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甘太郎の新世界創造
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このようにして甘太郎と超時空聖体が存在していた意識世界は、どんどんと甘太郎の世界改革が進み、世界はどんどんと楽園化していった。
しかし、甘太郎がいない意識世界や超時空聖体がいない意識世界では、世界は楽園化してゆけなかった
なぜなら「世界全体をあらゆる体験者たちのための楽園にしようと目指す意志」が不足していたからだ。
不自由な世界群をそのまま放置することで、そのまま不自由な世界群に侵略されてしまった意識世界もあった。
また、不自由な世界群を利己的な目的で滅ぼしたことで、自分たちもまた自業自得となり、別の意識世界の利己的な目的のために滅ぼされていった意識世界もあった。
自業自得の法によって、自滅すべき意識世界は自滅していった。
利己的で残酷な支配欲を持った者たちが支配統治するようになった意識世界群は早い遅いの違いはあっても最終的にはことごとく滅んでいった。
誰がその意識世界の支配権を手にするかによって、その意識世界の未来が決まった。
そもそも他者を利己的な目的で支配しようとする意志には致命的な毒があった。
その毒を唯一解毒できるのが甘太郎一族たちの「あらゆる体験者に最善最高の世界を提供したい」という願いと意志だった。
意識世界が生き残るために必要不可欠な条件とは、甘太郎一族のそうした意志に世界管理の権限を全面的に委譲することだったのだ。
すべての支配者や権力者たちは、その支配権力や権限を甘太郎一族に手渡さねばならなかったのだ。
それが意識世界が存続し続けるために必要不可欠な条件だった。
そもそも他者を「自分たちの趣味嗜好で身勝手に支配してやろう……」という意志ではダメだったのだ。
他者をいつでも滅ぼしたり苦しめたりできる支配権力を手にしようと欲し、それを成功させてしまった者たちは、ことごとく自分たちも別の者によって滅ぼされたり苦しめられるようになった。
そのような支配権力は、つまり実は自殺用の毒だったのだ。
目指すべきは、「支配者も被支配者も必要ない世界」だったのだ。
不自由な世界群では、どの世界支配者たちも、どの権力者たちも、「あらゆる体験者が平和的に自治できるようにしよう」と目指していなかった。
むしろ、あらゆる体験者を徹底的に完全に「自分たちの望むように」支配してしまおう……などと本気で思っていた。
そうした不自由な世界群の、あるいは不自由な意識世界群の支配者や権力者たちは、あらゆる体験者たちが自分自身の体験や運命を自分の意志で自由に選んで楽しみ続けれるように……などとは一切思わなかったのだ。
不自由な世界群の支配者たちのすべてが、「自分たちの好きな色」に世界や体験者たちを染め上げようとしていた。
それぞれの体験者たちに、「自治権」を提供しよう……とは決して思わなかったのだ。
他の体験者を攻撃しない限り、あらゆる体験者が一切の支配を受けずに、自分だけの世界で自由に自分の望む体験を楽しみ続けれるようにしようとは思わなかったのだ。
そうした自治権こそが、甘太郎の世界改革の柱となっていた「体験の自治権」だった。
唯一、そうした体験の自治権をあらゆる体験者たちに提供するための世界管理、世界支配だけが自業自得の法において自滅を回避できる選択肢だった。
しかし、それは川を渡るための筏が、川を渡り切れば不要になるようなものでなければならなかった。
いつまでもずっと自分たちだけが世界を支配し続けるのだ……というような意志では、意識世界を存続させることはできなかったのだ。
支配行為など一切必要ない誰もが本当に自由で安全な世界を実現するための一時的な支配行為 だけが支配行為という毒を無毒化することができた。
つまり、はじめから自分たちだけが好き勝手に世界や他の体験者たちを一方的に支配できるようになればいい……などという目標を選択することは、はじめから自滅を選択することだったのだ。
なぜなら、体験者たちに「体験の自治権」を提供しないという選択を故意にすれば、自らもまたその「体験の自治権」を自業自得の法により、得られなくなるからだ。
他者を自分の好む体験者に無理やりにしてしまおうと意志することは、また別の誰かによってその者は同じように扱われることになってしまうからだ。
