cherry blossom~約束の1本桜~

イスラーフィール

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第一章

あの日の思い出をもう一度

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   春の晴れた日の早朝。市道沿いを無数の車が行き交い、朝のラッシュがピークを迎えている。
    俺は、マンションの一室で気持ち良く睡眠をとっている。時計の針は既に6時を回っている。そして突然、大音量の目覚ましアラームが襲撃し、俺は穏やかな睡眠から解き放たれてしまう。
 「う…うぅー。」俺はそんな情けない声を出しながら、ベッドから床へ滑落した。バタン!!
 「痛た……。」
 「一輝~、起きてるの~?」階下から姉ちゃんの声がした。
 (なんだ、姉ちゃん起きてたのか。)         
俺はそんな事を思いながら、床にぶつけた衝撃で痛めた腰をさすりながら、姉ちゃんのいる一階へと階段を降りていった。
 「おはよ~。」俺は言った。
 「おはよう!てか今日入学式でしょ。ほら!しっかり起きて!」「は~い。」そう言って俺は、洗面所で顔を洗い、姉から供給された朝飯を平げ、自室にかかってたおニューの制服を着た。俺は鏡を見る。我ながらなかなか似合ってるじゃないか。などと言うことを考えつつ俺は、玄関を出た。とそのとき、
      「お~い!鍵忘れてるよ~!!」
      「うわっ!やべえ!!
       「もう!本当に世話が焼けるんだから。」そう言って姉は少し笑った気がする。
 「行ってきまーす!!」今度こそ本当の出発だ。エレベーターを降りる。      
 俺は、親に買ってもらった新品のママチャリをこぎながら、これから待っている新たな高校生活に心踊らせ、目的地の高校目指して走って行く。
 「おはよー!」 
 「はよー!」 
 俺が、校門の近くに着いたときさわやかな挨拶が聞こえた。たぶん察するに同じ中学出身なのだろう。俺はそんな事を思いながら、自転車を駐輪場に停めて、会場へと向かっていった。既に会場では、親や子供が、これからの展望などを語りながら嬉しそうに話している。
 俺は、クラス発表の紙を見た。
 「え~と、俺は、四組か。」俺は、自分の指定されたクラスの席に移動する。
 開始してから約5分ー。新入生徒の呼名が始まった。一組から順にこれから共に学ぶクラスメイトの名前が読み上げられていく。
 「一組、青山詩音!」最初に読み上げられたのは彼女だった。
 「はい!!」詩音は威勢良く返事をして起立した。続いて他の人の名前も読み上げられていく。「飯田恵斗!梅田七瀬!河西礼二!…」「…四組!我妻裕!」俺がボーッとしている合間にいつの間にか四組になっていた。多少の顔見知りがいて安心した。そして俺の番がまわってきた。「一ノ瀬一輝!」「あっ、はっ…はい!!」俺は、慌てて返事をした。ふと、周りを見渡したら、皆が笑いを堪えているのが良く分かる。
 (あ~、俺ときたらろくに返事もできねえ~)自分で言った事に自分で呆れた。
 俺の失態は抜きにして、無事入学式は終了した。彼等はそれぞれの教室へと移動していった。
 教室に着いたとき、既に数人が席に着いていた。俺は、座席表を見て席に座った。隣の席は、なぜか空いていたけど気にせず座った。
 あれこれしている内に、担任の教師が入ってきた。
 担任が自己紹介をした後、クラスメイトの自己紹介が始まった。
 俺は「一ノ瀬一輝です。テニス部です。よろしくお願いします。」と普通の挨拶をした。
 「関橋利昭です。趣味はコンピューター。よろしく、」
 (利昭か…久しぶりだな。)俺はそんな事を思った。
 「皆川敦祐です!バスケ部です!よろしくお願いします!!」皆川敦啓ー。俺の中学生時代の喧嘩友達だ。忘れたくても、忘れられない苦い思い出がいくつかある。そうこうしているうちに自己紹介も終わり、俺は関橋と皆川に近づいていた。
    「おー!久しぶりじゃねーか!!」俺は二人に話しかけていた。「お!一輝じゃねーか!」
「久しぶりだな。」関橋が口を開いた。
「元気そうで何よりだ。ところで春休みは、何をしていたんだ?」 「ずっと外で走り回ってたよ。バッセン行ったり。」
   「えーっ、そこの三人、席に着いてくれ。ゴホン!それでは委員会と係を決めるぞ。」岡嶋が言った。ちなみに岡嶋と言うのはウチのクラスの担任だ。「まずは委員長、誰かやる人はいないか。」
   「俺がやりまーす!」関橋が手を挙げていた。
「じゃあ、関橋君に任せる。」そんなわけで今季の委員長は彼に決まった。
