理想世界の創り方

無限キャラ

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自業自得検証システムと悪魔族

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結局、「拷問体験も必要なお勉強だ」とする価値観を持った世界のままでは、確実に膨大な魂たちが苦しみ続けることになることがわかった。


未熟な魂たちはもとより、超時空世界の超時空聖体の責任問題にまで発展してしまい、そのままの価値観で進むと皆が苦しみの体験から永遠に逃れられなくなることがわかってしまった。


さらに、自分以外の体験者たちの苦しみを自分の苦しみだと感じてしまう純粋に良心的な魂たちなどは、ずっとひたすら苦しみ続けなければならなくなるということもわかった。彼らは他者の痛み苦しみを自分の痛み苦しみと感じたからだ。


それはどう考えてもそのまま放置していてはならない状態だった。


奴隷制度、封建制度、多数決民主主義、家畜利用文化、動物実験や人体実験、いじめや差別や迫害、戦争、家庭内暴力、不当な権力ピラミッドシステム……


そうしたことから生じる拷問的な苦しみ体験を必要なお勉強だとして肯定してしまうと自業自得の責任がひたすらマイナスに蓄積し、大変なことになることがわかった。


そうしたことがどれもこれもマイナス責任となる原因は、そこに誰かの体験の自治権を否定する仕組みが組み込まれてしまっていたからだった。


不条理に……

奴隷たちの体験の自治権が否定され、

身分の低い魂たちの体験の自治権が否定され、

少数派の体験の自治権が否定され、

家畜たちの体験の自治権が否定され、

その他動物や人間たちの体験の自治権が否定され、

弱い者たちの体験の自治権が強い者たちによって否定され、

殺し合いなどしたくない者たちの体験の自治権が否定され、

権力システムのボスによってその下位の魂たちの体験の自治権が否定され、

…………

てしまっていた。


かの不自由な世界においては、そのような理由で膨大な魂が自らの体験を自らの意志だけで自由に選び楽しむ権利を奪われていた。


それはさらに霊的世界においても同様だった。より霊的地位の高い者たちにより霊的地位の低い者たちが従わねばならないような状態となっていた。
それが倫理的に不条理なことであっても従わねばならないようになっていた。


地獄はもとより、天国ですら自分自身の体験や運命を自分の意志だけで自由に選ぶことができない状態になっていた。


誰かに与えてもらわなければ望む体験、状態、幸福……を得ることができないようにされていた。


いずれの状態でも、魂たちが自分自身の意志だけで自分の体験、状態、幸福……を自由にコントロールできる状態ではなかったのだ。


また、上の許可がなければ下の者たちは、他の体験者たちを苦しみから助けることもできなくなっていた。


その原因が、


「苦しみの体験は魂たちに必要なお勉強だから……」


という価値観に問題があったからである…ということがわかったのだ。


自業自得学園のシステムの中では、その間違いが自動的に理解できるようになっていた。
そのような価値観を肯定して自業自得システムを起動してしまうと、延々と苦しみの体験を味わい続けなければならないということが最終的に理解された。
どんな苦しみ体験であっても誰かがそれを必要なお勉強だと言えば、いつまででもありとあらゆる苦しみ体験を延々と味わわねばならなくなってしまったからだ。


その結果、「苦しみ体験はすべて体験者に必要なお勉強だ」という価値観は間違っていると気づく。


ただし、それは苦しみを通しての理解であり、別に苦しまずに理解してもよかったのだ。


どちらも自由に選べるのなら、苦しまずにその理解に到達した方がいい。


「あらゆる体験者が自分の意志だけで自分自身のあらゆる体験、運命、環境……を自由に選べるようにしてゆく必要がある……だから苦しみの体験は別に本人が望まなければ必要ではない」


たったそれだけのことを心から納得し理解でき、そうした状態を推進し維持してゆこうとする意志を持てるようになれば良いだけだったのだ。


学校の授業で学ぶ必要があるのは、実は、それだけでよかったのだ。


膨大な知識を得ても、理想世界の最高法規を推進してゆこうとする意志が持てないままでは、その知識を必ず悪用してしまう。他者の体験の自治権をその知識や技術で奪ってしまう。


かの不自由な世界では、そうしたことが現実化していた。


魂たちにせっせと知識を得させ、新しい技術を研究させ、それを誰かの体験の自治権を奪うために使ってしまった…その結果、とんでもない自業自得のマイナスの責任を背負い込んでしまった。


