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あらゆる意識が目指すべき目標
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ムゲンは、時のない部屋で甘太郎と超時空聖体たちとの対話から生じた大きな変化を感知し、ありとあらゆる世界に放った自分の無数の分身体たちの得ている理解や情報を収集整理統合していた。
特に甘太郎からの情報を精査していた。
そして、あらゆる体験者たちにとって最善な理想世界の設計図を見直していた。
あらゆる体験者にとって最善の理想世界の設計図さえしっかりあれば、どんな世界に行っても、あるいは無の世界であっても、そこをあらゆる体験者たちの楽園にすることができる……ムゲンはそう思っていた。
そんな大事な設計図はできるだけわかりやすく誤解のないように書いておくべきだ……
ムゲンはそんなことを思い、そのために設計図の大事な要点をまとめようとしていた。
ーーーーーーーーーーー理想世界の設計図(改)ーーーーーーーーー
★「完全な本当の自由」をあらゆる体験者に提供すること
(自業自得のお勉強は、本当の自由を提供した上で自由に選択できるようにすること)
★「完全な体験の自治権」をあらゆる体験者に提供すること
(体験の自治権=自分自身の味わう体験だけを自分の意志で自由に選ぶことができるという権利)
★「体験者が望まない体験を故意に強制する行為を禁止」すること
(それが可能ならばそうした行為が不可能にすること)
★「他の体験者に望まれない体験を強制しないという前提で、最大限ありとあらゆる体験を安全に自由に楽しめるようにする」こと
★「あらゆる体験者がスタンドアロン状態でも必要十分に満足し楽しめるようにする」こと
…………
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ムゲンは、そんな感じで理想世界の設計図にとって重要だと思う要点を甘太郎の願いを再考慮して箇条書きにしながら、もっと簡潔にできないかなあ……と思い始めていた。
そして悩んだ末にこう書いた。
★あらゆる体験者が安全に望む体験を最大限多様に自由にエンドレスで楽しみ続けれる世界を実現すること
あらゆる体験者がそうした状態となる世界を実現すれば、自動的に望まれない体験が強制されることはなくなる……
いちいち望まれない体験の強制を禁止するとか不可能にするとか書かなくても、みんなが完全に自分自身の体験を自由に選べるようにしてしまえばいいだけだ……
結局、
★あらゆる体験者が自分自身の体験を完全に自由に選べるようにすること
とさらに、簡潔にしようとまとめてみた。
そうなれば、美味しい食べ物を味わう体験であろうが、素晴らしい景色を楽しむ体験だろうが、ありとあらゆる快楽体験であろうが、ありとあらゆるラブラブ体験であろうが、とにかくありとあらゆる望む体験を自由に選べるようになるわけだ。
ただし、選べる素晴らしい体験が0ならいくら体験を自由に選べるといっても、意味がないな……と思う。
だから、選べる望ましい体験ができれば無限にあるようにしなければならない。
そして、ありとあらゆるタイプや性格の体験者がいる以上、その望みが皆一致するわけもなくその望む体験は多種多様なのだから、この体験は良いとか悪いとか言わずに、実際に望まない酷い体験が強制される被害者がいないのならばできるだけ多種多様な無数の体験が選べるようにすべきだろう……
一切のリアルな被害者が存在しない夢世界や幻世界や空想世界であっても……また映画や小説や漫画であっても……殴りあう体験はダメだとか、戦争体験はダメだとか、ホラー体験はダメだとか、変態エロ体験はダメだとか、悲劇体験はダメだとか……
そんな主張を認めてしまうと、どんな体験もダメだと主張する体験者が現れるに決まっている……
そして価値観が同じでない体験者同士で争いをはじめるだろうなあ……
そうなってしまったら、元の木阿弥だ。
であれば、被害者や犠牲者、つまりは、望まない体験が本人の納得合意なく強制される者たちが発生しない限り、あらゆる体験を自由に選択してもいいよという価値観はどうしても必要だなあ……
ムゲンはそう思う。
不自由な世界では、リアルの被害者がいないにもかかわらず、親が子に、支配者がその被支配者に、先生が生徒に、あるいは民族同士や宗教者同士が……あれはしてはダメ、これもしてはダメ…といろいろ禁止してきたが、その結果、その好みや価値観の違いで互いに争ったり傷つけあってしまっていた。
