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第三章:王妃と幼馴染
第六十六話:勝利への作用
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魔法使いが魔法を使う為には三つの条件がある。
一つはイメージ。
どの様な現象を起こすのかを正確にイメージ出来れば出来るほどに魔法の効力は上がり、逆に少しでも綻べば簡単に魔法は霧散してしまう。
聖女はそのイメージをより明確にする為の方法を考え、それを後継者ルークが更に発展させたことで、今の魔法使いの地位が確立された。
二つ目はマナ。
魔法使いにだけ存在すると言われるマナタンクと呼ばれる器官に蓄えたマナの貯蔵量が多ければ多いほどに大規模な魔法を長期的に扱うことが出来る。
現在は聖なるマナと呼ばれるそれは超常現象の大元となるとても重要なもので、これが無ければそもそも魔法は発動すらしない。
そして三つ目が想いを込めた道具。
長年マナタンクに繋がる蛇口だと考えられてきたそれは、現在では蛇口ではなく増幅器であると考えられている。
何故道具が必要なのかは分かっていないが、道具が無くとも極々微弱な魔法としてなら発現することは確認されていることからその信憑性を増している。
慣れ親しんだ道具は魔法使いのイメージを補強する効果が主で、想いを込めたものが必要と言われる理由は、単なる新品ではそれを前に魔法使い自身が多少なりともイメージを阻害してしまうというのが理由。
その為道具は魔法使いにとって生命線であり、各々が拘りの道具を手にしている。
その中でも人気の道具としては聖女も使っていた、ある程度の装飾がある杖を利用することが多いが、魔法使いが見直され始めてからはまた少し工夫を凝らす者も出てきている。
身体強化を得意としている者は杖では無く直接的に武器を道具として使う者が居たり、逆に道具は肌身離さず持ち歩きながらもそれが何なのかは分からないようにカモフラージュし、道具が別のものに移ってしまわないよう毎回違う武器を持つ者など。
前者は個人戦を想定している者に多く、後者は対人戦闘を想定した盗賊に多いのだが、どちらにせよ魔法使いの道具への拘りはここ三十年程で随分と変わってきていた。
魔法使いはパニックを起こせばただの人。
それに加えて、道具を失ってもただの人だからだ。
その為単なる後衛としてしか認知されていなかった魔法使いの能力が見直されるにつれて、道具も奪われにくいものへと自然に変化していくことになる。
そんな中で、サラの道具は異彩を放っていた。
生まれた時からずっと側にあった、子どもの時にいつも遊んでいたもの。
世界でただ一つ、英雄達しか知らない聖女の遺品。
たまらんタマリンと銘が入ったタンバリン。
小型の歪な手作りの杖を使っているルークや結婚指輪がそのまま道具になっているエレナとはまるで違う、一見ただの楽器でしかない30年もののタンバリンだ。
実際に作られてから月日はもっと経っているはずだが、聖女によって一度綺麗に整備されているそれはいつまで経っても新品同様で、壊れても自動で復元してしまうそれ自体が魔法の道具と化している。
それを普段は腰に提げていて、場合によっては鳴らしながら魔法を使うサラは時に踊り子の様で面白い。
二回戦目のサラを見て、クラウスは改めてそんな感想を抱くことになった。
流石エレナとルーク両方の良い所も悪い所も継いでいると言うべきか、一度調子に乗り始めたサラを止めるのは非常に困難で、勇者であっても素手のサラに対して防戦一方になってしまう。
離れればルーク譲りの理性を発揮し、近づけばエレナ譲りの図太さと直感的なイメージを発揮する。
魔法使いながら近接戦闘もこなせる者は現在それなりに数多くいるが、サラのそれは少しばかりレベルが違う。
クラウスがサラを苦手としていた原因の一つもそれで、勇者に有利な近接戦闘を挑んだつもりなのにいつの間にかサラのペースに変わっている。
