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第十二話 失うものなど何もないから
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「ただいまー」
リビングにいる咲子に声をかけて、美咲は、2階の自室に足を運んだ。
12月15日。午後10時。
今日は、以前と同じように、五味の家に集まってきた。メンバーも以前と同じ。五味、六田、七瀬、八戸。
今回の集まりを提案したのも、美咲だった。
「あんたの友達とも仲良くしたいんだ。私は、あんたの彼女なんだから」
鼻の下を伸ばした五味は、簡単に美咲の言うことに従った。
美咲が4人を集めた理由は、当然、彼等と仲良くするためではない。
彼等と遊び、帰宅した。2階に上がり、自室のドアを開けた。明りを点けていないので、部屋の中は暗い。カーテンを閉めていない窓から、街灯と月明かりが差し込んでいる。
かすかな光に、部屋の中が照らされている。洋平の死を知ってから、部屋の掃除など一度もしていなかった。彼がいた頃は、ほぼ毎日掃除していたのに。いつでも彼を呼べるように。
部屋の明りを点けないまま、美咲は、窓際のベッドに座った。
この部屋の窓からは、道路を一本挟んで真向かいにある市営住宅が見える。洋平が住んでいた市営住宅。5階が彼の家だった。
洋平の家を見上げた。カーテンの向こうにある部屋には、明りが点いていた。洋子は家にいるようだ。今日は夜勤ではないらしい。
洋子は、洋平が行方不明になってから、みるみる痩せていった。もともと小柄で、太ってなどいなかったのに。今の姿は、見ているだけで痛々しい。
美咲は、何ひとつ疑うことなく、洋平と一生一緒にいるものだと思っていた。高校を卒業し、大学に進学し、就職し、結婚する。当然のように未来を描いていた。
そんな美咲にとって、洋子は、いわば義理の母だ。昔から知っている人だし、家族連れで遊びに行ったこともある。将来はこの人の孫を産むのだと、信じて疑わなかった。
でも、信じた未来は永久に失われた。もう1人の母親と呼べる人も、現在、苦しんでいる。美咲と同じように。あるいは、美咲以上に。
誰のせいで苦しんでいるのか。
先程まで一緒にいた、クズ共のせいだ。
美咲の心の中で、沸々と怒りが沸き上がってきた。沸騰した熱湯のように泡が浮かび、煮えたぎっている。
あいつ等は、自分だけではなく、自分の母親も、自分の義母も傷付けた。自分の欲求を満たすためだけに。
死ぬべきだ。あいつ等は、生きていていい人間じゃない。だから殺す。
胸中は、収まり切らないほどの憎悪で満ちている。それでも、美咲は冷静だった。
本当は、あいつ等の手足を拘束して、あらん限りの拷問の末に殺してやりたい。だが、現実的に考えて、そんなことは不可能だ。
それだけではなく、人を殺せば殺人犯として警察に捕まることも、美咲は理解していた。
警察の中には、怠惰な者も下衆な者もいるだろう。しかし、組織としては決して無能ではない。4人も立て続けに殺せば、必ずどこかで美咲の尻尾を掴み、逮捕まで持っていくはずだ。ドラマや小説のような名探偵などいないのと同様に、誰の目も欺けるような殺人トリックも、現実には存在しないのだ。
結果として、いつか自分は捕まる。
問題は、いかにして捕まる前に目的を果たすか。どれだけ逮捕を遅らせ、計画を実行するか。どのようにして発見が遅れるように殺すか。殺すべき優先順位をどうするか。
理想通りに進める計画を立てるため、美咲は、今日の集まりを開いた。
殺人を行なえば、いつかは必ず捕まる。もしかしたら、4人全員を殺す前に――2人目や3人目を殺した時点で捕まるかも知れない。
だからこそ、殺す優先順位を明確にしなければならなかった。彼等の人間性と、洋平を殺したときの役割の大きさを正確に知りたかった。
五味達は、美咲の思惑通りに色々と喋ってくれた。洋平に攻撃しようとしたのは、五味、六田、七瀬。洋平にスタンガンを当てて行動不能にしたのは、八戸。死に繋がる暴行を加えたのは、五味と六田。
五味と六田は、その事実を嬉々として語っていた。
