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他愛のない、話
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次々に眠くなる子供の手を引いて、双子が寝床に連れて行く。
さっきまで騒ぎまわっていた少年達も、頬を染めて列に並んだ。
中には暴れすぎたのか、痣のある子供も居て、リリーアリアは優しくその痣に指で触れた。
「この怪我はどうしたのですか?」
「これは、剣の稽古をしてて、どうってことない…です」
慌てて、敬語に直した少年に、リリーアリアはにっこりと微笑みかけた。
「まあ、立派なのですね。では癒して差し上げます」
ふわりと癒しの魔法をかけられて、最後には頭を撫でられ、少年は眠気と目にした美しさにうっとりとしながら、
何とか自力で寝床に戻って行った。
「あの、お姫様の為に、俺達も戦います!」
少し年上の子供の1人が、眉をキリッと吊り上げて、残りの少年達もふんすふんすと頷いている。
「まあ、勇敢ですのね、ありがとう」
同じ様に怪我があれば癒し、頭を撫でて眠りに着かせていく。
最後に来たのは、長兄と同じくらいの年齢の少年だった。
「俺も、役に立たないかもしれないけど、戦います」
足を引きずっていて、ゆっくりと近づいてくるが、領民や子供達には親切にされているようだ。
着る者も見た目も、そんなに汚れてはいない。
「そんな事を言ってはだめよ。人は必ず誰かの為になります。さあ、足を出して」
「これは、医者が治らないって…」
困った様に言う少年に、リリーアリアはにっこりと微笑んだ。
「では、聖女の魔法ではどうかしら?」
患部に手を翳し、癒していく。
思い描くのは、破壊された骨を元通りに癒し、傷ついたところを直すこと。
淡い光に照らされた足を見て、少年は目を見開いた。
そして、うろうろと歩き、更に驚愕した。
「歩ける…歩けます…!」
「良かったですわ。さあ、貴方もお眠りなさい」
白い手を伸ばされて、微笑んで言われて、少年は跪いて頭を寄せた。
撫でられると心地よくなり、リリーアリアからは良い香りがしてくる。
頭がぼうっとしたところで、身を離して、ぺこりと頭を下げた。
「姫様、ありがとうございました」
「ゆっくり休んでね」
地面の感触を楽しむように踏みしめて、少年は寝床へと向かった。
ぼうっとなって、リリーアリアを見ていたのは何も少年達だけではなく、子供達の世話をする人々も放心したように
ただただ無言で見詰めている。
「ルーティー、ベールをお願いします」
「畏まりました」
ベールを付け直したことで、ハッと我に返った人々は、不敬だと思ったのか慌てて目を逸らした。
「さあ、皆様もお眠りください」
人々の間を渡り歩いて眠らせると、また魔力が一杯になってしまった。
マルグレーテの腕に寄りかかりながら、出入り口近くに備えてある椅子に、リリーアリアは座った。
「少しだけ待っていてね」
三人に向けて言うと、ポケットの中に入れてきていた小粒の紫の石を幾つも掌に乗せる。
そして、リリーアリアはそこに魔力を注ぎ始めた。
一つの宝石がピキッと割れた所で供給を止め、三人に微笑む。
「複数にも同時に魔力を籠められるけれど、やはり容量によって違うものだから失敗は出ますわね」
「凄いです、リーア様、メアもミアもまだそんな事出来ません」
「凄すぎます、リーア様、ミアもメアも1つずつが精一杯です」
二人の褒め言葉に苦笑して、リリーアリアは立ち上がった。
「さあ、双子ちゃんも、ルーティも明日の為に眠りましょう」
「「「はい」」」
3人が声を揃えたので、リリーアリアは可笑しくなってくふふ、と笑った。
一緒にいると段々似てくるのかもしれない。
「ねえ、この戦争が終ったら、貴方達を守る為のアクセサリーを作りたいですわ。ルーティとわたくしで作って、
双子ちゃんが歌うの」
「わあ、嬉しいですリーア様、メアもミアもたくさん歌います!」
「ミアもメアも、リーア様への贈り物を考えなくちゃ!」
「どんな効果にしようか、迷いますが、考えるのは楽しそうです」
他愛ない、未来の話。
来るかどうかは分からないけれど、切実に来て欲しいと思う、暖かい未来。
残酷でもいい。
家族と、友人と、この国と、愛しい人々を守れるのなら、稀代の悪女にでもなってみせますわ。
