理想世界の創り方

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自業自得と支配特権問題

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裁判長からのお達しで、「魂のお勉強推進委員会」の面々たちは、自分たちが今までしてきたことを続行すると自業自得学園に入れられてヤバいことになると心配しはじめた。


戦争とか病気とかいじめとか貧困とか……そんなお勉強の犠牲者になるとか、そんなのは嫌だ…と思った。


「これはもう路線変更するしかない……」とさすがの魂のお勉強推進委員会の面々も思った。


しかし、今までの支配特権は失いたくはない。


なんとか自業自得になっても支配特権が維持できるうまい手はないものか……と考え始めた。


一人の委員が、言う。


「それやったら、みんなに支配特権を与えてしまえばいいんとちゃうん?そうすれば、自業自得で俺らにも支配特権が与えられるんとちゃうか?」


別の委員が応じる。


「お前、あほか! みんなが支配特権を持ったら、一体誰を支配するねん!」


「なるほど……それもそうだな……」などとその他の委員たちが相槌を打つ。


「それなら、とりあえず、支配されてもいいという魂を募集してみればいいんとちゃうかな?」


「募集って、そんな募集に応じてくれる魂なんかおらんやろう?」


「いや、おるんちゃう? 一人でもいれば、みんなにそいつを支配できるようにしてやれば、支配特権をみんなに与えて上げれるやんか」


「そんなら、お前がその一人になればええんとちゃうん?」


「あほか! そんなことしたら俺が支配特権を失うやないか!」


「そんなん言うても、お前の案なんだから、お前が担当するのが筋やんか」


「ちゃうやん、広く募集すれば一人くらいいるやろうって話やろ? 世界中探せばいるやろ」


「で? 君たち、その一人が見つかったら、我々はどうなるのかね?」


「いや、そりゃ、そうなれば我々は、支配特権を失わずに済むやろ?」


「その一人だけを我々全員で支配するのかね?」


「それもなんか変な感じやなあ…」


「いっそ、アンドロイドを大量に作ればいいんとちゃうかな? 我々の技術なら可能やろ?
そんでそれをみんなに支配させてやればええやんか」


「あーそういう手もあるんか」


「なかなかええな」


「しかし、人型アンドロイドの大量生産はハードルが高いな」


「それなら、別に丸型でも四角型でもええやんか」


「そんなんでいいの?」


「そ、それは俺に聞かれても…裁判長に聞いてみてくれよ」


「えー、なんであたしがそんなリスキーなこと聞かなきゃいけないのよ!」


「まあええやん、便利なアンドロイドを大量生産してみなに配ったところでおとがめもないやろ?」


「まあ、それもそうやな、むしろ感謝されるかもな」


「ほう、それはなかなかいいアイデアかもしれないぞ」


「そうね、感謝してもらえれば、丸く収まりそうね」


「それなら、せっかくだからそのアンドロイドで魂たちを支配するってのはどうかな?」


「お! それいいな、そんなんできるんか?」


「そりゃ、我々のハイテク技術を使えば、その程度わけはない。その気になればあの魂の入っている肉体というのをアンドロイドにすることだってできる」


「え? そんなんしてええの?」


「ええかどうかは知らんけど……」


「それってヤバくない?」


「自業自得ってことは、えーっと、俺らのこの意識体もアンドロイドにされてまうってことか?」


「おそらく、そんな感じになるわね」


「じゃあ、俺たちはどうなるわけ?」


「どうなるって……この意識体の中に残れなくなるんじゃないの?」


「じゃあ、その場合、我々はどこに行くことになるのかね?」


「そりゃあ、どっかもっといい世界に転生できるんじゃね?」


「おいおい、ちょっとそれは困るよ、君!」


「なんでやねん、もっといい世界に行けるなら別にええやろ?」


「おいおい、もっといい世界に行けるという保証などどこにもないだろう!」


「裁判長は、たしか、故意に望まれていない体験を魂に強制したら自業自得学園に入れるとかいってたと思うけど……」


「それなら魂たちが望むようにうまいことやればいいやんか」


「どうやって?」


「それは、今まで通り、飴体験と鞭体験をうまく使えばそれくらいできるやろ?」


「そんなことしたら、あたしたちも飴体験と鞭体験をうまく使われて、アンドロイドになることを望むようにされちゃうんじゃない?」


「そんなこと我々が望むわけないやんか!」


「でも超時空聖体様たちが本気でそうしようと思えば、そうされちゃうんじゃないかしら」


「はあ!? 超時空聖体様たちが、そんなひどいことされるわけないだろ!」


「いや、超時空聖体様たちはしなくても、自業自得学園様ならするだろうね。それがお仕事だし」


「それは、あかんやん」


「それなら完全にアンドロイドにするのは止めて、半分だけ、いや三割だけでもアンドロイド化すればいいのではないですか?」

「おお! それなら我々も半分か三割くらいは生き残れそうだな」


「はあ? ちょっと半分や三割だけ生き残るって、その方がヤバいんじゃないの?」


「どうかな……でもその半分をうまく操ってもらって今より楽しければいいんじゃないかな?」


「でも、もしその操り手が残酷非道な奴だったら、どうなるのよ」


「いや、ふむ…それはちょっと最悪な事態になるかもしれないなあ……」


「じゃあ、ダメよ、その案は却下!そんな状態になるなんて、危なくってしょうがないわ」


「いや、俺はいいんじゃないかなと思うんだけどなあ……」


「それなら、あんたが全部担当して自業自得の責任全部取ればいいじゃないの!」


「いやいや、それはダメだ。裁判長は確か、以前、未必の故意も故意になると言っていたから」


「えー!なにそれ? それじゃああたしたちには連帯責任が問われるってこと?」


「それは仕方ない……我々は魂のお勉強推進委員会として活動しているんだから」


「ちょっと、何それ? あたしそんなことになるのなら、この委員会を脱会するわ」


「それじゃあ、魂を教育する立場から手を引かなければならなくなるってことになるぞ」


「だって、自分の半分とか三割とかを誰だかわからない奴に好き勝手に操られるよりかはましでしょ?」


「じゃあ、超時空聖体様たちに操ってもらえばいいんじゃね?」


「じゃあ、まず、あんたが操ってもらえばいいじゃない」


「それだと俺の支配特権はどうなってしまうんだよ?」


「そんなことあたしに聞かないで、超時空聖体様に聞けばいいでしょ。確か完全自由参加型のフリースクール形式にするって言われていたと思うけど……」


「じゃあ、それって支配特権となんか両立しないんじゃないの?」


「いや、大丈夫じゃね? 少なくとも自由参加してくれた魂たちには支配特権が有効になるんじゃね?」


「でも……誰も参加しなかったらどーなるんだよ!」


「そこはうまく参加したくなるようにしたらいいんじゃないかな?」


「いや、そんな無理に追い込み誘導するようなことをしたら、完全自由参加型じゃないとか言われる危険があるなあ」


「これはなかなか難しい問題だなあ……」

「ねえ、ちょっとあたし嫌なことに気づいちゃったんだけど、これってさあ、どんな方法を使ってもあたしたちが他の魂への支配特権を確保できちゃうと、あたしたちも他の魂にあたしたちの支配特権を確保されてしまうって話になるんじゃないの?」


「あ、そうか、自業自得ということは、そーなっちゃうってことなのか?」


「うーん……それもなんだかなあ……」


「あーもう、難しすぎて、よくわかんねーよ!」



魂のお勉強推進委員会の面々は、その人間離れした高い知性で一生懸命に支配特権を持ち続けるための良い方法はないかと話し合っていた。



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