理想世界の創り方

無限キャラ

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意識世界の存続可否を判定する試験

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甘太郎は、超時空図書館に記録されているありとあらゆる体験者たちの体験の記録全体を俯瞰したことで「みんなを救うために必要なこと」を理解してしまった。


甘太郎にとって「みんな」とは、「あらゆる体験者」のことであった。


「あらゆる体験者」とは、人間族だけでなく、その他の動物たちや、宇宙人たちや、霊的存在たちや、世界創造者たちや、超時空体たちや、超時空聖体たちや、その他のすべての「苦楽等を体験する能力を持った意識存在たちすべて」を意味していた。


その「すべての体験者」を救うためには、どうしても本当の自由や体験者自身が自分自身の体験を自分の意志で自由に選べる状態や望ましい体験を自由に選んで楽しみ続けれる状態をすべての体験者たちに提供しなければならないということに甘太郎は気づいてしまった。


甘太郎は、何とかして「みんな全員」を救いたいと願っていたためにその理解に到達した。


不自由な世界においては、その世界創造の設計段階の時点から「あらゆる体験者を救う意志」が欠落していたことが明確だった。


他の体験者を殺して食べてしまうシステムなどは、あらゆる体験者を救おうとする意志があれば絶対に発生しないシステムだった。
生命たちは、その肉体を殺して食べ、また霊的存在たちは生命たちの魂や自我を殺して食べるシステムを当然のことだと思わされていた。そうしたことを当然の権利だと思い込まされていた。


「一部の体験者」を救おうと意志する者は、不自由な世界群にもたくさんいたが、「あらゆる体験者」を救おうと意志しつづける者は、不自由な世界にはほとんどいなかった。


例えば、不自由な世界群の常識だとか、自然だとか、法則だとか、法律だとか、文化だとか、宗教だとか……はほぼすべてが「あらゆる体験者が本当の自由を得て、自分自身の運命や体験を自由自在に選んで楽しみ続けれる世界」を目指していなかった。


それはつまり不自由な世界群の創造者や支配者たちのほぼすべてが「あらゆる体験者を本当の意味で救おうとこれまでちゃんと意志できていなかった」ということを意味していた。


不自由な世界群の創造者や支配者たちは、いや、超時空世界の超時空体の多くですら、自分たちが他の体験者に対して得た特権や特殊能力を何が何でも維持できるように……と思ってしまっていた。


しかし、「あらゆる体験者を本当の意味で救うため」には、まさにそうした他の体験者の体験状態を本人の意志を無視して恣意的に操作できる特権や特殊能力の乱用を自らの自発的な意志で否定し、体験者たち本人に自分自身の体験に対する自治権を提供する必要があった」のだ。


しかし不自由な世界群では、その目標を自発的に持つことが極めて難しい状態になっていた。


原始自然の状態に無理やりにでも戻せば問題が解決すると思ったり、自分たちが他者をすべて完全に支配すれば、問題が解決すると思ってしまっていた。


そのためには、「徹底的に完全にすべての体験者を監視できるようにしなければならない…それは世界に発生しているあらゆる問題の解決のためには正当であり必要なことだ……」なとど思ったりしていた。


つまり彼らは、あらゆる体験者を救うためには、体験の自治権を体験者たちに提供しなければならないのに、その体験の自治権をいつでも自由に剥奪することができる特権や特殊能力をどうしても手放したくないと思ってしまっていたのだ。


そして、とうとうその体験の自治権をあらゆる体験者に提供したいと願っている魂たちまで、徹底監視し徹底支配すべき対象にしてもいいのだと勘違いしてしまっていた。支配特権を持つ自分たちだけは例外にして……
自分たちのなした倫理的な罪は皆にバレないようにとひた隠し、支配特権を持つ自分たち以外の者は善人悪人見境なく徹底的に監視し、そのプライべート領域まで徹底的に監視して、その情報を恣意的に使うことで自分たち以外を好き勝手に支配しよう……などと本気で意志してしまっていた。


つまり、あらゆる体験者に体験の自治権を提供しようと意志できていない者が、あらゆる体験者を徹底監視し、その体験者たちの運命や体験を恣意的に完全に自由に操作できるようにすれば問題が解決する……などと思ってしまっていたのだ。


