理想世界の創り方

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体験の自治権推進委員会は体験世界の意志の法則を変更した

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そしてついに体験の自治権推進委員会は、体験世界=肉体世界、霊的世界、意識世界…のすべての世界の基本法則にまでその改良の手を伸ばし始めた。


その基本法則とは、


「互いの願いや意志が互いの体験に影響を与えてしまう」


という法則だった。


体験者同士がいかに自分の意志だけで自分の体験を自由に選べるようになっても、そう強く意志すれば他の体験者の体験に良かれ悪かれ影響を与えてしまうという基本法則が存在していたのだ。


この法則が存在していたがために、体験者同士は、互いに他の体験者たちから望む意志の影響を受けようとして、ついには他の体験者をだましたり、自分のイエスマンにして無理やり感謝させたりしてしまったのだ。

あの手この手で、何とか他の体験者が自分に対して望む意志を持つようにとそんなことばかり考える時代が長く生じてしまった。


その結果、膨大な苦しみと悲劇の体験や歴史がその世界に出現してしまったことが研究の結果わかったのだ。


つまり、体験者同士の意志が、互いの体験者の体験に影響を与えてしまうという法則が問題だとされ、法則の変更がなされた。


すでにその頃には、世界全体の体験者たちはスタンドアロン状態ならば体験の自治権を得られる状態になっていたが、どうしても体験者同士の自由な関係性において互いの意志によって相手に望まない体験を与えてしまうという現象だけはきれいになくならなかったのだ。


その結果、超時空城のプライベート世界に引きこもる体験者たちが増えてしまっていた。


そのプライベート世界ならば、あらゆる他者からの干渉を拒否して引きこもることができたからだ。


しかし、そうなると自由な関係性を持って楽しむ可能性が激減する。


そうなると楽しめる体験の創造行為が停滞しはじめるようになった。


誰もが自分だけのプライベート世界に完全に引きこもり他の体験者との交流を避けるようになってしまうと、新しいドラマや体験が生まれにくくなってしまったのだ。


それに気づいた体験の自治権推進委員会は、調査の結果、互いの体験者の意志が互いの体験者の体験に影響を与えてしまう法則に問題があるということに気づいた。

それは良い影響の場合もあったが、悪い影響の場合もあった。

良い影響の場合は良いのではないかと当初思われていたが、それによって体験者たちはその影響を与えてくれる他の体験者に依存してしまうようになることが調査の結果わかった。


すると、体験者たちの体験の自治権が失われていってしまうことに気づいた。


悪い影響を与え合えば、当然、体験者たちにとって良くない結果になるわけだが、良い影響もまた体験者たちの体験の自治権を推進する視点から見れば、体験者たちに長期的に見て悪い影響を与えてしまうことがわかってしまったのだ。


超時空体験図書館の記録を調べると、膨大な体験者たちが他の体験者たちからの感謝や賛美や崇拝などの意志から生じる体験に中毒してしまい、無理やり飴体験や鞭体験という拷問体験などまで駆使して、体験者たちの心を支配しようとしてきたことがわかった。


宗教と呼ばれる仕組みのほとんどがそうした動機によって発生していたこともわかった。


感謝せよ!感謝せよ!と信者に感謝を求める教えのほとんどがそうした動機から発生していたのだ。

崇めよ、崇めよ、崇拝せよ、崇拝せよ、賛美せよ、賛美せよ……そうしたことを信者に求める教えのほぼすべてがそうした動機から発生したものであった。

その結果、膨大な数の体験者たちがそうした行為に巻き込まれて体験の自治権を失う結果になった。

しかも、ただ感謝や賛美や崇拝の意志を要求しても良い結果にならないからと、無理やり拷問体験という鞭体験を使って体験者たちを地獄のどん底状態にしてから、素知らぬ顔をして救いの手を差し伸べるようなことまで自作自演で平気で実行していたのだ。


そこまで調べた体験の自治権推進委員会は、これは問題だと、ついにその互いの意志が互いに影響を与えてしまうという法則そのものを改める決定をした。

そんな法則があったがために、そうした残酷歴史が発生したのだと理解したのだ。
感謝されるという体験への飢えや渇きによって、彼らはそうした残酷行為をしてしまったのだ。


