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第十一章:血染めの鬼姫と妖狐と
第百五十四話:私からしたら20点
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グレーズ王国、旧フィオーレの跡地にある墓地にエリーとオリヴィアはやって来ていた。
王都の方では現在軍の編成が行われおり、同時に英雄に関する情報整理も行われている。
今回最前線で戦い続けたエリーと止めを刺したオリヴィアはもちろん英雄。それも、師匠が魔王だと知った弟子である彼女達が命を顧みずに最前線に立ったのだということになっている。
とは言えオリヴィアは死亡、エリーは魔王戦後、一度グレーズに戻ったものの行方不明となってしまった。
そして最初の対峙の際、オリヴィアを救い六日間にも及び戦い抜き、命を落とした騎士団長ディエゴ・ルーデンスも英雄だ。結局救ったオリヴィアは死んでしまったものの、六日間という実績は代え難い。最後の決戦も、3時間も経たない内の決着。
そして、前国王ピーテル。その一見愚かな自殺行為も、新王であるアーツが意図を察した演説をしたことで愚王の汚名は免れることとなった。軍を引き連れての突撃ではなく、どうしても王に着いていきたいと言った独身騎士のみを引き連れての戦闘だった為、ある意味で無駄な死者は出していない。全軍を率いていれば全滅は確実、しかし単身で向かえばただの自殺。魔王の準備期間をなるべく取らせない為には有用な決断だった、と言うのが新大将であるジャム達の見解。
更には父としての、その無謀な勇敢さがオリヴィアの心を動かしたのだという美談が語られているらしい。
その噂を流したのは妻シルヴィアなのだが、まあそれは今は置いておくとして。
最後に、不運な騎士レイニー。
若くして戦死した騎士は、勇敢にも一人で戦いを挑み、人知れず散っていった。
レイニーは反逆者だと宣う魔王に踊らされた前王はその責任を取るためにも魔王戦に向かったのだが、レイニーは魔王の本質に唯一気付いた騎士として、グレーズの英雄の一人として歴史に名を刻むことになったということ。
【孤独の騎士レイニー・フォクスチャーム】
市井にも人気の高かった好青年は王女オリヴィアとお似合いだと考えていた市民も多く、時期国王として期待されていた。そのつもりがオリヴィアには全く無くとも、レイニーの姫に対する忠誠心を見ていた市民達はその青年を英雄扱いすることで、自らも貶めてしまった贖罪としたかったらしい。
そんな彼らが、エリーは嫌だった。
何も知らない者達が知った様な顔をして、レインを貶めている。それは本質的にはお前達の好きなオリヴィアすらも貶めていると知っているのかと。それがまた、アーツを振ることになった理由の一つでもある。
5歳から戦場にあったエリーは、言ってみれば強者だ。いつも守る側の存在で、守られる側の母や女将、そしてブロンセンの市民達は皆そんなエリーを娘の様に可愛がっていた。アリスの身の上を知っても差別などする訳もなく。
ブロンセンの市民達は、言ってみれば特殊な人々だ。辺境の片田舎、まるで心が読めるエリーの為に存在する様な心優しき人々。そんな者達は、凄まじく少数派。人口密度が多くなればそれだけ人々の摩擦も大きくなり、軋轢を生む。それは、余裕の無かったエリーの生まれ故郷も同じ。
だからこそ、エリーは生まれ故郷とある種似ている、王都に住む極一般的な弱者の気持ちを理解等出来はしなかった。
知り合いに英雄や王族が多すぎることが原因の一つなのかもしれないが、ともかく、心が読めるエリーは、グレーズ王都をなるべく早く出たがった。
かつてフィオーレの町だった場所に入り、レインとサニィの墓に着くと、予想通りのことが起こっている。
人間歴452年7月28日
世界を救った■■■英雄
■■■■■■■
Sunny Prismheart
魔王の呪いを消し去り眠る