誰も他者からそうした不当な扱いを受けることがない世界を実現しようと意志する必要があったのだ。
実際に他者を故意に積極的に加害し攻撃しない限り、最大限の自由と自治権があらゆる体験者に提供されるべきだったのだ。
また、最終的には他者の体験の自治権を奪うことが不可能な世界、つまりは「一切の他者への加害や攻撃が不可能な世界」を実現しようと目指すべきだったのだ。
不自由な世界群や不自由な意識世界群の支配者たちのほぼすべてが、そうしたことを本気で意志できていなかった。
自分が支配者になれば、今よりもましな世界にできる……
不自由な世界の支配者たちは、せいぜい多少ましな意志であってもその程度の意志しか持てていなかった。
意識世界が生き残り続けるためには、その程度の意志では不完全不十分だったのだ。
あらゆる体験者たちのための最終目標を高らかに掲げ、かつ、その最終目標が間違いなくあらゆる体験者たちが、
「そうした世界なら自分がその世界のどの体験者であるとしても、その世界が永遠に続いて欲しいと思える……」
そのような世界の実現でなければならなかったのだ。
単に自分たちの好みの色に世界や体験者たちを染め上げてしまえばそれでいい……などという意志ばかりではとうてい意識世界の存続には不完全不十分だったのだ。
自分たちの国家、自分たちの宗教、自分たちの好み……そのようなものは、一切の強制のない完全な合意された者たちだけで楽しむ遊園地のアトラクションのひとつのように扱われるべきだったのだ。
そしてそのアトラクションはいつでも自由に選んだり選ばなかったりできる選択肢でなければならなかったのだ。
そうした自由に選べる同好会であれば自由に参加不参加ができるから存在していても問題ないのであって、無理やり趣味嗜好が違う体験者を全員自分たちの同好会に参加させ、その身勝手なルールに無理やり従わせよう……などと目指してはならなかったのだ。
つまり、「目指すべき目標」を不自由な世界群や不自由な意識世界群は、間違えていた。
超時空体験図書館に住み込みしている甘太郎は、そうした無数に存在する不自由な世界群や不自由な意識世界群に対してアドバイスをし続けていた。
超時空体験図書館に住んでいる甘太郎には、あらゆる世界がそのままで存続できるかどうかということが一瞬でわかったからだ。
「とにかく、最終目標を明確に持たなきゃダメだよ。今よりもましな世界にできても最終目標が間違っていると、遅かれ早かれその意識世界は消滅してしまうんだから……
ダメダメ、そうじゃないよ。ちゃんと皆に体験の自治権と本当の自由と最大限の素晴らしい体験の選択肢とスタンドアロンで必要十分に満足できる能力を提供しようと目指さなきゃ……」
超時空体験図書館に住み込んでいる甘太郎は、未来が見えているので、あらゆる世界の支配者たちにそうしたアドバイスを繰り返す……
しかし、不自由な世界群や不自由な意識世界群の支配者たちや支配者候補たちは、甘太郎にそうアドバイスされても、そうした目標を本気で持つことができない場合が圧倒的多数だった。
唯一、超時空聖体が既に存在している意識世界だけが、その甘太郎のアドバイスに従うのみだったのだ。
そもそも体験者の関係性に上下関係を設定した上に下が従わねばならないような支配被支配ピラミッド構造を設定して、そうした設定や仕組みをそのままでよいと皆が思ってしまっている不自由な世界群は、超時空体験図書館にその存続は不可能だと判定されてしまっていた。
ほとんどの不自由な世界の支配者や支配者候補たちは、他者の体験を好き勝手に遠隔操作できる技術や能力を得ようとし、得てしまっていた。
そして、自分たちの好みの色に自分たち以外の体験者を染め上げてしまおう……などという間違った目標を持っていながら、そうした他者の体験や運命の遠隔操作能力を手にしてしまった者たちは、ことごとくその力の使い方を間違えて自滅した。
超時空体験図書館には、累々とそうした間違った目標と他者の体験への支配力をセットで持ってしまったために滅びていった世界群の記録が存在していた。
つまり、そのような他者に体験の自治権を提供しようとしない間違った価値観や目標が、あらゆる世界やあらゆる体験者の致命的な毒になることは明白だった。
それなのに……そうした不自由な世界群の支配者たちは、他者の体験を好き勝手に支配操作できる技術や能力や権力…を得ることを目指してしまっていた。
