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第六章:鬼神の友人と英雄候補達
第七十六話:女性にここまで嫌がられたのは人生で初めてだよ……
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「ところであなたはレインさんの友人と自称してる様ですが、レインさんのお話を色々と聞かせてもらっても良いですか?」
南の大陸の渓谷地帯、赤土の地面が大きく抉れ、下には川が流れている地帯をサンダルとナディアは歩いていた。
隙を見つけては暗殺を目論むナディアに対して、そろそろ良い修行になるかもしれないと思い始めてきたこの頃、ふとナディアはそんなことを問う。
本気で殺すつもりではないらしいものの、本当に油断していれば普通に死ぬだろう状況の中である。
しかし、二人にとってはそれが最早日常となっていた。
「自称じゃなくてもあっちから友人だと言ってきたと思うんだけどね……」
突き出されたナイフを避けながら、呆れた様にサンダルは答える。
この突きだけでも、デーモンの二、三体程度なら軽く貫通しそうな勢いだ。
デーモン一体を倒せれば一流と呼ばれている中、それを軽く屠る勢いとなれば、もしも避けられなければ死は免れない。
それを軽く躱して見せるサンダルは、流石に超一流、世界で五本の指に入る勇者だと言われている理由をたったそれだけで証明してみせる。
「ちなみにレインさんからは女好きの碌でなしと聞いてますよ」
それに対して、避けられるのも当然とばかりにナディアも会話を続ける。
上位六人とされた勇者達なら誰しもが簡単に防いで見せる攻撃を避けられただけ。
むしろこれが当たってしまえばがっかりとしたままその死体を放置して、改めて一人修行に出ようとすら考えている。
「あいつ……」
そんなナディアの心情をどこまで知っているのか、もしくは知らなくとも関係がないのか、サンダルは再び繰り出されるハイキックをこれまた華麗に避けつつ、そんな風に呆れてみせる。
「嘘です。レインさんは友人を貶める様なことは言いませんよ。あなたと違って」
「それは随分と心外な物言いだね……」
そんなナディアの挑発に対しても、サンダルは少々の呆れ顔を見せるだけ。
ここまでの道中、ずっとそんなやり取りが繰り返されていた。
ナディアの自称殺すつもりのない攻撃や口撃は尽く躱され、しかしサンダルは呆れ顔を見せるだけ。
一切の反撃を返してこない。
ナディアが暴れ始めた場合は力づくで取り押さえる、もしくは満足するまで相手をするというのが今までの他の英雄候補達の対応だったことに比べて、余りにも拍子抜けだ。
「あなたは何で反撃してこないんですか?」
そんなナディアがつい口を吐いて出した言葉に、サンダルは逆に微笑んで答えてみせる。
「それは君と戦う理由は特にないからさ」
「へえ……」
そんな微笑んでの回答に、ナディアは逆に殺気を漲らせる。
かつて共に世界を回っていた時にレインから聞いていたサンダルの情報からすれば、それはすなわち。
「私が女だからってことですか?」
先日の決闘を思い返しても、きっとこの男は寸止めするつもりであの武器を振るっていたのだろうということが分かっている。毒剣を使わなかったナディアもなめてかかっていたとはいえ、武器はきっちりと当てるつもりで振るっていた。
ところがサンダルは振るい始めてからの動きに無駄が多い印象を受けていた。それは最初に出会った時に獲物を横取りされた時の様に迷いのないものではなく、明らかに寸止めする為のもの。
女だから手は出さない、女だから守る対象である。
そして女だから、なめられている。
ナディアはそんなサンダルの一連の行動からそう感じ取っていた。
だからこそ、間違って殺してしまったのなら仕方ない程度にはイライラとしていた。
「なるほど、それが不満だったわけか」
サンダルは、ナディアの殺気を正面から受け止めて頷く。
その顔は微笑を崩さず、しかし誤魔化すわけでもない。ナディアに真正面からぶつかっていこうという意思を見せながら、更に言葉を続ける。
「そうだ。私は君が人間の女性だからこうして笑っているんだ。レインなら反撃してぼこぼこにされてるさ」
そして笑顔は、真剣な表情へと変わる。
「私は全ての女性を魔物から守ろうと考えている。修行中いろいろ考えたんだが、結局はそれが私の本質だったんだ。しかし少しだけ変わったことがある」
「……聞きましょうか」
