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絶滅の危機
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「そ、そんなぁあぁぁ」
露店が開かれている広場で、悲しげな幼女の声が響き渡った。
質素な服に身を包んで、布の帽子で髪の毛ごと包んで被っているマリアローゼ5歳である。
繊細な淑女だったら倒れていたかもしれない衝撃に、
マリアローゼは地面にくずおれていた。
「いや、でも7匹いるじゃないか」
そう。
行きに買った置物のロバのお店である。
色々な人にお土産やお守りとして配ったので、絶滅の危機にあるのだ。
だから、ありったけを買おう、とマリアローゼは勢い込んでいた。
「30くらいは欲しいですわね」
などと、宿を出る時はご機嫌に言っていたのだが、
いざ店についてみると、大分少ない数がしょんぼりと並んでいたのだ。
「ごめんよ、お嬢ちゃん。仕事の合間に作っているからねぇ。
1日に1匹出来るかどうかなんだよ」
精巧とは言い難いが、それでもマリアローゼが作れといわれれば最低3日はかかりそうな代物だ。
後ろからシルヴァインに助け起こされて、暗い顔のマリアローゼは、店に並んでいるロバを見詰めた。
「…では、こちら全部売ってくださいますか?」
「うんうん、ありがとうねえ」
あまりの落胆振りに、シルヴァインがマリアローゼの頭をぽんぽんと撫でた。
「注文して行けばいいんだよ、ローゼ」
「……注文?」
「手間賃と材料費と送料を先払いして、送ってもらえばいい」
シルヴァインの提案に、涙ぐんでいたマリアローゼはぱああっと笑顔を浮かべた。
「お兄様、ありがとう存じます」
「よし、それじゃあ何個注文しようか?」
マリアローゼはその質問に、迷うことなく答えた。
「50匹」
「え?桁間違ってないかな?ローゼ」
「え?500匹ですの?」
「そっちじゃない」
諦めたように肩を竦めたシルヴァインは、ギラッファから筆記用具を受け取って、簡単な注文書をその場で作る。
さらさらと男らしくも綺麗な筆致で、住所も書き入れて、老婆に渡した。
後ろにいて、筆記用具を受け取って、仕舞い込んだギラッファが、書面どおりのお金を老婆に支払う。
「こんなにいいのかい?」
「大変な手間だろう。急がなくていいから、半分くらい出来たら一度送ってもらえるだろうか?」
「はい。感謝します、おぼっちゃん」
傍らのマリアローゼはぷっくり膨らんだほっぺを紅潮させ、にこにこと満面の笑顔である。
その笑顔に、シルヴァインもにこやかに微笑を返した。
……あら?いつも煩いレイ様が静かですわね?
気付いたマリアローゼが後ろを振り返ると、綺麗に直立した姿勢でめちゃくちゃガン見していたのである。
困ったようにユリアを見ると、ユリアも溜息を吐いた。
「静かなのはいいですけど、目付きがヤバいんですよね。ストーカーの目ですよ、あれ」
「ストーカーとは失礼な。僕はただ、色んなマリアローゼの表情を目に焼き付けているんだよ」
「視線でマリアローゼ様が穢れるので止めて下さい」
「いや、僕は清らかな気持で見ているよ」
途端に騒がしくなったので、マリアローゼは傍らのシルヴァインの指を握って引っ張った。
「お兄様、わたくしリボンもまた買いに行きたいですわ」
「家に来る仕立て屋からも買えるよ?」
「乙女心が分かっておりませんのね。沢山の中から自分で選んで買うのが良いのですわ」
唇をつん、と尖らせて頬を膨らませてから、くるりと向きを変えてルーナと手を繋ぐと、
マリアローゼは以前に行った事のある路地の方へてくてくと向かった。
「ぐふっ」
「ぐふぉ」
同じような音を立てた不審者1と不審者2をその場に置いて。
露店が開かれている広場で、悲しげな幼女の声が響き渡った。
質素な服に身を包んで、布の帽子で髪の毛ごと包んで被っているマリアローゼ5歳である。
繊細な淑女だったら倒れていたかもしれない衝撃に、
マリアローゼは地面にくずおれていた。
「いや、でも7匹いるじゃないか」
そう。
行きに買った置物のロバのお店である。
色々な人にお土産やお守りとして配ったので、絶滅の危機にあるのだ。
だから、ありったけを買おう、とマリアローゼは勢い込んでいた。
「30くらいは欲しいですわね」
などと、宿を出る時はご機嫌に言っていたのだが、
いざ店についてみると、大分少ない数がしょんぼりと並んでいたのだ。
「ごめんよ、お嬢ちゃん。仕事の合間に作っているからねぇ。
1日に1匹出来るかどうかなんだよ」
精巧とは言い難いが、それでもマリアローゼが作れといわれれば最低3日はかかりそうな代物だ。
後ろからシルヴァインに助け起こされて、暗い顔のマリアローゼは、店に並んでいるロバを見詰めた。
「…では、こちら全部売ってくださいますか?」
「うんうん、ありがとうねえ」
あまりの落胆振りに、シルヴァインがマリアローゼの頭をぽんぽんと撫でた。
「注文して行けばいいんだよ、ローゼ」
「……注文?」
「手間賃と材料費と送料を先払いして、送ってもらえばいい」
シルヴァインの提案に、涙ぐんでいたマリアローゼはぱああっと笑顔を浮かべた。
「お兄様、ありがとう存じます」
「よし、それじゃあ何個注文しようか?」
マリアローゼはその質問に、迷うことなく答えた。
「50匹」
「え?桁間違ってないかな?ローゼ」
「え?500匹ですの?」
「そっちじゃない」
諦めたように肩を竦めたシルヴァインは、ギラッファから筆記用具を受け取って、簡単な注文書をその場で作る。
さらさらと男らしくも綺麗な筆致で、住所も書き入れて、老婆に渡した。
後ろにいて、筆記用具を受け取って、仕舞い込んだギラッファが、書面どおりのお金を老婆に支払う。
「こんなにいいのかい?」
「大変な手間だろう。急がなくていいから、半分くらい出来たら一度送ってもらえるだろうか?」
「はい。感謝します、おぼっちゃん」
傍らのマリアローゼはぷっくり膨らんだほっぺを紅潮させ、にこにこと満面の笑顔である。
その笑顔に、シルヴァインもにこやかに微笑を返した。
……あら?いつも煩いレイ様が静かですわね?
気付いたマリアローゼが後ろを振り返ると、綺麗に直立した姿勢でめちゃくちゃガン見していたのである。
困ったようにユリアを見ると、ユリアも溜息を吐いた。
「静かなのはいいですけど、目付きがヤバいんですよね。ストーカーの目ですよ、あれ」
「ストーカーとは失礼な。僕はただ、色んなマリアローゼの表情を目に焼き付けているんだよ」
「視線でマリアローゼ様が穢れるので止めて下さい」
「いや、僕は清らかな気持で見ているよ」
途端に騒がしくなったので、マリアローゼは傍らのシルヴァインの指を握って引っ張った。
「お兄様、わたくしリボンもまた買いに行きたいですわ」
「家に来る仕立て屋からも買えるよ?」
「乙女心が分かっておりませんのね。沢山の中から自分で選んで買うのが良いのですわ」
唇をつん、と尖らせて頬を膨らませてから、くるりと向きを変えてルーナと手を繋ぐと、
マリアローゼは以前に行った事のある路地の方へてくてくと向かった。
「ぐふっ」
「ぐふぉ」
同じような音を立てた不審者1と不審者2をその場に置いて。
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