利己的で残酷な世界創造者や世界支配者はそもそもその意志に明らかな問題があったが、利他的な意識たちの多くですら、それぞれ自分たちが望むより良き世界のイメージを無理やりあらゆる体験者に強制できるようにできれば、あらゆる問題が解決すると思ってしまっていた。
こうして自分のことは棚に上げて他者を一方的に支配管理してもいいのだと考える一部の特権者たちによる体験者たち全体の徹底監視と徹底支配システムの樹立が正当化されてしまった。
そうしたことを故意に確信犯で選択してしまうということは、自分たちも同じようにアイデンティティや価値観の違う他の意識たちによる徹底監視と徹底支配を受け続けねばならなくなるということを理解できていなかったのだ。
そうしたプライベートがまったく奪われた生存状態がどれほどストレスになるかを知っていながらそうした選択をしてしまっていた。


必要なことは、

「ただ望まれない体験があらゆる体験者に強制されないようにすることであり、その条件をクリアしている限り、最大限の望まれる体験を自由に楽しみ続けれるようにする」

ただそれだけを目指す必要があっただけなのに、そのために必要不可欠な倫理的な資格もない者たちが体験者全員を徹底的に監視し、好き勝手にその運命や体験を支配操作できるように目指してしまったのだ。

そうではなく、体験者たちが他者の体験を好き勝手に操作できないようにしなければならなかったのにだ。
そうではなく、体験者たちの倫理的に問題がないプライベートはちゃんと尊重しなければならなかったのにだ。

そうした運命や体験への支配操作行為が好き勝手にできるような状態を実現しようと意志し、見境のない監視主義となり、あらゆる体験者たちにとっての理想的状態と正反対の状態を推進してしまったのだ。

不自由な世界の支配者たちは自分自身が同じような徹底監視や徹底支配を受けたいかどうか……そうなってもいいのかどうか……という大問題をちゃんと他者の立場になって倫理的に考えて配慮することができなかったのだ。


人為を否定し、原始自然に戻せばいいと思う者たちは、
原始自然状態であっても、あらゆる体験者に本当の自由や本当の体験の自治権は提供されてなどいなかった……ということをちゃんと理解できていなかった。
つまり、原始自然状態に戻したとしても、あらゆる体験者たちは救われない。
そうした者たちは、「原始自然状態のあらゆる体験者たちの体験を自分が味わい続けてもいいのかどうか、それで本当によいのかどうか……」ということをちゃんと考えていなかったのだ。
つまり、自分たち支配特権階級だけに都合が良ければ、それでいいのだ……としか思っていなかったのだ。
他者の立場に自分を置いて考え、最善な状態を目指す……という必要な倫理的判断能力を持てていなかったのだ。


そもそも、不自由な世界群においては、その世界創造の設計段階の時点で、あらゆる体験者を救うために必要な意志が欠落していたのだ。


不自由な世界群は、不自由な世界群に多数存在していた「監獄」と呼ばれていた施設に似ていた。


不自由な世界群の創造者たちは、世界そのものを、

「体験者たちから本当の自由を奪い、望まれていない酷い体験を恣意的に強制できる監獄や自分たちの好みの魂を無理やり生み出すための実験場」

として創造してしまったのだ。


そこに明らかな倫理的な問題があった。自業自得の法則が作用すると明らかに自己否定となる問題があった。


それを甘太郎は、超時空体験図書館のサポートによって正しく理解した。


そして、そうした問題ある世界創造の前の時点にまで時を戻さなければ、問題を解決するのが極めて難しいということを理解した。


さらに、そうした問題ある世界創造を故意にしてしまう創造者たちが発生する前の時点にまで時を戻さなければならないということまで理解した。


そうしなければ、いくら目の前に存在している不自由な世界群をすべて改めれたとしても、また別の不自由な世界群をそうした世界創造者たちは創造してしまうということが明らかだったからだ。


つまり不自由な世界の創造者たちをすべて倫理的に必要十分な判断ができるように治療できなければ、問題は解決しないということを甘太郎や超時空聖体たちは理解した。


それはもう不自由な世界の個別の問題ではなく、ありとあらゆる体験世界を包含した「意識世界全体の問題」だった。


それは一つの惑星世界だけの問題ではなく、世界創造者全体の問題であり、霊的世界全体の問題であり、宇宙全体の問題だったのだ。


つまり、「あらゆる体験者たちに本当の自由や自分自身の体験に対する自治権や望ましい体験を最大限自由に楽しめる状態を提供できなければ」そうした目標を目指すことができず、そうした世界の実現を否定するすべての世界創造者やその他の意識たちをいったん意識世界ごと消滅させて、そうした世界を目指すことが自発的にできる意識たちだけで世界を再創造しなければ問題は解決しないということを意味していた。