そうしたことは、望まれない体験の強制行為となっていれば確かに問題だが、実際にそうした被害者や犠牲者が発生しないのであれば、これはダメ、あれはダメみたいな禁止主義の蔓延には問題があるなあ……
ムゲンはそう思う。
なぜなら、実際の被害者がいないのに危険性があるという理由だけで体験を禁止してしまえば、自動車に乗ることにも危険性があるし、スポーツや登山をすることにも危険性があるし、恋愛することにすら危険性があるし、突き詰めてゆけば倫理的に不完全な世界に生まれるということにも危険性があり、ほとんどあらゆる選択や行為に危険性があり、どんな選択をしても危険性0ではないからだ。
であれば、あの体験もいい、この体験もいい、みんな望む体験が違ってもいい。どんな体験でも望むなら超時空体験図書館から引っ張り出してきて全部夢体験で被害者0で楽しめばいい。あるいは完全合意の上で演劇サークルでも創って有志の参加者の完全合意をもって演劇で楽しめばいい。ただし、リアルの体験者への望まれない体験の強制はダメ。
それでいいのではないか……とムゲンは思う。
とにかくリアルの犠牲者や被害者が発生しなければどんな体験を味わうのも自由とした方がいい……
実際に被害者がいないにもかかわらず、危険性があるという理由だけで体験を禁止しはじめると、どんどんと選べる体験が増やせなくなってしまうのだ。
ムゲンは、この部分は重要だなと思う。
いくら自由に自分の体験を選んで楽しめるようになっても、楽しめる体験が少なければ絶対に体験者たちはすぐに飽き飽きしはじめる……そんなことはわかりきっている……その飽き飽きした状態が永遠に続くとなるとこれはもう拷問となる……
だからどうしてもリアルの被害者がいないのなら、あらゆる体験を自由に楽しめるようにするべきだな……
例えば、ホラー映画を見ると、真似してホラーな行為をする危険性があるから禁止する……などとしてしまうと、不自由な世界に生まれると良心に反した支配者に何でも従ってしまうイエスマンがたくさん生まれてしまうという理由で不自由な世界の存在そのものを禁止せねばならなくなる。
良心に反する<可能性がある>というだけで、否定して良いとしてしまえば、悪い選択ができうる自由意志を持っている体験者全員の存在を否定しなければならなくなる。
かといって、その自由意志で良心に反した選択が絶対不可能にしてしまうと、体験者たちを悪いことが絶対できないロボットのようにしてしまうことになる。そうなれば魂の成長とか進化ということ自体、意味がなくなってしまう。
その自由意志で状況変化に応じて臨機応変にあらゆる体験者にとって良き選択ができるような魂こそが永遠に存続できる楽園世界の実現のためには必要不可欠だと言うのに……魂たちをそんな風にロボット化してしまえば諸行無常に変化し続ける状況に臨機応変に対応できなくなり、悲劇が発生することくらい明らかに予測できる。
また、当然、悪い選択しかできないロボット化はもっと悪い結果になる。
そうなると甘太郎のみんな全員を助けたいという願いがその時点で実現しなくなる。
それじゃあ、ダメだな……全然ダメだ……
体験者をそのようにロボット化してもいいとしてしまえば、そう主張する者たちもまたロボット化される義務を負うことになるからな……
それは自業自得の責任を自覚していない価値観となり、自己否定の選択になるだろう。
体験者たちをロボットにし、その自業自得の結果自らもロボットになってしまってからでは、もう修正はできないのだから……
最悪、永遠の退屈地獄や拷問地獄が発生する……
だから超時空聖体たちが言っていたその自由意志であらゆる体験者にとって最善の状態を生み出そうとする魂は、どうしても必要不可欠なのだ。
ただ、甘太郎がその役割を超時空体験図書館様と協力しあって命がけで担当すると本気で主張したから、そこまで無理してそうした魂が生まれるようにしなくてもよくなったに過ぎない。
そうした良き意志を自発的に持てる魂が世界に一体もいなくなってしまえば、どんな理想世界であってもその良き世界管理が不可能になり、世界の終わりか、永遠の拷問体験世界となってしまう……
体験者たちをすべてロボットにしたり、操り人形にして、それによって世界平和が表面上実現したとしても、だから長い目で見れば自己否定となってしまう。つまりあらゆる体験者が永遠に楽しみ続けれる世界にはなりようがない。
