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超時空城の面々たちの議論(全知全能神問題他)
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超時空体験図書館での授業を受けた結果……そして未来に残った世界に存在する進化した完全な体験の自治権の一瞥を得た結果……
体験の自治権……この権利が奪われてしまっているから、いや、そもそも始めからこの権利を体験者たちに与えなかったから……不自由な世界では、体験者たちが不自由な状態に置かれ続けていたのだと、ムゲンは、はっきりと明確に理解した。
誰もが自分の意志だけで自分の味わうあらゆる体験、運命、環境……を自由に選ぶ権利
この権利こそが、はじめから体験者すべてに与えられるべきだったのだ。
人間族たちの社会には、「人権」という価値観があったが、その権利は、明らかに体験の自治権の劣化版の権利でしかなかった。
それはあくまで人間族だけの権利であり、人間族以外の体験者の体験の自治権まで含まれていなかった。
動物たちの体験の自治権はほとんど無視されていた。
それをいいことに神族や悪魔族や天使族や創造主族や宇宙人族……などがよってたかって人間族の体験の自治権を奪い合っていた。
それは倒れた弱い肉食動物の肉体を奪い合うより強い肉食動物たちのバトル現場のようにムゲンの意識体の目には見えた。
一番弱い動物族たちもまたそうした強い肉食動物たちのバトルに巻き込まれてさらに酷い目にあっていた。
つまり不自由な世界は、倫理的に見てめちゃくちゃだった。
そうした状態を良くないと感じて、何とか犠牲者を助けようと声を上げている体験者たちもいたが、いかんせん多勢に無勢で強い肉食動物たちが体験者たちを奴隷や家畜や操り人形やイエスマンなどにして生み出した権力ピラミッドシステムによってその良心的な自治権や良心に反した支配行為を止めさせる自由を奪われていた。
他者を支配する力があれば何をしてもいい……物質世界、肉体世界は基本そうした様相だった。
一神教という宗教の信者たちが互いに残酷に殺し合い、苦しめあっていた。
その宗教の教えには、「あらゆる体験者の体験の自治権を推進すべし」という教えは書かれていなかった。
そのために、互いに残酷に殺しあい、苦しめあっていた。体験の自治権がそして失われていた。
その神がそうしても良いと言えば、どれほど残酷なことでも良心に反したことでも不条理なことでも、何をしてもいいのだと信者たちは思っていた。
そしてその神は、残酷に自分の信者同士を二手に分けて、わざと殺し合いをさせ、憎しみあわせた。
その神の信者たちはあろうことか、その神を信じる者同士で互いに憎みあうようにさせていた。
その有様を見て、憎むべき相手が違うだろう……とムゲンの分身体は思った。
憎むべきは、そんなことを自分の信者たちに、さらには良心的な体験者たちまで巻き込んでさせているその神でなければならなかった。
なぜならそうした殺し合いをその神がやめよと言えば、やめさせれたのだから。
全知全能だと言われていた神が、そうした残酷なことを故意、もしくは未必の故意で信者たちにやらせたのは明らかだった。
神に何でも従う者たちが互いに殺し合いをするのならば、それはその全知全能と言われる神が故意、あるいは未必の故意で信者たちにそうした残酷劇をわざとやらせたということになるからだ。
さらには関係ない無宗教の良心的な魂たちまでごっそりと巻き込んで迷惑をかけ、苦しめたことになる。
確信犯でその神はそうしたことを実行したことになる。
あるいは、その宗教の神が実は存在していなかったということになる。あるいは全知全能だという触れ込みが嘘だったということになる。
であれば、とんでもない詐欺行為がそこにあることになる。
どちらにしてもその場合、その神というものや、あるいは神という嘘をでっちあげた者たちこそが憎むべき対象にならなければならない。