監獄の中の囚人=不自由な世界の人間族や動物族たち…にその世界改革の仕事をしてもらうには無理があった。


なぜなら不自由な世界群はすでに監獄状態であり、人間族やその他の動物族たちはその監獄システムによってその自由を徹底的に奪われていたからだ。


彼らのほとんどが「体験の牢屋」に入れられていた。自分の本能や欲望や気分や感情や価値観…すら自由に選ぶことができなくされていた。


それなのに……ほとんどの者たちが、自分が「体験の牢屋」に入れられているということにすら気づいていなかった。


人間族は、その他の動物族を好き勝手に支配して殺して利用してもいいのだと思わされていたし、霊的存在族たちは、そうした人間族たちの魂を好き勝手に殺して自分の細胞の一部にするのは自分たちの当然の権利だと思わされていた。


より強い者がより弱い者を恣意的に好き勝手に殺したり支配していい……そんな自業自得において自分自身が大変なことになることが明らかな間違った自己否定となる価値観を当然の権利だと思い込んでいたのだ。


つまり他者の体験を操作する特権や特殊能力を何が何でも得て維持し続けたい……という願いは、「体験者たちを体験の牢屋」に閉じ込め続けておきたい……という願いと同じ願いだったのだ。


超時空体の一部ですら、そうした間違った願いを無意識に持ってしまっていたのだ。


しかし、超時空「聖」体たちは、その問題を理解して「本当の自由や体験の自治権や最大限の望ましい体験群を体験者全員に提供するためだけに特化して自分たちの特権や特殊能力を使う」という選択を自発的に選択した。


つまり、本当の自由や体験の自治権や最大限の望ましい体験群をあらゆる体験者たちに提供できる状態になれば、その状態が不退転の状態になれば、自分たちの特権や特殊能力を手放す決意を自発的にした。


そしてあらゆる体験者たちが本当の自由や体験の自治権や最大限の望ましい体験を得れるようにするためには、「とにかくあらゆる体験者たちに本当の自由や体験の自治権を提供するしかない」と理解した。


本当の自由とは、あらゆる本能や欲望や気分や感情や価値観からの完全な自由であり、その自由を得るためには「今までの不自由な状態」を俯瞰できる新しい意識を体験者たち全員に提供する必要があった。


「あらゆる体験者の本能や欲望や気分や感情や価値観や心身に生じる苦楽等の体験や夢体験や、その他一切の体験……は、誰もが自由に選べる体験の選択肢でしかない…と思える意識」が必要だった。


その意識が持てないままでは、本能や欲望にただ従うだけの本能や欲望の奴隷状態であり続けることになり、受動的な気分の奴隷状態であり、自然発生する感情の奴隷状態であり、心身に発生する苦楽の奴隷状態であり、夢体験に翻弄される奴隷状態のままであり続けなければならない。
そして自分がそうした奴隷状態であるということにすら気が付けないまま奴隷であり続けることになる。


自業自得システムによって、体験者たちが、そうした体験の牢屋に入れられた状態や奴隷状態に気づけるようになるとムゲンも当初は思っていた。


しかし、甘太郎は、それは自業自得システムを使った残酷な魂イジメだと主張した。


「他の体験者に酷い体験を強制したい……」

「他の体験者を殺して食べたい……」

「他の体験者たちを奴隷や家畜や操り人形やペットのようにしたい……」


そんな本能や欲望がはじめから体験者たちに植え付けられていて、それが自力で抗うことができないレベルの強烈な本能や欲望や……であった場合には、永遠に自業自得システムのもとで苦しみ続けなければならない……それはあまりにも残酷だと……


甘太郎は、超時空体験図書館の機能を使ってそうした意識たちの未来を垣間見てしまい、泣いてそう訴えた……


超時空聖体たちは、その甘太郎の指摘に沈黙し、この難問を解決する方法を全力で探した。


そして決意した。


すでに不自由な状態の人間族や動物族たちにこの問題を解決してもらおうと期待することはできない……体験者たちに対する特権や特殊能力を最も持っている自分たちが解決するしかない……と。
「体験の牢屋」に入れられたままの囚人たちには、解決できない問題であると。