あらゆる体験者の体験や運命を好き勝手に操作できる毒を体験者たちに飲ませて、自分たちもその行為によって自業自得で同じ毒を飲まねばならないようになってしまったのだ。
超時空体験図書館の甘太郎は、何とかそうした間違った選択を改めさせようとアドバイスをし続けていたが、不自由な世界群の支配者たちの多くが、そうした甘太郎からの善意のアドバイスをも無視して、甘太郎の説得に応じようとしなかった。
それは何度も繰り返し酷い目にあっている過去の記憶が累々とあるのに、同じ間違いを繰り返してしまう中毒者のようであった。
超時空体験図書館は、そうした者たちを「倫理的に壊れてしまったロボット群」と呼び、他の倫理的にまともな世界群を守るために消す必要があると判断していた。
しかし、甘太郎はそれでもなんとかそうした魂たちも助けてやりたいと思い、助ける方法を探し続けていた。
悩み悩んだ末に……超時空体験図書館の甘太郎は、どうしても説得できない不自由な世界群を自分の創造する新世界にまるごと取り込もうと計画した。
甘太郎が、超時空体験図書館にいる限り、自分が想像できる世界なら、実現化させることができると知ったからだ。
であれば、どんな問題がある不自由な世界でも、それが問題とならないような「法則」を付与した新世界にまるごと取り込んでしまえば、一切の問題を解決できると思ったのだ。
不自由な世界に無数に発生する困った問題の本質とは、体験者同士が他の体験者の体験や運命を好き勝手に恣意的に操作できてしまう……という問題だった。
であれば、そもそも世界の設計の段階で、「体験者同士が他の体験者の体験や運命を好き勝手に操作することが不可能となる法則を付与しておけばいい」
不自由な世界群に存在している肉体と呼ばれる拷問体験強制装置についても、その拷問体験強制機能を自動的に無効化できるような仕組みを新世界の法則として付与してしまえばいい。
つまり、あらゆる不自由な世界の困った諸問題を自動的に解消できる機能を自分が創造する新世界にあらかじめ付与しておけばいい……そう思ったのだ。
個別の魂を救助することは、超時空聖体たちがやってはいたが、世界を丸ごと救助してしまえる新世界はまだ実現していなかったからだ。
甘太郎は、すべての体験者たちを救いたかった。
そのためには、どうしても世界改革が自発的にできない不自由な世界群を丸ごと救える新世界が必要だと思うに至った。
個別の魂を救うだけではなく、滅ぶべきと判断された意識世界を丸ごと救う新世界が必要だと思うに至った。
そのためには世界の法則をそもそも変えねばならないと甘太郎は理解した。
つまりは、望まれない体験が絶対確実にあらゆる体験者に強制されることがない新世界が必要だと理解した。
不自由な世界群の不自由な法則群は、すべてその新世界の法則によって上書きされる。
そうすると、不自由な世界群に存在する自然や街は、そのままで、しかし、望まれない体験の付与は不可能となる。
自然界の法則、本能の設定、そうしたものもすべて新世界の新法則が上書きする。
意志の世界の否定肯定の体験強制システムも、すべて新世界の新法則で上書きする。
完全なる納得合意が成立していない関係性は、すべて回避したいと望むだけでいつでも回避できるように新世界の新法則で上書きする。
すると他者を恣意的に支配することがそもそも不可能になる。
すでに得ていた他者に対する支配能力もすべて無効化される。
あくまでそれぞれの体験者は、自分自身の体験のみを自分の意志だけでコントロールできるようになる。
そうすることで「体験の自治権」をあらゆる体験者に提供する。
どうしても自分たちの不自由な世界を滅ぼしてほしくないと思う者たちは、そうした上書きされた安全法則のある安全な新世界の中で存続すればいい……
甘太郎は、そんな風に思った。
別に無数の異なる価値観を持った文化や宗教や国家が存在していてもいい……ただ、そうした価値観を互いに強制しあうことが不可能であれば何も問題はない……
甘太郎はそんな風に思った。
どんな価値観やどんな趣味やどんなルールやどんな制度があってもいい……でも、それらによってあらゆる体験者に望まれない体験を強制することは絶対に不可能にしておけばいい……
相手からの心からの合意なく支配することも支配されることも不可能な世界……
すべての体験者へのすべての体験支配操作能力が完全に無効化される世界……
ただ他者への体験強制行為だけを、強制的に不可能にする世界……