美咲は、顔に作り笑いを張り付けながら、しっかりと話の内容を叩き込んだ。いつでも思い出せるように。彼等に対する殺意の順序を、明確にできるように。
最初に殺すのは五味だ。これは、殺人を決意した時点で、すでに決定事項だった。美咲を自分の女にするため、洋平を殺害現場に呼び出した張本人。4人で洋平を取り囲み、決して手を出さなかった彼をスタンガンで行動不能にし、凄惨な暴行を加えた首謀者。たとえ他の3人を殺せなかったとしても、五味だけは絶対に殺す。
五味の次の標的も決まっていた。六田祐二。自己顕示欲が強く、自分がいかに優れた人間かを語っていた。洋平殺害時にも暴行を加えていた。
先ほどの集まりで、六田は自慢気に、自分がいかに女にモテるかを語っていた。
「女を上手く口説き落とすコツは、タイミングなんだよ。寂しいとか言ってくる女がいたら、そのタイミングで、100パーセント落とせる」
女性が聞いたら不快感しか覚えないような、六田の話。その言葉から、彼を殺す方法も簡単に思い浮かんだ。
3人目以降について、美咲は悩んだ。七瀬と八戸。どちらを優先的に殺すべきか。
七瀬は、五味や六田の腰巾着だ。立場の強い彼等に従い、他の生徒に大きな顔をしている。虎の威を借る狐という言葉を、手本のように体現している。人に媚びるのが上手く、五味や六田も彼を気に入っている。
洋平殺害に関して、七瀬は、自発的に行動したわけではない。五味や六田よりも取り入るべき人間がいたなら、彼は、洋平殺害には関わらなかっただろう。
八戸も、罪の大きさという点では、七瀬とそう大差はない。彼は気が弱く、五味や六田に従っているだけだ。聞いた話によると、八戸は、五味や六田に言われて野球部を退部したらしい。彼等の使い走りをするためだけに。自分より強い者に逆らえず、抵抗する考えすら持てない小心者。強い者の言いなりになることでしか生きられない、臆病者。
七瀬と八戸の人間性を考えて、美咲は決断した。七瀬を3番目に、八戸を最後に殺す。
七瀬は、五味達に命令されれば、容赦なく洋平に暴行を加えていただろう。八戸は、彼等に言われても、恐る恐るという程度にしか暴行を加えられなかったはずだ。
五味、六田、七瀬、八戸。殺す順番は決まった。
では、どうやって、4人をスムーズに殺してゆくか。
五味を殺す手順は、もう決まっていた。前回の集まりで美咲自身が口にした言葉が、偶然にも布石となった。
『クリスマスまで待って』
クリスマス・イブに、五味は、美咲と寝るつもりだ。そこを狙う。自分の体を餌にして、五味を満足させて、幸せの絶頂に昇らせる。満足して眠ったところで、地獄に叩き落としてやる。
美咲の心からは、もう、洋平の死を知る前に固めた決意はなくなっていた。
『絶対に体は許さない』
そんな決意は、洋平が生きているからこそ意味を成すのだ。今となっては、どうでもいい。自分の体を餌にすることで洋平の仇を討てるのなら、いくらでも差し出そう。
五味の未来も、彼が存在していた証すら、この手で奪えるなら。自分の体など、どんなふうにでも使ってやる。
五味を殺したら、次は六田だ。彼を誘い出す言葉は、もう決まっている。五味を最初に殺すからこそ、効果的な言葉。可能な計画。自己顕示欲も自惚れも強い彼なら、簡単に騙せるはずだ。
七瀬は、どうやって殺そうか。五味や六田ほど自惚れも承認欲求も強くない彼は、その分コントロールが難しい。美咲が五味の彼女だといっても、それだけでは言いなりにできないだろう。少なくとも、五味がいない場所では。
──いや……。
美咲は、発想を逆転させた。そもそも七瀬が人に媚びるのは、自分に力がないと理解しているからだ。だからこそ、強い者に付き従っている。それを逆手に取れば、思うようにコントロールできる。
3人を殺せたとして、最後の八戸はどうやって殺すか。4人の中で立場が弱いといっても、美咲よりは確実に強い。いくら何でも、彼が、美咲にまで怯えるとは考えにくい。
美咲自身も、八戸なら何とかできるとは思っていない。むしろ、臆病なぶんだけ警戒心の強い彼が、一番殺しにくいかも知れない。
――八戸は、どうやって殺せばいい?