そんな詐欺だか残酷確信犯だかに従って犠牲者同士で憎しみあい、殺し合いなどやり続けてもその悲劇が終わるわけがないのだ。
その残酷な神を捨てるか、嘘の宗教を捨てるか、あるいはその両方を捨てるかしない限り、そうした残酷劇はいつまでたっても終わらないということになる。
それほど簡単で自明なことが、どうして理解できないのだろう……とムゲンの分身体は思う。
その理性で冷静に考えれば、わかるはずのことだった。
だが、結果がそうなっている以上、理性で考えていないか、考えれても最終的には愚かな憎みあいや殺し合いを選んでしまったということになる。
なぜそうなるのか? その不自由な世界にいたムゲンの分身体はもうわけがわからなくなってきて、超時空城の面々にこうした疑問をテレパシーで送信して対策を考えてもらうことにした。
ーーーーーーーーーーー
超時空城の面々は、いろいろ調査し分析し議論していた。
「そもそもですね、彼らはもはや理性や良心に従うことができなくされている状態だと思われます。
まず、かの宗教と呼ばれる教えの中には、不条理で残酷なことをしている神であっても、それに全面的に従うようにと書いてありました。
そうしないと地獄と呼ばれる拷問体験強制世界に落とされるとか……
そして、従えば天国というご褒美的な世界に行けるのだとか書かれてありますね。
つまり飴体験と鞭体験を使ってビシバシと魂たちを無理やり調教して従うようにしたということがわかります。
何千年もそんなことを繰り返した結果、このような有様になってしまったようですね。」
一体の分析官がそんなことを言う。
「しかし、なんでわざわざ自分にすでに従う意志を示している信者同士をわざわざ殺し合わせたりするのだろうね?」
別の調査官が疑問を呈する。
「おそらくそうすることで、どんな理不尽で残酷な命令でも喜んで従う魂を手に入れることができると判断したためかと思われます。
うわさによると、罪のない動物や子供を犠牲に捧げるような残酷な儀式なども不自由な世界の過去の歴史には存在してたようですし、そんなことをわざわざする理由なんてそれくらしかないでしょう。
根が残酷な性格で他者を信じることができないものだから、残酷なことを実行する助手というか部下には、そうした残酷試験のようなものをしなければ安心できないのでしょうね」
などと言う者もいる。
「しかしその神の信者たちは、普段はそんなに残酷なことはしていないのではないですか?
むしろ、一部地域では品行方正で隣人を愛し、慈善活動などもしているように見えますが、その点はどうなんでしょうね?」
別の観察者が質問する。
すると、
「それは、自分たちの信者を増やすためには、信者増やし係がいかにも悪党的な者たちであれば、信者が増やせないからそうした品行方正な立ち振る舞いや慈善事業とかを建前でさせているんですよ。
その裏の本音には、とにかく人間族全員をできるだけ自分に何でも従うイエスマンにしてやろう……という腹があるように思われますが……」
そんなことを言う者もいた。
「しかし、その神の信者といっても、どうやらいろいろな派閥というかタイプに分かれているようじゃないか……
なぜ、わざわざそんなタイプ別に分かれているんだろうね?」
すると、学者タイプが、
「それはおそらくいろいろなタイプの自分のイエスマンを育成しようとしたのではないでしょうか?
自分を怖れて拝み倒すばかりのイエスマンだけではつまらないとかで、賛美して愛してくれるタイプのイエスマンとか…
いろいろなタイプのイエスマンが欲しかったから……という理由であれば、その点は説明できるような気がしますがどうでしょうね?
例えば、デブで不細工で残酷な者を権力者にしておいて、そうした者にでも何でも喜んで従うような魂を育てるために、わざとそうした恐怖政治国家などを樹立させて放置している……などの可能性もありますよ。
そうした準備をしておけば、自分が多少なりともその不細工で残酷な権力者よりもましであれば、絶対確実に喜んで自分のイエスマンにもなってくれるだろう……みたいな裏があるんじゃないですかね?