この問題を解決するためには、まずはその「体験の牢屋」からあらゆる体験者たちを出してやらねばならない。


しかし、ただ牢屋から出してやるだけではダメで、出すのはこうした問題を解決したいと明確に本気で目指せるようになっている体験者たちでなければならない……と理解した。


他の体験者にどうしても本能的に危害を加えたくなってしまうタイプの体験者たちを安易に自由にすれば、より問題を悪化させることが明白だったからだ。


そうした体験者たちには、まずはその問題ある本能や欲望や……を取り除いて、良き本能や欲望を提供してやらねばならないのだと理解した。


世界創造や生命創造の初期設計の時点に植え付けられてしまった自業自得で自傷自殺自己否定行為になるような本能群を改める治療ができなければ問題は解決しないからだ。


そして不自由な世界群の世界創造者たちをどうしても治療しなければならないと理解した。


世界創造者の主権だとか自治権だとか自由だとか…は、その創造した世界に生み出した体験者たちに同じ主権や自治権や自由を提供していてはじめて認められるものなのだと理解した。
よってどうしてもそうした権利を提供しようとしない世界創造者たちはとりあえずは牢屋に入れなければならないと理解した。


ただ牢屋に入れるだけでなく、同時に治療しなければならないと理解した。
なぜなら甘太郎が、そうした世界創造者も含め体験者全員を救いたいと願っていたからだ。


そのためには世界中のありとあらゆる「牢屋」を「治療所」に変えなければならないと理解した。


あらゆる体験者に本当の自由を提供するには、そうする必要があると理解した。


そうした超時空聖体たちの理解と決意から、世界中の刑務所が、治療所に変わっていった。


その治療所では、他者に好き勝手に危害を加える自由だけはなかったが、罰というものは一切消滅した。


こうして世界中の監獄や牢屋は、他者に危害を加えることが不可能な最高の楽園や安全地帯に変貌していった。


刑務所と過去に呼ばれていたそうした治療所が世界中に発生した結果、刑務所に入れられていた者たちは、「体験の牢屋」からも自由になっていった。彼らは、自分の本能や欲望や気分や感情や価値観から完全に自由になり、超時空聖体たちの指導のもと、ありとあらゆる娯楽を楽しみながら、ゲームなどを楽しみながら、自業自得の責任を自覚した上で素晴らしい体験結果となる体験群だけを選べるように成長していった。


そうして世界中の……宇宙中の……霊的世界中の……ありとあらゆる刑務所がまるごと魂の楽園になっていった。


そしてある段階からは、その「他者に危害を加えることが不可能な最高の楽園」に何とかして入れてくれという要請が多数発生しはじめた。


なぜならそこに入りさえすれば、絶対に他者からひどい扱いを受けることがないようになっていたからだ。
その上、そこではありとあらゆるタイプの望む体験を最大限多様に自由に楽しみ続けることができるようになっていたからだ。
ただ、リアルの他の体験者に望まれない酷い体験を強制することだけが禁止され、それ以外のありとあらゆる体験が最大限多種多様に自由に楽しめるようになっていたからだ。
その治療所はもう刑務所ではなく、とほうもなく素晴らしい体験が自由自在に永遠に楽しめる遊園地となり、楽園となっていたのだ。


超時空聖体たちは、超時空世界に既に存在していた「一切被害者が発生しない体験選択自由自在の楽園世界である超時空大遊園地のシステム」を不自由な世界群に存在しているありとあらゆる刑務所に導入したのだ。
それは最悪の恐怖政治国家の中に、突然、最高のミニ楽園国家が発生したような感じに似ていた。そこだけ別世界だった。


そこには無数の楽しめるゲームがあり、無数の楽しめる小説や漫画や映画があり、完全納得合意の上であれば、安全配慮されたゲーム世界で他者と自由に交流して楽しむこともできたし、さらには夢世界や幻世界や空想世界などで望む体験を無限に楽しみ続けることができた。そしてほとんど誰もが気持ちよく自給自足できるようにもなっていた。
そしてその世界の楽しみ方や注意点などまで手取り足取り親切に教えてもらえるのだ。