ベッドの上で考え、美咲は、そのまま寝転んだ。頭を使うことを放棄した。思考の停止。
まだ、そこまで考えなくていい。全員を殺せると決まったわけではない。もしかしたら、最後に辿り着く前に捕まってしまうかも知れないのだから。
自分の命を賭けてでも殺すのは五味。彼を殺すことだけは絶対だ。何があっても、どんなことをしても、間違いなく殺す。
確実に殺したいのは六田。五味を殺した後始末さえ失敗しなければ、かなり高い確率で殺せるはずだ。同時に、殺す必要もあった。彼は五味に付き従っていたのではなく、五味の横に並んで洋平を殺したのだから。
七瀬と八戸は、殺すために全力を尽くす、という程度に過ぎない。それなら、今の時点で深く考えなくてもいい。ことが上手く運び、思惑通りに進めば、七瀬も殺せるだろう。八戸のことは、その後に考えればいい。
美咲は着替えもせず、ベッドの上で体を転がした。布団に包まり、目を閉じた。
まずは来週。クリスマス・イブ。
五味とのデートに持っていく鞄に、サバイバルナイフを隠し持つ。鞄は細工をして、二重底にしておいた。
五味の家に行き、彼の好きにさせてやる。彼が眠りについたところで、滅多刺しにする。
最初のひと刺しで、眠っていた五味は目を覚ますだろう。
彼の人生の最後に、呪詛の言葉を吐き捨ててやる。美咲を自分の女と思い込み、達成感と幸福感の絶頂にいる彼を、地獄の底に叩き落としてやる。
そして、もし何もかも上手くいけば。
五味を殺すだけではなく、彼の未来や存在そのものを否定できるはずだ。
リビングにいる咲子に声をかけて、美咲は、2階の自室に足を運んだ。
12月15日。午後10時。
今日は、以前と同じように、五味の家に集まってきた。メンバーも以前と同じ。五味、六田、七瀬、八戸。
今回の集まりを提案したのも、美咲だった。
「あんたの友達とも仲良くしたいんだ。私は、あんたの彼女なんだから」
鼻の下を伸ばした五味は、簡単に美咲の言うことに従った。
美咲が4人を集めた理由は、当然、彼等と仲良くするためではない。
彼等と遊び、帰宅した。2階に上がり、自室のドアを開けた。明りを点けていないので、部屋の中は暗い。カーテンを閉めていない窓から、街灯と月明かりが差し込んでいる。
かすかな光に、部屋の中が照らされている。洋平の死を知ってから、部屋の掃除など一度もしていなかった。彼がいた頃は、ほぼ毎日掃除していたのに。いつでも彼を呼べるように。
部屋の明りを点けないまま、美咲は、窓際のベッドに座った。
この部屋の窓からは、道路を一本挟んで真向かいにある市営住宅が見える。洋平が住んでいた市営住宅。5階が彼の家だった。
洋平の家を見上げた。カーテンの向こうにある部屋には、明りが点いていた。洋子は家にいるようだ。今日は夜勤ではないらしい。
洋子は、洋平が行方不明になってから、みるみる痩せていった。もともと小柄で、太ってなどいなかったのに。今の姿は、見ているだけで痛々しい。
美咲は、何ひとつ疑うことなく、洋平と一生一緒にいるものだと思っていた。高校を卒業し、大学に進学し、就職し、結婚する。当然のように未来を描いていた。
そんな美咲にとって、洋子は、いわば義理の母だ。昔から知っている人だし、家族連れで遊びに行ったこともある。将来はこの人の孫を産むのだと、信じて疑わなかった。
でも、信じた未来は永久に失われた。もう1人の母親と呼べる人も、現在、苦しんでいる。美咲と同じように。あるいは、美咲以上に。
誰のせいで苦しんでいるのか。
先程まで一緒にいた、クズ共のせいだ。
美咲の心の中で、沸々と怒りが沸き上がってきた。沸騰した熱湯のように泡が浮かび、煮えたぎっている。
あいつ等は、自分だけではなく、自分の母親も、自分の義母も傷付けた。自分の欲求を満たすためだけに。
