能天気に暮らしていたかっただけなのに

soumenn655

文字の大きさ
4 / 5
ある舞台俳優A曰く

4話

しおりを挟む
「クズさ」

と先生に断言される
あ、クズさが足りてなかったんだ…
と急な指摘に頭を殴られた衝撃がくる
結構致命的な欠陥ではないか?何が違ったんだろうか
立ち姿?それとも抑揚?頭の中を色々な事が駆け巡っていく
「あ、浜崎さんのが悪いとかではなくて
ちゃんとあれもクズでしたし、ただ望んでるクズとは違って」
先生は慰めの言葉をかけてくれてはいるが
それはなんの意味もない
だって、あの役になっていないのなら出来ていないにすぎないから
どうするべきか悩んでいると

「クズクズ言い過ぎだよ
……けど、やっぱりそれなら私には出来ることないと思うんだけど?」
首を軽く傾げながらそんなことを言うヨウさん
確かに、少しの時間しか過ごしてないけど
楽しそうな雰囲気の人、それこそ友人になりたいなって思う程度で、ミコト君みたいに沼るタイプでは無いと思う
それなのに先生はため息つきつつ
「はいはい、認識の違いってこわいね」

先生が軽く手を叩いて、空気を仕切り直してくれた
「じゃあ、質問続けよ」
それなら、と気になっていたことを先生に聞く
「そもそもなんですけど、なんで男性キャラのモデルに女性を?」
そう、別にヨウさんをモデルにしたかったなら女性キャラにすればよかったのに
「クズ書きたかったのはあるんだけど
近くに居るクズってヨウ位なのと、身バレ防止かな?」
納得できない顔してるヨウさんに笑顔を向けて
「大丈夫!ヨウは男なら何度も刺されてるLvにはクズだから」

「うん、何も大丈夫じゃないフォローありがとう」
と呆れながらジュースをまた飲んでいたと思うと
軽くため息をついて
「別に出来ることはするけどそんなにないと思うよ?」
……という事は
「良いんですか?!」
はっきり言ってヨウさんにとってなんのメリットもないし
結構失礼な事言ってたから断られると思ってた
驚きから呆然としていると

「ん?まりの頼みだし、それに
……君の助けになるんでしょ?」
…なんだろ、ちょっとドキッとした、かも
けど、すぐに心臓も元の動きに戻ったから気のせいかな?
と自分の胸に手を当てて考えていたら
先生とヨウさんの話しは進んでいて

「それで?何をしたらいいの?」
「うん、まずね
今回の舞台の主催団体って自分達のホールと寮を完備してる珍しい団体でね?」
パンフレットを渡しながら説明をしている
そう、そのおかげで何時でも稽古できるし
夜遅くてもアパートの階段が響くこととか気にしなくて済む
そして、少しの時間に寝に帰ることができると大評判!!

「へぇ、この食堂とか立派じゃん
美味しそうだし色んな種類あるんだね」
それが耳に届いた瞬間
「そうなんです!毎食5種類のプレートが用意されているし
それとは別に冷蔵庫には軽食が入ってて
そのどれもが凄く美味しいんです!!」
と興奮して詰め寄って早口でまくしたててしまった
それに気付いて恥ずかしくて座り直す
俺今日こんなんばっかな気がする…
「それは美味しそうだね1回食べてみたいなぁ」
というヨウさんは穏やかに笑っていて
不快に思われてなかったんだと安心する

「うん、いっぱい食べてね」
先生がわざとらしく思う程満面の笑みでそう言ってくる
いっぱい?どいうことだ?
同じ事を思ったらしいヨウさんが
「どういう事?」
「ヨウには1週間位その寮で生活してもらいます!
それで、浜崎さんは気になる事がある度に質問してもらえばヒント手に入るでしょ?」
なんでだろう、少し納得してしまう自分がいる
けど、そんなの事務所も団体も許さないだろう
「あ、各事務所や団体にも許可貰ってるから安心してください!」
先回りで答えられた!
まぁ、俺としては事務所も許可してくれてるなら
ヒントを見つけることができる可能性が高まるからありがたいけど
ヨウさんはそうじゃないだろうし、断られるでしょ
…あ、もしかして事前に聞いてたとか?
とヨウさんの顔を覗き込むと、笑顔で
なんだ、やっぱり知ってたんだと安心してると

「何も聞いて無いんだけど?」
と詰め寄っていた
あ、知らなかったんだ?!全然驚いてる感じしなかったからビックリした
けど、そっかなんの用事で呼ばれたかも知らなかったんだから
コレも知ってる訳なかったよね
「えぇ、だめ?怒ってる?」
と先生が上目遣いで聞いてるけど
そりゃ、難しいでしょ、急な宿泊予定とかと眺めていると

「うーん、良いよ別に
ただ、仕事はあるからその時は抜けるよ?」
と至極あっさり答えていた
いいんだ、という気持ちと受けてくれて良かったという気持ち
そして、働いてたんだという感想が浮かんだ
いや、ヨウさんが働いてないように見えるとかじゃなくて
偏見だけどクズって働かないで貢いでもらってるイメージがあったから、つい…



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...