幼馴染の格闘能力は、一般人のレベルで言えば相当なものにあるのかもしれないが、勇者のレベルで考えれば蟻と象と言っても良い程に違うはずだ。
単純な身体能力の強化であっても常にそのイメージをする必要がある為に絶対に速度や反射面で勇者に遅れを取ることになるし、そもそも強化したところで勇者には及ばない身体能力であることが多い。
サラもその例に漏れず、いや、むしろ殆どと言っても良い程に身体能力は強化されていない。
それにも関わらず殆どの勇者は簡単にサラの格闘術に翻弄され、二回戦の相手も同様に、膝を付いてしまった。
仮にもどこかの国のトップに勝って二回戦に上がってきた勇者であるはずの相手に、魔法使いが格闘戦で勝つことなど考えられない。
会場では、そんな空気が流れていた。
それも当然だ。
サラとその勇者の戦闘は、それまでに比べれば非常にスローなもの。
前日のサンダルや少し前のエリスの様に超高速戦闘でもなく、イリスやルークの様に派手なわけでもない。
ただアリーナの中心でサラが踊る様に繰り出す打撃に、相手は反応も難しく翻弄されている様な状態。
何故か勇者の動きは一回戦目と大して変わらないにも関わらず、サラの打撃が強靭な肉体を持つ勇者に通じるはずなど無いにも関わらず、一方的に打撃を受け続けた勇者は本当に苦しげな顔をして負けを認めることになった。
「一応、これは八百長じゃないことだけは言っておくわ。疑うなら大会後サラと戦ってみれば分かるから。まあ、私の娘だものそういうことも出来るの」
二回戦連続のあっけない幕切れに流石に疑わしげな視線を向ける観客がいるのを見て、エレナはその場でそう囁いた。
それは全ての客の耳に直接囁く様に届いた様で、殆どの観客がぶるりと背筋を震わせてからエレナのいる方向を振り向く。
すると、まるでなんでもないかの様に微笑みながら上品に手を振ると、エレナはもう一度囁いた。
「ほら、もう私に負けてる気分でしょ?」
それを聞いて、殆どの観客はサラの試合内容よりもエレナに見張られていることに衝撃を受けてしまったのだと後に語っている。
一つはイメージ。
どの様な現象を起こすのかを正確にイメージ出来れば出来るほどに魔法の効力は上がり、逆に少しでも綻べば簡単に魔法は霧散してしまう。
聖女はそのイメージをより明確にする為の方法を考え、それを後継者ルークが更に発展させたことで、今の魔法使いの地位が確立された。
二つ目はマナ。
魔法使いにだけ存在すると言われるマナタンクと呼ばれる器官に蓄えたマナの貯蔵量が多ければ多いほどに大規模な魔法を長期的に扱うことが出来る。
現在は聖なるマナと呼ばれるそれは超常現象の大元となるとても重要なもので、これが無ければそもそも魔法は発動すらしない。
そして三つ目が想いを込めた道具。
長年マナタンクに繋がる蛇口だと考えられてきたそれは、現在では蛇口ではなく増幅器であると考えられている。
何故道具が必要なのかは分かっていないが、道具が無くとも極々微弱な魔法としてなら発現することは確認されていることからその信憑性を増している。
慣れ親しんだ道具は魔法使いのイメージを補強する効果が主で、想いを込めたものが必要と言われる理由は、単なる新品ではそれを前に魔法使い自身が多少なりともイメージを阻害してしまうというのが理由。
その為道具は魔法使いにとって生命線であり、各々が拘りの道具を手にしている。
その中でも人気の道具としては聖女も使っていた、ある程度の装飾がある杖を利用することが多いが、魔法使いが見直され始めてからはまた少し工夫を凝らす者も出てきている。
身体強化を得意としている者は杖では無く直接的に武器を道具として使う者が居たり、逆に道具は肌身離さず持ち歩きながらもそれが何なのかは分からないようにカモフラージュし、道具が別のものに移ってしまわないよう毎回違う武器を持つ者など。
前者は個人戦を想定している者に多く、後者は対人戦闘を想定した盗賊に多いのだが、どちらにせよ魔法使いの道具への拘りはここ三十年程で随分と変わってきていた。
