吸血鬼様のご真祖様!~異種族だらけの日本で最強の吸血鬼は自堕落な生活を送る~

球磨川禊

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一章

プロローグ:最強の吸血鬼

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 突然だが吸血鬼という怪物を知っているだろうか。

 悠久を生き、人の血を吸い、夜の王として君臨する存在。
 この世の理を全て無視し、月夜の下を自由に生きる存在である。


 その四肢には万力が宿り、壁をも通り抜ける。
 その体は万物に化け、空をも駆ける。
 その眼はあまねく生き物へ作用し、思いのままに操る。

 怪力無双、変幻自在、神出鬼没。

「―――つまり最強の生物だ!! 凄いだろう!!」
「君はなんで地上最強の生物って話で空想上の生き物を出すんだい?」

 目の前で宿題を解いていた友達、夜久やく ルナがあきれた目をこちらに向けてきた。
 パッチリと開いた目に、透き通るような白い肌、そして肩上まで短く切りそろえられた髪が少しボーイッシュな雰囲気をかもしだしてる。
 髪色は雪のように真っ白。
 その声と立ち振る舞いからは知性を強く感じさせる。

 分かりやすく言うとハーフの超美女である。
 アルビノで色素がなんとかかんとからしい、詳しいことはよくわからんが。

「ユウ君よ、今回は現実に存在する生き物限定にしようじゃないか。僕の大学に提出する論文に使う資料をお願いしたいんだ」
「大学?」
「そう、論文を出したら機材を譲ってくれるらしくてね!! 僕は新薬が作れるし、大学は僕の知能が借りれる。ウィンウィンってやつだね! ……ただでさえお金がないんだからこういうところで節約しないと……」
 
 空っぽの財布を開き悲しい顔をするルナ。
 大学から直接依頼が来るとは、相当な天才なのだろう。
 まぁいつも金欠なせいで、威厳もくそもないが。
 ため息をつき、ルナが話の続きを始める。

「……やっぱり普通に考えるとアフリカゾウだけど、穴馬でキリンとかもありと思わないかい?」
「俺はオーガとかありだと思う」
「しまいにゃぶっ飛ばすよ! ユウ君!!」

 ルナがバンと、机を叩きながら立ち上がった。

 それと同時に教室の後ろのドアが開く音がした。
 後ろを見てみると、クラスメイトであるルナの友達が扉に手をかけて立っている。
 どうやら一緒に帰る約束をしていたようだ。

「あっ、分かった! ユウ君はどうする?」
「俺は寄るところがあるから、今日は一人で帰るよ」
「そっか……それじゃまた明日ね!」

 いつもは一緒に帰っているのだが、残念ながら今日は寄る場所がある。

「あと明日こそ宿題は写させないからね」
「あ、はい、すいません」

 釘を刺しながら、ルナがスッと氷のような表情になった。
 こわすぎ。

 ルナが帰り、誰もいなくなった教室でぼーっと窓の外を見る。
 そのままいつもの薬を取り出し、口にする。


 その後、スマホを取り出し暗い画面に映る自分の顔をじっと見つめる。
 死んだ魚の目のような、黒髪黒目のパッとしない男が映っていた。

 俺の名前は 望月 悠もちづき ゆう
 死に対しての恐怖が人より強いという点を除けば一般的なぼっちの高校一年生だ。
 精神科の医者はタナトフォビアだなんだと言っていたがよくわからない。

 ざっくりいうと、俺は自分の寿命を考えるとパニックすら起こしてしまう。
 死ぬことの恐怖を抑えるための薬を常備薬として朝晩2回ほど飲む必要があるのだ。

「吸血鬼か……」

 不死の王にして悠久を生きる者。
 もしになれば人生楽しくなるんだろう。

 そんな叶うわけのないことを考えながら夜空を見上げる。
 すると夜空に真っ赤な月が浮かんでいた。

「ブラッドムーンだったか」

 この間ルナがもうすぐその時期だと言っていた。
 勉強も出来る上、性格も良く、友達も多い。
 よく考えてみるとなぜあいつが俺とつるんでいるかよくわからない。
 休日も遊びに誘ってきたり、毎日俺を起こしに来たりと優しい奴だ。