「こういうのを見ると、世界の意思の考えもあながち間違いじゃないって思うね」
人間は滅んでしまっても良いのではないかと、考えてしまう。
「それすらも、世界の意思の思惑通りかもしれませんけれど……、少なくともレイン様は――」
「うん、分かってる」
魔王となったレインは、人を殺したくはなかったはず。
だからこそ残ってすらいない意思で、それこそ、本能的な部分であえてたまきの魅了に引っかかって活動を停止していた。
それをエリーは知っている。オリヴィアも、当然の如く予想が付いている。
ここには居ないかもしれないけど、と前置きして語り始める。
「お姉ちゃん、師匠が魔王になっちゃったけど、なんとか魔王討伐隊で止められたよ。ディエゴさんとライラさんが死んじゃって、ナディアさんも意識が戻らない。その上で、みんな師匠を敵扱いだ。悔しいよ。
師匠は魔王を二人も倒したのに。魔王を倒すためにって、私達皆を鍛えてくれたのに……。ドラゴンだって、全滅させた、本当なら英雄の中の英雄のはずなのに……。
お姉ちゃんから見たら、何点位の戦いだったのかな。私からしたら20点。
死者を一人も出さないでって、アリエルちゃんの掲げた目標は全然届かなかった。
だから、一般市民に被害が出なかったってことで20点…………、なんで、なんで皆師匠を悪く言うのかな、何も知らない癖に。
うあぁぁああぁ、皆、みんな頑張って戦ったのに、なんでだよおおおぉぉぉぉお!」
今まで心の中に溜め込んでいたものを放出する様に、エリーは叫び始めた。涙をぼろぼろと流し、今までオリヴィアの代わりに気丈に振舞っていた者が一瞬にして崩れ去る様に、わんわんと泣き始めた。
「エリーさん……」
それを、オリヴィアが抱きしめる。今までで散々心の中のものを出し切ったオリヴィアは、今となっては冷静になっていた。自分自身も、レインを悪者にした一人だ。国の為にとは言え、弟の為にとは言え、エリーにとってはそれが一番辛いことだということを、一番知っているのは同じ師匠の弟子のオリヴィア。そんな罪の意識がある中で、エリーと共に泣くことなど出来はしない。
それにしても、今まで可愛い妹に随分と大きな負担をかけてしまったものだと反省もしながら、15歳の英雄が泣き止むまで抱きしめ続けた。
王都の方では現在軍の編成が行われおり、同時に英雄に関する情報整理も行われている。
今回最前線で戦い続けたエリーと止めを刺したオリヴィアはもちろん英雄。それも、師匠が魔王だと知った弟子である彼女達が命を顧みずに最前線に立ったのだということになっている。
とは言えオリヴィアは死亡、エリーは魔王戦後、一度グレーズに戻ったものの行方不明となってしまった。
そして最初の対峙の際、オリヴィアを救い六日間にも及び戦い抜き、命を落とした騎士団長ディエゴ・ルーデンスも英雄だ。結局救ったオリヴィアは死んでしまったものの、六日間という実績は代え難い。最後の決戦も、3時間も経たない内の決着。
そして、前国王ピーテル。その一見愚かな自殺行為も、新王であるアーツが意図を察した演説をしたことで愚王の汚名は免れることとなった。軍を引き連れての突撃ではなく、どうしても王に着いていきたいと言った独身騎士のみを引き連れての戦闘だった為、ある意味で無駄な死者は出していない。全軍を率いていれば全滅は確実、しかし単身で向かえばただの自殺。魔王の準備期間をなるべく取らせない為には有用な決断だった、と言うのが新大将であるジャム達の見解。
更には父としての、その無謀な勇敢さがオリヴィアの心を動かしたのだという美談が語られているらしい。
その噂を流したのは妻シルヴィアなのだが、まあそれは今は置いておくとして。
最後に、不運な騎士レイニー。
若くして戦死した騎士は、勇敢にも一人で戦いを挑み、人知れず散っていった。
レイニーは反逆者だと宣う魔王に踊らされた前王はその責任を取るためにも魔王戦に向かったのだが、レイニーは魔王の本質に唯一気付いた騎士として、グレーズの英雄の一人として歴史に名を刻むことになったということ。
