白黒リスタート(2/24更新)

狂言巡

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暇潰し

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 ぐらぐらと不安定な小石は、積み上げて行くのが簡単なようで難しい。それはまるでヒトのココロのようだと、柄にもない事を思って苦笑する。子どもの頃にやった遊びは、懐かしさのあまり変な気分にさせてくれた。





「……黒猫、何をしてんだ」
「あ、ジョーさん。遅いよぉ……こんなに石積んじゃった」

 不意に影が出来て顔を上げれば、そこには待ち人の姿がある。今日は成がテニスに付き合ってくれる約束の日だった。相手は受験生で、黒猫も後輩が入ってきて指導に忙しかった。楽しみすぎて、待ち合わせの公園に時間よりも大分早く着いてしまった。だから、ただ小石を積み上げるなんて、地味で懐かしい遊びをして彼の事を待っていた。成は不安定に積み上がった小石と、しゃがんでいる黒猫の姿を怪訝そうに一度見て、黒猫と目線を合わせて座り込む。そして小さく息を吐き、彼女の肩を軽く叩いた。

「お前な、でかい図体でンな地味な事すんな……ガキ共が怖がってるぞ」
「ひどい、ジョーさんが遅いから……怖くないよぉ」

 目線で促され、そちらを見てみれば、遊具の影に隠れてこちらを窺う数人の子供の姿が立っていた。黒猫は子供達にも気付かずに石を積んでいたのだと知れば気恥ずかしくなるが、その内の一人の怯えた顔と目が合ってしまい、つい愛想笑いをするのだった。

「小さい頃に、よくやらなかった? 石積むの」

 テニスコートへ続く道を歩きながら、黒猫は成を見て問いかけた。見慣れた顔だが、練習とレースで傷が薄くなっているのに気がついて、黒猫は嬉しいような寂しいような、自分でもよく判らない微妙な気分になった。

「……石なんか積んで何が楽しいんだ?」
「上手に積むのは難しいなぁ。油断したらすぐ崩れるし、いい具合の石ナカナカないし」
「……地味な遊びだっつーのはよく判った」
「そこは否定しないけどぉ……地味だからこそ、熱中しちゃう」

 確かに地味な上に寂しい遊びだろう。高校に入るまで一人で遊ぶ事が多かったから。黒猫は当時の様子を思い浮かべて軽く頷き、しみじみと呟いた。そして成の顔を見て、一瞬躊躇う間を空けた後に口を開く。

「受験勉強、捗ってる?」
「絶不調」
「……自信満々に言い切らないでよぉ、流石に手伝ってあげられないし」

 真面目な顔で断言され、黒猫はつい呆れてしまう。元々、座学方面の勉強があまり得意ではないという事は知っていたけれど、やる気を出してもらわなくては困る。自転車競技部がある高校は、成が通える地域に一校しかないのである。

「カラダ動かさねえと集中出来ねえんだよ、落ち着かねえっつーか。……今日は久々だからな、全力でいかしてもらうぜ?」
「望むところ」

 腕の筋を伸ばしながら眉を顰めて言う成に、黒猫は眉を下げて笑った。試験期間中は自分も全く同じ気持ちだから、よく判る。挑戦的に言われると、黒猫も目と口を引き締めて頷いた。

「ジョーさん、寂しくなったら、いつでも声掛けて」
「あ?」
「私で良ければ一緒にテニス出来るし……石だって積めるからぁ」
「……気持ちはありがてえがな……石は積まねえよ」
「楽しいのにぃ」
「二人でやる遊びじゃねえだろ……」
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