後輩の夜事情(2/5更新)

狂言巡

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口吸ひ2

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 体を重ねた回数は、もはや両手の数では足りない程だ。何がきっかけだったかなんて、最早どちらも覚えてはいない。しかし『恋』などという可愛らしい一過性のモノでない事だけは確かだ。ただひたすらに相手が大事で、一度懐に入れてしまえば手を伸ばさずにはいられなくて、合わせた肌が驚く程に馴染んだ。それだけだ。
 一番奥の四畳半に一組だけ布団を引き、全ての襖を閉め切った。別に、誰に見られるという事もない。元々この家はあまり人が寄り付かない場所にある。周囲の人間は基本的に夜まで戻らない。ただどうにも木野川は落ち着かない。情事の最中、淡島を陽の光の下に晒したくないのだ。

「渚」

 胡坐をかいた上を指差すと、小柄な後輩は大人しくその間に収まってくる。

「……先輩」

 耳の縁を紅色に染めた女の唇に己のそれを重ねる。こちらが僅かに口を開けば、それにつられて向こうも薄っすらと唇を綻ばせる。すかさず舌を滑り込ませ、彼女の温かな口内をまさぐる。

「んっ、ふ」

 たびたび角度を変えながら唇を合わせては離し、離してはまた合わせる。ふっくらと柔らかなそれを甘噛みすれば淡島はふるりと肩を震わせ、こちらのシャツを握る指先に力を込めた。少しだけ顔を離して距離を取ると、彼女は困ったような表情でこちらを見つめ、おずおずと自ら舌を伸ばしてくる。チラリと覗く舌先の赤が何とも煽情的で、木野川は淡島の後頭部を片手で押さえながら、まるで呼吸を奪うかのように再度その唇にむしゃぶりついた。
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