その言葉に少しだけレインに近いものを感じて、ナディアは殺気を沈めないままに続きを促す。
本質を100%を超えて出し切ること。それが言ってしまえばナディアの理想であるレインの、時雨流の奥義だ。
つい先日オリヴィアがようやく気づいたそれに、ナディアだけは遥か前から気づいていた。
次にサンダルから発される言葉に、嫌でも注目してしまう。
「私は聖女様すら守れる様な男になりたいのさ」
……。
欲望を剥き出しにしているともとれるそんなサンダルの暴露に、ナディアはようやく納得する。
どうしてもレインが欲しい彼女と、その男の目標はよく似ていた。
つまり、どちらも自己満足の為だけの目標で、その為に命を懸けているのだ。
ナディアは殺気を沈めつつ、ゆっくりと笑顔を作る。
「なるほど、私があなたに感じてたのは同族嫌悪みたいなものだったのかもしれませんね。でも、その程度の実力で私やライラ、オリヴィアを守ろうなんておこがましいですよ」
「ああ、しかし目標の途中でそれを裏切る行為は出来ないさ」
あくまでもそんな私欲の目標の為に命を懸けると言うサンダルに、ナディアはようやくその男を認めることにした。
現状の実力はほぼ五分。
守られるまでも無く自分の身を守ることが出来るし、自分が負ける相手には目の前の男も勝てない。
しかしそれでも、なんとなく胸に詰まっていたもやもやの様な物がとれた気がしたナディアは、手を差し出した。
「私が守られるようなことは一生有りませんが、もう少しあなたを殺そうとしてみましょう」
「言っていることは分からないがよろしく頼む」
指と指の隙間から針が覗いていることに気づいたサンダルは、それを指の間で挟みながら握手しようとする。
「私も君の戦いはある意味で非常に参考になるん、うおおぉぉ!!」
しかしそんな針に気を取られればナディアの背後から糸のついたナイフが飛んでくる。
ギリギリでそれを交わしながらもなんとか握手を交わすと、魔女と呼ばれる女はその手を汚いものにでも触れた様にパンパンとはたきながらこう言った。
「チッ、全くあなたはあの魔女とはお似合いですね。鬱陶しい」
……。
「女性にここまで嫌がられたのは人生で初めてだよ……」
その男は大陸で最も良い男だと言われている、英雄の子孫だ。
彼のファンは彼が通ったあらゆる町に数多く存在している。
ナディアのあまりに酷い対応は、ある意味で男にとっては衝撃的なものだった。
南の大陸の渓谷地帯、赤土の地面が大きく抉れ、下には川が流れている地帯をサンダルとナディアは歩いていた。
隙を見つけては暗殺を目論むナディアに対して、そろそろ良い修行になるかもしれないと思い始めてきたこの頃、ふとナディアはそんなことを問う。
本気で殺すつもりではないらしいものの、本当に油断していれば普通に死ぬだろう状況の中である。
しかし、二人にとってはそれが最早日常となっていた。
「自称じゃなくてもあっちから友人だと言ってきたと思うんだけどね……」
突き出されたナイフを避けながら、呆れた様にサンダルは答える。
この突きだけでも、デーモンの二、三体程度なら軽く貫通しそうな勢いだ。
デーモン一体を倒せれば一流と呼ばれている中、それを軽く屠る勢いとなれば、もしも避けられなければ死は免れない。
それを軽く躱して見せるサンダルは、流石に超一流、世界で五本の指に入る勇者だと言われている理由をたったそれだけで証明してみせる。
「ちなみにレインさんからは女好きの碌でなしと聞いてますよ」
それに対して、避けられるのも当然とばかりにナディアも会話を続ける。
上位六人とされた勇者達なら誰しもが簡単に防いで見せる攻撃を避けられただけ。
むしろこれが当たってしまえばがっかりとしたままその死体を放置して、改めて一人修行に出ようとすら考えている。
「あいつ……」
そんなナディアの心情をどこまで知っているのか、もしくは知らなくとも関係がないのか、サンダルは再び繰り出されるハイキックをこれまた華麗に避けつつ、そんな風に呆れてみせる。
「嘘です。レインさんは友人を貶める様なことは言いませんよ。あなたと違って」
「それは随分と心外な物言いだね……」
そんなナディアの挑発に対しても、サンダルは少々の呆れ顔を見せるだけ。
ここまでの道中、ずっとそんなやり取りが繰り返されていた。
ナディアの自称殺すつもりのない攻撃や口撃は尽く躱され、しかしサンダルは呆れ顔を見せるだけ。
一切の反撃を返してこない。