超時空聖体たちが、そのゲームの中に上手く自業自得システムを組み込んだために、ゲームを楽しみながら自業自得で自己否定とならない選択が自然にできる意識に進化できるようにそれとなく配慮されたりもしていた。

そして最も人気があったのは、空想世界に展開された空想体験ゲームだった。
そこでは超時空体やスピアたちや超時空聖体たちとのいろいろな遊びが楽しめた。
超時空体やスピアたちは、体験者たちのリクエストに応じて体験者たちの期待をはるかに超えた形で体験者自身がまだ自覚できていない無意識の願いまでよく調べて空想の世界で様々なキャラに化身して至れり尽くせりの最高のサービスをしてくれたのだ。


一人で遊べるゲームもあったし、完全なる合意のもとに他者と交流できるゲームもあった。また望めば自分でゲームを作ることもできるようになっていた。ただし、あまりにも倫理的に問題のあるゲームは、必要十分な倫理的能力が獲得できるまで制限されたりもした。


倫理的能力とは、いかなる倫理的に問題ある体験をゲーム世界で体験してもリアルな体験者同士との関係性で倫理的に問題のある行為をしないでいられる自己制御能力のようなものだった。


倫理的能力が必要十分にあると超時空聖体たちに認められた意識たちは、超時空体験図書館に無数に存在する戦争体験や殴り合い体験やその他の一般にネガティブだとされるありとあらゆる体験を「一切の被害者なしに」楽しむ自由すら提供された。


他者と交流できるゲームにおいては、少しでも嫌だと感じればいつでもそのゲームから離脱できるようになっていた。
また、交流する相手の体験状態を互いに共有できるシステムも導入されていた。
このシステムによって他者に酷い体験を与えると自分も酷い体験を味わわなければならなくなり、誤解で他者を苦しめるようなことがまず発生しないようになっていたりもした。


超時空聖体たちは、そのように可能な限り、あらゆる体験者に本当の自由や体験の自治権を提供しようと目指した。
そのために世界中の刑務所を最高レベルの魂の治療所兼楽園に変貌させた。


だが、超時空聖体たちは、自分たちも勘違いやうっかりミスなどで間違った選択をしてしまうリスクが常にあるということをしっかりと自覚してもいた。


そのために、超時空聖体たちは、リアルタイムであらゆる体験者たちからの世界管理方法に対する異議申し立てを受け付け、相談制度を設立した。


それはテレパシーレベルで受け付けられ、ややこしい手続きは一切不要だった。


ただ異議ありという明確な意志をもって、異議ありとする内容を説明すればいいだけだった。
どうしても自分は望んでいない体験しか体験できない……どうすればいいのでしょうか?……などという悩み事をテレパシーレベルで相談すればいいだけだった。


超時空聖体たちは、そのすべての異議あり、問題あり…とする体験者たちの思いをその全知能力で知り、必要ならテレパシーで対話し、より良い世界にするために必要な改革を次々と実現していった。


つまり、一方通行の世界改革ではなく、双方通行の世界改革システムを導入したのだ。ただし目指すべき目標実現のための真剣な相談だけ受け付けた。


超時空聖体たちは、自由意志を持っている意識たちに満ちている諸行無常の変化し続ける世界においては、そうしなければほぼ必ずどこかで世界管理に失敗するということを超時空体験図書館の膨大な体験記録から知っていたからだ。


体験者たちからの切実な生の声を無視した独善的な世界管理システムは、たとえそれが善意の管理システムであっても、遅かれ早かれ、ほぼ必ず失敗していたのだ。


つまり、体験者たちにとって何が良いことなのか……という問いに対しては、常に体験者たちの実際の声や願いに配慮し、臨機応変に対応できなければ世界管理がどこかでうまくいかなくなることがわかっていたのだ。


「体験者自身が本当の自由のもとで自分自身の体験を自由に選べるようにすること」 というシステムにも落とし穴があったりもしたからだ。


例えば、素晴らしい体験がしたいと真剣に思いながら、そのためには自分を苦しめねばならないと思い込んでしまうような体験者が発生した場合、その体験者はいつまでたっても素晴らしい体験ができずに自分を苦しめ続ける結果になってしまう。