リリーアリアは、三人の楽しそうな声を聞きながら、優しく微笑んだ。
さっきまで騒ぎまわっていた少年達も、頬を染めて列に並んだ。
中には暴れすぎたのか、痣のある子供も居て、リリーアリアは優しくその痣に指で触れた。
「この怪我はどうしたのですか?」
「これは、剣の稽古をしてて、どうってことない…です」
慌てて、敬語に直した少年に、リリーアリアはにっこりと微笑みかけた。
「まあ、立派なのですね。では癒して差し上げます」
ふわりと癒しの魔法をかけられて、最後には頭を撫でられ、少年は眠気と目にした美しさにうっとりとしながら、
何とか自力で寝床に戻って行った。
「あの、お姫様の為に、俺達も戦います!」
少し年上の子供の1人が、眉をキリッと吊り上げて、残りの少年達もふんすふんすと頷いている。
「まあ、勇敢ですのね、ありがとう」
同じ様に怪我があれば癒し、頭を撫でて眠りに着かせていく。
最後に来たのは、長兄と同じくらいの年齢の少年だった。
「俺も、役に立たないかもしれないけど、戦います」
足を引きずっていて、ゆっくりと近づいてくるが、領民や子供達には親切にされているようだ。
着る者も見た目も、そんなに汚れてはいない。
「そんな事を言ってはだめよ。人は必ず誰かの為になります。さあ、足を出して」
「これは、医者が治らないって…」
困った様に言う少年に、リリーアリアはにっこりと微笑んだ。
「では、聖女の魔法ではどうかしら?」
患部に手を翳し、癒していく。
思い描くのは、破壊された骨を元通りに癒し、傷ついたところを直すこと。
淡い光に照らされた足を見て、少年は目を見開いた。
そして、うろうろと歩き、更に驚愕した。
「歩ける…歩けます…!」
「良かったですわ。さあ、貴方もお眠りなさい」
白い手を伸ばされて、微笑んで言われて、少年は跪いて頭を寄せた。
撫でられると心地よくなり、リリーアリアからは良い香りがしてくる。
頭がぼうっとしたところで、身を離して、ぺこりと頭を下げた。
「姫様、ありがとうございました」
「ゆっくり休んでね」
地面の感触を楽しむように踏みしめて、少年は寝床へと向かった。
ぼうっとなって、リリーアリアを見ていたのは何も少年達だけではなく、子供達の世話をする人々も放心したように
ただただ無言で見詰めている。
「ルーティー、ベールをお願いします」
「畏まりました」
ベールを付け直したことで、ハッと我に返った人々は、不敬だと思ったのか慌てて目を逸らした。
「さあ、皆様もお眠りください」
人々の間を渡り歩いて眠らせると、また魔力が一杯になってしまった。
マルグレーテの腕に寄りかかりながら、出入り口近くに備えてある椅子に、リリーアリアは座った。
「少しだけ待っていてね」
三人に向けて言うと、ポケットの中に入れてきていた小粒の紫の石を幾つも掌に乗せる。
そして、リリーアリアはそこに魔力を注ぎ始めた。
一つの宝石がピキッと割れた所で供給を止め、三人に微笑む。
「複数にも同時に魔力を籠められるけれど、やはり容量によって違うものだから失敗は出ますわね」
「凄いです、リーア様、メアもミアもまだそんな事出来ません」
「凄すぎます、リーア様、ミアもメアも1つずつが精一杯です」
二人の褒め言葉に苦笑して、リリーアリアは立ち上がった。
「さあ、双子ちゃんも、ルーティも明日の為に眠りましょう」
「「「はい」」」
3人が声を揃えたので、リリーアリアは可笑しくなってくふふ、と笑った。
一緒にいると段々似てくるのかもしれない。
「ねえ、この戦争が終ったら、貴方達を守る為のアクセサリーを作りたいですわ。ルーティとわたくしで作って、
双子ちゃんが歌うの」
「わあ、嬉しいですリーア様、メアもミアもたくさん歌います!」
「ミアもメアも、リーア様への贈り物を考えなくちゃ!」
「どんな効果にしようか、迷いますが、考えるのは楽しそうです」
他愛ない、未来の話。
来るかどうかは分からないけれど、切実に来て欲しいと思う、暖かい未来。
残酷でもいい。
家族と、友人と、この国と、愛しい人々を守れるのなら、稀代の悪女にでもなってみせますわ。
リリーアリアは、三人の楽しそうな声を聞きながら、優しく微笑んだ。
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