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平和な世界を作る為の

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翌朝は、早くに出発の準備を整えて、皆で馬車に乗り込んだ。
と言っても、エッカートもアデリナもクリストハルトも馬で並走し、馬車の中には4人の子供達だけである。
いつもは騒がしい双子も少し緊張した面持ちで、外の景色を眺めていた。

「貴方達には感謝しておりますわ。ずっとわたくしの友人でいてね」

静かに微笑みながら、リリーアリアは優しく言った。
ミルティアとメルティアはハッとして、リリーアリアを見詰める。

「勿論です、リーア様、メアとミアは、ずっとリーア様と友達です」
「絶対です、リーア様、ミアとメアは友達よりもリーア様が大好きです」

マルグレーテは、微笑みながら頷く。

「また、貴方達が作ってくれたミルクレープが食べたいわ」
「幾らでもお作りします。ね?ミア」
「他にもいっぱい美味しい物を作ります!ね?メア」

二人は確かめる様に顔を見合わせてうふふ、と笑った。

「楽しみでございますね、アリア様」
「ええ、本当に。そうだわ、双子ちゃん、二人のいた世界のお話を、もっと聞かせて頂けないこと?」

リリーアリアは、両手を叩いて、首を傾げて問いかけると、双子は頬を上気させて頷いた。

楽しそうに話し始めた二人の話は、この前とまた違った世界を語ってくれる。
緊張が解けたのか、明るく話す双子に、リリーアリアの心は少しだけ慰められた。


「よく参ったな。予定では明日の正午の開戦だが」

地図を手に、一際豪奢な天幕に設えられた机と椅子があり、王者の風格で座っているレオンハルトが顔を上げた。

「殿下にその話は通じませんよ、陛下」

朝から、というよりは昨日の晩餐からぶすくれた態度のクリストハルトがぶっきらぼうに言う。

「まあ、覚悟はしていたが…賢いのも考え物よな」
「失礼ですわ、陛下。それより準備して頂けてまして?」

つん、と顎を反らして、尊大な態度を取ってみせる幼い娘に、レオンハルトは破顔した。

「勿論だ。戦が始まるまでまだ間があるだろう、兄達と母に顔を見せて参れ」
「はい、陛下」

お辞儀をして、リリーアリアは家族のいる天幕へマルグレーテと共に向かった。
天幕は平原を見下ろす、少し高くなっている丘に立てられ、国中から集められた兵士が過ごしている。
これだけ多くの人間がいるのに、敵は更に多くいるのだ。

「ルーティ、わたくし、二度と戦争が起きないように致しますわ」
「その様な事が出来ますでしょうか」

しょんぼりと眉を下げて言うマルグレーテに、リリーアリアはこくん、と頷いた。

「簡単ですわ。戦う力を奪えば良いのです。まずは美味しい食事ですわね」
「え?食事、でございますか?」

きょとんとしたマルグレーテが可笑しくて、リリーアリアはくふふ、と笑う。

「続きはこの戦が終ってからお話しますわね」
「はい。お聞かせくださいませ、アリア様」
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