという魂胆が見え見えで少しばかり気持ち悪い。
能力を知っていてもそれを隠そうとしない辺り、オリヴィアの父親なのだと納得してしまう。しかし流石に14歳で6年以上の差があるのはどうかと思う、というのが正直な感想だ。
王子はオリヴィアに似て可愛いのだが、今のエリーから見ればどうみても鼻垂れ小僧。
「それならちょうど良いタイミングですし、わたくしとエリーさんの決闘をしましょうか」
そんな王は無視して、オリヴィアは続けた。
前回の決闘からそろそろひと月が経つので、確かにちょうど良い。
「よし、今回も私が勝ってみせる」
「今回も?」
そこで、ようやく空気になっていたディエゴも反応した。ディエゴの記憶ではオリヴィアの全勝で間違いない。
「先々月に勝ったからね! 前回は運で負けたんだから今回は勝つわ!」
「ほぉう、ならばエリー君、私と一試合しないか?」
「わかった。オリ姉の前にディエゴさんにも勝つわ!!」
……。
ごくりと、訓練場から唾を飲む音が聞こえる。
エリーは、間違いなく対魔物戦のエキスパートだ。その殲滅速度はオリヴィアと並びグレーズ1、騎士団長よりも遥かに速い速度で敵を殲滅することを、最早騎士団の誰もが知っている。
「くう、……」
膝を付いたのは、エリーだった。
「ははは、これで私の10勝目だね」
「まだまだ勝てないのかぁ……」
嬉しそうに佇むディエゴに、悔しそうに地面を叩くエリー。
二人の戦績は、ディエゴの10連勝無敗。
「オリ姉よりも勝つイメージが浮かばないよ」
「私は姫様に23連敗してるけどね」
「おかしいってぇ……」
そう言うのも、無理は無かった。
オリヴィアとは最近接戦を繰り返すエリーも、ディエゴが相手だと軽くあしらわれる感覚に近いものを感じる。
師匠を相手にしている時の様な余裕の心を、その能力は受け取っているのだ。
もちろん、オリヴィアがエリー戦で手を抜いているということは全く無い。
それでも、勝つイメージが湧かない。
「流石は世界で唯一の師匠のライバル……」
そう呟く他ないのだった。
ディエゴの戦闘スタイルは凄まじく地味だ。
ただただ堅実。
しかし、逆に彼の戦いには一切の偶然が存在しない。どんなことが起こってもそれすら想定済みであるかの様に動じない。
ただただ王国式剣術を極めただけの存だ。特殊な力は持っているものの、身体能力は勇者の平均より少し上程度。
それでも現在も騎士団で一人だけ立っていられるのは、その鍛錬を一部の無駄なくこなせる様に特化されているからに他ならない。
どれだけの体力自慢であろうと、無駄な動きをすればそれだけ体力は無駄に浪費されてしまう。
ただただ突き詰めているだけの騎士が、最強の騎士ディエゴ・ルーデンスというわけだ。
そして、困ったことに心が読めるからこそエリーはその武の極みに、まず心で負けてしまう。
師匠のただ強いという事実を元にした心の余裕とは全く違う、人間として持ちうる技術を極め続けたが故の冷静さ。それにエリーの心は、常に負けを認めようとしてしまう。
これが現在世界で最強だと言われている勇者の一角、四人の内の一人だ。
「しかし、本当に強くなったね。きっとレインも喜ぶよ」
「私は悔しいよー。マイケルに負けるなんて何事かって怒られるんじゃないかなぁ」
「ははは、マイケルはよしてくれよ。どっちにしろ、私が君に勝てるのももう1年位の話だろう。それ程に君の成長は凄まじい」
「ところで、師匠はなんでディエゴさんをマイケルって呼び始めたの?」
「言ってなかったかな、それは私もまだ若かった頃にね……」
静かな訓練場では、そんな二人の声だけが響き渡っていた。
以前見た時から大幅に激しさの増したエリーのあまりの猛攻と、それを完全に防ぎ切るディエゴの強さに、会場中の騎士達が何も言えなくなっていた。それは、王さえも。
二人よりも更に強いオリヴィアだけが、それを微笑ましく、そしてうずうずと見守っていたのだった。
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その壁は、エリーにとってまだ少しだけ高かった。
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