死ぬべきだ。あいつ等は、生きていていい人間じゃない。だから殺す。
胸中は、収まり切らないほどの憎悪で満ちている。それでも、美咲は冷静だった。
本当は、あいつ等の手足を拘束して、あらん限りの拷問の末に殺してやりたい。だが、現実的に考えて、そんなことは不可能だ。
それだけではなく、人を殺せば殺人犯として警察に捕まることも、美咲は理解していた。
警察の中には、怠惰な者も下衆な者もいるだろう。しかし、組織としては決して無能ではない。4人も立て続けに殺せば、必ずどこかで美咲の尻尾を掴み、逮捕まで持っていくはずだ。ドラマや小説のような名探偵などいないのと同様に、誰の目も欺けるような殺人トリックも、現実には存在しないのだ。
結果として、いつか自分は捕まる。
問題は、いかにして捕まる前に目的を果たすか。どれだけ逮捕を遅らせ、計画を実行するか。どのようにして発見が遅れるように殺すか。殺すべき優先順位をどうするか。
理想通りに進める計画を立てるため、美咲は、今日の集まりを開いた。
殺人を行なえば、いつかは必ず捕まる。もしかしたら、4人全員を殺す前に――2人目や3人目を殺した時点で捕まるかも知れない。
だからこそ、殺す優先順位を明確にしなければならなかった。彼等の人間性と、洋平を殺したときの役割の大きさを正確に知りたかった。
五味達は、美咲の思惑通りに色々と喋ってくれた。洋平に攻撃しようとしたのは、五味、六田、七瀬。洋平にスタンガンを当てて行動不能にしたのは、八戸。死に繋がる暴行を加えたのは、五味と六田。
五味と六田は、その事実を嬉々として語っていた。
美咲は、顔に作り笑いを張り付けながら、しっかりと話の内容を叩き込んだ。いつでも思い出せるように。彼等に対する殺意の順序を、明確にできるように。
最初に殺すのは五味だ。これは、殺人を決意した時点で、すでに決定事項だった。美咲を自分の女にするため、洋平を殺害現場に呼び出した張本人。4人で洋平を取り囲み、決して手を出さなかった彼をスタンガンで行動不能にし、凄惨な暴行を加えた首謀者。たとえ他の3人を殺せなかったとしても、五味だけは絶対に殺す。
五味の次の標的も決まっていた。六田祐二。自己顕示欲が強く、自分がいかに優れた人間かを語っていた。洋平殺害時にも暴行を加えていた。
先ほどの集まりで、六田は自慢気に、自分がいかに女にモテるかを語っていた。
「女を上手く口説き落とすコツは、タイミングなんだよ。寂しいとか言ってくる女がいたら、そのタイミングで、100パーセント落とせる」
女性が聞いたら不快感しか覚えないような、六田の話。その言葉から、彼を殺す方法も簡単に思い浮かんだ。
3人目以降について、美咲は悩んだ。七瀬と八戸。どちらを優先的に殺すべきか。
七瀬は、五味や六田の腰巾着だ。立場の強い彼等に従い、他の生徒に大きな顔をしている。虎の威を借る狐という言葉を、手本のように体現している。人に媚びるのが上手く、五味や六田も彼を気に入っている。
洋平殺害に関して、七瀬は、自発的に行動したわけではない。五味や六田よりも取り入るべき人間がいたなら、彼は、洋平殺害には関わらなかっただろう。
八戸も、罪の大きさという点では、七瀬とそう大差はない。彼は気が弱く、五味や六田に従っているだけだ。聞いた話によると、八戸は、五味や六田に言われて野球部を退部したらしい。彼等の使い走りをするためだけに。自分より強い者に逆らえず、抵抗する考えすら持てない小心者。強い者の言いなりになることでしか生きられない、臆病者。
七瀬と八戸の人間性を考えて、美咲は決断した。七瀬を3番目に、八戸を最後に殺す。
