誘惑シャルム(9/9更新)

狂言巡

文字の大きさ
3 / 4

起死回生

しおりを挟む
 ジルコンは世間を騒がす革命家の一人だ。しかし、同胞を逃がした後で国の治安部隊によって囚われてしまった。薄暗い独房に叩き込まれたジルコンの前に、ブーツを履いた足が立つ。

「この世で最も冬の女神に愛された監獄へようこそ。貴方に相応しい刑が執行されるまで、私が責任もって貴方の面倒を見ます」

 想像以上に若い女の声に顔を上げると、僅かな灯りに照らされた矮躯の人間が居た。身長はジルコンの半分程しかない。服装からしてヒラの看守ではないようだ。腫れ上がった瞼をこじ開けて観察するジルコンの顎を、女は容赦なく踏みつける。

「私は貴方が入る第四区の牢番長のシルク・フィラメントです。期待してますよ、革命家殿」

 噎せ込む囚人に告げると、シルクと名乗った女は出て行った。ジルコンの反抗心に火が点く。どんなに過酷な場所であろうと、必ず生き抜いて監獄ココを出て、世界を正してやる。しかし何せ釈放される事のない監獄、中がどうなっているのかサッパリ判らない。その燃える志を嘲笑うかの如く、極寒の世界が彼を出迎えた。流石は出て来られるのは屍者ばかりと恐れられる場所。種族の特性上、寒さに弱いジルコンは、初っ端から自信を失いかけて蹲る。
 一刻一刻を何とか耐え抜くジルコンの支えは、意外にも牢番長シルクであった。自分と反対に寒さが平気らしい女は、任務の内なのかただの気紛れなのか、度々現れてはジルコンを甚振る。

「おかげで目が覚めた」

 そう不敵に笑ってやると、相手はムッと顔を顰めた。ジルコンの髪を乱暴に掴んで引き寄せ、ジッと覗き込んでくる。この世界では珍しく、髪と瞳がどちらも黒い。

「貴方は何故折れない? こんな惨めな思いをしても尚、強い意志を持ち続けるなんて」

 うっかり吸い込まれそうになるような深い眼差しに酩酊を覚えつつ、ジルコンはしっかりと答える。

「正すべき世界がある限り、俺は諦めない」

 通じるとは思っていない。予想通り、シルクは納得いかない顔で牢を出て行く。今日も生き抜いた。ジルコンは軋む躰を起こして凍った壁にもたれ掛かる。監獄を脱出したらあの牢番長、タダではおかない。泣き叫ぶまで痛めつけてやる。復讐を誓うと、痛みに負けそうな躰に気力が入るのだった。






 ある日、ヒラの看守がジルコンを牢から出しに来た。

「革命軍に関する取り調べだ。着いて来い」

 この好機チャンスを逃せば後は無い。力の入らない躰を行使して、ジルコンは何とか二人の看守を倒した。鍵を奪い、手錠を外す。入口に戻ったのではまた捕まるだけだ、他を探そう。牢番の為に飼い慣らされた獣が群れる森へ向かう。凶暴なソレらを辛くもやっつけ、森の果てに不自然な穴を発見した。恐る恐る踏み込むと、通路が続いている。もう進むしかない。行き着いた先でジルコンは、革命軍の大先輩や同胞達と合流した。天は革命軍おれたちに味方したのだ、吠え面をかくがいい忌々しい牢番どもめ!
 体力を回復させたジルコンは、物資補給の任務に就いた。ある日食糧を獲りに行くと、こちらに背を向ける形で歩いているシルクを見つけた。咄嗟に襲い掛かる。牢番犬を三匹連れていたが、幼体だったのが幸いだった。劣勢に陥った彼女が持っていた手錠を奪って嵌め、目と口を封じて秘密の通路に引きずり込む。グッタリとした相手に囁いた。

「牢の中じゃ世話になったな。礼をさせてくれ」

 腕の中の躰がヒクリと竦む。嗜虐心がジルコンの躰を熱くした。声の届かない独房にシルクを運び込み、覆いを取る。現れた瞳は反抗的で、自分もこんな表情をしていたのかもしれないと思った。そしてコレを手折らずにはいられないという気持ちにもなった。しかしシルクにやられたような折檻は躊躇われる。何せ肉体の造りがジルコンの半分以下だ、加減した一発の殴打だけで絶命しかねない。やり方を変えるべきだろう。ジルコンは汗ばんだ服を脱ぎ、シルクの看守服も剥ぎ取った。

「知っているか? 快楽は苦痛よりも耐え難いそうだ」

 何を言っているのか判らないという貌で、シルクが見上げてくる。この女、拷問には詳しいのに、そちら方面はサッパリらしい。何だかおかしくて、そして楽しみだ。ジルコンは白い首筋を舐めあげた。それでも訳が判っていないシルクの唇を深く奪う。

「しっかり学ぶといい」

 お前の知らない事を、時間をかけて全て教え込んでやる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...