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第八章:ほんの僅かの前進
第百十六話:ああ。君は間違いなく、
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皆が様々な葛藤を抱えながら3ヶ月程の月日が経過した。
エリーとオリヴィアは相変わらず魔物の襲撃が多い王都周辺のヘルプも兼ねて王都に滞在し、互いを高め合っていた。
最大のもので60m程のドラゴン、後は適当な雑兵。
とは言え襲撃の頻度も高く、かつての騎士団なら王都を守りきれず陥落していたと思われる程には大規模な襲撃が、述べ13回。
それらを手早く処理してしまうエリーとオリヴィアはやはり別格で、討伐速度そのものにどうしても難があるディエゴは騎士団や魔法師団と共に奮戦していた。
しかし、一度のドラゴン戦で活躍したのはディエゴだった。
王都に奇襲をかけようとしたドラゴンに対して魔法師団が放つと、その魔法を嫌ったドラゴンが離れた地面に下り、騎士団から順に倒していこうと灼熱のブレスを吐く。
皆がそれから身を守るのに必死な中、ディエゴは正面切ってそこに立ち向かっていった。
長時間に渡るブレスの影響で何箇所かの火傷を負いながらも絶対回避の力で正面突破を図ったディエゴはそのまま喉元に剣を突き立てると、通称炎袋と呼ばれるブレスを吐く際に使われる器官を抉りとった。
いくら知能の高いドラゴンと言えども、まさか灼熱の中を突き進んでくる者がいるなどとは思ってもみない。そして知性が高い故に、パニックに陥った時には突拍子もない行動を取ってしまうのもまた、ドラゴンの特徴の一つだった。
何を思ったか、パニックで魔法すら使えないドラゴンは四本足で這い回るように王都へと突き進もうとしたのだ。
当然、それを許すエリーとオリヴィアではない。
白弓エリーゼと戦槍マルス、そしてオリヴィアの突撃によって瞬く間にその首が刈り取られると、グレーズ軍の面々は鰻上りに士気を上げていった。
そして、危ないと言っても好奇心が勝る者はいるもの。
その戦いを見ていた一部の民衆が、勇者のトップは次元が違うと勝手に王都を盛り上げ始めてしまう始末だった。
……。
そんな戦いもあっての、今。
「ふう、遂に抜かれてしまったか」
騎士団長ディエゴは、膝を着く。
正真正銘、技術の頂点。戦いのセンスは抜群だったものの、身体能力に恵まれなかった男。長年グレーズのトップをひた走ってきた騎士団長が、鬼神の一番弟子に敗れた。
騎士団長は、まるで分かっていたかの様に納得顔でその敗北を受け入れた。
「私自身、なんで勝てたのか今一分かってないけど……」
エリーは呟く。
先ほどまで長剣レインを握っていたその手を見つめて、何度か握っては開いて、そして言う。
「なんか、強くなった気がするなぁ」
何故かは分からないけれど、今までよりも体がスムーズに動いている。
ここ最近の大気は、どこか恐怖を孕んでいる。
まるでそれに呼応して、オリヴィアに遠慮してる場合ではないと体が言っている様なそんな不思議な感覚だ。
もちろん、今までも手を抜くなんてことは一切してこなかった。
それでも全く勝ちの目が見えなかったディエゴに対して、初の勝利を挙げられた。
それが、なんだかとても不思議な気分だった。
しかしそんな様子を見ていたディエゴはまるでエリーの考えなど無視して言う。
「なんとか魔王戦の前にエリー君が仕上がって良かった。俺に勝てなければ魔王相手は不可能だ。俺はレインから言われていることがある」
腕を組んで、騎士団長ディエゴではなく、まるでかつて師匠にマイケルと呼ばれてからかわれていた時の様な、気さくな様子で言う。
