9 / 17
暇潰し
しおりを挟む
ぐらぐらと不安定な小石は、積み上げて行くのが簡単なようで難しい。それはまるでヒトのココロのようだと、柄にもない事を思って苦笑する。子どもの頃にやった遊びは、懐かしさのあまり変な気分にさせてくれた。
「……黒猫、何をしてんだ」
「あ、ジョーさん。遅いよぉ……こんなに石積んじゃった」
不意に影が出来て顔を上げれば、そこには待ち人の姿がある。今日は成がテニスに付き合ってくれる約束の日だった。相手は受験生で、黒猫も後輩が入ってきて指導に忙しかった。楽しみすぎて、待ち合わせの公園に時間よりも大分早く着いてしまった。だから、ただ小石を積み上げるなんて、地味で懐かしい遊びをして彼の事を待っていた。成は不安定に積み上がった小石と、しゃがんでいる黒猫の姿を怪訝そうに一度見て、黒猫と目線を合わせて座り込む。そして小さく息を吐き、彼女の肩を軽く叩いた。
「お前な、でかい図体でンな地味な事すんな……ガキ共が怖がってるぞ」
「ひどい、ジョーさんが遅いから……怖くないよぉ」
目線で促され、そちらを見てみれば、遊具の影に隠れてこちらを窺う数人の子供の姿が立っていた。黒猫は子供達にも気付かずに石を積んでいたのだと知れば気恥ずかしくなるが、その内の一人の怯えた顔と目が合ってしまい、つい愛想笑いをするのだった。
「小さい頃に、よくやらなかった? 石積むの」
テニスコートへ続く道を歩きながら、黒猫は成を見て問いかけた。見慣れた顔だが、練習とレースで傷が薄くなっているのに気がついて、黒猫は嬉しいような寂しいような、自分でもよく判らない微妙な気分になった。
「……石なんか積んで何が楽しいんだ?」
「上手に積むのは難しいなぁ。油断したらすぐ崩れるし、いい具合の石ナカナカないし」
「……地味な遊びだっつーのはよく判った」
「そこは否定しないけどぉ……地味だからこそ、熱中しちゃう」
確かに地味な上に寂しい遊びだろう。高校に入るまで一人で遊ぶ事が多かったから。黒猫は当時の様子を思い浮かべて軽く頷き、しみじみと呟いた。そして成の顔を見て、一瞬躊躇う間を空けた後に口を開く。
「受験勉強、捗ってる?」
「絶不調」
「……自信満々に言い切らないでよぉ、流石に手伝ってあげられないし」
真面目な顔で断言され、黒猫はつい呆れてしまう。元々、座学方面の勉強があまり得意ではないという事は知っていたけれど、やる気を出してもらわなくては困る。自転車競技部がある高校は、成が通える地域に一校しかないのである。
「カラダ動かさねえと集中出来ねえんだよ、落ち着かねえっつーか。……今日は久々だからな、全力でいかしてもらうぜ?」
「望むところ」
腕の筋を伸ばしながら眉を顰めて言う成に、黒猫は眉を下げて笑った。試験期間中は自分も全く同じ気持ちだから、よく判る。挑戦的に言われると、黒猫も目と口を引き締めて頷いた。
「ジョーさん、寂しくなったら、いつでも声掛けて」
「あ?」
「私で良ければ一緒にテニス出来るし……石だって積めるからぁ」
「……気持ちはありがてえがな……石は積まねえよ」
「楽しいのにぃ」
「二人でやる遊びじゃねえだろ……」
「……黒猫、何をしてんだ」
「あ、ジョーさん。遅いよぉ……こんなに石積んじゃった」
不意に影が出来て顔を上げれば、そこには待ち人の姿がある。今日は成がテニスに付き合ってくれる約束の日だった。相手は受験生で、黒猫も後輩が入ってきて指導に忙しかった。楽しみすぎて、待ち合わせの公園に時間よりも大分早く着いてしまった。だから、ただ小石を積み上げるなんて、地味で懐かしい遊びをして彼の事を待っていた。成は不安定に積み上がった小石と、しゃがんでいる黒猫の姿を怪訝そうに一度見て、黒猫と目線を合わせて座り込む。そして小さく息を吐き、彼女の肩を軽く叩いた。
「お前な、でかい図体でンな地味な事すんな……ガキ共が怖がってるぞ」
「ひどい、ジョーさんが遅いから……怖くないよぉ」
目線で促され、そちらを見てみれば、遊具の影に隠れてこちらを窺う数人の子供の姿が立っていた。黒猫は子供達にも気付かずに石を積んでいたのだと知れば気恥ずかしくなるが、その内の一人の怯えた顔と目が合ってしまい、つい愛想笑いをするのだった。
「小さい頃に、よくやらなかった? 石積むの」
テニスコートへ続く道を歩きながら、黒猫は成を見て問いかけた。見慣れた顔だが、練習とレースで傷が薄くなっているのに気がついて、黒猫は嬉しいような寂しいような、自分でもよく判らない微妙な気分になった。
「……石なんか積んで何が楽しいんだ?」
「上手に積むのは難しいなぁ。油断したらすぐ崩れるし、いい具合の石ナカナカないし」
「……地味な遊びだっつーのはよく判った」
「そこは否定しないけどぉ……地味だからこそ、熱中しちゃう」
確かに地味な上に寂しい遊びだろう。高校に入るまで一人で遊ぶ事が多かったから。黒猫は当時の様子を思い浮かべて軽く頷き、しみじみと呟いた。そして成の顔を見て、一瞬躊躇う間を空けた後に口を開く。
「受験勉強、捗ってる?」
「絶不調」
「……自信満々に言い切らないでよぉ、流石に手伝ってあげられないし」
真面目な顔で断言され、黒猫はつい呆れてしまう。元々、座学方面の勉強があまり得意ではないという事は知っていたけれど、やる気を出してもらわなくては困る。自転車競技部がある高校は、成が通える地域に一校しかないのである。
「カラダ動かさねえと集中出来ねえんだよ、落ち着かねえっつーか。……今日は久々だからな、全力でいかしてもらうぜ?」
「望むところ」
腕の筋を伸ばしながら眉を顰めて言う成に、黒猫は眉を下げて笑った。試験期間中は自分も全く同じ気持ちだから、よく判る。挑戦的に言われると、黒猫も目と口を引き締めて頷いた。
「ジョーさん、寂しくなったら、いつでも声掛けて」
「あ?」
「私で良ければ一緒にテニス出来るし……石だって積めるからぁ」
「……気持ちはありがてえがな……石は積まねえよ」
「楽しいのにぃ」
「二人でやる遊びじゃねえだろ……」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる