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烏瓜と睡蓮
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オーバーチュアは突然に。わらえるくらい、はんのうしてしまう。駅や廊下で見かけた事があるだけの、話どころか挨拶さえ碌にしたことがない、黒髪垂れ目の後輩。今時珍しく膝下スカートを維持しているソイツは、いつも誰かの後ろで控えている。しかしそれは腰巾着などではなく、いて当然という感じで認識されている。覇気に欠けるが、規格外な人間ばかりに囲まれている所為か、ちょっとやそっとじゃ動じない。口数は少ないものの、適切なところで適切な事が言える奇特なタイプだ。
「……うわッ、スイマセン!」
片や俺と言えば。ちょっとぶつかるだけで同級生にも頭を下げられてしまうような、いわゆる『不良』。目つきも口も悪いのは自覚している。ただ矯正する気がないだけだ。勝手に怖がったり突っかかってくる方が悪いのだ。こんな劣等生の俺が優等生のアイツとの接点なんてあるはずもない。けれど、今まで扱った事のないこの感情はそんなことを意にも介さないようだ。今日も名も知らない奴が逃げるように去っていった方向を何となくみつめていたら、遠くから聞こえて来た、かしましい笑い声と周りが多少煩くても不思議と耳に届くアイツの声。
「ありゃー、天凛くんったらカワイソー。まあこの顔じゃ逃げちゃうよね」
「高見先輩!」
「だってさ心理ちゃん、コイツって怖がられるか喧嘩売られるかでさ、誰かと普通に話してるとこ見たことないじゃん?」
ピクリと反応した俺に絡むように、ときどき屋上で顔を合わせるようになったカチューシャ女の笑いを含んだ言葉が聞こえてきて、そっちを見た。慌てた様子でそいつの口を塞ごうとしていた三つ編みが目に入る。偶然絡んだ視線に、動きが止まった。
「私は、天凛先輩と話してみたいですけど?」
しっかりと自分の顔を見て、何気なく紡がれたその言葉に。世界の音が、一瞬消え失せたかのような錯覚に陥った。細胞単位で訴えられる、この感情は何なのだろう。
「……うわッ、スイマセン!」
片や俺と言えば。ちょっとぶつかるだけで同級生にも頭を下げられてしまうような、いわゆる『不良』。目つきも口も悪いのは自覚している。ただ矯正する気がないだけだ。勝手に怖がったり突っかかってくる方が悪いのだ。こんな劣等生の俺が優等生のアイツとの接点なんてあるはずもない。けれど、今まで扱った事のないこの感情はそんなことを意にも介さないようだ。今日も名も知らない奴が逃げるように去っていった方向を何となくみつめていたら、遠くから聞こえて来た、かしましい笑い声と周りが多少煩くても不思議と耳に届くアイツの声。
「ありゃー、天凛くんったらカワイソー。まあこの顔じゃ逃げちゃうよね」
「高見先輩!」
「だってさ心理ちゃん、コイツって怖がられるか喧嘩売られるかでさ、誰かと普通に話してるとこ見たことないじゃん?」
ピクリと反応した俺に絡むように、ときどき屋上で顔を合わせるようになったカチューシャ女の笑いを含んだ言葉が聞こえてきて、そっちを見た。慌てた様子でそいつの口を塞ごうとしていた三つ編みが目に入る。偶然絡んだ視線に、動きが止まった。
「私は、天凛先輩と話してみたいですけど?」
しっかりと自分の顔を見て、何気なく紡がれたその言葉に。世界の音が、一瞬消え失せたかのような錯覚に陥った。細胞単位で訴えられる、この感情は何なのだろう。
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