…………つまり、どうしても魂全体の良心レベルの底上げはどうしても必要ということになる。
しかし、それは無理やり強制してもうまくいかない。
とすれば、どうしてもそのための最低限の魂の基礎教育は必要だということになる。
その魂の基礎教育に必要な価値観が、「実際に望まれない体験が強制される被害者が発生しないようにすること」という価値観であり、同時に「その条件さえクリアし、被害者が完全に誰もいない場合は、ありとあらゆる体験を最大限多種多様に認め、自由に選んで楽しめるようにすること」という価値観となるだろう。
魂進化の初期段階から、そうしたモラルをちゃんと教える必要がある。
今回、魂のお勉強の時代は終わりました……と超時空聖体たちが宣言したわけだが、それはあくまで本当の自由が得られていない状態で自業自得の責任を問うタイプの魂のお勉強のことであり、本当の自由を提供し、さらに必要なモラルを教えた上での自業自得の魂のお勉強はむしろ必要なのではないだろうか……
そんなことをムゲンはつらつらと一人、修行中の時のない部屋で考えている。
そして悩んだ末に、また別の文章を書く。
★とにかくあらゆる体験者に本当の自由を提供し、自業自得の責任をちゃんと説明し、世界の状況変化に臨機応変に対応してあらゆる体験者たちに最善な選択がその自由意志でできるように成長することが心から楽しんでできるような状態を皆で実現すること
ムゲンは、その長ったらしい文章を読み返し、苦笑いをする。
簡潔にするつもりが、むしろ小難しく長文になってしまった。
「あー、ダメだ、ダメだ!」
ムゲンは、その理想世界の設計図メモを放り投げる。
すると、シューちゃんが、そのメモを手に取り、
「あら、別にダメじゃないんじゃないですか?」
などと言ってくる。
「内容自体はダメではないかもしれないけどね、こんな小難しい長文だとみんな嫌になるんじゃないかと思ってね」
ムゲンは、シューちゃんにそんな感じで応じている。
「そんなこともないと思いますけど……嫌にならないようにしたいのなら、いい方法がありますよ」
シューちゃんが何か提案してくれるようだ。
「どんな?」
「そうですね、例えば、ほらこの時のない部屋では、皆がゲームしながら楽しんで超時空体に進化できるようにしたわけですよ。
であれば、これからはじまるその新世界にも、この楽しめる無数の体験ゲームシステムを導入されてはどうですか?」
「あー、そういう方法があったか……」
ムゲンは、なるほど……と思う。
「ゲームであれば、一切リアルの被害者や犠牲者は発生しないじゃないですか」
「いや、でもゲームする本人が被害者や犠牲者になる可能性はあるんじゃないかい?」
「そ、それは、いつでも嫌になればゲームから自由になれるようにしておけば問題ないじゃないですか」
「でも、シューちゃん、俺の時には、嫌になっても修行だから頑張ってくださいとか言って、ゲームから解放してくれなかったことあるよね」
「え? そんなことありましたっけ?」
「だめだよ、そんなテヘペロみたいな顔をしても……」
「だってあの時はまだ魂のお勉強の強制もやむなしの時代だったんですもの……」
「でも、今回、超時空聖体たちがその魂のお勉強強制時代の終了宣言をしたよね」
「わかりました。今後は、嫌になったらゲームから自由になれるようにしますから、今更そんなあら捜ししないでください」
「でも、まあ確かにリアル体験者の被害者が絶対出ない無数の楽しめるゲームで基礎教育を受ける仕組みというのはいいかもしれないなあ……その選べるゲームが多種多様で心から楽しめるタイプのものならなおいいかもしれない」
「そうでしょう? これでも時のない部屋の体験ゲーム管理者として結構自信がありますから」
「まあ、ゲームするのが強制ではないのなら、自由にゲームを選んで楽しめるのなら、いいと思うよ」
「そうですよ。楽しいからゲームをして、ゲームをすることで理想世界を実現し維持するための魂のお勉強ができるんですから、一石二鳥ですよね」
「なるほど、じゃあ、超時空聖体様たちに提案してみるか……」
「わかりました。ではわたしから超時空体験図書館様と超時空聖体様たちに口添えしておきますね」
「え? 俺が直接するからいいよ」
「ダメですよ、ムゲンさんは……まだ超時空体になるためのお勉強が不十分ですから、もっといろんなゲームをしてお勉強に専念してください」
