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クリスマスだから
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蝋月玄英は、流行歌というものを聴かない。
いや、正しくいうなれば流行歌だけではなく古典的なクラシックも一世を風靡した懐メロも、ありとあらゆるジャンルの音楽を知らないし聴かないのだ。
彼の恋人である神楽舞鶴も、人の事をとやかく言える程に流行歌に詳しいわけでも、古今東西の音楽に詳しいわけでもなかったが、それ以上に玄英は知っている楽曲が極端に少ない。
更には彼は人によっては雑音だとも取れるテレビからの音も全てを遮断して過ごす事が多い。とにかく無音の状態を好むために、今時知らない人間の方が珍しいとさえ思える有名な曲すら知らない事も珍しくなかった。
学区から少し離れたこの街は、喧騒に溢れていた。クリスマスの到来を強調するように、あちらこちらに派手派手しく飾り付けられたイルミネーションがちかちかと瞬いている。何処からでも聞こえてくるのは、一昔前に流行ったクリスマスを題材にした邦楽だ。
玄英はきっとこの歌手の名前はおろか、曲のタイトルさえ知らないのだろうなと舞鶴は思った。彼女自身も毎年この時期になると流れているために自然と覚え、サビだけ口ずさむ事が出来るようになっただけで、タイトルなんか知らなかったけれど。
玄英は無人の廊下を歩くように、クリスマスなんか自分には関係ありませんとでもいうように、どこか浮かれた空気に包まれた街の中を進んでいく。その背はピンと伸び、視線は真っ直ぐに前を向いていた。舞鶴は玄英のつむじを眺め、気紛れに問いかけてみる。
「なあ玄英、この曲のタイトルを知っているか?」
「さぁ、興味がありまへんので」
「そっか」
「舞鶴はんはご存知なんですか?」
「何だったっけな、私もよく知らないんだ」
鮮やかな赤と緑とそれから雪を模した白が街に溢れ返って、チキンだのケーキだのの広告、そこらかしこからクリスマスを題材にした曲が流れていたけれど、玄英は音よりオブジェやポスターなどアート方面に興味があるようだったし、舞鶴も一つも曲のタイトルも歌っている歌手の名前も判らなかった。興味がないから知ろうという気も芽生えない。
それでもクリスマスの雰囲気の浮かれた気分は伝播するのか、舞鶴は少し前を歩く玄英の手を掴んだ。自分のコートのポケットに、いつも美しい絵を創り出す手を引っ張り込む。玄英が驚いたように目を瞬かせたが、振り解かれる事はなかった。
いや、正しくいうなれば流行歌だけではなく古典的なクラシックも一世を風靡した懐メロも、ありとあらゆるジャンルの音楽を知らないし聴かないのだ。
彼の恋人である神楽舞鶴も、人の事をとやかく言える程に流行歌に詳しいわけでも、古今東西の音楽に詳しいわけでもなかったが、それ以上に玄英は知っている楽曲が極端に少ない。
更には彼は人によっては雑音だとも取れるテレビからの音も全てを遮断して過ごす事が多い。とにかく無音の状態を好むために、今時知らない人間の方が珍しいとさえ思える有名な曲すら知らない事も珍しくなかった。
学区から少し離れたこの街は、喧騒に溢れていた。クリスマスの到来を強調するように、あちらこちらに派手派手しく飾り付けられたイルミネーションがちかちかと瞬いている。何処からでも聞こえてくるのは、一昔前に流行ったクリスマスを題材にした邦楽だ。
玄英はきっとこの歌手の名前はおろか、曲のタイトルさえ知らないのだろうなと舞鶴は思った。彼女自身も毎年この時期になると流れているために自然と覚え、サビだけ口ずさむ事が出来るようになっただけで、タイトルなんか知らなかったけれど。
玄英は無人の廊下を歩くように、クリスマスなんか自分には関係ありませんとでもいうように、どこか浮かれた空気に包まれた街の中を進んでいく。その背はピンと伸び、視線は真っ直ぐに前を向いていた。舞鶴は玄英のつむじを眺め、気紛れに問いかけてみる。
「なあ玄英、この曲のタイトルを知っているか?」
「さぁ、興味がありまへんので」
「そっか」
「舞鶴はんはご存知なんですか?」
「何だったっけな、私もよく知らないんだ」
鮮やかな赤と緑とそれから雪を模した白が街に溢れ返って、チキンだのケーキだのの広告、そこらかしこからクリスマスを題材にした曲が流れていたけれど、玄英は音よりオブジェやポスターなどアート方面に興味があるようだったし、舞鶴も一つも曲のタイトルも歌っている歌手の名前も判らなかった。興味がないから知ろうという気も芽生えない。
それでもクリスマスの雰囲気の浮かれた気分は伝播するのか、舞鶴は少し前を歩く玄英の手を掴んだ。自分のコートのポケットに、いつも美しい絵を創り出す手を引っ張り込む。玄英が驚いたように目を瞬かせたが、振り解かれる事はなかった。
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