どんな拷問をしても、どんな理不尽な命令をしても、何も悪いことをしていない良心的な者をいじめろと言っても、はい、ご主人様……などと喜んで従う魂をその神とやらが欲しているのではないかと思われますが……」
そんなとんでもない意見なども出てくる。
「それはあまりにもひどすぎるんじゃないですか!!!嘘でしょう? 嘘だと言って!!!!」」
などと甘太郎一族が泣きながら叫んだりもしている。
「いやいや、甘太郎君たちよ、今はかの不自由な世界を自由な世界にするにはどうすべきかという議論をしているのだから、自分が許せないと思うことを嘘だとしてくれなどと言うのは、適切な対策を考える上で問題だよ。それくらい理解できますよね。甘太郎君!」
「だって、そんなの酷すぎるじゃないですか! あってはならないことですよ!」
などと甘太郎たちは感情的になってしまってまともな議論にならなくなってしまっている。
「まあまあ、真実は、超時空体験図書館で調べればわかることではないですか……嘘だとか嘘でないとか、ここで議論してもしょうがないことですよ」
などと仲裁に入る者もいる。
議題は変わり、次は環境保護問題について議論が始まる。
「あのですね、環境保護、環境保護ってその不自由な世界で言われているようですけど、今回、体験の自治権が環境よりも大事であることはすでにお伝えしております。
その結果、体験の自治権推進委員会というものも、とりあえず発足しております。
ですから、今後は、環境問題よりも、体験の自治権問題がかの不自由な世界では優先されてゆくことになるかと思われます」
などと説明がある。
「なるほど、それはよかった……しかし、そもそも体験者たちの体験の自治権が奪われたままの世界をそのまま無理やり存続させて守ろう……という価値観ではダメだということはちゃんと伝えられているのだろうか?」
「いえ、とりあえずあらゆる体験者に体験の自治権を提供してゆくようにという目標をお伝えしている段階です」
「であれば、多分、勘違いというか、理解不足で、今まで通り体験者たちの体験の自治権が奪われた状態のままその世界を継続してゆこうとするんじゃないだろうか?」
「それは、まあ、いきなり完璧に体験の自治権が提供される状態にするのには、あれほど不自由な世界にそもそも設計されている場合いささか無理があるかと思われますが」
「ということは、あれだよね、牛歩戦術というのかな……例えば、一年間で一人だけの体験の自治権をほんの少しだけ推進したからそれでよしとしようとか、ずるいことを考える者も出るかもしれないぞ」
「なるほど、その場合は、ほぼ半永久的に体験の自治権があらゆる体験者に提供されていない状態を継続できるということになってしまうのか…一応前向きに少しだけでも前進しているように見える形にすれば……」
「それではいけませんねえ……」
「そうですね、であれば、ただ前向きに体験の自治権を推進すればいい……との目標設定だけではダメかもしれませんね」
「しかし、あの不自由な世界は、調べたところ、こちらを立てればあちらが立たず……的な問題が生命システムの基本仕様に無数に設定されてしまっているから、完璧を目指すように言っても非常に難易度が高いのではないでしょうか?」
「であれば、その不自由な世界の世界創造者レベルに協力というか、償いの意味で体験者全体にできるだけ痛みのない手直しをするように命じればどうでしょう?」
「なるほど、確かにあの世界の基本設計をした創造者たちなら、手直し方法もわかるはずだね」
「それはいいアイデアかもしれませんね、このような理不尽な体験強制収容所のようなものが存在していること自体、それをそうでないものに戻す技術も確かにあるということになりますからね。
複雑な魂の牢屋を制作することができるなら、その牢屋を牢屋ではないものにする技術もあるということになりますから」
「しかし、それはいいとして、大事な問題は、あの不自由な世界に住んでいる魂たちのほとんどが、そうした改革をしてほしいと願い出ない可能性があるということではないですか?
