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【藤と榊】キス

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 初めて会った時よりガッシリと大柄になった腰回りを抱いて、髪に鼻先を寄せる。指で髪を撫でると、洗髪以外は特に手を加えられていないのだろう、手触りの硬い感触がある。久方ぶりのスキンシップに賢希は碌に言葉を発せないまま、ガチガチに固まって、身動き取れないでいる。賢希は額まで真っ赤になってギュッと目を閉じている。ヒカルは唇へ吐息を触れさせて、たっぷり焦らしてからキスをした。
 ヒカルは賢希より頭一つ小さい。賢希がビシリと定規みたいに伸びたままだと、ヒカルは踵が浮くまで背伸びをする必要があった。柔らかいキスの後、硬直している賢希の頭を強引にかき抱いて、ヒカルは彼の頭を抱え込むように屈ませた。ゆっくり踵が床について、賢希は自重を支えるようにヒカルの肩にしがみついた。長いキスの後、ヒカルは意地悪く尋ねた。

「……あれから、誰かとキスをした?」

 賢希はグッと唇を噛み、火照った顔をどうにか誤魔化そうとするが、抱き合ったこの状況では無駄な事だった。

「す、するわけない」

 真面目な気質の彼が、誰とでもキスできるわけじゃない事を知った上で聞きながら、ヒカルは尚も揶揄うのを止められなかった。

「一途な賢希くん。嬉しいな。もっとしようか」
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