   ー昼休みになった。俺は、二人と一緒に中庭で話す事にした。
 「一輝、お前、彼女できたか?」  「いや、できてない。」
   「なんだよ~、一度しかない高校生活満喫しなきゃ。」
  「そういうお前はできたのかよ!?」  「俺はいたけど、一週間前に別れたよ。これで五人目だぜ。参ったよ。」 「くっ…、このリア充めっ…!!」 
 「なっ…なにすんだよ!?」俺は、皆川の胸ぐらを掴んでいた。「や…やめなよ!一輝君!!」関橋が止めた。「わ、わかったよ」「それより、もうすぐ五時限目だ。早く教室に戻ろう。」「あ…ああ、わかったよ。」
  五時限目は部活動見学である。ある部は、実演を交えながら紹介してまたある部は、淡々と真面目に紹介していた。
    その中でも俺はバスケ部とテニス部は印象に残った。「おぉーーー!!」その見事なプレイにギャラリーから歓声が上がる。
    「すげぇな~、やっぱり高校のバスケはちげぇわ!!」皆川がほざいている。
    「ん…そうか!?俺はテニス部が良いと思うけどな。」「おぉ、そうか。」
      そんなわけで今日1日は終わった。俺たちは、それぞれ帰路についた。「じゃあな~」「また明日~」
   俺は、駐輪場に置いてあったママチャリのダブルロックの鍵を外して自宅へと向かおうとした。しかし、まだ暗くなるには時間がある。俺は少し、寄り道をする事にした。
向かった場所は、ここから900メートル程離れた高台の公園だ。夕方ともなるとさすがに人影もほとんどない。俺はベンチに座り夕暮れの景色と那須の山々を一望していた。
    気づいたときには辺りは真っ暗になっていた。「う…うぅ……。」俺は、変な声をあげながら目を覚ました。「ん…誰だ!?」俺の顔を誰かが覗き込んでいる。整った顔立ちに腰まで届きそうな長髪ー。その声は尖っているがどこか懐かしい響きを持っていた。「一輝君?こんなところで何してるの?」俺はその声を聞いて驚いた。「もしかして…楓…?」俺は言った。「そうだけど、私は確かに楓。だけど良く思い出したね…。久しぶり。一輝君。」「えっ!?まじで?やべぇー、ちょっと…涙が…」俺は泣いていた。「えっ?ちょっと…一輝君…泣いてるの?」
  「だ、だって…」「大丈夫だよ。もう泣かないで。」「う…うん。」俺は次から次へと溢れ出る涙を堪えきれなかった。「そんな一輝君に嬉しいニュースでーす!!なんと私、相模原楓は一輝君の高校に転校することになりました~!!」 俺は更に驚いた。「えぇーー??」「あっはは。驚いている。」楓は楽しそうだ。「それにしても、星が綺麗だね。」楓は空を眺め呟いた。俺も空を眺めてみた。空には、春の星座が一面に輝いている。「私の星座、乙女座なんだ。」そう言って楓は  指指した。「なんかお洒落だよね。いかにも女の子って感じで。」
「俺は、射手座だからまだまだ先の季節だな。」見ると楓は笑っていた。ずっとこのまま二人の時間が過ぎれば良いとも思った。「あっ、そうだ。やべ!もうこんな時間だ!!」公園の時計を見ると、時間は七時を回っていた。「俺、もう帰らなきゃいけないから、また明日!!」俺は楓に手を振って公園を後にした。「じゃあね!」夜中の黒磯はどこか不気味だった。しかし俺は、薄暗い街灯を頼りに自宅マンションまで向かった。
    フロアーからエレベーターに乗り最上階の十階へ。俺は、用を済ましてから一人、夕食の準備にとりかかった。辺りは、キッチン以外に何も聞こえる音はない。俺は、カレーを一人分作り終え、父や姉の分まで作ろうともう一度、キッチンへと向かった。できたカレーは、どこかいまいちで完璧とは言えなかったが、俺は気にせず平らげた。
    俺は、襲ってくる睡魔に負けて、寝たー。寝ている途中、俺は夢を見た。どういうものかはっきりと覚えていないが、何か不吉な物だったかもしれない。ーそれから一週間が過ぎたある日。
    朝、俺は朝飯も食わずに一目散に高校へと向かった。そこに待っている人に会いに行くためにー。
    教室に着いた。他のクラスメイトもぞろぞろと教室に入ってくる。ー待ちに待ったHRだ。担任の岡嶋は「転校生の紹介だ。」といって教室のドアを開けた。
    「初めまして!川崎市立川崎高校から来ました、相模原楓です!よろしくお願いします!!」
自己紹介を終えた彼女の目は、輝いていた。岡嶋は「じゃあ、一ノ瀬の隣の席に座れ。」と言った。俺は、とても嬉しかった。そして、これから始まるであろう様々なドラマに期待していた。
       ~一話目 END~
    
 
 
  
 
  
 
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