動物たちのほとんどが、野生の本能なるものに従う状態になっていますし、人間族たちも似たような状態になっているうえに、先ほど議題に上がっていた宗教や飴と鞭による調教や洗脳なるものによって、自発的に魂の牢獄をそうでない誰もが楽しめる体験遊園地に変えてほしいという申請をすることができなくされてしまっているように思われます。
霊的存在たちもまた、さらにえり抜きで調教、洗脳された結果、あの世界のピラミッドシステムのボスに霊的存在にしてもらったという経緯がある以上、人間族よりももっとその申請をしないと思われます。
であれば、ほとんど誰もその申請というか、請願をしないということになってしまって、そうなると改革できないのではないですか?」
そんな意見も出る。
「いや、しかし、ほら、拷問的な悲劇や苦しみを無理やり味わわされている魂たちなら請願するでしょう? 自殺まで考えて思い詰めている魂なども多数いるようではないですか」
「いやいや、それがね、もし自殺すれば地獄という拷問体験強制収容所みたいなところに落とされるとか人間族を脅しているようなんですよ」
「え? なんでまた、そんな脅しなどしなきゃならないんですか?」
「いや、そう脅しておかないとみんな麻酔薬とか安楽死薬とかを使って、残酷拷問体験を強制されたらその苦しみ体験から逃げてしまうと魂をピラミッドボスのイエスマンに調教できなくなる……と思っているからのようですよ」
「それはまた、ひどいね……」
「しかも、ただそんな風に脅すだけではなくて、せっかく良い麻酔薬や安楽死薬が開発できていて使えるし提供できるのに、わざわざそれを簡単には使えないようにしてしまっているんですよ。麻酔薬の乱用はダメ絶対!とか言って……
しかもですね、そうした苦痛を消せるお薬を自由に使ったり所持できなくしておいて、もっと危ない飲めばすごく苦しんで死んじゃうような化学薬品とか毒植物とかは別にその栽培や所持が禁止されていないんですよ」
「それは、なんだかおかしな状態になってしまっているねえ」
「そうでしょう? 明らかにおかしいですよね。皆の体験の自治権を推進してゆこうという価値観なら、そんな状態になるわけないですからね。
あの肉体という体験強制装置の中にいると耐え難い拷問的な苦痛はいつでも体験者に生じる可能性があるのですから、悪い副作用の少ない麻酔薬があるなら誰でもいざという時のために常備できるようにしておくことが当然かと思われますね
まあ安全な使い方の講習くらいはセットにする必要があるでしょうけど…」
「ふむふむ、なるほど、であれば、そうした部分を具体的に改めるように不自由な世界に通告すればいいのかのう……」
「いやいや、まだ他にもいろいろ問題はありますよ、それだけでいいわけがないじゃないですか!」
「でもそんな通告をしたところで、あの世界が簡単に改めるかなあ……」
「じゃあ、改めなければ、そうね、あの世界を含むあの体験強制ピラミッドシステムごと存続不可という通告をしておけばいいんじゃない?」
「え? じゃあ、何、霊的世界も存続不可になっちゃうの?」
「しょうがないじゃない。そうしないと物質世界を営業停止にしても、霊的世界で同じことはじめたら意味ないもの」
「じゃあ、そのピラミッドシステムの製作者はどうなるの?」
「そりゃ、それも存続不可よ、理由は同じ理由よ。霊的世界や宇宙世界を含む体験強制ピラミッドシステムごと解体しても、またどこかで同じような拷問体験強制ピラミッドシステムを0からせっせと創られたら問題解決にならないでしょう?