「ほら~、そういうところが魂のお勉強強制時代の価値観のままなんだよ、シューちゃん」
「あ、そうでした……あはは」
甘太郎のみんなを助けたいという切なる願いと覚悟から世界は大きく変化しはじめた。
特に甘太郎からの情報を精査していた。
そして、あらゆる体験者たちにとって最善な理想世界の設計図を見直していた。
あらゆる体験者にとって最善の理想世界の設計図さえしっかりあれば、どんな世界に行っても、あるいは無の世界であっても、そこをあらゆる体験者たちの楽園にすることができる……ムゲンはそう思っていた。
そんな大事な設計図はできるだけわかりやすく誤解のないように書いておくべきだ……
ムゲンはそんなことを思い、そのために設計図の大事な要点をまとめようとしていた。
ーーーーーーーーーーー理想世界の設計図(改)ーーーーーーーーー
★「完全な本当の自由」をあらゆる体験者に提供すること
(自業自得のお勉強は、本当の自由を提供した上で自由に選択できるようにすること)
★「完全な体験の自治権」をあらゆる体験者に提供すること
(体験の自治権=自分自身の味わう体験だけを自分の意志で自由に選ぶことができるという権利)
★「体験者が望まない体験を故意に強制する行為を禁止」すること
(それが可能ならばそうした行為が不可能にすること)
★「他の体験者に望まれない体験を強制しないという前提で、最大限ありとあらゆる体験を安全に自由に楽しめるようにする」こと
★「あらゆる体験者がスタンドアロン状態でも必要十分に満足し楽しめるようにする」こと
…………
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ムゲンは、そんな感じで理想世界の設計図にとって重要だと思う要点を甘太郎の願いを再考慮して箇条書きにしながら、もっと簡潔にできないかなあ……と思い始めていた。
そして悩んだ末にこう書いた。
★あらゆる体験者が安全に望む体験を最大限多様に自由にエンドレスで楽しみ続けれる世界を実現すること
あらゆる体験者がそうした状態となる世界を実現すれば、自動的に望まれない体験が強制されることはなくなる……
いちいち望まれない体験の強制を禁止するとか不可能にするとか書かなくても、みんなが完全に自分自身の体験を自由に選べるようにしてしまえばいいだけだ……
結局、
★あらゆる体験者が自分自身の体験を完全に自由に選べるようにすること
とさらに、簡潔にしようとまとめてみた。
そうなれば、美味しい食べ物を味わう体験であろうが、素晴らしい景色を楽しむ体験だろうが、ありとあらゆる快楽体験であろうが、ありとあらゆるラブラブ体験であろうが、とにかくありとあらゆる望む体験を自由に選べるようになるわけだ。
ただし、選べる素晴らしい体験が0ならいくら体験を自由に選べるといっても、意味がないな……と思う。
だから、選べる望ましい体験ができれば無限にあるようにしなければならない。
そして、ありとあらゆるタイプや性格の体験者がいる以上、その望みが皆一致するわけもなくその望む体験は多種多様なのだから、この体験は良いとか悪いとか言わずに、実際に望まない酷い体験が強制される被害者がいないのならばできるだけ多種多様な無数の体験が選べるようにすべきだろう……
一切のリアルな被害者が存在しない夢世界や幻世界や空想世界であっても……また映画や小説や漫画であっても……殴りあう体験はダメだとか、戦争体験はダメだとか、ホラー体験はダメだとか、変態エロ体験はダメだとか、悲劇体験はダメだとか……
そんな主張を認めてしまうと、どんな体験もダメだと主張する体験者が現れるに決まっている……
そして価値観が同じでない体験者同士で争いをはじめるだろうなあ……
そうなってしまったら、元の木阿弥だ。
であれば、被害者や犠牲者、つまりは、望まない体験が本人の納得合意なく強制される者たちが発生しない限り、あらゆる体験を自由に選択してもいいよという価値観はどうしても必要だなあ……
ムゲンはそう思う。
不自由な世界では、リアルの被害者がいないにもかかわらず、親が子に、支配者がその被支配者に、先生が生徒に、あるいは民族同士や宗教者同士が……あれはしてはダメ、これもしてはダメ…といろいろ禁止してきたが、その結果、その好みや価値観の違いで互いに争ったり傷つけあってしまっていた。
そうしたことは、望まれない体験の強制行為となっていれば確かに問題だが、実際にそうした被害者や犠牲者が発生しないのであれば、これはダメ、あれはダメみたいな禁止主義の蔓延には問題があるなあ……