ナディアが暴れ始めた場合は力づくで取り押さえる、もしくは満足するまで相手をするというのが今までの他の英雄候補達の対応だったことに比べて、余りにも拍子抜けだ。
「あなたは何で反撃してこないんですか?」
そんなナディアがつい口を吐いて出した言葉に、サンダルは逆に微笑んで答えてみせる。
「それは君と戦う理由は特にないからさ」
「へえ……」
そんな微笑んでの回答に、ナディアは逆に殺気を漲らせる。
かつて共に世界を回っていた時にレインから聞いていたサンダルの情報からすれば、それはすなわち。
「私が女だからってことですか?」
先日の決闘を思い返しても、きっとこの男は寸止めするつもりであの武器を振るっていたのだろうということが分かっている。毒剣を使わなかったナディアもなめてかかっていたとはいえ、武器はきっちりと当てるつもりで振るっていた。
ところがサンダルは振るい始めてからの動きに無駄が多い印象を受けていた。それは最初に出会った時に獲物を横取りされた時の様に迷いのないものではなく、明らかに寸止めする為のもの。
女だから手は出さない、女だから守る対象である。
そして女だから、なめられている。
ナディアはそんなサンダルの一連の行動からそう感じ取っていた。
だからこそ、間違って殺してしまったのなら仕方ない程度にはイライラとしていた。
「なるほど、それが不満だったわけか」
サンダルは、ナディアの殺気を正面から受け止めて頷く。
その顔は微笑を崩さず、しかし誤魔化すわけでもない。ナディアに真正面からぶつかっていこうという意思を見せながら、更に言葉を続ける。
「そうだ。私は君が人間の女性だからこうして笑っているんだ。レインなら反撃してぼこぼこにされてるさ」
そして笑顔は、真剣な表情へと変わる。
「私は全ての女性を魔物から守ろうと考えている。修行中いろいろ考えたんだが、結局はそれが私の本質だったんだ。しかし少しだけ変わったことがある」
「……聞きましょうか」
その言葉に少しだけレインに近いものを感じて、ナディアは殺気を沈めないままに続きを促す。
本質を100%を超えて出し切ること。それが言ってしまえばナディアの理想であるレインの、時雨流の奥義だ。
つい先日オリヴィアがようやく気づいたそれに、ナディアだけは遥か前から気づいていた。
次にサンダルから発される言葉に、嫌でも注目してしまう。
「私は聖女様すら守れる様な男になりたいのさ」
……。
欲望を剥き出しにしているともとれるそんなサンダルの暴露に、ナディアはようやく納得する。
どうしてもレインが欲しい彼女と、その男の目標はよく似ていた。
つまり、どちらも自己満足の為だけの目標で、その為に命を懸けているのだ。
ナディアは殺気を沈めつつ、ゆっくりと笑顔を作る。
「なるほど、私があなたに感じてたのは同族嫌悪みたいなものだったのかもしれませんね。でも、その程度の実力で私やライラ、オリヴィアを守ろうなんておこがましいですよ」
「ああ、しかし目標の途中でそれを裏切る行為は出来ないさ」
あくまでもそんな私欲の目標の為に命を懸けると言うサンダルに、ナディアはようやくその男を認めることにした。
現状の実力はほぼ五分。
守られるまでも無く自分の身を守ることが出来るし、自分が負ける相手には目の前の男も勝てない。
しかしそれでも、なんとなく胸に詰まっていたもやもやの様な物がとれた気がしたナディアは、手を差し出した。
「私が守られるようなことは一生有りませんが、もう少しあなたを殺そうとしてみましょう」
「言っていることは分からないがよろしく頼む」
指と指の隙間から針が覗いていることに気づいたサンダルは、それを指の間で挟みながら握手しようとする。
「私も君の戦いはある意味で非常に参考になるん、うおおぉぉ!!」
しかしそんな針に気を取られればナディアの背後から糸のついたナイフが飛んでくる。
ギリギリでそれを交わしながらもなんとか握手を交わすと、魔女と呼ばれる女はその手を汚いものにでも触れた様にパンパンとはたきながらこう言った。
「チッ、全くあなたはあの魔女とはお似合いですね。鬱陶しい」
……。
「女性にここまで嫌がられたのは人生で初めてだよ……」
その男は大陸で最も良い男だと言われている、英雄の子孫だ。
彼のファンは彼が通ったあらゆる町に数多く存在している。
ナディアのあまりに酷い対応は、ある意味で男にとっては衝撃的なものだった。
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