青春チャンプルー3

狂言巡

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烏瓜と睡蓮

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 そりゃ確かに超大作とか今話題のシリーズ最新作だとかやっているけれど。土曜日だというのに、この人数は少なすぎじゃないだろうか。映画館の入った大規模複合施設に客を取られたとはいえ、全国系の映画館だというのに、入っている人はうちと常勝さん以外は三人だけという始末。何百席とあるともなれば貸切気分でプチ贅沢に浸れるはず、なんだけど。

「や、ちょっと、じょ、常勝さ、なに、」
「大人しく映画見てろ。言い出しっぺお前だろ」

 できるか! こそこそと隣に座っている常勝さんに抗議しても、どこ吹く風。上映が始まって十五分弱。早くも内容に飽きたらしい常勝さんの長い指がするすると這ってきたのは、つい先程の事。始めはさりげないというか本当に些細な接触ものだったのだが、今では明確な意思をもって動いているから、こっちは堪ったもんじゃない。

「……あ、やぁ……」

 声を完全に噛み殺せず、慌てて他の座席に目をやれば、スクリーン前に近い所に一人、離れて真ん中より前方の位置に親子連れ。うちと常勝さんが座っている一番後の席まではかなりの距離。

「この距離なら聞こえねーよ。よく喋るしBGMもデカイ」
「そういう問題じゃ……あ」
「ほな、こうしよか」

 告げられた途端、大きな掌で塞がれた。耳許に寄せられた薄めの口唇が、触れるか触れないかギリギリの距離で言葉を紡ぐ。

「これで、いいだろ?」

 ぺろりと耳を舐められて、一瞬で力が抜ける。それを見越したかのように、それまで撫でるだけだった手が器用に上着のファスナーを下ろしていき、焦らすようにゆっくりと入り込んでくる。指先がなでるように動いて、うちの體は勝手に期待で震えて発熱しだす。自分でも意識しないうちに腰が揺れ動いていたらしい。斜めの上にある咽喉の奥で小さく笑った常勝さんがうちの耳に舌を這わせながら、一層低い声で囁いてきた。

「任せとけ」

 すっかり彼のイタズラに振り回され、うちの正気が戻った時は、映画はとっくにエンディングに入っていた。





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