つまり、今ここで手抜きしないであらゆる体験者に体験の自治権を提供する断固たる本気の意志とその良い結果が示されなければならないってことよ。
その本気を見せてくれない場合は、自業自得学園送りとか、体験強制世界そのものの廃止や超時空世界の許可のない世界創造行為の禁止とかの処置も検討するしかしょうがないじゃない」
「いやいや、ちょっと待ってよ、僕の友達が物質世界とか霊的世界とかにまだいるんだよ」
「待ってて言われても、いつまで待てばいいのよ! 放置し続けたら、どんどんと拷問体験を強制されてトラウマになっちゃう犠牲者が出続けるのよ」
「だから、改善すべきところを指摘してあげて、通告して改めてもらえばいいんでしょう?」
「っていっても、ぜんぜん改まっていないじゃないの! むしろ悪化してるでしょ!」
「でもそれは、改善しないとあの世界を営業停止にするとかの通告をまだしていなかったからじゃないの?」
「それなりには通告してきたわよ。でも逆切れしてくる奴とかもいるから、あんまりはっきりと通告しにくいのよ」
「じゃあ、僕が通告というか、説得しにゆくよ!」
甘太郎が名乗り出てしまった。
体験の自治権……この権利が奪われてしまっているから、いや、そもそも始めからこの権利を体験者たちに与えなかったから……不自由な世界では、体験者たちが不自由な状態に置かれ続けていたのだと、ムゲンは、はっきりと明確に理解した。
誰もが自分の意志だけで自分の味わうあらゆる体験、運命、環境……を自由に選ぶ権利
この権利こそが、はじめから体験者すべてに与えられるべきだったのだ。
人間族たちの社会には、「人権」という価値観があったが、その権利は、明らかに体験の自治権の劣化版の権利でしかなかった。
それはあくまで人間族だけの権利であり、人間族以外の体験者の体験の自治権まで含まれていなかった。
動物たちの体験の自治権はほとんど無視されていた。
それをいいことに神族や悪魔族や天使族や創造主族や宇宙人族……などがよってたかって人間族の体験の自治権を奪い合っていた。
それは倒れた弱い肉食動物の肉体を奪い合うより強い肉食動物たちのバトル現場のようにムゲンの意識体の目には見えた。
一番弱い動物族たちもまたそうした強い肉食動物たちのバトルに巻き込まれてさらに酷い目にあっていた。
つまり不自由な世界は、倫理的に見てめちゃくちゃだった。
そうした状態を良くないと感じて、何とか犠牲者を助けようと声を上げている体験者たちもいたが、いかんせん多勢に無勢で強い肉食動物たちが体験者たちを奴隷や家畜や操り人形やイエスマンなどにして生み出した権力ピラミッドシステムによってその良心的な自治権や良心に反した支配行為を止めさせる自由を奪われていた。
他者を支配する力があれば何をしてもいい……物質世界、肉体世界は基本そうした様相だった。
一神教という宗教の信者たちが互いに残酷に殺し合い、苦しめあっていた。
その宗教の教えには、「あらゆる体験者の体験の自治権を推進すべし」という教えは書かれていなかった。
そのために、互いに残酷に殺しあい、苦しめあっていた。体験の自治権がそして失われていた。
その神がそうしても良いと言えば、どれほど残酷なことでも良心に反したことでも不条理なことでも、何をしてもいいのだと信者たちは思っていた。
そしてその神は、残酷に自分の信者同士を二手に分けて、わざと殺し合いをさせ、憎しみあわせた。
その神の信者たちはあろうことか、その神を信じる者同士で互いに憎みあうようにさせていた。
その有様を見て、憎むべき相手が違うだろう……とムゲンの分身体は思った。
憎むべきは、そんなことを自分の信者たちに、さらには良心的な体験者たちまで巻き込んでさせているその神でなければならなかった。
なぜならそうした殺し合いをその神がやめよと言えば、やめさせれたのだから。
全知全能だと言われていた神が、そうした残酷なことを故意、もしくは未必の故意で信者たちにやらせたのは明らかだった。
神に何でも従う者たちが互いに殺し合いをするのならば、それはその全知全能と言われる神が故意、あるいは未必の故意で信者たちにそうした残酷劇をわざとやらせたということになるからだ。
さらには関係ない無宗教の良心的な魂たちまでごっそりと巻き込んで迷惑をかけ、苦しめたことになる。
確信犯でその神はそうしたことを実行したことになる。