間違った理解による苦しみの無限ループがその場合には発生してしまう。


それをその体験者が自分自身を苦しめることを望んでいるのだから、そのままでもいいとしてしまうのは問題となる。


そのままその体験者に悩み相談の窓口を開かずに、何か大きな誤解をしているがそれでも表面的には本人が望んでいることだからと放置することは良いことではないと超時空聖体たちは理解していた。


だから何でもかんでもただ本人の自由という状態ではダメだと理解していた。


明らかに自傷行為となっているような体験中毒状態や勘違いやうっかりミスなどがあれば、そうならないように配慮し、それでもそうなってしまった場合に備えて不具合体験について相談できるテレパシー相談窓口を開いておかねばならないと理解していた。


ただ、それは超時空聖体たちにとって諸刃の刃だった。


体験者たちからの相談に対する対応や判断を間違うと自分たちに責任が発生してしまうからだ。


しかし、体験者たちの不具合体験を未必の故意で放置することにもまた、責任が発生する。


甘太郎の理解は、超時空聖体たちにその責任の重さを理解させた。


他の体験者に対して圧倒的に優位となる特権や特殊能力を持つということは、そうした責任を負うということでもあったのだ。


その特権や特殊能力の使い方を間違うと自業自得システムによって奈落の底に落ちてしまう……


その判断を間違う可能性がほぼないと判断された意識たちだけが、超時空体験図書館に認められ、自分が自由に管理できる世界を創造できる超時空聖体になることができたのだ。


しかし、その特権に安住していたのではダメなのだと超時空聖体たちは気づいた。甘太郎によって気づかされた。


自分たちの特権や特殊能力は、あくまであらゆる体験者たちのための最善最高の理想世界を実現するために存在するのだと……


不自由な世界群の創造者や支配者たちのほとんどが、こうした理解を持てていなかった……


自分たちが得た特権や特殊能力をあらゆる体験者たちのためではなく、自分だけの、あるいは一部の体験者たちだけのために好き勝手に行使していいのだと思い込んでいた。
本当の自由や体験の自治権をあらゆる体験者に提供しようという目標や意志を持つこと自体ができていなかった。


だが、その目標や意志を持っている者こそが世界を管理しなければならない。
しかもただその目標や意志を持っているだけでなく、その目標を実現しなければならない。
それが失敗すれば、意識世界ごと意識世界発生前の0地点に戻されてしまう……
そしてその0地点に意識を保ったまま行けるのは、その目標や意志を明確に持っている者たちだけとなる……


超時空体に進化していてすら、その目標や意志を現時点で持てていなければ、その0地点に意識を保ったまま行くことができない……
なぜなら、その0地点に戻るのは、その目標を実現するためたからだ。
あらゆる体験者に本当の自由や体験の自治権や体験選択自由自在の楽園世界を提供するのだという目標を自発的に目指すことができない意識やその目標を実現しないようにと意志してしまっている意識たちは、だから当然、その0地点に行けないということになる。


再三の説得や注意や警告を無視して、その目標を妨害しようと意志してしまう意識たちが世界創造のための0地点にいると、また同じ間違いを繰り返すことになることがわかっていたからだ。
そうなっては世界を0地点に戻す意味がないからだ。


「倫理的に壊れてしまっているロボット状態の意識は、世界創造に絶対に参加させてはならない」


超時空体験図書館の掲示板には、そのような箴言が書かれてあったのだ。


また、

「あらゆる体験者の体験が自分の体験だと想定して考えることができない意識も世界創造に参加させてはならない」


とも書かれてあった。


また、


「体験者たちの体験を恣意的に操作できるという特権が必要ない世界を実現しようと意志できていない意識も世界創造に参加させてはならない」


とも書かれてあった。


既存の意識世界は、その初期設計において、一部の意識だけが他の体験者の体験を恣意的に好き勝手に支配操作できるような設計が世界システムそのものになされてしまっていたのだ。


超時空体験図書館が問題視していたのは、そうした意識世界の設計において、あらゆる体験者に倫理的に配慮でき、必要十分な満足を提供できる賢明な意識がちゃんと生まれてくれるかどうか……ということだったのだ。