「もしも魔王出現までにエリーがお前に勝てなければ、エリーの出撃は無しだ。そんな風に言われててね。どうやらあの男は、世界の命運よりも君の方が大切らしい。君が出れば勝てたかもしれない戦いであっても、エリーが居なければ勝てない世界等滅んでしまえ等と言ってたな。全くあの男は大した親バカだ。ははは」
レインがエリーを、実の娘の様に可愛がっていたことは、誰しもが知っている。
ディエゴはそう笑うものの、師匠の言ったことがどれほど冗談なのか分からない。
冗談どころか本気でそう言っている光景すら目に浮かぶ。
「あははは、師匠が言いそうなことだね。結局負けちゃったら私だって死んじゃうのに」
「その時はアンデッドになってでも魔王を殺すって言ってたな」
「あはははは。師匠なら生き返ってもおかしくないね」
そう笑い合う二人。
この世界に、死者を蘇らせる方法は一つだけ。
死体に陰のマナが宿ることによって、世界の意思に従うアンデッドになる。
魔法使いであれば魔法使いの魔物、リッチとして。勇者であればその特性は失われ、しかし過去の技術を持った強力なアンデッドとして。
命の亡くなった者は、遥か昔から生き返る時はそうであると決まっている。
以前魔法によって生き返らせようとした者は、失敗に終わっていた。
死んだという認識を一度してしまった以上、それが覆ることなど決してない。つまり、その魔法をかけられた遺体は、ただの動く遺体になったと言う。
アンデッドと違い、見た目以外に生前の特性を何一つ持たない動く遺体。心臓は魔法で動かしているものの、全て死んでしまったその体は次第に朽ちていき、やがて……。
それでも、二人はレインなら納得だと笑いあった。
「じゃあ、私は師匠の娘に恥じない勇者になれたってことで良いのかな」
一通り笑い合って、落ち着いたエリーは尊敬する騎士団長に問う。
越えられない壁だと思っていた最強の騎士を乗り越えて、これでようやく、この尊敬する騎士団長の前でも師匠の弟子だと胸を張れるのかと、そういう意図を込めて問う。
その答えは、エリーの生涯忘れられない言葉となった。
「ああ。君は間違いなく、あの化物の娘だ」
エリーとオリヴィアは相変わらず魔物の襲撃が多い王都周辺のヘルプも兼ねて王都に滞在し、互いを高め合っていた。
最大のもので60m程のドラゴン、後は適当な雑兵。
とは言え襲撃の頻度も高く、かつての騎士団なら王都を守りきれず陥落していたと思われる程には大規模な襲撃が、述べ13回。
それらを手早く処理してしまうエリーとオリヴィアはやはり別格で、討伐速度そのものにどうしても難があるディエゴは騎士団や魔法師団と共に奮戦していた。
しかし、一度のドラゴン戦で活躍したのはディエゴだった。
王都に奇襲をかけようとしたドラゴンに対して魔法師団が放つと、その魔法を嫌ったドラゴンが離れた地面に下り、騎士団から順に倒していこうと灼熱のブレスを吐く。
皆がそれから身を守るのに必死な中、ディエゴは正面切ってそこに立ち向かっていった。
長時間に渡るブレスの影響で何箇所かの火傷を負いながらも絶対回避の力で正面突破を図ったディエゴはそのまま喉元に剣を突き立てると、通称炎袋と呼ばれるブレスを吐く際に使われる器官を抉りとった。
いくら知能の高いドラゴンと言えども、まさか灼熱の中を突き進んでくる者がいるなどとは思ってもみない。そして知性が高い故に、パニックに陥った時には突拍子もない行動を取ってしまうのもまた、ドラゴンの特徴の一つだった。
何を思ったか、パニックで魔法すら使えないドラゴンは四本足で這い回るように王都へと突き進もうとしたのだ。
当然、それを許すエリーとオリヴィアではない。
白弓エリーゼと戦槍マルス、そしてオリヴィアの突撃によって瞬く間にその首が刈り取られると、グレーズ軍の面々は鰻上りに士気を上げていった。
そして、危ないと言っても好奇心が勝る者はいるもの。