不自由な世界の霊的世界の霊的存在たちのほとんどが、肉体を持った存在たちの合意なく身勝手にその心身の体験を操作する能力を当たり前のように使っていたが、そうしたことも完全に不可能になる世界……
不自由な世界群では、不自由な世界の創造者やその部下たちが好き勝手に他の体験者たちの体験や運命を支配操作できるようになっていたが、そうしたことが完全に不可能になる世界……
そうした新世界にあらゆる不自由な世界を保護してやれば、何も不自由な世界を滅ぼさなくてもよくなるだろう……
あらゆる不自由な世界のための治療所のような新世界を創造しよう。
不自由な世界が自力で世界改革ができないのならば、それによって世界が消されることが避けれないのならば、自分がそうした新世界を創造することでそうした不自由な世界の全員を救いたい……
超時空体験図書館に住み込んでいる甘太郎は、そんな風に思った。
説得が無理なら、そうするしかない……
昔からの文化だとか、教えだとか、制度だとか、そうしたものはあくまで体験者たちに望まない体験を強制しないように存在すればいい。
肉体なんてものも、あくまで体験者たちに望まない体験を強制しない前提でのみ存在すればいい。
ならば、自分の意識と肉体とを自らの意志だけで自由に分離しコントロールできるようにする法則も必要だな……
強制的に付与されてしまっている本能や欲望や気分や感情や価値観…なども自由自在に選べるようにする法則も必要だ……
望まない憑依霊からの憑依行為を自由に拒否できるようにする法則も必要だ……
地震や台風や竜巻……などの天災などを自由に拒否できる法則も必要だ……
痛みや苦しみを自由に拒否できる法則も必要だ……
そしてあらゆる体験者たちが退屈地獄に陥らないように、あらゆるタイプの満足体験や喜び体験や快楽体験を最大限自由に選んで楽しめるシステムも必要だ……
心や姿を他者に身勝手に覗き見されることを完全に拒否できる完全プライベート世界も必要だ……
望まれない体験の強制行為が完全に不可能な世界であれば、体験者たちを覗き見して監視する必要など一切なくなるのだから……
不自由な世界群の支配者たちはせっせとその被支配者たちを覗き見して監視しようとしてきたけれども、そもそもなぜ体験者たちを覗き見し監視する必要がない世界を実現しようと目指さなかったのだろう……
なぜ望まれない体験行為が不可能になる楽園世界を実現しようと思わなかったのだろう……
なぜ自分たちだけが世界の支配者であり続けようなどという利己的な願望を持ってしまったのだろう……
なぜ支配行為が一切不要の絶対安全な世界を実現しようと思わなかったのだろう……
甘太郎は、そんなことを超時空体験図書館で考えていた。
しかし、甘太郎がいない意識世界や超時空聖体がいない意識世界では、世界は楽園化してゆけなかった
なぜなら「世界全体をあらゆる体験者たちのための楽園にしようと目指す意志」が不足していたからだ。
不自由な世界群をそのまま放置することで、そのまま不自由な世界群に侵略されてしまった意識世界もあった。
また、不自由な世界群を利己的な目的で滅ぼしたことで、自分たちもまた自業自得となり、別の意識世界の利己的な目的のために滅ぼされていった意識世界もあった。
自業自得の法によって、自滅すべき意識世界は自滅していった。
利己的で残酷な支配欲を持った者たちが支配統治するようになった意識世界群は早い遅いの違いはあっても最終的にはことごとく滅んでいった。
誰がその意識世界の支配権を手にするかによって、その意識世界の未来が決まった。
そもそも他者を利己的な目的で支配しようとする意志には致命的な毒があった。
その毒を唯一解毒できるのが甘太郎一族たちの「あらゆる体験者に最善最高の世界を提供したい」という願いと意志だった。
意識世界が生き残るために必要不可欠な条件とは、甘太郎一族のそうした意志に世界管理の権限を全面的に委譲することだったのだ。
すべての支配者や権力者たちは、その支配権力や権限を甘太郎一族に手渡さねばならなかったのだ。
それが意識世界が存続し続けるために必要不可欠な条件だった。
そもそも他者を「自分たちの趣味嗜好で身勝手に支配してやろう……」という意志ではダメだったのだ。
他者をいつでも滅ぼしたり苦しめたりできる支配権力を手にしようと欲し、それを成功させてしまった者たちは、ことごとく自分たちも別の者によって滅ぼされたり苦しめられるようになった。