ムゲンはそう思う。
なぜなら、実際の被害者がいないのに危険性があるという理由だけで体験を禁止してしまえば、自動車に乗ることにも危険性があるし、スポーツや登山をすることにも危険性があるし、恋愛することにすら危険性があるし、突き詰めてゆけば倫理的に不完全な世界に生まれるということにも危険性があり、ほとんどあらゆる選択や行為に危険性があり、どんな選択をしても危険性0ではないからだ。
であれば、あの体験もいい、この体験もいい、みんな望む体験が違ってもいい。どんな体験でも望むなら超時空体験図書館から引っ張り出してきて全部夢体験で被害者0で楽しめばいい。あるいは完全合意の上で演劇サークルでも創って有志の参加者の完全合意をもって演劇で楽しめばいい。ただし、リアルの体験者への望まれない体験の強制はダメ。
それでいいのではないか……とムゲンは思う。
とにかくリアルの犠牲者や被害者が発生しなければどんな体験を味わうのも自由とした方がいい……
実際に被害者がいないにもかかわらず、危険性があるという理由だけで体験を禁止しはじめると、どんどんと選べる体験が増やせなくなってしまうのだ。
ムゲンは、この部分は重要だなと思う。
いくら自由に自分の体験を選んで楽しめるようになっても、楽しめる体験が少なければ絶対に体験者たちはすぐに飽き飽きしはじめる……そんなことはわかりきっている……その飽き飽きした状態が永遠に続くとなるとこれはもう拷問となる……
だからどうしてもリアルの被害者がいないのなら、あらゆる体験を自由に楽しめるようにするべきだな……
例えば、ホラー映画を見ると、真似してホラーな行為をする危険性があるから禁止する……などとしてしまうと、不自由な世界に生まれると良心に反した支配者に何でも従ってしまうイエスマンがたくさん生まれてしまうという理由で不自由な世界の存在そのものを禁止せねばならなくなる。
良心に反する<可能性がある>というだけで、否定して良いとしてしまえば、悪い選択ができうる自由意志を持っている体験者全員の存在を否定しなければならなくなる。
かといって、その自由意志で良心に反した選択が絶対不可能にしてしまうと、体験者たちを悪いことが絶対できないロボットのようにしてしまうことになる。そうなれば魂の成長とか進化ということ自体、意味がなくなってしまう。
その自由意志で状況変化に応じて臨機応変にあらゆる体験者にとって良き選択ができるような魂こそが永遠に存続できる楽園世界の実現のためには必要不可欠だと言うのに……魂たちをそんな風にロボット化してしまえば諸行無常に変化し続ける状況に臨機応変に対応できなくなり、悲劇が発生することくらい明らかに予測できる。
また、当然、悪い選択しかできないロボット化はもっと悪い結果になる。
そうなると甘太郎のみんな全員を助けたいという願いがその時点で実現しなくなる。
それじゃあ、ダメだな……全然ダメだ……
体験者をそのようにロボット化してもいいとしてしまえば、そう主張する者たちもまたロボット化される義務を負うことになるからな……
それは自業自得の責任を自覚していない価値観となり、自己否定の選択になるだろう。
体験者たちをロボットにし、その自業自得の結果自らもロボットになってしまってからでは、もう修正はできないのだから……
最悪、永遠の退屈地獄や拷問地獄が発生する……
だから超時空聖体たちが言っていたその自由意志であらゆる体験者にとって最善の状態を生み出そうとする魂は、どうしても必要不可欠なのだ。
ただ、甘太郎がその役割を超時空体験図書館様と協力しあって命がけで担当すると本気で主張したから、そこまで無理してそうした魂が生まれるようにしなくてもよくなったに過ぎない。
そうした良き意志を自発的に持てる魂が世界に一体もいなくなってしまえば、どんな理想世界であってもその良き世界管理が不可能になり、世界の終わりか、永遠の拷問体験世界となってしまう……
体験者たちをすべてロボットにしたり、操り人形にして、それによって世界平和が表面上実現したとしても、だから長い目で見れば自己否定となってしまう。つまりあらゆる体験者が永遠に楽しみ続けれる世界にはなりようがない。
…………つまり、どうしても魂全体の良心レベルの底上げはどうしても必要ということになる。
しかし、それは無理やり強制してもうまくいかない。
とすれば、どうしてもそのための最低限の魂の基礎教育は必要だということになる。