そして新しく発見された知識や技術の悪用によって、膨大な魂たちが拷問的な苦しみを味わい続けていた。


そしてついには世界ごと滅ぶために必要な技術にまで手を出してしまっていた。


不条理に苦しめられた膨大な魂たちの無念の怨念がかの不自由な世界に渦巻いていた……



ムゲンは、こうした理解を自業自得学園のロビーにいる楽園刑務所アルバイターやクリエイターたちの意識の中に転送する。


楽園世界を創造するには、反面教師としていい素材だったからだ。


それでも理解できない者たちには、希望者のみ、いろいろな不自由な世界を体験できるようにしてみた。


説明してもどうしても理解できないのであれば、実際に体験して学ぶことも自由参加のフリースクール形式で提供した。


そしてそれでもどうしても最高法規に反する意志しか持てない者は、楽園刑務所のクリエイターから外れてもらった。


悪魔族たちが文句を言ってきた。


「なんでやねん! せっかくアルバイトにきてやったのに、なんでわしらをのけ者にすんねん!!!」


などと怒っている。


「君たち、それじゃあ、その意志を持ったまま自業自得検証システムを体験してみてごらんよ」


そう伝えると、

「そんなん、わしらの自由やろ? そんな義務とかないんやろ? 勝手にそなこと強制すなよ!」

などと逆切れされてしまった。


「あー、誤解しないでね、これは強制じゃないよ、ただ、資格試験みたいなものだよ。試験を受けない自由はあるけど、試験に合格しないと楽園刑務所のクリエイターとしては認められないってだけだからさ」


とムゲンの分身体の一体が説明する。


「じゃあ、いいよ、試験に合格すればいいんやろ、受けたろやないかい!悪魔族をなめんなよ!!!」


などと叫びながらぞろぞろと自業自得システムの穴に入ってゆく……


小型の自業自得学園だ……小さな真っ赤な口がおどろおどろしい……


しばらくすると案の定、悲鳴が聞こえてきた。


いつでも逃げ出せる脱獄ボタンをわたしておいたので、そのうち出てくるだろうとムゲンは思う。


だが……なかなか出てこない……


心配になってそっと遠隔監視システムのボタンを押して中の様子をうかがってみる。


すると…


悪魔族たちは車座になって目を閉じて座っていた。


ふと自業自得検証システムの時間設定ゲージを見ると、なんとすでに数億年経過していた。


どうやら悪魔族たちは時間設定調整レバーを誤作動させてしまったようだ。しかも、レバーが折れていた。


さらに、ひょっとして使う必要があるかもしれないと、一億年ボタンみたいなのが厳重にガードされて封印されてあったのを、その封印をこじ開けて連打してしまったらしい。


しかし……悪魔族たちの表情は実に穏やかになっている。瞑想状態に入っているようだ。


さすがに数億年も自業自得システムにいると悪魔族でもそのようになるみたいだ。


だが数億年もかかるのは問題だ。


なぜ、脱出ボタンを押さなかったのだろうか……といぶかしく思う。


経過を時間を巻き戻して確認してみると、どうやら脱獄ボタンの奪い合いをして壊してしまったらしい。


他の者に取られるくらいならと、わざと壊したようだ。その騒動の中で時間設定レバーも誤操作した上に、折ってしまったようだ。
そしてとうとう厳重に封印してあった一億年ボタンを見つけてしまい連打してしまったらしい……


なんというダメ意志……わざと壊すなよ……


とはいえ、今は穏やかに瞑想している。


後ろから声をかけてみると、うっすらと目を開けたので今の心境を聞いてみた。


「われらは自らの心を制御した……われらの心を乱せるものならば乱してみよ」


などと言う。


どうも悪魔らしくなくなってしまった……数億年かかっているけど……
彼らの心をちょっと乱してみようかと思ったが、嫌な予感がしたのでやめた。


諸行無常だなあ……とムゲンは思う。というかこの自業自得検証システムはもっと安全装置を多重に設置しなければなと思う。


しかし、こうして数億年苦しんで穏やかになるより、もっと楽しみながら穏やかに……というか愉快に成長する方がやっぱりいいなとムゲンは思う。


そんな彼らと立場を交代してもいいかというと断固拒否だ。


そもそも相手の立場になって考えることさえまともにできれば、自業自得検証システムなどいらないのだ。

あらゆる体験者と立場を入れ替えても問題ないかな……と考える習慣がついていれば楽園世界をクリエイトする時に大きな間違いはしない。

その他者を思いやる心の習慣をつけるためだけに、わざわざこんな数億年の苦悩のお勉強など必要ない。


かの不自由な世界の支配者たちは、果たしてどちらの道を進むのだろうか……とムゲンは気になった。

あらゆる体験者たちと立場を交代して自業自得システムでお勉強する道か、こうした説明を聞いただけで理解し、あらゆる体験者たちのための楽園世界をクリエイトする道か……

そんなアクシデントもありながらも、着々と楽園刑務所モデル作りは進んでいった……


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