七瀬は、五味達に命令されれば、容赦なく洋平に暴行を加えていただろう。八戸は、彼等に言われても、恐る恐るという程度にしか暴行を加えられなかったはずだ。
五味、六田、七瀬、八戸。殺す順番は決まった。
では、どうやって、4人をスムーズに殺してゆくか。
五味を殺す手順は、もう決まっていた。前回の集まりで美咲自身が口にした言葉が、偶然にも布石となった。
『クリスマスまで待って』
クリスマス・イブに、五味は、美咲と寝るつもりだ。そこを狙う。自分の体を餌にして、五味を満足させて、幸せの絶頂に昇らせる。満足して眠ったところで、地獄に叩き落としてやる。
美咲の心からは、もう、洋平の死を知る前に固めた決意はなくなっていた。
『絶対に体は許さない』
そんな決意は、洋平が生きているからこそ意味を成すのだ。今となっては、どうでもいい。自分の体を餌にすることで洋平の仇を討てるのなら、いくらでも差し出そう。
五味の未来も、彼が存在していた証すら、この手で奪えるなら。自分の体など、どんなふうにでも使ってやる。
五味を殺したら、次は六田だ。彼を誘い出す言葉は、もう決まっている。五味を最初に殺すからこそ、効果的な言葉。可能な計画。自己顕示欲も自惚れも強い彼なら、簡単に騙せるはずだ。
七瀬は、どうやって殺そうか。五味や六田ほど自惚れも承認欲求も強くない彼は、その分コントロールが難しい。美咲が五味の彼女だといっても、それだけでは言いなりにできないだろう。少なくとも、五味がいない場所では。
──いや……。
美咲は、発想を逆転させた。そもそも七瀬が人に媚びるのは、自分に力がないと理解しているからだ。だからこそ、強い者に付き従っている。それを逆手に取れば、思うようにコントロールできる。
3人を殺せたとして、最後の八戸はどうやって殺すか。4人の中で立場が弱いといっても、美咲よりは確実に強い。いくら何でも、彼が、美咲にまで怯えるとは考えにくい。
美咲自身も、八戸なら何とかできるとは思っていない。むしろ、臆病なぶんだけ警戒心の強い彼が、一番殺しにくいかも知れない。
――八戸は、どうやって殺せばいい?
ベッドの上で考え、美咲は、そのまま寝転んだ。頭を使うことを放棄した。思考の停止。
まだ、そこまで考えなくていい。全員を殺せると決まったわけではない。もしかしたら、最後に辿り着く前に捕まってしまうかも知れないのだから。
自分の命を賭けてでも殺すのは五味。彼を殺すことだけは絶対だ。何があっても、どんなことをしても、間違いなく殺す。
確実に殺したいのは六田。五味を殺した後始末さえ失敗しなければ、かなり高い確率で殺せるはずだ。同時に、殺す必要もあった。彼は五味に付き従っていたのではなく、五味の横に並んで洋平を殺したのだから。
七瀬と八戸は、殺すために全力を尽くす、という程度に過ぎない。それなら、今の時点で深く考えなくてもいい。ことが上手く運び、思惑通りに進めば、七瀬も殺せるだろう。八戸のことは、その後に考えればいい。
美咲は着替えもせず、ベッドの上で体を転がした。布団に包まり、目を閉じた。
まずは来週。クリスマス・イブ。
五味とのデートに持っていく鞄に、サバイバルナイフを隠し持つ。鞄は細工をして、二重底にしておいた。
五味の家に行き、彼の好きにさせてやる。彼が眠りについたところで、滅多刺しにする。
最初のひと刺しで、眠っていた五味は目を覚ますだろう。
彼の人生の最後に、呪詛の言葉を吐き捨ててやる。美咲を自分の女と思い込み、達成感と幸福感の絶頂にいる彼を、地獄の底に叩き落としてやる。
そして、もし何もかも上手くいけば。
五味を殺すだけではなく、彼の未来や存在そのものを否定できるはずだ。
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