魔法使いはパニックを起こせばただの人。
それに加えて、道具を失ってもただの人だからだ。
その為単なる後衛としてしか認知されていなかった魔法使いの能力が見直されるにつれて、道具も奪われにくいものへと自然に変化していくことになる。
そんな中で、サラの道具は異彩を放っていた。
生まれた時からずっと側にあった、子どもの時にいつも遊んでいたもの。
世界でただ一つ、英雄達しか知らない聖女の遺品。
たまらんタマリンと銘が入ったタンバリン。
小型の歪な手作りの杖を使っているルークや結婚指輪がそのまま道具になっているエレナとはまるで違う、一見ただの楽器でしかない30年もののタンバリンだ。
実際に作られてから月日はもっと経っているはずだが、聖女によって一度綺麗に整備されているそれはいつまで経っても新品同様で、壊れても自動で復元してしまうそれ自体が魔法の道具と化している。
それを普段は腰に提げていて、場合によっては鳴らしながら魔法を使うサラは時に踊り子の様で面白い。
二回戦目のサラを見て、クラウスは改めてそんな感想を抱くことになった。
流石エレナとルーク両方の良い所も悪い所も継いでいると言うべきか、一度調子に乗り始めたサラを止めるのは非常に困難で、勇者であっても素手のサラに対して防戦一方になってしまう。
離れればルーク譲りの理性を発揮し、近づけばエレナ譲りの図太さと直感的なイメージを発揮する。
魔法使いながら近接戦闘もこなせる者は現在それなりに数多くいるが、サラのそれは少しばかりレベルが違う。
クラウスがサラを苦手としていた原因の一つもそれで、勇者に有利な近接戦闘を挑んだつもりなのにいつの間にかサラのペースに変わっている。
幼馴染の格闘能力は、一般人のレベルで言えば相当なものにあるのかもしれないが、勇者のレベルで考えれば蟻と象と言っても良い程に違うはずだ。
単純な身体能力の強化であっても常にそのイメージをする必要がある為に絶対に速度や反射面で勇者に遅れを取ることになるし、そもそも強化したところで勇者には及ばない身体能力であることが多い。
サラもその例に漏れず、いや、むしろ殆どと言っても良い程に身体能力は強化されていない。
それにも関わらず殆どの勇者は簡単にサラの格闘術に翻弄され、二回戦の相手も同様に、膝を付いてしまった。
仮にもどこかの国のトップに勝って二回戦に上がってきた勇者であるはずの相手に、魔法使いが格闘戦で勝つことなど考えられない。
会場では、そんな空気が流れていた。
それも当然だ。
サラとその勇者の戦闘は、それまでに比べれば非常にスローなもの。
前日のサンダルや少し前のエリスの様に超高速戦闘でもなく、イリスやルークの様に派手なわけでもない。
ただアリーナの中心でサラが踊る様に繰り出す打撃に、相手は反応も難しく翻弄されている様な状態。
何故か勇者の動きは一回戦目と大して変わらないにも関わらず、サラの打撃が強靭な肉体を持つ勇者に通じるはずなど無いにも関わらず、一方的に打撃を受け続けた勇者は本当に苦しげな顔をして負けを認めることになった。
「一応、これは八百長じゃないことだけは言っておくわ。疑うなら大会後サラと戦ってみれば分かるから。まあ、私の娘だものそういうことも出来るの」
二回戦連続のあっけない幕切れに流石に疑わしげな視線を向ける観客がいるのを見て、エレナはその場でそう囁いた。
それは全ての客の耳に直接囁く様に届いた様で、殆どの観客がぶるりと背筋を震わせてからエレナのいる方向を振り向く。
すると、まるでなんでもないかの様に微笑みながら上品に手を振ると、エレナはもう一度囁いた。
「ほら、もう私に負けてる気分でしょ?」
それを聞いて、殆どの観客はサラの試合内容よりもエレナに見張られていることに衝撃を受けてしまったのだと後に語っている。
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