青春チャンプルー(4/1更新)

狂言巡

文字の大きさ
11 / 39

烏瓜と睡蓮

しおりを挟む
 オーバーチュアは突然に。わらえるくらい、はんのうしてしまう。駅や廊下で見かけた事があるだけの、話どころか挨拶さえ碌にしたことがない、黒髪垂れ目の後輩。今時珍しく膝下スカートを維持しているソイツは、いつも誰かの後ろで控えている。しかしそれは腰巾着などではなく、いて当然という感じで認識されている。覇気に欠けるが、規格外な人間ばかりに囲まれている所為か、ちょっとやそっとじゃ動じない。口数は少ないものの、適切なところで適切な事が言える奇特なタイプだ。

「……うわッ、スイマセン!」

 片や俺と言えば。ちょっとぶつかるだけで同級生にも頭を下げられてしまうような、いわゆる『不良』。目つきも口も悪いのは自覚している。ただ矯正する気がないだけだ。勝手に怖がったり突っかかってくる方が悪いのだ。こんな劣等生の俺が優等生のアイツとの接点なんてあるはずもない。けれど、今まで扱った事のないこの感情はそんなことを意にも介さないようだ。今日も名も知らない奴が逃げるように去っていった方向を何となくみつめていたら、遠くから聞こえて来た、かしましい笑い声と周りが多少煩くても不思議と耳に届くアイツの声。

「ありゃー、天凛てんりくんったらカワイソー。まあこの顔じゃ逃げちゃうよね」
高見たかみ先輩!」
「だってさ心理ちゃん、コイツって怖がられるか喧嘩売られるかでさ、誰かと普通に話してるとこ見たことないじゃん?」

 ピクリと反応した俺に絡むように、ときどき屋上で顔を合わせるようになったカチューシャ女の笑いを含んだ言葉が聞こえてきて、そっちを見た。慌てた様子でそいつの口を塞ごうとしていた三つ編みが目に入る。偶然絡んだ視線に、動きが止まった。

「私は、天凛先輩と話してみたいですけど?」

 しっかりと自分の顔を見て、何気なく紡がれたその言葉に。世界の音が、一瞬消え失せたかのような錯覚に陥った。細胞単位で訴えられる、この感情は何なのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...