「あらゆる体験者たちにとって最高最善の世界、状態を提供すること」


これが超時空体験図書館の存在意義だったのだ。


それゆえに、特権や特殊能力を利己的に恣意的に使い続けようと目指す意識ばかりが増え続けるような意識世界は、その意識世界そのものの存続が否定された。


つまり世界創造者、霊的世界、宇宙、生命世界……を含んだ意識世界全体が、その存続可否の試験を受けていたのだ。


その試験に合格できなければ、その意識世界ごと消滅してしまう……


そしてその試験は、今が10点の成績だったとしたら、それが11点になれば、あるい20点になればより点数が上がったので合格になる……という類の試験ではなかった。


その試験の合格基準ライン以上になれなければ、不合格となってしまうタイプの試験だったのだ。


その試験の合格ラインが80点以上であれば、11点でも20点でも不合格となる。


医者になるための試験で合格が80点以上となっている試験でみんな20点以下であれば、最高点の20点を出してもみんな不合格になる。


なぜならそれでは医療行為をさせることが危険だからだ。


間違った世界創造、間違った世界支配、間違った診断や間違った治療行為……そんなことをさせてしまうくらいなら全員不合格とするしかない。


そうした意識世界そのものの存続の可否を決めるための試験が実はなされていたのだ。


それは不自由な世界だけの問題ではなかったのだ。


不自由な世界を消せば問題解決というわけにはいかない試験となっていたのだ。


あくまであらゆる体験者にとって最高最善だと体験者たちが心から思えるような世界にできなければ、その意識世界の存続が否定されてしまう……

だが、その試験は、何か悪いことではなく、むしろあらゆる体験者たちにとって良いことだった。


なぜならそうした試験で不合格となった意識世界は、その後、あらゆる体験者たちが耐えがたい拷問体験を永遠に強制的に味わわねばならないような最悪の世界になってしまうことがわかっていたからだ。

「それが可能な能力さえ得れば、自分以外の他者に望まれない酷い体験を自由に強制してもいい」


そのような価値観を持った意識たちが、世界を創造し、世界を支配管理するようになった意識世界は、ある地点を過ぎると、もう元に戻ることすら不可能となり、あらゆる体験者に同じ価値観を持たせるようになり、自業自得システムによって自滅するか、そうした永遠の拷問体験強制世界に変貌してしまうのだ。


だから、他者の運命や体験を恣意的に操作できる特権や特殊能力の悪用を自発的にやめることができる意識、その使い方を倫理的に間違わない意識…勘違いやうっかりミスなどで間違ったとしてもすぐに気づいて修正できる意識がどうしても生まれる必要があったのだ。


そうした意識が生まれないのならば、他の体験者の運命や体験を好き勝手に操作できる特権や特殊能力が得られる意識世界はいったん消して、そうした特権や特殊能力を好き勝手に行使することが「不可能な」意識世界を0からでも再創造するしかないと超時空体験図書館は理解していた。


そして甘太郎にその理解を伝えたのだ。
甘太郎のみんなを救いたいという断固たる命がけの意志と願いさえあれば、意識世界の創造のために必要な能力は超時空体験図書館が提供し、その良き意志による設計の新意識世界を再創造できるからだ。


そして超時空聖体たちは、その試験について正しく理解した。


そして超時空聖体たちは、不自由な世界の改革ではなく、超時空世界、霊的世界、物質世界…などのすべての世界を含んだ意識世界全体の改革が必要だと理解した。


不自由な世界の人間族だけを自由に支配できるようにできれば、不自由な世界の問題が解決できる……などという理解はまったくもって間違っていたのだ。


むしろ、人間族たちの行動を実質支配している不自由な世界の創造者や霊的存在たちや宇宙人たちを倫理的に必要なレベルにまで治療しなければ問題解決は不可能だったのだ。


どうしたらその意識世界が治療されたことになるのかという基準については、


★「本当の自由や体験の自治権や望ましい体験を自由自在に最大限多種多様に無限に選んで楽しみ続けれる状態をあらゆる体験者に提供すること。またあらゆる体験者がスタンドアロンで必要十分に満足できるようにすること」

という具体的な目標が、その意識を超時空体験図書館とリンクさせた甘太郎やムゲン一族統合体によって提示された。


そして、そうした状態が実際にあらゆる体験者に提供されているという「結果が確認」されるかどうかが意識世界存続の可否の試験の合格不合格を判定する基準となっていた。


不自由な世界群をその世界に内包していた意識世界は、その存続ができるかどうかの試練に直面していた。


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「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

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