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月下美人の画策
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「……あんさあ、ルートおかしない?」
「だよね?」
渚はユキとお互いの顔を見て「あはは」と笑ってみた。発端は、渚が住む地区で夏祭りが開催されるので、ユキを誘った事だった。別の大学に通っている彼女が大学でその話のしたらしく、サークルの合同合宿しようという流れになった。あまりの暑さと祭りが多いに盛り上がった勢いで、やろうという流れになった肝試し。渚の親戚である山の管理者の許可も得て、中腹にある祠までお参りする。そこまではよかったのだけれど。
「でも渡された地図じゃこっちゃなんよなぁ」
渚の呟きに反応したのか、隣を歩いていたユキが辺りを見回す。見渡せども視界に入るのは暗闇に染まった藪ばかり。照明器具といえばお互いの手に小さな懐中電灯が二つだけ。このまま進んでも、始める前に聞いた折返し地点であるはずの鳥居には一向に着かないのは列記とした事実である。
「やっぱりこの地図が原因かなあ?」
眉間に可愛い眉を寄せたユキが、渚の手元の地図を覗き込んできた。
「そーとしか考えられへんよな?」
渚がそう答えようとした、その時。背後の茂みが、ガサリと音を立てた。
「っ!?」
叫ぼうとしたけれど、声は出なかった。だってお互いの口元を覆っていたのは……。
「アンタ達、ニブすぎだよぉ」
「お前はもっと最初の方で気づくと思ったんだが」
ユキの口元を包み込んでいるのが碪の長い指で、渚の口元を塞いでいるのは潤平の大きな掌。呆れたような口調でそう言われ、そもそもの原因が自分達の恋人だった事に今更ながら気づいた。脅かし役をやってみたいと立候補したのは潤平で、後から碪がやってやってもいいと頷いた。
ユキを見やると、唖然と自分の口を覆って後ろから抱きしめる格好の碪を見上げている。つられるように渚も背後の潤平を振り返る。バチッと目が合うと、口の端で笑われた。ぞくんと背筋が粟だった。そして潤平と碪はユキと渚の頭上で視線を絡ませるとニヤリと意味深に笑いあった。
「じゃ、そういう事で」
「ああ」
その言葉が合図だったのか、ユキは涙雨の横抱きされ、渚は潤平に小脇に抱えられる。訳が解らないのは渚とユキだ。
「え?」
「え?」
それぞれ自分を拘束する恋人を見上げるしかない。肝試しをやろうと言っていた暑さなんて吹っ飛ぶような、凄みのある笑みを向けられた。
「今回の宿じゃ、ゆっくりデキないだろ?」
「……ッ!?」
二人が言いたかった真の目的に気づいた渚とユキは声も出せない。ガサガサと音を立てて、正反対の茂みの奥に連れ込まれるお互いを見やった。呆然とした顔は、鏡でも見ているようだった。それがその日の晩、お互いを見た最後。
翌日の朝。ユキが地元に帰るまで、渚は挨拶どころか顔を合わせる事さえできなかった。何食わぬ顔をして恋人の分の朝食も持ってきた潤平と碪が、すこぶるご機嫌だったのは周知の事実だった事は、後で知った。
「だよね?」
渚はユキとお互いの顔を見て「あはは」と笑ってみた。発端は、渚が住む地区で夏祭りが開催されるので、ユキを誘った事だった。別の大学に通っている彼女が大学でその話のしたらしく、サークルの合同合宿しようという流れになった。あまりの暑さと祭りが多いに盛り上がった勢いで、やろうという流れになった肝試し。渚の親戚である山の管理者の許可も得て、中腹にある祠までお参りする。そこまではよかったのだけれど。
「でも渡された地図じゃこっちゃなんよなぁ」
渚の呟きに反応したのか、隣を歩いていたユキが辺りを見回す。見渡せども視界に入るのは暗闇に染まった藪ばかり。照明器具といえばお互いの手に小さな懐中電灯が二つだけ。このまま進んでも、始める前に聞いた折返し地点であるはずの鳥居には一向に着かないのは列記とした事実である。
「やっぱりこの地図が原因かなあ?」
眉間に可愛い眉を寄せたユキが、渚の手元の地図を覗き込んできた。
「そーとしか考えられへんよな?」
渚がそう答えようとした、その時。背後の茂みが、ガサリと音を立てた。
「っ!?」
叫ぼうとしたけれど、声は出なかった。だってお互いの口元を覆っていたのは……。
「アンタ達、ニブすぎだよぉ」
「お前はもっと最初の方で気づくと思ったんだが」
ユキの口元を包み込んでいるのが碪の長い指で、渚の口元を塞いでいるのは潤平の大きな掌。呆れたような口調でそう言われ、そもそもの原因が自分達の恋人だった事に今更ながら気づいた。脅かし役をやってみたいと立候補したのは潤平で、後から碪がやってやってもいいと頷いた。
ユキを見やると、唖然と自分の口を覆って後ろから抱きしめる格好の碪を見上げている。つられるように渚も背後の潤平を振り返る。バチッと目が合うと、口の端で笑われた。ぞくんと背筋が粟だった。そして潤平と碪はユキと渚の頭上で視線を絡ませるとニヤリと意味深に笑いあった。
「じゃ、そういう事で」
「ああ」
その言葉が合図だったのか、ユキは涙雨の横抱きされ、渚は潤平に小脇に抱えられる。訳が解らないのは渚とユキだ。
「え?」
「え?」
それぞれ自分を拘束する恋人を見上げるしかない。肝試しをやろうと言っていた暑さなんて吹っ飛ぶような、凄みのある笑みを向けられた。
「今回の宿じゃ、ゆっくりデキないだろ?」
「……ッ!?」
二人が言いたかった真の目的に気づいた渚とユキは声も出せない。ガサガサと音を立てて、正反対の茂みの奥に連れ込まれるお互いを見やった。呆然とした顔は、鏡でも見ているようだった。それがその日の晩、お互いを見た最後。
翌日の朝。ユキが地元に帰るまで、渚は挨拶どころか顔を合わせる事さえできなかった。何食わぬ顔をして恋人の分の朝食も持ってきた潤平と碪が、すこぶるご機嫌だったのは周知の事実だった事は、後で知った。
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