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第八章:ほんの僅かの前進
第百一話:さて、作戦は決まってます。まずこの人が突っ込んで、死んだら私達が出ます
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「こんにちはーナディアさん、サンダルさん」
「御機嫌ようお二人とも。助っ人に参りましたわ」
「ええ、おはようございますエリー、オリヴィア」
南の大陸東部、魔物の襲撃の中心地となる予定の街で、四人の勇者は集まった。
エリーオリヴィアとサンダルは、先日の狛の村での件ではその戦闘を直接見ていない為、ほぼ初顔合わせに等しい。
「改めてよろしく頼むよ、レインの愛弟子さん」
サンダルは紳士的な様相で、まずはオリヴィアに向けて手を差し出す。
「よろしくサンダルさん」
それを、エリーが握り返して微笑んだ。
サンダルは特にオリヴィアを狙って握手を求めたわけではない。
エリーもそれを読んだわけではないが、長年女性を誑かしてきたにおいを感じ取ったのだろう。ほぼ無意識でオリヴィアの前に立ち入っていた。
「こらこらエリーさん、改めてよろしくお願い致しますわ。お師匠様のご友人・・・・・・・・のサンダル様」
オリヴィアは、そう言ってエリーを退かすと、サンダルと握手を交わす。
「ぶふっ」
思わず笑いかけたエリーを遮って、そんな吹き出す声が聞こえる。
やりとりを見ていたナディアが吹いている。
「残念なイケメンってのはあなたのことですね、あはははは」
そんな風に、腹を抱えて笑いだす。
「ははは、レインの周りの女性達はみんな私に厳しいな」
「今までが甘やかされてたんですよ。顔が良いだけじゃ、真の男とは言えません」
「魔女様の言う真の男ってのはレインのことだろう?」
「もちろんです。男ってのはレインさんと、あなた含め豚しかいませんから」
「本当に君は厳しいな……」
そんないつものやり取り。
「あはははは」
それをぽかんと聞いていたエリーが、突然笑いだす。
「ごめんごめんサンダルさん。女誑しって聞いてたしちょっと警戒してたけど、悪い人じゃなさそうね」
ナディアとここまで気軽に話し合える者は、魔王討伐軍にはいない。ライバルと言うべきか、仇敵と言うべきか、ライラとだけはいつだって好き勝手言い合っているものの、それ以外の者はそれなりに彼女に気を使っている。
元は仲の良かったクーリアも、マルスとくっついてからはどうしても、気を使いがちだ。
そんな状態だったナディアが、なんとも自然に毒を吐いている。
その心は、平穏に満ちている。
好きにレインのことを話せる相手。それがナディアにとってのサンダルの様だ。
この二人が出会ったのは、偶然ではないのかもしれない。
そんな風にすら感じるほどに、ナディアはサンダルに自然体で接していた。
「ん? どういうことですの? レイン様は確かに素晴らしいですが、サンダル様も英雄のご子孫。素晴らしい経歴をお持ちですわよ?」
そんな、先程から自然体でサンダルを拒否する様な姿勢を見せるオリヴィアも含めて、エリーにとってその場はなかなかに面白いものだった。
……。
「さて、作戦は決まってます。まずこの人が突っ込んで、死んだら私達が出ます」
「そうだな、それで行こう」
自然にサンダルを殺そうとするナディアに、何故か賛同するサンダル。
「いや、それサンダルさん死ぬから」
「何か問題が?」
呆れるエリーに、これまたナディアは自然と首を傾げる。本心で言っている辺り、余計に理解出来ない。
「え、ないの?」
思わず聞き返すと、今度はサンダルから答えが返ってきた。
「死なない程度には修行をしてきたが」
何より、対複数は得意分野だ。そんな声が聞こえてくる。
「そういう精神論は却下。オリ姉」
複数が得意とは言え、報告に聞いている魔物の数は、下手すればドラゴンの方が楽なレベルだ。魔王を目前にして、大怪我でもしたら話にならない。ここはなるべく楽に片をつけることが重要となる。
よって、恐らくこの中で一番戦術に富んだオリヴィアに話を任せる。
ナディアはあらゆる手段で目の前の敵を殺すことは得意だが、集団戦にそもそも向かない。
「ええ。では、報告に聞いていた、先に魔物達が到着する地点、北側をわたくしとエリーさん。南側をサンダル様とナディアさんと分けましょう。最後に大軍が到達する中央には、エリーさんとサンダル様が途中から向かいます。後は処理が終わり次第わたくしとナディアさんも東部中央へ」
「了解オリ姉」
「仕方ないですね」
「……珍しく魔女様も素直なんだな」
「レインさんの直弟子の二人の言葉は、レインさんの言葉に等しいですから」
聖女にはあれほどの妬みを見せるナディアが、弟子であればいう事を聞くというのはどういうことかと訝しんでいるのを見て、エリーが答える。
「私達も師匠を失ってる仲間だからね」
「それならあのライラ君にはどうしてあんな態度だったんだ?」
エリーの言葉だけでは納得のいかないサンダルは、更に質問を重ねる。
「それは決まってるじゃないですか。ライラは敵で、弟子の二人は恩を売っておけば良いことがあるかもしれない。そういうことです」
「…………」
余りにもはっきりとした物言いに思わず絶句するサンダル。しかしそれを聞いた弟子の二人はいつも通りと言った様子でこう答えた。
「ナディアさんですもの。仕方ありませんわ」
「そ、ナディアさんが強くあるためのスタイルだから」
オリヴィアは同情の目を向けながら、エリーはそのスタイルが強いなら当然だと言った様子で。