【孤独の騎士レイニー・フォクスチャーム】
市井にも人気の高かった好青年は王女オリヴィアとお似合いだと考えていた市民も多く、時期国王として期待されていた。そのつもりがオリヴィアには全く無くとも、レイニーの姫に対する忠誠心を見ていた市民達はその青年を英雄扱いすることで、自らも貶めてしまった贖罪としたかったらしい。
そんな彼らが、エリーは嫌だった。
何も知らない者達が知った様な顔をして、レインを貶めている。それは本質的にはお前達の好きなオリヴィアすらも貶めていると知っているのかと。それがまた、アーツを振ることになった理由の一つでもある。
5歳から戦場にあったエリーは、言ってみれば強者だ。いつも守る側の存在で、守られる側の母や女将、そしてブロンセンの市民達は皆そんなエリーを娘の様に可愛がっていた。アリスの身の上を知っても差別などする訳もなく。
ブロンセンの市民達は、言ってみれば特殊な人々だ。辺境の片田舎、まるで心が読めるエリーの為に存在する様な心優しき人々。そんな者達は、凄まじく少数派。人口密度が多くなればそれだけ人々の摩擦も大きくなり、軋轢を生む。それは、余裕の無かったエリーの生まれ故郷も同じ。
だからこそ、エリーは生まれ故郷とある種似ている、王都に住む極一般的な弱者の気持ちを理解等出来はしなかった。
知り合いに英雄や王族が多すぎることが原因の一つなのかもしれないが、ともかく、心が読めるエリーは、グレーズ王都をなるべく早く出たがった。
かつてフィオーレの町だった場所に入り、レインとサニィの墓に着くと、予想通りのことが起こっている。
人間歴452年7月28日
世界を救った■■■英雄
■■■■■■■
Sunny Prismheart
魔王の呪いを消し去り眠る
「こういうのを見ると、世界の意思の考えもあながち間違いじゃないって思うね」
人間は滅んでしまっても良いのではないかと、考えてしまう。
「それすらも、世界の意思の思惑通りかもしれませんけれど……、少なくともレイン様は――」
「うん、分かってる」
魔王となったレインは、人を殺したくはなかったはず。
だからこそ残ってすらいない意思で、それこそ、本能的な部分であえてたまきの魅了に引っかかって活動を停止していた。
それをエリーは知っている。オリヴィアも、当然の如く予想が付いている。
ここには居ないかもしれないけど、と前置きして語り始める。
「お姉ちゃん、師匠が魔王になっちゃったけど、なんとか魔王討伐隊で止められたよ。ディエゴさんとライラさんが死んじゃって、ナディアさんも意識が戻らない。その上で、みんな師匠を敵扱いだ。悔しいよ。
師匠は魔王を二人も倒したのに。魔王を倒すためにって、私達皆を鍛えてくれたのに……。ドラゴンだって、全滅させた、本当なら英雄の中の英雄のはずなのに……。
お姉ちゃんから見たら、何点位の戦いだったのかな。私からしたら20点。
死者を一人も出さないでって、アリエルちゃんの掲げた目標は全然届かなかった。
だから、一般市民に被害が出なかったってことで20点…………、なんで、なんで皆師匠を悪く言うのかな、何も知らない癖に。
うあぁぁああぁ、皆、みんな頑張って戦ったのに、なんでだよおおおぉぉぉぉお!」
今まで心の中に溜め込んでいたものを放出する様に、エリーは叫び始めた。涙をぼろぼろと流し、今までオリヴィアの代わりに気丈に振舞っていた者が一瞬にして崩れ去る様に、わんわんと泣き始めた。
「エリーさん……」
それを、オリヴィアが抱きしめる。今までで散々心の中のものを出し切ったオリヴィアは、今となっては冷静になっていた。自分自身も、レインを悪者にした一人だ。国の為にとは言え、弟の為にとは言え、エリーにとってはそれが一番辛いことだということを、一番知っているのは同じ師匠の弟子のオリヴィア。そんな罪の意識がある中で、エリーと共に泣くことなど出来はしない。
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