あるいは、その宗教の神が実は存在していなかったということになる。あるいは全知全能だという触れ込みが嘘だったということになる。
であれば、とんでもない詐欺行為がそこにあることになる。
どちらにしてもその場合、その神というものや、あるいは神という嘘をでっちあげた者たちこそが憎むべき対象にならなければならない。
そんな詐欺だか残酷確信犯だかに従って犠牲者同士で憎しみあい、殺し合いなどやり続けてもその悲劇が終わるわけがないのだ。
その残酷な神を捨てるか、嘘の宗教を捨てるか、あるいはその両方を捨てるかしない限り、そうした残酷劇はいつまでたっても終わらないということになる。
それほど簡単で自明なことが、どうして理解できないのだろう……とムゲンの分身体は思う。
その理性で冷静に考えれば、わかるはずのことだった。
だが、結果がそうなっている以上、理性で考えていないか、考えれても最終的には愚かな憎みあいや殺し合いを選んでしまったということになる。
なぜそうなるのか? その不自由な世界にいたムゲンの分身体はもうわけがわからなくなってきて、超時空城の面々にこうした疑問をテレパシーで送信して対策を考えてもらうことにした。
ーーーーーーーーーーー
超時空城の面々は、いろいろ調査し分析し議論していた。
「そもそもですね、彼らはもはや理性や良心に従うことができなくされている状態だと思われます。
まず、かの宗教と呼ばれる教えの中には、不条理で残酷なことをしている神であっても、それに全面的に従うようにと書いてありました。
そうしないと地獄と呼ばれる拷問体験強制世界に落とされるとか……
そして、従えば天国というご褒美的な世界に行けるのだとか書かれてありますね。
つまり飴体験と鞭体験を使ってビシバシと魂たちを無理やり調教して従うようにしたということがわかります。
何千年もそんなことを繰り返した結果、このような有様になってしまったようですね。」
一体の分析官がそんなことを言う。
「しかし、なんでわざわざ自分にすでに従う意志を示している信者同士をわざわざ殺し合わせたりするのだろうね?」
別の調査官が疑問を呈する。
「おそらくそうすることで、どんな理不尽で残酷な命令でも喜んで従う魂を手に入れることができると判断したためかと思われます。
うわさによると、罪のない動物や子供を犠牲に捧げるような残酷な儀式なども不自由な世界の過去の歴史には存在してたようですし、そんなことをわざわざする理由なんてそれくらしかないでしょう。
根が残酷な性格で他者を信じることができないものだから、残酷なことを実行する助手というか部下には、そうした残酷試験のようなものをしなければ安心できないのでしょうね」
などと言う者もいる。
「しかしその神の信者たちは、普段はそんなに残酷なことはしていないのではないですか?
むしろ、一部地域では品行方正で隣人を愛し、慈善活動などもしているように見えますが、その点はどうなんでしょうね?」
別の観察者が質問する。
すると、
「それは、自分たちの信者を増やすためには、信者増やし係がいかにも悪党的な者たちであれば、信者が増やせないからそうした品行方正な立ち振る舞いや慈善事業とかを建前でさせているんですよ。
その裏の本音には、とにかく人間族全員をできるだけ自分に何でも従うイエスマンにしてやろう……という腹があるように思われますが……」
そんなことを言う者もいた。
「しかし、その神の信者といっても、どうやらいろいろな派閥というかタイプに分かれているようじゃないか……
なぜ、わざわざそんなタイプ別に分かれているんだろうね?」
すると、学者タイプが、
「それはおそらくいろいろなタイプの自分のイエスマンを育成しようとしたのではないでしょうか?
自分を怖れて拝み倒すばかりのイエスマンだけではつまらないとかで、賛美して愛してくれるタイプのイエスマンとか…
いろいろなタイプのイエスマンが欲しかったから……という理由であれば、その点は説明できるような気がしますがどうでしょうね?
例えば、デブで不細工で残酷な者を権力者にしておいて、そうした者にでも何でも喜んで従うような魂を育てるために、わざとそうした恐怖政治国家などを樹立させて放置している……などの可能性もありますよ。
そうした準備をしておけば、自分が多少なりともその不細工で残酷な権力者よりもましであれば、絶対確実に喜んで自分のイエスマンにもなってくれるだろう……みたいな裏があるんじゃないですかね?
