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連載
侯爵家の事情
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「お母様、ステラと先代侯爵夫人とお引き合わせする前に、少しお時間を頂けますか?」
「あら?何か気になる事があるのかしら?」
朝食後の紅茶の時間に、マリアローゼのお願い事を聞きながら、ミルリーリウムは微笑んだ。
「ええ、少し。ステラのお母様のイーリス様についてお聞きしたくて」
「わかりました。では、お庭を案内して差し上げたら良いですわ」
マリアローゼは母の言葉にぱあ、と笑顔を向けた。
「有難う存じます、お母様。わたくしも支度をして参ります」
数時間後に訪れた先代侯爵夫人、エルメは丁寧な謝罪と、豪華な贈り物を携えていた。
少しお茶を飲んだ後で、予定通り母がマリアローゼと引き合わせた上で、庭に送り出す。
マリアローゼは前庭を案内しつつ、気になっていた話題を振ってみた。
「あの…不躾な事をお伺いしても宜しいでしょうか?」
一瞬、驚いたように目を見開いたものの、夫人は目を細めて微笑んだ。
「何なりと」
「何故、イーリス様はテララ子爵に嫁されたのでしょうか?こう申し上げてはなんですけれど、あまり良い噂はないと聞き及んでおります」
言葉を選びながら、マリアローゼは済まなそうに問いかけた。
「当時も、左様でございました。わたくしも、夫も、息子も、周囲全てが反対したのですが、それを振り切って嫁いだのです。しかも、当時素晴らしい婚約者もいたというのに…」
「まあ…婚約者が……」
それはかなりの大問題だし、まして女性の方から逃げるというのも珍しい。
夫人は静かに頷いて、目を伏せた。
「ええ、現在のアウリス侯爵家の御当主でしたの。幼い頃から仲が良くて、それ故兄妹としか見れなかったのかもしれませんけれど…でも、わたくしは違うと分かっておりました。
あの子には悪癖があったのです」
「……と申しますと?」
「身内の恥を晒すようですが……」
言い淀んだ後、夫人は意を決したように語りだした。
「あの子は恵まれていたからか、反抗心が強いというか、妙に気難しいところがありましてね。
その所為で周囲との衝突が絶えませんでした。それでも可愛い娘でしたから、勿論結婚も反対したのですけれど、あの子にとってはその障害も結婚に踏み切った理由だったのかもしれません」
「なるほど……」
それは難しい問題だったのだろう、とマリアローゼにも推測できた。
止める手立てがないのも頷けるし、どうして?と言われても年頃の娘を監禁する訳にもいかなかった筈である。
もしそれがわたくしだったら、余裕で監禁されそうですけれど……
ともかく、侯爵夫妻は止めようとしたが、強硬手段は取らなかったというだけで瑕疵は無い。
寧ろ、強硬手段を取ったのは娘の方だったのだ。
「夫は、許しませんでした。出て行く前に一筆書かせたのです。二度とラクリマ家の門を潜らせない、手助けもしない、子供にも同様の条件を言い渡す、と。娘は何のためらいもなくその契約を諾として、
アウリス侯爵家との婚約破棄をして、テララ子爵に嫁いだのです。
娘の為の結婚の資金は、アウリス家では遠慮されましたけれど、慰謝料としてお支払いもしました」
夫人は一気に話して、ふう、と溜息を吐いた。
マリアローゼは、夫人の手を取ると、見上げて微笑んだ。
「あちらに座りましょう、ラクリマ夫人」
「ええ、お気遣い有難う存じます。フィロソフィ嬢」
一緒に長椅子に並んで座りながら、目の前の花壇で揺れている花を眺める。
婚約、そして婚約破棄、書面で交わされた約束。
「あら?何か気になる事があるのかしら?」
朝食後の紅茶の時間に、マリアローゼのお願い事を聞きながら、ミルリーリウムは微笑んだ。
「ええ、少し。ステラのお母様のイーリス様についてお聞きしたくて」
「わかりました。では、お庭を案内して差し上げたら良いですわ」
マリアローゼは母の言葉にぱあ、と笑顔を向けた。
「有難う存じます、お母様。わたくしも支度をして参ります」
数時間後に訪れた先代侯爵夫人、エルメは丁寧な謝罪と、豪華な贈り物を携えていた。
少しお茶を飲んだ後で、予定通り母がマリアローゼと引き合わせた上で、庭に送り出す。
マリアローゼは前庭を案内しつつ、気になっていた話題を振ってみた。
「あの…不躾な事をお伺いしても宜しいでしょうか?」
一瞬、驚いたように目を見開いたものの、夫人は目を細めて微笑んだ。
「何なりと」
「何故、イーリス様はテララ子爵に嫁されたのでしょうか?こう申し上げてはなんですけれど、あまり良い噂はないと聞き及んでおります」
言葉を選びながら、マリアローゼは済まなそうに問いかけた。
「当時も、左様でございました。わたくしも、夫も、息子も、周囲全てが反対したのですが、それを振り切って嫁いだのです。しかも、当時素晴らしい婚約者もいたというのに…」
「まあ…婚約者が……」
それはかなりの大問題だし、まして女性の方から逃げるというのも珍しい。
夫人は静かに頷いて、目を伏せた。
「ええ、現在のアウリス侯爵家の御当主でしたの。幼い頃から仲が良くて、それ故兄妹としか見れなかったのかもしれませんけれど…でも、わたくしは違うと分かっておりました。
あの子には悪癖があったのです」
「……と申しますと?」
「身内の恥を晒すようですが……」
言い淀んだ後、夫人は意を決したように語りだした。
「あの子は恵まれていたからか、反抗心が強いというか、妙に気難しいところがありましてね。
その所為で周囲との衝突が絶えませんでした。それでも可愛い娘でしたから、勿論結婚も反対したのですけれど、あの子にとってはその障害も結婚に踏み切った理由だったのかもしれません」
「なるほど……」
それは難しい問題だったのだろう、とマリアローゼにも推測できた。
止める手立てがないのも頷けるし、どうして?と言われても年頃の娘を監禁する訳にもいかなかった筈である。
もしそれがわたくしだったら、余裕で監禁されそうですけれど……
ともかく、侯爵夫妻は止めようとしたが、強硬手段は取らなかったというだけで瑕疵は無い。
寧ろ、強硬手段を取ったのは娘の方だったのだ。
「夫は、許しませんでした。出て行く前に一筆書かせたのです。二度とラクリマ家の門を潜らせない、手助けもしない、子供にも同様の条件を言い渡す、と。娘は何のためらいもなくその契約を諾として、
アウリス侯爵家との婚約破棄をして、テララ子爵に嫁いだのです。
娘の為の結婚の資金は、アウリス家では遠慮されましたけれど、慰謝料としてお支払いもしました」
夫人は一気に話して、ふう、と溜息を吐いた。
マリアローゼは、夫人の手を取ると、見上げて微笑んだ。
「あちらに座りましょう、ラクリマ夫人」
「ええ、お気遣い有難う存じます。フィロソフィ嬢」
一緒に長椅子に並んで座りながら、目の前の花壇で揺れている花を眺める。
婚約、そして婚約破棄、書面で交わされた約束。
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