その魂の基礎教育に必要な価値観が、「実際に望まれない体験が強制される被害者が発生しないようにすること」という価値観であり、同時に「その条件さえクリアし、被害者が完全に誰もいない場合は、ありとあらゆる体験を最大限多種多様に認め、自由に選んで楽しめるようにすること」という価値観となるだろう。
魂進化の初期段階から、そうしたモラルをちゃんと教える必要がある。
今回、魂のお勉強の時代は終わりました……と超時空聖体たちが宣言したわけだが、それはあくまで本当の自由が得られていない状態で自業自得の責任を問うタイプの魂のお勉強のことであり、本当の自由を提供し、さらに必要なモラルを教えた上での自業自得の魂のお勉強はむしろ必要なのではないだろうか……
そんなことをムゲンはつらつらと一人、修行中の時のない部屋で考えている。
そして悩んだ末に、また別の文章を書く。
★とにかくあらゆる体験者に本当の自由を提供し、自業自得の責任をちゃんと説明し、世界の状況変化に臨機応変に対応してあらゆる体験者たちに最善な選択がその自由意志でできるように成長することが心から楽しんでできるような状態を皆で実現すること
ムゲンは、その長ったらしい文章を読み返し、苦笑いをする。
簡潔にするつもりが、むしろ小難しく長文になってしまった。
「あー、ダメだ、ダメだ!」
ムゲンは、その理想世界の設計図メモを放り投げる。
すると、シューちゃんが、そのメモを手に取り、
「あら、別にダメじゃないんじゃないですか?」
などと言ってくる。
「内容自体はダメではないかもしれないけどね、こんな小難しい長文だとみんな嫌になるんじゃないかと思ってね」
ムゲンは、シューちゃんにそんな感じで応じている。
「そんなこともないと思いますけど……嫌にならないようにしたいのなら、いい方法がありますよ」
シューちゃんが何か提案してくれるようだ。
「どんな?」
「そうですね、例えば、ほらこの時のない部屋では、皆がゲームしながら楽しんで超時空体に進化できるようにしたわけですよ。
であれば、これからはじまるその新世界にも、この楽しめる無数の体験ゲームシステムを導入されてはどうですか?」
「あー、そういう方法があったか……」
ムゲンは、なるほど……と思う。
「ゲームであれば、一切リアルの被害者や犠牲者は発生しないじゃないですか」
「いや、でもゲームする本人が被害者や犠牲者になる可能性はあるんじゃないかい?」
「そ、それは、いつでも嫌になればゲームから自由になれるようにしておけば問題ないじゃないですか」
「でも、シューちゃん、俺の時には、嫌になっても修行だから頑張ってくださいとか言って、ゲームから解放してくれなかったことあるよね」
「え? そんなことありましたっけ?」
「だめだよ、そんなテヘペロみたいな顔をしても……」
「だってあの時はまだ魂のお勉強の強制もやむなしの時代だったんですもの……」
「でも、今回、超時空聖体たちがその魂のお勉強強制時代の終了宣言をしたよね」
「わかりました。今後は、嫌になったらゲームから自由になれるようにしますから、今更そんなあら捜ししないでください」
「でも、まあ確かにリアル体験者の被害者が絶対出ない無数の楽しめるゲームで基礎教育を受ける仕組みというのはいいかもしれないなあ……その選べるゲームが多種多様で心から楽しめるタイプのものならなおいいかもしれない」
「そうでしょう? これでも時のない部屋の体験ゲーム管理者として結構自信がありますから」
「まあ、ゲームするのが強制ではないのなら、自由にゲームを選んで楽しめるのなら、いいと思うよ」
「そうですよ。楽しいからゲームをして、ゲームをすることで理想世界を実現し維持するための魂のお勉強ができるんですから、一石二鳥ですよね」
「なるほど、じゃあ、超時空聖体様たちに提案してみるか……」
「わかりました。ではわたしから超時空体験図書館様と超時空聖体様たちに口添えしておきますね」
「え? 俺が直接するからいいよ」
「ダメですよ、ムゲンさんは……まだ超時空体になるためのお勉強が不十分ですから、もっといろんなゲームをしてお勉強に専念してください」
「ほら~、そういうところが魂のお勉強強制時代の価値観のままなんだよ、シューちゃん」
「あ、そうでした……あはは」
甘太郎のみんなを助けたいという切なる願いと覚悟から世界は大きく変化しはじめた。
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