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第十五話
しおりを挟む朝の悶着の後、ファリナは階下へ行き、預けておいたミランの服を取りに行った。
女将は少し縮んだかもねと言っていた。
ファリナはそれを持ち、においを嗅いでから部屋へ入りミランに手渡す。
ミランはそれを受け取り、着替えた。
着替える際にファリナは朝から眼福だなぁとじーっと彼女が着替える様子を見つめていると
「・・・そんなに見ないでよ。着替えづらいじゃない」とミランは恥ずかしくはないが流石に注意した。
「あーごめんごめん。寝ぼけてぼーっとしてた」
とファリナはとぼける。
ジト目でミランはファリナを軽蔑し、服の袖を通し終える。
「さ、今日はどうする?」とファリナが聞く。
「さっそく村へ行きたいの。彼は乱暴されているかもしれないわ」
「はぁ。でも私にも準備ってのがあるからさ。昼からでもいいかな?」
ファリナの機嫌を損ねたらミランは何もできないので、催促はしなかった。
「わかったわ。どこへいきたいの?」
ファリナはそれを聞いて、さっそくミランとのデートの計画を練り始める。
「んーとね。まず鎧をみにいきたいな。いいのがあるのかも」
既に持っているが、提案してみる。
「わかったわ。じゃあ行きましょうか」
「あーその前に」
と言ってファリナはミランに近づき
「私、命張るんだよね?」という。
ミランは何か求めていることを察し、黙ってファリナの次の言葉を待つ。
ファリナは頬を指さし
「チューしてくれない?私、怖くって」
わざとらしく手を震わせる。
ミランは一度目をつむった後で彼女を見上げる。
ファリナは少しかがんで、ミランはそれに合わせて両手を添え、頬にキスをした。
「ありがとうっ!」とファリナはミランに抱き着いた。
「・・・どういたしまして」
ミランはこの女のことが出会って一日だがわかってきた。
外へ出て、昨日の雨による水たまりは少し残っていたが快晴であった。
「あーいい天気だねぇ」
「そうね」とミランは返す。
「じゃあさっそく行こうか」
二人は歩きだした。
---
「ねぇ、ふざけているの?」
「ん~待ってよ。あ、おやじこれいくら?」
そういってファリナは武器屋で大槌を持って、ハゲた筋肉質の親父に値段を聞いている。
「あーそれはだなー」と言って値段を言うとファリナはフーンと言って品を戻す。
そうして次は次はとひたすら値段を聞いて回る。
「あーミラにはこれどうかな?」と言ってファリナは短剣をもってミランに渡す。
持ち手と刃が同じ比率のやや刃が太い短剣である。
ミランは適当に鞘を抜いて刀身を見てから店を早く出たいので
「うん。いいんじゃない」と短く感想を言った。
「えーそんな適当ダメだよ。武器は人を選ぶんだよ。ほらこうして胸に手を当てて・・・」
と言ってミランの胸をブラウスの上から触る。
「この短剣の声を聴いて・・・ほら..聞こえてくるでしょう・・・」と神妙そうな顔をして言ってるがファリナはただ胸を触りたいだけのようである。
「何も聞こえないわ。止めて」
とその手を振り払い、短剣を元の場所に置く。
「ねぇ親父これいくら?」
「おい姉ちゃん、買わねぇなら聞くなよ!!」
と怒鳴られたのでファリナとミランは店を出た。
「ほら怒られちゃったじゃない!」
「まぁまぁいいじゃない。ねぇミラ、次は薬屋に行こうか。もし傷がついちゃったら大変だもん」
「でも、あなたお金ないんじゃなかったの?」
「もう、野暮だなぁ。いいからついてくる」
と言って当初は鎧屋と言ってたのに服屋行った時も女の子にとってドレスは鎧だよ!とか言っていた。
さっきの武器屋でも何も買わずに冷やかししかしていない。
おそらく次も何も買わずにいるのだろうと思ったら
「ありがとうございました!」と若い店員の感謝を背に受けて、ファリナとミランは店を出た。
「ね。ちゃんと買ったでしょ?これで傷がついちゃっても安心だね!!」
「そうね」とミランは疲れながら言った。
ま、これ媚薬なんだけどねとファリナはニタニタしながら使う時を楽しみにしていた。
ーーー
「ん?あれは」
メトジェイは自身が泊る宿から見える窓から、件の黒髪の少女を見つけた。
宿は通りに面していて、彼らは二階の部屋に泊まっていたのだった。
「どうしたの?」とメトジェイと寝ていた酒場の小娘は訪ねる。
「いいや、ちょっとな。急ぎの用事ができたから」と言ってメトジェイは急いで部屋を出た。
一人、ベッドで全裸のまま残された酒場の小娘はあっけにとられていた。
メトジェイは昨日一緒に飲んだ茶髪の男のもとへ走っていた。
彼の家は近く、賃貸でこの町に住んでいるのであった。
「おい!!来てくれ!!」とメトジェイが部屋を開けると、
茶髪の男はエプロンをして朝食を作っている最中であった。
「なんだよ、朝っぱらから」
この男はまめであるが、かつては傭兵として戦地を転々としており今は自警団の一人としてこの町に働いている。
「見つけたんだよ!あの黒髪の!先行ってるぞ!」
ーーー
二人組に追跡されているとは露知らず、ファリナとミランはのんきに昼食をとっていた。
「ねぇあなたお金・・・」
「あぁ大丈夫大丈夫。遠慮なく食べてね」
そういってファリナは次々と注文する。
どれも肉ばかりなのでどう見積もってもかなりの値になるだろう。
だがミランはまともな食事を数日ぶりに食べるので、今は余計な心配はせず、おなか一杯になろうと決めた。
一口食べて、味が薄いと思ったがそれでもミランははぐはぐと食べる。
ファリナのほうをちらりと見ると次々に食事を平らげていく。
な、なんて食欲なの...
見るものの視線を釘付けにするほどの食いっぷり。それを細身の女性が行っているのだから、一種の曲芸のように映った。
「ん?どうしたの。どんどん食べていいよ」と運ばれたばかりの皿をミランの方へ寄せる。
すすめられた皿を手でもっていると思わず落としてしまった。
ガチャリと机の上でに割れた皿と食事が散開する。
「ちょっと!ミラ!何してんのさ!」
ファリナは叱るが、すぐに不審に思う。
ミランが固まって目を向いたまま一点を見つめている。
何か嫌なものを見たかのような、恐れをファリナはミランから感じ取った。
どこのどいつだ怖がらせる奴はとにらみながら振り返ると、後ろには二人組の男がいた。
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