そのように理解に達した体験の自治権を推進しようと意志する体験者たちは、ついにそうした法則まで改良する決意をした。


すでに改良すべき雛形は、超時空城にある完全プライベート世界に存在していた。


そこは一切の他者からの影響や検閲行為を完全にガードできる世界だった。


そのかわりそのプライベート世界に発生する体験はすべて自分だけが体験する仕様になっていて、そのプライベート世界内で発生したことは一切外部の体験者の体験に影響がないようにしてあった。

つまり、自分が空想できる世界は、どんな世界でも自分で体験できるようになっていた。
他者が必要な体験であってもその他者のキャラをしかとイメージすることができれば、現実と同じようにそのキャラとのありとあらゆるタイプの体験を味わうことができるようにもなっていた。
だから、空想能力さえその気になって育成してゆけば、どんどんと自分の意志だけで自分が望む体験や世界を生み出して楽しめるようになっていた。
超時空城では、空想できることは何でも現実化できるようになっていたのだ。
プライベート世界では、その住人の空想能力が超時空体験図書館の膨大な過去現在未来の体験記録とリンクしていて、ありとあらゆるリアルな実体験をそこから借り出すことができるようにしてあった。


超時空城にあるプライベート世界は、そのような感じの仕様になっていた。


だからどんな犠牲者や被害者もそのプライベート世界にいる限りは生まれることがなかった。
そこには自分以外の体験者が存在していなかったからだ。
しかし、純粋なリアルな体験そのものは自由に味わえるようになっていたのだ。
それは、無数に録画されている映画のお気に入りのシーンだけを取り出して自由自在に見て楽しめる状態に似ていた。
そして超時空体験図書館には過去現在未来のすべての体験が記録されていたので、意識体の体験者が空想できることはすべて体験できるようになっていた。

また、そこに発生する体験を自分がすべて味わうという仕組みによって、してはならないことを理解できるようなお勉強効果もあった。
例えば、戦争体験を空想して自分の空想分身体を作り、互いに殺し合いをするなどの体験を自分が味わわねばならなくなると、これはまずい!とすぐに気づいて改めるようになるのだ。
こうして魂のお勉強というものは、そうしたスタンドアロンのプライベート世界でもそこそこできることが証明されたりもした。


意識体レベルであれば、すでに肉体において発生する苦痛が一切ない状態になっていたが、さすがに他の意識体からの意志の影響は受けてしまうようになっていたので、そうならないように意識体の基本仕様も変更された。
超時空体たちに頼んで仕様変更してもらったのだ。

超時空体たちは世界の法則から何からすべてを変更できる特殊能力を持っていた。


彼らはひとつの意志をもった進化し続ける新世界のようなものだった。
世界の基本法則からすべてを0から自由に構築できる特殊能力を持っていたのだ。


ただし超時空体に進化するためには、自業自得学園で長く長く長い修練を積まなければならなかった。
そして何度も何度も何度も…あらゆる種類の試験に合格する必要があった。
時のない部屋で何億年……時には何十億年も修業するのは当たり前だとされていた。

よって超時空体たちが、自業自得検証システムにおいて致命的なミスをする可能性はほぼ0に近い状態になっていた。


そこまでしてようやくそうした世界そのものを0から自由に創造する自由が手に入るようになっていた。


不自由な世界群は、そうした超時空体たちの助け得て、その世界にあった意志の法則を改良した。


その結果、感謝される体験がしたければ、他の体験者がいなくても純粋に感謝されるという体験が得られるようになった。


そうなると、宗教家たちや神や悪魔や神族や権力者たちは、そのイエスマンや信者を必要としなくなっていった。


どんな体験でも他の体験者なしに自由に味わえて、さらに他者の意志も一切自分の体験に影響を与えることがない世界になると、権力者であること自体が意味のない不毛なことになった。


他者の意志から発生するあらゆるプラスの体験が好きなようにより取り見取りで他者が存在しないプライベート世界で自由に味わえるのだ。
しかも、他者からの怨念や恨みつらみの意志の悪影響は完全に発生しない世界になったのだ。


こうなるともう、権力ピラミッドシステムもまったく意味がなくなってしまった。

他の体験者に依存してしまう……という可能性も0になってしまった。

不自由な世界の体験者たちは、体験が強制できるシステムや法則によって呪縛されていただけだったのだ。

その法則が変更されると、その呪縛から体験者たちは解放されていった。


こうして新世界は、完全に一切の体験の強制が存在しない体験自由自在の楽園世界に進化した。


超時空体験図書館には、


「完全なる体験の自治権は、一切の体験者たちの不満を癒す特効薬」


だと記録されていた。
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