その戦いを見ていた一部の民衆が、勇者のトップは次元が違うと勝手に王都を盛り上げ始めてしまう始末だった。
……。
そんな戦いもあっての、今。
「ふう、遂に抜かれてしまったか」
騎士団長ディエゴは、膝を着く。
正真正銘、技術の頂点。戦いのセンスは抜群だったものの、身体能力に恵まれなかった男。長年グレーズのトップをひた走ってきた騎士団長が、鬼神の一番弟子に敗れた。
騎士団長は、まるで分かっていたかの様に納得顔でその敗北を受け入れた。
「私自身、なんで勝てたのか今一分かってないけど……」
エリーは呟く。
先ほどまで長剣レインを握っていたその手を見つめて、何度か握っては開いて、そして言う。
「なんか、強くなった気がするなぁ」
何故かは分からないけれど、今までよりも体がスムーズに動いている。
ここ最近の大気は、どこか恐怖を孕んでいる。
まるでそれに呼応して、オリヴィアに遠慮してる場合ではないと体が言っている様なそんな不思議な感覚だ。
もちろん、今までも手を抜くなんてことは一切してこなかった。
それでも全く勝ちの目が見えなかったディエゴに対して、初の勝利を挙げられた。
それが、なんだかとても不思議な気分だった。
しかしそんな様子を見ていたディエゴはまるでエリーの考えなど無視して言う。
「なんとか魔王戦の前にエリー君が仕上がって良かった。俺に勝てなければ魔王相手は不可能だ。俺はレインから言われていることがある」
腕を組んで、騎士団長ディエゴではなく、まるでかつて師匠にマイケルと呼ばれてからかわれていた時の様な、気さくな様子で言う。
「もしも魔王出現までにエリーがお前に勝てなければ、エリーの出撃は無しだ。そんな風に言われててね。どうやらあの男は、世界の命運よりも君の方が大切らしい。君が出れば勝てたかもしれない戦いであっても、エリーが居なければ勝てない世界等滅んでしまえ等と言ってたな。全くあの男は大した親バカだ。ははは」
レインがエリーを、実の娘の様に可愛がっていたことは、誰しもが知っている。
ディエゴはそう笑うものの、師匠の言ったことがどれほど冗談なのか分からない。
冗談どころか本気でそう言っている光景すら目に浮かぶ。
「あははは、師匠が言いそうなことだね。結局負けちゃったら私だって死んじゃうのに」
「その時はアンデッドになってでも魔王を殺すって言ってたな」
「あはははは。師匠なら生き返ってもおかしくないね」
そう笑い合う二人。
この世界に、死者を蘇らせる方法は一つだけ。
死体に陰のマナが宿ることによって、世界の意思に従うアンデッドになる。
魔法使いであれば魔法使いの魔物、リッチとして。勇者であればその特性は失われ、しかし過去の技術を持った強力なアンデッドとして。
命の亡くなった者は、遥か昔から生き返る時はそうであると決まっている。
以前魔法によって生き返らせようとした者は、失敗に終わっていた。
死んだという認識を一度してしまった以上、それが覆ることなど決してない。つまり、その魔法をかけられた遺体は、ただの動く遺体になったと言う。
アンデッドと違い、見た目以外に生前の特性を何一つ持たない動く遺体。心臓は魔法で動かしているものの、全て死んでしまったその体は次第に朽ちていき、やがて……。
それでも、二人はレインなら納得だと笑いあった。
「じゃあ、私は師匠の娘に恥じない勇者になれたってことで良いのかな」
一通り笑い合って、落ち着いたエリーは尊敬する騎士団長に問う。
越えられない壁だと思っていた最強の騎士を乗り越えて、これでようやく、この尊敬する騎士団長の前でも師匠の弟子だと胸を張れるのかと、そういう意図を込めて問う。
その答えは、エリーの生涯忘れられない言葉となった。
「ああ。君は間違いなく、あの化物の娘だ」
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