 俺と比べると人間的に天と地の差がある。
 薬の影響で弱気なことばかり考えてしまう。
 俺はこの副作用のせいで、ネガティブ思考なのだ。
 まあそれはそれで楽しかったりするときもあるのだが……。

 自信が欲しい、立派になりたい。
 ルックスがいいやつらが羨ましい、性格がいいやつらが羨ましい、頭がいいやつらが羨ましい。

 それになにより…………誰よりも人生を楽しく生きたい。

 そんなことを思いながらブラッドムーンを見ると。
 心臓の音が大きく響き、全身が燃え上がるように熱くなる。

「!? うぎゃあああああ! っがああああ!」

 痛い痛い痛い! 熱い!

 全身から軋むような音が聞こえ、体中の血が熱くなっている。
 なんだこれ!? オーバードーズか!?
 やばい! 死にたくない! 息が出来ない!!

 パニック発作と全身に響く痛みの中意識が薄れる。

 ――ああ、こんなことならもっと遊べばよかった。
 色んな場所へ行き、色んな遊びを経験すればよかった。
 もっと自分勝手に生きるんだった。

 ただ後悔の感情が胸を占め、目の前が真っ暗になった。




 ――――あれ?

 目を開くと縦になった地面といつもの常備薬が転がっていた。

 倒れているのか、俺は。
 死んで……ない?
 手を地面につけ力を込めると、浮遊感とともに4メートルほど体が跳ね上がった。

「へっ!?」

 体が宙に浮かんだ状態で考えると。
 体調がとてもいい、それどころか万能感すら湧いてくる。
 指の先まで自分の思い通りに動くという確信。

 頭の中はスッキリとして、今までにないくらいよく回る。
 常につきまとっていた死への恐怖も今は全くなくなっている。
 空気がうまい、呼吸をするだけで晴れ晴れとした気分だ。

「おっと」

 しっかりと着地して、筆箱を手に持つ。
 アニメショップに3時間並んで手に入れたお気に入りの筆箱だ。

 さっきからとあるが頭の中を占めていた。
 ぐっと筆箱に力を込める。
 ぱぁん!! という派手な破裂音とともに筆箱が粉々に砕け散った。

「…………やるんじゃなかった」

 まぁ気を取り直していこう。
 おそらく俺は……。
 スマホを取り出して、自分の顔を映し出すと。
 

 異常な身体能力、鏡に映らない、そして一番大きい変化だが、死への恐怖が消えた

 足元からピシッと音が響き、知らないうちに力んでいたことに気づく。
 自分の足元を見ると教室の床が俺の足跡の形にひび割れていた。

「うわっ!」

 驚いた反動で思わず飛び上がった瞬間、体がすごい力で後ろに引っ張られる。
 瞬きをして目を開くと、校庭が真下に広がっている。
 空中に投げ出されたのか!?

「ああああああ! 死ぬ! 死ぬってぇぇぇぇぇ!!!!」

 圧倒的なスピードで地面が迫ってくる。
 目をつぶり、全身をいもむしのように捩じらせる。

「うぎゃ!」

 水の入った袋が弾けるような音と共に、全身がバキバキに折れ曲がる感覚。
 だが痛みはあまりない。
 ……え?

 はあ? ありえないだろ。
 そのまま四つん這いになっていると、全身が元通りになっていく。
 骨が元の形に戻り、血や内臓が体の中へとしまわれる。
 全身の表皮も再生を始め、元通りの傷一つない体が作られた。
 これは、もはや疑う余地すらないだろう、待ち望んでいた。

「ははははははっは!!」

 誰もいない校庭のど真ん中で、高笑いが止まらない。
 死への恐怖という心の曇りが晴れた、今までの人生の中で最も気分がいい。
 とうとう夢が叶った!

「俺は自由だ!! やったぞ!!」

 常人ならショックを受けるべきなんだろうが、今の俺の中には喜びしかない。
 どうやら俺は立派な吸血鬼になってしまったようだ。
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