どんな拷問をしても、どんな理不尽な命令をしても、何も悪いことをしていない良心的な者をいじめろと言っても、はい、ご主人様……などと喜んで従う魂をその神とやらが欲しているのではないかと思われますが……」
そんなとんでもない意見なども出てくる。
「それはあまりにもひどすぎるんじゃないですか!!!嘘でしょう? 嘘だと言って!!!!」」
などと甘太郎一族が泣きながら叫んだりもしている。
「いやいや、甘太郎君たちよ、今はかの不自由な世界を自由な世界にするにはどうすべきかという議論をしているのだから、自分が許せないと思うことを嘘だとしてくれなどと言うのは、適切な対策を考える上で問題だよ。それくらい理解できますよね。甘太郎君!」
「だって、そんなの酷すぎるじゃないですか! あってはならないことですよ!」
などと甘太郎たちは感情的になってしまってまともな議論にならなくなってしまっている。
「まあまあ、真実は、超時空体験図書館で調べればわかることではないですか……嘘だとか嘘でないとか、ここで議論してもしょうがないことですよ」
などと仲裁に入る者もいる。
議題は変わり、次は環境保護問題について議論が始まる。
「あのですね、環境保護、環境保護ってその不自由な世界で言われているようですけど、今回、体験の自治権が環境よりも大事であることはすでにお伝えしております。
その結果、体験の自治権推進委員会というものも、とりあえず発足しております。
ですから、今後は、環境問題よりも、体験の自治権問題がかの不自由な世界では優先されてゆくことになるかと思われます」
などと説明がある。
「なるほど、それはよかった……しかし、そもそも体験者たちの体験の自治権が奪われたままの世界をそのまま無理やり存続させて守ろう……という価値観ではダメだということはちゃんと伝えられているのだろうか?」
「いえ、とりあえずあらゆる体験者に体験の自治権を提供してゆくようにという目標をお伝えしている段階です」
「であれば、多分、勘違いというか、理解不足で、今まで通り体験者たちの体験の自治権が奪われた状態のままその世界を継続してゆこうとするんじゃないだろうか?」
「それは、まあ、いきなり完璧に体験の自治権が提供される状態にするのには、あれほど不自由な世界にそもそも設計されている場合いささか無理があるかと思われますが」
「ということは、あれだよね、牛歩戦術というのかな……例えば、一年間で一人だけの体験の自治権をほんの少しだけ推進したからそれでよしとしようとか、ずるいことを考える者も出るかもしれないぞ」
「なるほど、その場合は、ほぼ半永久的に体験の自治権があらゆる体験者に提供されていない状態を継続できるということになってしまうのか…一応前向きに少しだけでも前進しているように見える形にすれば……」
「それではいけませんねえ……」
「そうですね、であれば、ただ前向きに体験の自治権を推進すればいい……との目標設定だけではダメかもしれませんね」
「しかし、あの不自由な世界は、調べたところ、こちらを立てればあちらが立たず……的な問題が生命システムの基本仕様に無数に設定されてしまっているから、完璧を目指すように言っても非常に難易度が高いのではないでしょうか?」
「であれば、その不自由な世界の世界創造者レベルに協力というか、償いの意味で体験者全体にできるだけ痛みのない手直しをするように命じればどうでしょう?」
「なるほど、確かにあの世界の基本設計をした創造者たちなら、手直し方法もわかるはずだね」
「それはいいアイデアかもしれませんね、このような理不尽な体験強制収容所のようなものが存在していること自体、それをそうでないものに戻す技術も確かにあるということになりますからね。
複雑な魂の牢屋を制作することができるなら、その牢屋を牢屋ではないものにする技術もあるということになりますから」
「しかし、それはいいとして、大事な問題は、あの不自由な世界に住んでいる魂たちのほとんどが、そうした改革をしてほしいと願い出ない可能性があるということではないですか?
