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4-帰還命令
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「獣人族を野蛮だと軽視するつもりはないけれど、人間は獣性が低くて本能も獣人に比べれば最低限だ。だから理性が働きやすいのだと思う。だがその代わり、番を認識する力が弱いのではないだろうか?」
そうなのかもしれない。
エデュラは皇子の考えにゆっくりと頷いた。
だとすれば、この悲しみも愛しさも、抑え込もうと思えば出来るのかもしれない。
美味しそうな物を目の前にして、食べるのを我慢するのと同じ。
でもそれでは、私がまるで食いしん坊みたいね。
思わずエデュラがふ、と笑うと、皇子が優し気に目を和ませた。
「君の笑顔は可愛らしいな」
「……え、あ……、そんな……有難う存じます」
急な誉め言葉に驚き、エデュラは言葉を失ってしまった。
誉められなれていないのだ。
特に同年代の男性と話して、そんな風に褒められた記憶はない。
口篭もった後、顔を赤く染めながら漸く礼の言葉を紡ぐと、皇子は笑い声を立てる。
「良かったら、君の考えも聞かせてくれないか?」
「はい……」
エデュラは正直に考えていた事を話すと、皇子は楽しそうに笑う。
そして、笑顔で頷いた。
「君は笑顔だけじゃなく、考える事も可愛らしいな。……でもそうか。昔読んだ文献に変わった話が載っていたんだ」
「どんなお話でございますの?」
「番との縁を切って、別の番と縁を結び直す話なんだが、それだと人間同士の恋愛と同じだなと思った記憶がある。何を以て運命と呼ぶのだろうな」
エデュラも考える。
運命とはただそこに在るだけのものではなくて、自分で引き寄せることも出来るもの。
でもそれを運命と呼べるかどうかは、誰に委ねられるのだろう。
「恋や愛に真実の、と付けたがるように、自分や誰かの恋愛を劇的なものにしたいだけなのかもしれません」
「そうか……それもあるかもしれないが、私は出会いこそが運命なのかもしれないと思っているよ」
出会いこそが運命。
不思議そうにエデュラが首を傾げると、皇子は優しく微笑んだ。
「例えば君の兄のディンキルは話も合うし馬も合う。剣の稽古も中々良い勝負をする」
「まあ、お兄様ったら……」
「いや、いい。手を抜かれるのは御免だ。だが、彼との出会いは君のお父上がこの国へ家族と共に来るという選択をしなければ成しえなかっただろう」
思ってもいない偶然で、良い出会いがあった時、それを運命と呼ぶのかしら?
エデュラが皇子を見つめると、皇子は照れ臭そうに笑った。
「彼とは生涯の友誼を結ぶだろう。だから私はそれも運命だと思いたい」
「ふふ。劇的ですわね」
「そうとも言うかもしれない。お互いの意見を取り入れて纏まったところで、どうかな?庭園の散歩をするというのは?」
立ち上がって差し出された皇子の手に、エデュラは手を重ねる。
「はい。お供致します」
それからというもの、泣き暮らしていただけのエデュラの生活は一変した。
妹のエリシャと共に兄ディンキルと皇子リーヴェルトの剣の勝負を観戦したり、広大な図書館で本を読んだり、皇子とは色々な話を交わす。
そのどれもが興味深い話ばかりで、エデュラは悲しむ暇も退屈を持て余すこともなかった。
毎日が新鮮で、楽しい日々は飛ぶように過ぎていく。
もう少し滞在を伸ばそうか、と父に言われて、全員がその言葉に頷いた翌日、王国からの書簡が届いた。
それは王命で、すぐに帰国するよう申し付ける物だったのである。
そうなのかもしれない。
エデュラは皇子の考えにゆっくりと頷いた。
だとすれば、この悲しみも愛しさも、抑え込もうと思えば出来るのかもしれない。
美味しそうな物を目の前にして、食べるのを我慢するのと同じ。
でもそれでは、私がまるで食いしん坊みたいね。
思わずエデュラがふ、と笑うと、皇子が優し気に目を和ませた。
「君の笑顔は可愛らしいな」
「……え、あ……、そんな……有難う存じます」
急な誉め言葉に驚き、エデュラは言葉を失ってしまった。
誉められなれていないのだ。
特に同年代の男性と話して、そんな風に褒められた記憶はない。
口篭もった後、顔を赤く染めながら漸く礼の言葉を紡ぐと、皇子は笑い声を立てる。
「良かったら、君の考えも聞かせてくれないか?」
「はい……」
エデュラは正直に考えていた事を話すと、皇子は楽しそうに笑う。
そして、笑顔で頷いた。
「君は笑顔だけじゃなく、考える事も可愛らしいな。……でもそうか。昔読んだ文献に変わった話が載っていたんだ」
「どんなお話でございますの?」
「番との縁を切って、別の番と縁を結び直す話なんだが、それだと人間同士の恋愛と同じだなと思った記憶がある。何を以て運命と呼ぶのだろうな」
エデュラも考える。
運命とはただそこに在るだけのものではなくて、自分で引き寄せることも出来るもの。
でもそれを運命と呼べるかどうかは、誰に委ねられるのだろう。
「恋や愛に真実の、と付けたがるように、自分や誰かの恋愛を劇的なものにしたいだけなのかもしれません」
「そうか……それもあるかもしれないが、私は出会いこそが運命なのかもしれないと思っているよ」
出会いこそが運命。
不思議そうにエデュラが首を傾げると、皇子は優しく微笑んだ。
「例えば君の兄のディンキルは話も合うし馬も合う。剣の稽古も中々良い勝負をする」
「まあ、お兄様ったら……」
「いや、いい。手を抜かれるのは御免だ。だが、彼との出会いは君のお父上がこの国へ家族と共に来るという選択をしなければ成しえなかっただろう」
思ってもいない偶然で、良い出会いがあった時、それを運命と呼ぶのかしら?
エデュラが皇子を見つめると、皇子は照れ臭そうに笑った。
「彼とは生涯の友誼を結ぶだろう。だから私はそれも運命だと思いたい」
「ふふ。劇的ですわね」
「そうとも言うかもしれない。お互いの意見を取り入れて纏まったところで、どうかな?庭園の散歩をするというのは?」
立ち上がって差し出された皇子の手に、エデュラは手を重ねる。
「はい。お供致します」
それからというもの、泣き暮らしていただけのエデュラの生活は一変した。
妹のエリシャと共に兄ディンキルと皇子リーヴェルトの剣の勝負を観戦したり、広大な図書館で本を読んだり、皇子とは色々な話を交わす。
そのどれもが興味深い話ばかりで、エデュラは悲しむ暇も退屈を持て余すこともなかった。
毎日が新鮮で、楽しい日々は飛ぶように過ぎていく。
もう少し滞在を伸ばそうか、と父に言われて、全員がその言葉に頷いた翌日、王国からの書簡が届いた。
それは王命で、すぐに帰国するよう申し付ける物だったのである。
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