【完結】スマホが誤作動しただけなのに 〜肉体派男子にえっちに迫られていますがリアルで刺激は求めてません!〜

鳥海柚菜

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第5章 リアルで刺激が止まらない!

26. リアルで刺激がいっぱい

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 ぶぶぶ、ブブ、ブーブー。ぶぶぶ、ブーブー。

「んぁ………」

 あまりの振動音に、泥沼に引き摺り込まれ眠り込んだというのに、未だ重たい瞼が動いた。
 昨晩充電が切れたと思って誠に充電してと朦朧としながら言った。やっておいてくれたらしい。
 すごい。忘れてないの、好き。ほんと、マメなの好き。
 いや、そうじゃなくて、電源回復したなら電池が切れた理由となるハメ撮り動画を消さねば……そして怒らねば……流された私も悪いけど。

「……電話?」

 画面に表示されていたのは『広瀬課長』の文字。
 サッと血の気が引いた。

 もう開庁時間直前だ。
 完全なる遅刻。いや、昨日休みを申請していた……、あれは申請になっていたのか。休むかもしれないし休まないかもしれないとか言ったかも。

「は、はいっ!申し訳ありません!!」
『瀬川さん!!よかった!繋がった!!』
「すすすみません!あの!遅刻を…っ、今、今っ、起きたところでして大変に申し訳……」
「んー……、あや、なに大声出してんの?」

 明日は午後からでいいよと言われたらしく夜更かしの原因を作った誠が、寝ぼけた声で私を呼んだ。

「ひっ?」

 背中側から抱き込まれたら、なんか固いものがお尻に当たった。
 あ、あ、あさだち……っ?!
 嘘でしょ!昨日帰ってからずっとしてたんだよ!!?

『はー、本当繋がってよかった。もう生きた心地がしなかったよ。とにかくあんな一方的な形は認められないからね。瀬川さんにはいてもらわないと困るんだ。いろいろと申し訳なかったと反省した。とにかく、戻ってきてくれ。君を失うなんてありえない』
「そ、そんな過分なお言葉を……」

 ことなかれ主義の課長からのまさかの熱烈な退職引き留め。感動に打ち震える私に、後ろからドスの効いた声が降ってくる。

「は?なに?あやとヨリ戻したいってこと?」
「!?!?」
『え……誰かいる……?』
「誰かいるじゃねえし。あやがどんだけえろ可愛いか今更分かったところで渡すわけないだろばーか。今更反省してもおせえんだよ」
「ぎゃあッ!!何変なこと言ってるのっ!」
「えっ、なに?もしかして元じゃなくて今カレとか言うの?また告白されたからってそのまま付き合ったとか?そんなの絶対許さないから……」
「違うよ!課長だよ!上司だよ!!」
「あ……?」

 たぶん寝ぼけていた誠が、ぽかんとした顔で私を見下ろした。
 重くて仕方がない誠を思い切り押しのけて、慌てて起き上がると、米つきバッタみたいに電話の向こうに謝り倒した。

「すみませんすみませんすみませんっ!!」
『あー……ええと、ごほん。午前は休みでいいので、午後からは来てくれないか。みんな心配しているんだ。あと親御さんにも連絡してあげなさい。行方不明とかでわざわざこちらに来られていた』
「ひっ?そ、それはとんだご迷惑を!」

 なんてことだ、恥ずかしいがすぎる。だから嫌なんだよ、うちの親。

『とにかく、無事か顔を見せてくれ』
「はいっ!必ず!必ず行きますので!大変申し訳ありませんでした!!』

 ようやく通話を切った私が振り返ると、誠が全裸で大きな体をすぼめていた。
 怒られ待ちの犬みたい。ちょっと可愛い。

「はぁ…もう、なんて勘違いしてるの」
「ごめんなさい……」

 それでもきちんとメッとする。心臓が止まるかと思ったんだもん。
 これから課長に会うのめちゃくちゃ恥ずかしい。大人の対応をしてくれるのは分かっているけれど。

「だって大人の男にあやを取られたくなかったんだ。あやと会えない間ずっと、あやが俺のことさっさと忘れたらどうしよう、むかつく、ってそればっかぐるぐるしてて、悔しくて……」

 ギュン!
 だ、だから可愛い……うっ、おっきな体して伺うようにこっちを見るの反則!

「な、なら誠から連絡してくれたって……」

 とはいえ、自分が悪いのは棚に上げて、ちょっと恨みがましく言う。だっていっぱい泣いたんだよ……。

「……もうちょっとで結果が出るから、それからもう一回あやに、付き合ってって言おうと思ってたんだよ」
「結果?」

 何か誠は言いずらそうにもごもごとしていた。
 別に言いたくないことを聞き出すつもりもない。

 それよりも問題は、親である。

「それはいいや。ねえ誠、やっぱり午前中に役所に行って婚姻届出そう。友達に今から電話して証人になってもらうから。お母さんたちがぎゃんぎゃん言う前に」
「……あのさ、あや。やっぱりちゃんと親と話した方がいいよ。俺も親のことでごたごたしてるからさあ、勢いだけじゃうまくいかないこともあるから。だまし討ちじゃなくて、俺もちゃんと挨拶するよ。昨日もちゃんとするって言ったでしょ?」
「でも、私は誠のことを悪く言われたくないし、あんな人たちに誠を……」
「あんな人って言っちゃダメ。あやのことすっごく心配してくれてるんだよ」