そのような支配権力は、つまり実は自殺用の毒だったのだ。
目指すべきは、「支配者も被支配者も必要ない世界」だったのだ。
不自由な世界群では、どの世界支配者たちも、どの権力者たちも、「あらゆる体験者が平和的に自治できるようにしよう」と目指していなかった。
むしろ、あらゆる体験者を徹底的に完全に「自分たちの望むように」支配してしまおう……などと本気で思っていた。
そうした不自由な世界群の、あるいは不自由な意識世界群の支配者や権力者たちは、あらゆる体験者たちが自分自身の体験や運命を自分の意志で自由に選んで楽しみ続けれるように……などとは一切思わなかったのだ。
不自由な世界群の支配者たちのすべてが、「自分たちの好きな色」に世界や体験者たちを染め上げようとしていた。
それぞれの体験者たちに、「自治権」を提供しよう……とは決して思わなかったのだ。
他の体験者を攻撃しない限り、あらゆる体験者が一切の支配を受けずに、自分だけの世界で自由に自分の望む体験を楽しみ続けれるようにしようとは思わなかったのだ。
そうした自治権こそが、甘太郎の世界改革の柱となっていた「体験の自治権」だった。
唯一、そうした体験の自治権をあらゆる体験者たちに提供するための世界管理、世界支配だけが自業自得の法において自滅を回避できる選択肢だった。
しかし、それは川を渡るための筏が、川を渡り切れば不要になるようなものでなければならなかった。
いつまでもずっと自分たちだけが世界を支配し続けるのだ……というような意志では、意識世界を存続させることはできなかったのだ。
支配行為など一切必要ない誰もが本当に自由で安全な世界を実現するための一時的な支配行為 だけが支配行為という毒を無毒化することができた。
つまり、はじめから自分たちだけが好き勝手に世界や他の体験者たちを一方的に支配できるようになればいい……などという目標を選択することは、はじめから自滅を選択することだったのだ。
なぜなら、体験者たちに「体験の自治権」を提供しないという選択を故意にすれば、自らもまたその「体験の自治権」を自業自得の法により、得られなくなるからだ。
他者を自分の好む体験者に無理やりにしてしまおうと意志することは、また別の誰かによってその者は同じように扱われることになってしまうからだ。
誰も他者からそうした不当な扱いを受けることがない世界を実現しようと意志する必要があったのだ。
実際に他者を故意に積極的に加害し攻撃しない限り、最大限の自由と自治権があらゆる体験者に提供されるべきだったのだ。
また、最終的には他者の体験の自治権を奪うことが不可能な世界、つまりは「一切の他者への加害や攻撃が不可能な世界」を実現しようと目指すべきだったのだ。
不自由な世界群や不自由な意識世界群の支配者たちのほぼすべてが、そうしたことを本気で意志できていなかった。
自分が支配者になれば、今よりもましな世界にできる……
不自由な世界の支配者たちは、せいぜい多少ましな意志であってもその程度の意志しか持てていなかった。
意識世界が生き残り続けるためには、その程度の意志では不完全不十分だったのだ。
あらゆる体験者たちのための最終目標を高らかに掲げ、かつ、その最終目標が間違いなくあらゆる体験者たちが、
「そうした世界なら自分がその世界のどの体験者であるとしても、その世界が永遠に続いて欲しいと思える……」
そのような世界の実現でなければならなかったのだ。
単に自分たちの好みの色に世界や体験者たちを染め上げてしまえばそれでいい……などという意志ばかりではとうてい意識世界の存続には不完全不十分だったのだ。
自分たちの国家、自分たちの宗教、自分たちの好み……そのようなものは、一切の強制のない完全な合意された者たちだけで楽しむ遊園地のアトラクションのひとつのように扱われるべきだったのだ。
そしてそのアトラクションはいつでも自由に選んだり選ばなかったりできる選択肢でなければならなかったのだ。
そうした自由に選べる同好会であれば自由に参加不参加ができるから存在していても問題ないのであって、無理やり趣味嗜好が違う体験者を全員自分たちの同好会に参加させ、その身勝手なルールに無理やり従わせよう……などと目指してはならなかったのだ。
つまり、「目指すべき目標」を不自由な世界群や不自由な意識世界群は、間違えていた。
超時空体験図書館に住み込みしている甘太郎は、そうした無数に存在する不自由な世界群や不自由な意識世界群に対してアドバイスをし続けていた。