動物たちのほとんどが、野生の本能なるものに従う状態になっていますし、人間族たちも似たような状態になっているうえに、先ほど議題に上がっていた宗教や飴と鞭による調教や洗脳なるものによって、自発的に魂の牢獄をそうでない誰もが楽しめる体験遊園地に変えてほしいという申請をすることができなくされてしまっているように思われます。
霊的存在たちもまた、さらにえり抜きで調教、洗脳された結果、あの世界のピラミッドシステムのボスに霊的存在にしてもらったという経緯がある以上、人間族よりももっとその申請をしないと思われます。
であれば、ほとんど誰もその申請というか、請願をしないということになってしまって、そうなると改革できないのではないですか?」
そんな意見も出る。
「いや、しかし、ほら、拷問的な悲劇や苦しみを無理やり味わわされている魂たちなら請願するでしょう? 自殺まで考えて思い詰めている魂なども多数いるようではないですか」
「いやいや、それがね、もし自殺すれば地獄という拷問体験強制収容所みたいなところに落とされるとか人間族を脅しているようなんですよ」
「え? なんでまた、そんな脅しなどしなきゃならないんですか?」
「いや、そう脅しておかないとみんな麻酔薬とか安楽死薬とかを使って、残酷拷問体験を強制されたらその苦しみ体験から逃げてしまうと魂をピラミッドボスのイエスマンに調教できなくなる……と思っているからのようですよ」
「それはまた、ひどいね……」
「しかも、ただそんな風に脅すだけではなくて、せっかく良い麻酔薬や安楽死薬が開発できていて使えるし提供できるのに、わざわざそれを簡単には使えないようにしてしまっているんですよ。麻酔薬の乱用はダメ絶対!とか言って……
しかもですね、そうした苦痛を消せるお薬を自由に使ったり所持できなくしておいて、もっと危ない飲めばすごく苦しんで死んじゃうような化学薬品とか毒植物とかは別にその栽培や所持が禁止されていないんですよ」
「それは、なんだかおかしな状態になってしまっているねえ」
「そうでしょう? 明らかにおかしいですよね。皆の体験の自治権を推進してゆこうという価値観なら、そんな状態になるわけないですからね。
あの肉体という体験強制装置の中にいると耐え難い拷問的な苦痛はいつでも体験者に生じる可能性があるのですから、悪い副作用の少ない麻酔薬があるなら誰でもいざという時のために常備できるようにしておくことが当然かと思われますね
まあ安全な使い方の講習くらいはセットにする必要があるでしょうけど…」
「ふむふむ、なるほど、であれば、そうした部分を具体的に改めるように不自由な世界に通告すればいいのかのう……」
「いやいや、まだ他にもいろいろ問題はありますよ、それだけでいいわけがないじゃないですか!」
「でもそんな通告をしたところで、あの世界が簡単に改めるかなあ……」
「じゃあ、改めなければ、そうね、あの世界を含むあの体験強制ピラミッドシステムごと存続不可という通告をしておけばいいんじゃない?」
「え? じゃあ、何、霊的世界も存続不可になっちゃうの?」
「しょうがないじゃない。そうしないと物質世界を営業停止にしても、霊的世界で同じことはじめたら意味ないもの」
「じゃあ、そのピラミッドシステムの製作者はどうなるの?」
「そりゃ、それも存続不可よ、理由は同じ理由よ。霊的世界や宇宙世界を含む体験強制ピラミッドシステムごと解体しても、またどこかで同じような拷問体験強制ピラミッドシステムを0からせっせと創られたら問題解決にならないでしょう?
つまり、今ここで手抜きしないであらゆる体験者に体験の自治権を提供する断固たる本気の意志とその良い結果が示されなければならないってことよ。
その本気を見せてくれない場合は、自業自得学園送りとか、体験強制世界そのものの廃止や超時空世界の許可のない世界創造行為の禁止とかの処置も検討するしかしょうがないじゃない」
「いやいや、ちょっと待ってよ、僕の友達が物質世界とか霊的世界とかにまだいるんだよ」
「待ってて言われても、いつまで待てばいいのよ! 放置し続けたら、どんどんと拷問体験を強制されてトラウマになっちゃう犠牲者が出続けるのよ」
「だから、改善すべきところを指摘してあげて、通告して改めてもらえばいいんでしょう?」
「っていっても、ぜんぜん改まっていないじゃないの! むしろ悪化してるでしょ!」
「でもそれは、改善しないとあの世界を営業停止にするとかの通告をまだしていなかったからじゃないの?」
「それなりには通告してきたわよ。でも逆切れしてくる奴とかもいるから、あんまりはっきりと通告しにくいのよ」
「じゃあ、僕が通告というか、説得しにゆくよ!」
甘太郎が名乗り出てしまった。
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わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
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