 子供みたいに口を尖らせた私に、誠が指先をふにゅんと押し付けてくる。

「俺がちゃんと認められるように頑張る。だから、あやも一緒に頑張ってくれる?大変かもしれないけどさ」

 こてん、と首を傾げるのあざとくない?自分がどう見えるかわかっててやってるよね?
 もうそんなことされたら頷くの一択しかなくて。

「誠、かっこよすぎる……心臓に悪い」
「えー、ほんと?嬉しいな!」

 ぎゅっと抱きしめて懐いてくる大型犬。昨晩の傍若無人っぷりは嘘のよう。
 とはいえ、明確な意図をもって胸をさわさわしてきた誠の不埒な手をつねって、「午後から仕事だからもう駄目!」と叱りつけ、ベッドから降りた。
 が、さきほどは必死で気にしていなかったけれど、動くとぬるんと足の間に粗相をしたような違和感がある。

「あ……っ」
「あー…出てきちゃった?めっちゃ出したからねえ」

 震えた私の肩を抱いて、誠がかぷりと耳を噛んできた。
 そして、ひっくい声で呟く。

「まあさ、でも、子供ができちゃってたら……、仕方ないよねえ」

 えっ、既成事実狙い……?
 倫理観強いんだか緩いんだか。
 気持ち悪いだろうから洗ってあげるね、とにっこにこの誠に抱っこされて、お風呂場に連れていかれた私が、無事でいられたかは……皆様のご想像のとおりである。


 **

 それから、怒涛、まさに怒涛につぐ怒涛であった。

 まず、親。当然泣かれてめちゃくちゃにキレられました。はい。でも自殺でもしたのかと思ったと心配していたこともわかったので、連絡を全て絶っていた点は反省します。
 いい子の私が初めてキレたからどうしたいいのかわからなくてパニックになってしまったらしい。
 私の地雷と思ったのか、誠のことも一旦保留にされた。
 わあ、わがままが通るってこういう感覚なんだ。新鮮。
 時間が経って、価値観が違うとわかれば……なんてこそこそ言ってるの聞こえてるからね。
 でもとにかく音信不通だけはやめてほしいらしい。

 次に職場。
 関本さんは期間満了待たずに自ら辞めることになったらしい。この繁忙期に?!?!
 私が泣いて、次の日には辞表を持ってきてうちの親は行方不明!なんて騒いだことから、うちの課だけではなくて、ありとあらゆる人からそれはもう針のむしろだったようだ。
 そもそも普段の行いがあまりよろしくないからね。女子トイレとかでもひどいうわさ話していたし、化粧直ししてさぼってたし、ついでに庁内で別のフロアにいる同期の課の課長と不倫していたようだ。マジですか……。
 それ暴露したのが、関本さんの私への誹謗に激怒した私の同期だったっていう……いやあ、友達に恵まれているなあ。とばっちりで暴露された某課長可哀想だなあ……いや、不倫はよくないけどさ。
 レディコミこんな身近なところにあったのかあ……。
 同期は、あいつ若い子ひいきして30オーバーには厭味ったらしいから清々した、と喜んでいる。私はあなたのその度胸がすごいと思うよ。強いな。上司にそんなん言えないなあ……。
 もう恥ずかしくて死ぬかも、と思っていたけれど、課長は平然とした顔を作ってくれていた。
 八島建設の奥さんから丁寧に申請書類の不備を説明しに来てくれたと連絡があった、と言っていた。だから、八島建設の住所を見たのは仕事だよな?と有無を言わさず強く言われて、迷った末に頷いた。何も問題はなかったんだから、と辞表はその場で破かれた。
 うちの課長、本当はかっこよかったんだ!
 某課長とは違った。ごめんなさい、ずっとことなかれヤナギバ課長って心の中で呼んでいて。柳みたいな、と、顔だけみるとギバちゃんの物まねそっくりさん(太目)に似てるのを掛けててこめんなさい。
 あと一時的に他部署のパートさんの時間を調整してくれて、午前と午後それぞれ1人ずつ、こちらの窓口の仕事をやってくれることになった。助かる!めちゃくちゃ助かる!課長、一生ついていきます!!って言いたい気分。
 瀬川さんに休まれたり辞められたらと思うともっとぞっとした、という課長に、とりあえずエネドリをダースで差し出しておいた。

 まあだから、忙しいわけで妊娠はできないので、ゴムは復活してもらった。
 誠はちょっとふてくされて、むーっとしていたけれど、それでも仕事に一生懸命で義理堅いあやが好きって、最後にはいっぱいぎゅっとしてくれた。
 どうせ結婚したら出世もなかったことになるんだから適当にしとけよとか俺をないがしろにしてまでやる話?とか言わない誠、本当に好き。

 「あや、男運がもともと悪いよ、なんでそんなモラ男と付き合ったの」と誠は言う。
 誠がすんごく私に甘いだけだと思うけどなあ。
 まあそれなり見た目、それなりの職業、最低限の社交性、があれば、いいよいいよって言ってきたけど。
 私も相手を好きなわけじゃなかったし、こんな面白味のない普通な私を相手に選んでくれるなら光栄って思っていたし。
 最終的に生理的に無理とか悪いことしたな……でも「恋」ってものがどんな感じか、頭でなんとなくしかわかってなく生きてきたんだもん。この人ならいいかなあ……周りから見てもおかしくないかなあ、って思えば、それは好意であり、いつか、恋になるかもって思っていた。
 今は、全然、違ったとわかる。

 誠じゃなきゃダメだし、イヤだ。
   周りからどうやって見られたって。

  そこに至るのは、真面目一筋の私では、きっと一生無理だった。誠と出会わなければ、無理だったと心から思う。
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