かつて聖女に精神を侵され、気づけば求めていた人物が死んでいたナディアの悲愴を、二人は深く理解している。
「御機嫌ようお二人とも。助っ人に参りましたわ」
「ええ、おはようございますエリー、オリヴィア」
南の大陸東部、魔物の襲撃の中心地となる予定の街で、四人の勇者は集まった。
エリーオリヴィアとサンダルは、先日の狛の村での件ではその戦闘を直接見ていない為、ほぼ初顔合わせに等しい。
「改めてよろしく頼むよ、レインの愛弟子さん」
サンダルは紳士的な様相で、まずはオリヴィアに向けて手を差し出す。
「よろしくサンダルさん」
それを、エリーが握り返して微笑んだ。
サンダルは特にオリヴィアを狙って握手を求めたわけではない。
エリーもそれを読んだわけではないが、長年女性を誑かしてきたにおいを感じ取ったのだろう。ほぼ無意識でオリヴィアの前に立ち入っていた。
「こらこらエリーさん、改めてよろしくお願い致しますわ。お師匠様のご友人・・・・・・・・のサンダル様」
オリヴィアは、そう言ってエリーを退かすと、サンダルと握手を交わす。
「ぶふっ」
思わず笑いかけたエリーを遮って、そんな吹き出す声が聞こえる。
やりとりを見ていたナディアが吹いている。
「残念なイケメンってのはあなたのことですね、あはははは」
そんな風に、腹を抱えて笑いだす。
「ははは、レインの周りの女性達はみんな私に厳しいな」
「今までが甘やかされてたんですよ。顔が良いだけじゃ、真の男とは言えません」
「魔女様の言う真の男ってのはレインのことだろう?」
「もちろんです。男ってのはレインさんと、あなた含め豚しかいませんから」
「本当に君は厳しいな……」
そんないつものやり取り。
「あはははは」
それをぽかんと聞いていたエリーが、突然笑いだす。
「ごめんごめんサンダルさん。女誑しって聞いてたしちょっと警戒してたけど、悪い人じゃなさそうね」
ナディアとここまで気軽に話し合える者は、魔王討伐軍にはいない。ライバルと言うべきか、仇敵と言うべきか、ライラとだけはいつだって好き勝手言い合っているものの、それ以外の者はそれなりに彼女に気を使っている。
元は仲の良かったクーリアも、マルスとくっついてからはどうしても、気を使いがちだ。
そんな状態だったナディアが、なんとも自然に毒を吐いている。
その心は、平穏に満ちている。
好きにレインのことを話せる相手。それがナディアにとってのサンダルの様だ。
この二人が出会ったのは、偶然ではないのかもしれない。
そんな風にすら感じるほどに、ナディアはサンダルに自然体で接していた。
「ん? どういうことですの? レイン様は確かに素晴らしいですが、サンダル様も英雄のご子孫。素晴らしい経歴をお持ちですわよ?」
そんな、先程から自然体でサンダルを拒否する様な姿勢を見せるオリヴィアも含めて、エリーにとってその場はなかなかに面白いものだった。
……。
「さて、作戦は決まってます。まずこの人が突っ込んで、死んだら私達が出ます」
「そうだな、それで行こう」
自然にサンダルを殺そうとするナディアに、何故か賛同するサンダル。
「いや、それサンダルさん死ぬから」
「何か問題が?」
呆れるエリーに、これまたナディアは自然と首を傾げる。本心で言っている辺り、余計に理解出来ない。
「え、ないの?」
思わず聞き返すと、今度はサンダルから答えが返ってきた。
「死なない程度には修行をしてきたが」
何より、対複数は得意分野だ。そんな声が聞こえてくる。
「そういう精神論は却下。オリ姉」
複数が得意とは言え、報告に聞いている魔物の数は、下手すればドラゴンの方が楽なレベルだ。魔王を目前にして、大怪我でもしたら話にならない。ここはなるべく楽に片をつけることが重要となる。
よって、恐らくこの中で一番戦術に富んだオリヴィアに話を任せる。
ナディアはあらゆる手段で目の前の敵を殺すことは得意だが、集団戦にそもそも向かない。
「ええ。では、報告に聞いていた、先に魔物達が到着する地点、北側をわたくしとエリーさん。南側をサンダル様とナディアさんと分けましょう。最後に大軍が到達する中央には、エリーさんとサンダル様が途中から向かいます。後は処理が終わり次第わたくしとナディアさんも東部中央へ」
「了解オリ姉」
「仕方ないですね」
「……珍しく魔女様も素直なんだな」
「レインさんの直弟子の二人の言葉は、レインさんの言葉に等しいですから」
聖女にはあれほどの妬みを見せるナディアが、弟子であればいう事を聞くというのはどういうことかと訝しんでいるのを見て、エリーが答える。
「私達も師匠を失ってる仲間だからね」
「それならあのライラ君にはどうしてあんな態度だったんだ?」
エリーの言葉だけでは納得のいかないサンダルは、更に質問を重ねる。
「それは決まってるじゃないですか。ライラは敵で、弟子の二人は恩を売っておけば良いことがあるかもしれない。そういうことです」
「…………」
余りにもはっきりとした物言いに思わず絶句するサンダル。しかしそれを聞いた弟子の二人はいつも通りと言った様子でこう答えた。
「ナディアさんですもの。仕方ありませんわ」
「そ、ナディアさんが強くあるためのスタイルだから」
オリヴィアは同情の目を向けながら、エリーはそのスタイルが強いなら当然だと言った様子で。
かつて聖女に精神を侵され、気づけば求めていた人物が死んでいたナディアの悲愴を、二人は深く理解している。
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