異世界留学それから就職(9/14更新)

狂言巡

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餌付け/トライアングル2

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 【深淵の傀儡師】コロンは、ひょんな事から八角帝国の海岸に座礁し、商品も部下も船ごと搾取されてしまった。それでも五体満足で大幹部・サンゴの女中として働く方向にもっていけたのは、不幸中の幸いだろう。そして最近は【翠の騎士】と【死の鳥】の任務の補佐として、同行する事が増えた。
 確かに交流は数年前からあったが、あくまで個別に商談した仲である。双方とも真面目で冷静沈着、ハーフリングの情報屋と違い煽り癖もない。喧嘩になどならないだろうと、コロンは思っていた。何かと二人と任務を組まれるザクロも「俺もそうだと思ってた」と頭を抱えた。現実はそう都合よくはいかないらしい。他の血気盛んな構成員のように乱闘には至らないが、口論が絶えなくて周囲の士気を下げかねないと懸念されている。
 直属の上司であるサンゴは「アタシのお気に入りに三十超えた野郎共の機嫌取りさせるってのかい!」と最初こそ猛反対したが、愛しの兄の重い悩む姿に結局折れた。

 ピリピリした空気に目を瞑れば、今日の任務も恙無く終わりそうだ。何故かマンドレイクとフリージアに挟まれる形で夕食を摂る事になったが、示し合わせたわけでない。フリージアとコロンが入店した小料理屋に、偶然マンドレイクが後から入ってきただけの話だ。コロンの皿に野菜の肉巻きが置かれ、代わりに卵焼きの皿が持っていかれる。
 フリージアとコロンは八角で再会するまで、お互いの食の好みを知るくらい付き合いがある。以前彼の嫌いな食べ物に気付いたコロンが冗談半分で「食べましょうか」と言ったところ、今では言葉を交わさずともおかずがトレードされる。この世界の集団トップは大体プライドが高いはずだが、好き嫌いが露呈するのはいいのか。このやり取りに、チラチラ視線をやっていたマンドレイクが話しかけてきた。

「あーその、食べるか」

 彼の手が掴めば小鉢も御猪口に見える。その申し出に対してコロンが何か言う前に、フリージアが口を挟む。

「食い差しを寄越すなんて、下品な男ね」
「そんな物を渡すわけないだろう! そもそも貴様に言ったわけではない!」

 剣呑な男二人に、数人の美女が声を掛けてくる。要するに逆ナンだ。度胸があるなと半ば感心しながら、コロンは自分の食事代を払ってそそくさと退散した。

 ――お気に入りに逃げられた死の鳥は露骨に不機嫌で、大人気ない態度をみせてしまったと翠の騎士は内心で落ち込んでいる事を、サンゴの許で地道に働くコロンは知る由もない。
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