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第四章:最弱の英雄と戦士達
第四十七話:最終目標は一人一魔王ですもの
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敵は強大だった。
まあ、普通に国が相手にするなら前回のキマイラ、オーガロードと同程度かそれ以上だっただろうか。
合計で47匹のなんとかドラゴンが波状で現れた。
「ふう、30匹ですわ」
「……9匹だ」
「8匹……」
それでも、三人からしたら大したことではない。
特にオリヴィアはその性質上中程度の強さの敵が程よい数来る場合に最高の強さを発揮すると言っても良い。
ドラゴンやオーガロードの様に硬いわけでもなく、無駄に数だけが多いわけでもない。
急所を一突きにすればそれなりに倒せるレベルというのは、言ってみれば必中の餌食でしかないわけだ。
「まあ、あれだよクーリア姉、私の負けだから」
「あ、ああ」
「えーと、わたくしの勝ちということで?」【何の話でしたっけ?】
思い返してみれば、オリヴィアはその話をした時には既に遠くにいて、話を聞いていなかったわけだ。
「えーとね、オリ姉、クーリア姉とどれだけ魔物倒せるか勝負してたの」
そう言われて、オリヴィアも二人が戦闘前に笑い合っていたのを思い出す。
「あ、あーと、ごめんなさい」
その理由がクーリアの自信を取り戻させる為だったことを、流石に王女も理解して言う。
「二人ともそんなに気を使わなくて良い。実際に二人と戦ってみて、意外とアタシも捨てたものじゃないと分かったのは本当だ」
その言葉に偽りはなかった。
本日相手にした魔物達は、全ての魔物の中でもデーモンよりも上位に位置するものばかりだ。それを一刀両断出来る力があるというのは、確かに誇るべきことではあっても悲観すべきことではない。
しかも、エリーよりも少ない手数で倒している。それだけは事実だった。
「今回の魔物はこれで終わりらしい。アタシ達はエリーのアドバイス通り一度ウアカリに行ってみるが、お前達はどうする?」
「私達はアリエルちゃんの所行ってくるよ。久しぶりに遊んであげないとそろそろグレちゃうから」
「はっはっは、女王がグレたら大変だな。分かった。二人ともありがとう。オヴリヴィア、エリー、二人とも見違える程に強くなったな」
嬉しそうに、少し悔しそうに、クーリアはエリーの背を叩く。
「あはは、目標はクーリア姉とマルスさんが戦わなくて良い位強くなることだから」
「そうですわ。レイン様を継ぐ以上は最終目標は一人一魔王ですもの」
強がりでもなんでもなく、二人は言う。
決して超えられない目標かもしれない。しかしそれでも、師匠がその英雄である以上はそれを目標にしなければならない。いくらその師匠が二人の幸せを願っているのが分かっているとはいえ、それでも。
だからこそ、それを分かっているクーリアは言う。
「お前達なら必ずやれる。アタシもどうにか強くなれないか努力してみるさ。それじゃ、まずは目の前のことを解決しに行こうと思う。可愛い妹のイリスすらも置き去りにしてしまってるからな……」
「ん、イリス姉も大丈夫。強いから」
そうして三人でマルスや兵士達の元へと戻る。
不変の二人は、少しの挨拶を交わして、そのまま転移屋へと入って行った。
――。
「クーリア姉、やっぱ強いよ。まあ、人間だから色々思う所はあるけどね」
「そうですわね。人間ですもの、恋をすることもありますわ」
「私殆ど何もしてないのに心が回復してるもん」
未だ人を信じるのが難しいエリーにとってその強さは羨ましくもあり、手ごたえを感じない寂しいものでもある。
大切なものを守りたいだけで戦うエリーにとって、クーリアの強さは少しだけ理解が難しいものだった。
まあ、普通に国が相手にするなら前回のキマイラ、オーガロードと同程度かそれ以上だっただろうか。
合計で47匹のなんとかドラゴンが波状で現れた。
「ふう、30匹ですわ」
「……9匹だ」
「8匹……」
それでも、三人からしたら大したことではない。
特にオリヴィアはその性質上中程度の強さの敵が程よい数来る場合に最高の強さを発揮すると言っても良い。
ドラゴンやオーガロードの様に硬いわけでもなく、無駄に数だけが多いわけでもない。
急所を一突きにすればそれなりに倒せるレベルというのは、言ってみれば必中の餌食でしかないわけだ。
「まあ、あれだよクーリア姉、私の負けだから」
「あ、ああ」
「えーと、わたくしの勝ちということで?」【何の話でしたっけ?】
思い返してみれば、オリヴィアはその話をした時には既に遠くにいて、話を聞いていなかったわけだ。
「えーとね、オリ姉、クーリア姉とどれだけ魔物倒せるか勝負してたの」
そう言われて、オリヴィアも二人が戦闘前に笑い合っていたのを思い出す。
「あ、あーと、ごめんなさい」
その理由がクーリアの自信を取り戻させる為だったことを、流石に王女も理解して言う。
「二人ともそんなに気を使わなくて良い。実際に二人と戦ってみて、意外とアタシも捨てたものじゃないと分かったのは本当だ」
その言葉に偽りはなかった。
本日相手にした魔物達は、全ての魔物の中でもデーモンよりも上位に位置するものばかりだ。それを一刀両断出来る力があるというのは、確かに誇るべきことではあっても悲観すべきことではない。
しかも、エリーよりも少ない手数で倒している。それだけは事実だった。
「今回の魔物はこれで終わりらしい。アタシ達はエリーのアドバイス通り一度ウアカリに行ってみるが、お前達はどうする?」
「私達はアリエルちゃんの所行ってくるよ。久しぶりに遊んであげないとそろそろグレちゃうから」
「はっはっは、女王がグレたら大変だな。分かった。二人ともありがとう。オヴリヴィア、エリー、二人とも見違える程に強くなったな」
嬉しそうに、少し悔しそうに、クーリアはエリーの背を叩く。
「あはは、目標はクーリア姉とマルスさんが戦わなくて良い位強くなることだから」
「そうですわ。レイン様を継ぐ以上は最終目標は一人一魔王ですもの」
強がりでもなんでもなく、二人は言う。
決して超えられない目標かもしれない。しかしそれでも、師匠がその英雄である以上はそれを目標にしなければならない。いくらその師匠が二人の幸せを願っているのが分かっているとはいえ、それでも。
だからこそ、それを分かっているクーリアは言う。
「お前達なら必ずやれる。アタシもどうにか強くなれないか努力してみるさ。それじゃ、まずは目の前のことを解決しに行こうと思う。可愛い妹のイリスすらも置き去りにしてしまってるからな……」
「ん、イリス姉も大丈夫。強いから」
そうして三人でマルスや兵士達の元へと戻る。
不変の二人は、少しの挨拶を交わして、そのまま転移屋へと入って行った。
――。
「クーリア姉、やっぱ強いよ。まあ、人間だから色々思う所はあるけどね」
「そうですわね。人間ですもの、恋をすることもありますわ」
「私殆ど何もしてないのに心が回復してるもん」
未だ人を信じるのが難しいエリーにとってその強さは羨ましくもあり、手ごたえを感じない寂しいものでもある。
大切なものを守りたいだけで戦うエリーにとって、クーリアの強さは少しだけ理解が難しいものだった。
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