とある姉妹の食卓(11/11更新)

狂言巡

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サンドイッチ【夫婦期】

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「琥珀さん、俺のコレを完食しない限り許さないからね」

 堅焼きバゲットの切れ目からは、トマトの厚切りと白いチーズがはみだし、更につめこまれたゆで卵のスライスとサーモンが顔を覗かせている。ぎゅうぎゅうに詰め込まれたサンドイッチは、確かに豪勢で美味しそうだった。首を伸ばしてパンの端っこを齧る。具に届かず、塩味の強いパンで口の中が一気に乾く。

「ちゃんと奥まで咥えこまないと進まないよ」

 慎重に咀嚼すれば少しずつ硬さを失って柔らかくなり、するりと喉を通った。二口目は大きく噛みついた。今度はちゃんと具に届いた。酸味と甘みの塩味による三位一体のハーモニー。サーモンと卵と炭水化物はどうしてこう相性がいいのだろう。マヨネーズが全く辛くないのは優しさだろうか。確かに最近ちゃんと寝なかったり食べなかったりしたけど、何が悲しくて両手を拘束されて口だけで食事をしなければならないのか。

「デザートもあるからね、ヒカルさんが好きなシフォンケーキ。一ホール分用意したし、クリームも好きなだけかけてあげるね」

 非常に楽しそう――というか何故か若干興奮している夫に、これからはどんなに忙しくなっても、健康で文化的な最低限度の生活を心がけようと決意する琥珀であった。
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