悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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階下への冒険

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カンナとユリアが不在の為、護衛にはグランスとウルススが付いて来る事になり、オリーヴェの先導で1階に下りた。
玄関ホールを横切る廊下の端、降りてきた左側の階段下の部分に目立たない扉が付いている。
オリーヴェがその扉を開けると、質素な使用人用の階段が現れた。
質素ではあるが、踊り場も階段も人が難なくすれ違える幅広さが有り、壁で折り返す形で階下に通じている。

「まあ…冒険みたいでわくわく致しますわね」
「はい、お嬢様」

ルーナが嬉しそうに、相槌をうつ。
マリアローゼは随分前に思える、王城での隠し通路の事を思い出していた。

(あれが初めての冒険だった気が致しますわ)

黴臭いシンとした石の廊下や階段、頼りない指輪の光で照らされる石壁。
気遣いながらも優しく手を引いてくれたロランドを思い出して、マリアローゼはくすりと微笑んだ。

階段を降り切ると、正面が使用人の休憩室となっていて、マリアローゼの姿を認めると、一人がガタリと立ち上がり一斉にそれに倣った。

「お邪魔をして済みません」
「あらあら、宜しいのですよ、お嬢様」

優しく微笑むフィデーリス夫人の言葉に、コルニクスが僅かに目を見開いた。
現在も伯爵位にあれど、身分を厳しく問うなら気安いと映るのだろうか、とマリアローゼは思ったが、そのままにっこりと微笑んで、スカートを摘んでお辞儀をする。

「皆様、お座りになって?」
「いえ、我々だけ座る訳には参りません」

コルニクスが、冷徹な顔で姿勢を正して言うと、マリアローゼはふうむ、と考えて、空いている椅子にぽふん、と座った。

「お嬢様…」

と慌てた様子のコルニクスを見て、フィデーリス夫人がくすくすと笑った。

「ね?これで宜しいでしょう?コルニクス」
「本来なら、お嬢様がお座りになられる場所では御座いませんが、仕方ありません」

コルニクスが席に着くと、それに倣うように休憩室に居た全員が席に着く。

「わたくし、王都から皆様にお土産を持ってまいりましたの。美味しいクッキーなので、皆様でお召し上がり下さいませ。
それと、オリーヴェは皆様もう御存知かと思われますが、ステラもこの度新しく働き始めますので、どうか、皆様、宜しくお願い致しますわね」

可愛らしく微笑むマリアローゼに、微笑ましげな笑顔を向けて、使用人達は口々に返事を返した。

「お嬢様の格別なお引き立てがあっても、教育では容赦致しませんよ」
「まあ、コルニクス。それがわたくしの望みでしてよ?一流になるには厳しさもなくては、なりませんもの」

まさか、そんな風に言い返されると思わなかったコルニクスが、思わず笑み崩れた。

「お嬢様は、5歳とは思えぬ利発さで御座いますな。不肖コルニクス、感服致しました」

(5歳だったーーーーー!!!)

思わぬ指摘にマリアローゼは顔色を失った。
誰にも指摘されずにここまできたので、すっかりさっぱり丸っきり年齢のことなど忘れていたのだ。

「あ、あら、嫌ですわ、もうすぐ6歳になりますもの!お姉様ですわ!」

幼女らしく言いながら少し泣きたくなってしまったが、仕方ない。
今更ちょっと子供っぽくしてみたところで、痛々しい事この上ないのだが、やらないよりはマシだろうと思ったのである。
きっと神様も許して下さるだろう。
ピンクのフリフリを着せられた時くらいの違和感に、心の中で血涙を流しながらマリアローゼはにっこり微笑んだ。
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