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口吸ひ
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黙りこくって考えた末、納得したのか諦めたのか、紀美乃は大きく息を吐いた。落ち着いたトーンでもらした彼女の声は心地良い音だった。初めて会った時も、憧れて同じ高校に入った時も、卒業式寸前で付き合って、違う学校に進学してからも、こんな声を聞く事はなかった。でも今はこの声を聞く時のほとんどは自分に向けられている。それが、嬉しくて誇らしい。
昔から人に何を言われても自分の行動が揺らぐ事はなかった。だが、飛鷹によって日常を変えられても、あまり不快感を感じられない事が紀美乃には少し面白く感じた。こんな風に考えられるようになったのは紛れもなく、図体のでかい後輩が大きく関わっている事を感じて心が暖められる。
「――紀美乃さん、うちの家族帰ってくるの夜なんですけど、今日出かけますか? それとも家でのんびりされます?」
「たまには家の中でゆっくりしたい。どこぞの誰かさんのせいで體のあちこちが痛むのよ」
「すみません」
見つめ合って微笑みあって。飛鷹は洗い物が終わって背中を丸めて冷えた手を紀美乃の頬にそえる。対して紀美乃は背を伸ばす。ゆるりとしたペースで互いの唇を塞ぐ。じっくりと相手の味を確かめるように深くキスをすれば感じる同じ味に二人は幸福で満たされて思うのだ。ああなんて、幸せなんだろう。
昔から人に何を言われても自分の行動が揺らぐ事はなかった。だが、飛鷹によって日常を変えられても、あまり不快感を感じられない事が紀美乃には少し面白く感じた。こんな風に考えられるようになったのは紛れもなく、図体のでかい後輩が大きく関わっている事を感じて心が暖められる。
「――紀美乃さん、うちの家族帰ってくるの夜なんですけど、今日出かけますか? それとも家でのんびりされます?」
「たまには家の中でゆっくりしたい。どこぞの誰かさんのせいで體のあちこちが痛むのよ」
「すみません」
見つめ合って微笑みあって。飛鷹は洗い物が終わって背中を丸めて冷えた手を紀美乃の頬にそえる。対して紀美乃は背を伸ばす。ゆるりとしたペースで互いの唇を塞ぐ。じっくりと相手の味を確かめるように深くキスをすれば感じる同じ味に二人は幸福で満たされて思うのだ。ああなんて、幸せなんだろう。
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