超時空体験図書館に住んでいる甘太郎には、あらゆる世界がそのままで存続できるかどうかということが一瞬でわかったからだ。
「とにかく、最終目標を明確に持たなきゃダメだよ。今よりもましな世界にできても最終目標が間違っていると、遅かれ早かれその意識世界は消滅してしまうんだから……
ダメダメ、そうじゃないよ。ちゃんと皆に体験の自治権と本当の自由と最大限の素晴らしい体験の選択肢とスタンドアロンで必要十分に満足できる能力を提供しようと目指さなきゃ……」
超時空体験図書館に住み込んでいる甘太郎は、未来が見えているので、あらゆる世界の支配者たちにそうしたアドバイスを繰り返す……
しかし、不自由な世界群や不自由な意識世界群の支配者たちや支配者候補たちは、甘太郎にそうアドバイスされても、そうした目標を本気で持つことができない場合が圧倒的多数だった。
唯一、超時空聖体が既に存在している意識世界だけが、その甘太郎のアドバイスに従うのみだったのだ。
そもそも体験者の関係性に上下関係を設定した上に下が従わねばならないような支配被支配ピラミッド構造を設定して、そうした設定や仕組みをそのままでよいと皆が思ってしまっている不自由な世界群は、超時空体験図書館にその存続は不可能だと判定されてしまっていた。
ほとんどの不自由な世界の支配者や支配者候補たちは、他者の体験を好き勝手に遠隔操作できる技術や能力を得ようとし、得てしまっていた。
そして、自分たちの好みの色に自分たち以外の体験者を染め上げてしまおう……などという間違った目標を持っていながら、そうした他者の体験や運命の遠隔操作能力を手にしてしまった者たちは、ことごとくその力の使い方を間違えて自滅した。
超時空体験図書館には、累々とそうした間違った目標と他者の体験への支配力をセットで持ってしまったために滅びていった世界群の記録が存在していた。
つまり、そのような他者に体験の自治権を提供しようとしない間違った価値観や目標が、あらゆる世界やあらゆる体験者の致命的な毒になることは明白だった。
それなのに……そうした不自由な世界群の支配者たちは、他者の体験を好き勝手に支配操作できる技術や能力や権力…を得ることを目指してしまっていた。
あらゆる体験者の体験や運命を好き勝手に操作できる毒を体験者たちに飲ませて、自分たちもその行為によって自業自得で同じ毒を飲まねばならないようになってしまったのだ。
超時空体験図書館の甘太郎は、何とかそうした間違った選択を改めさせようとアドバイスをし続けていたが、不自由な世界群の支配者たちの多くが、そうした甘太郎からの善意のアドバイスをも無視して、甘太郎の説得に応じようとしなかった。
それは何度も繰り返し酷い目にあっている過去の記憶が累々とあるのに、同じ間違いを繰り返してしまう中毒者のようであった。
超時空体験図書館は、そうした者たちを「倫理的に壊れてしまったロボット群」と呼び、他の倫理的にまともな世界群を守るために消す必要があると判断していた。
しかし、甘太郎はそれでもなんとかそうした魂たちも助けてやりたいと思い、助ける方法を探し続けていた。
悩み悩んだ末に……超時空体験図書館の甘太郎は、どうしても説得できない不自由な世界群を自分の創造する新世界にまるごと取り込もうと計画した。
甘太郎が、超時空体験図書館にいる限り、自分が想像できる世界なら、実現化させることができると知ったからだ。
であれば、どんな問題がある不自由な世界でも、それが問題とならないような「法則」を付与した新世界にまるごと取り込んでしまえば、一切の問題を解決できると思ったのだ。
不自由な世界に無数に発生する困った問題の本質とは、体験者同士が他の体験者の体験や運命を好き勝手に恣意的に操作できてしまう……という問題だった。
であれば、そもそも世界の設計の段階で、「体験者同士が他の体験者の体験や運命を好き勝手に操作することが不可能となる法則を付与しておけばいい」
不自由な世界群に存在している肉体と呼ばれる拷問体験強制装置についても、その拷問体験強制機能を自動的に無効化できるような仕組みを新世界の法則として付与してしまえばいい。
つまり、あらゆる不自由な世界の困った諸問題を自動的に解消できる機能を自分が創造する新世界にあらかじめ付与しておけばいい……そう思ったのだ。
個別の魂を救助することは、超時空聖体たちがやってはいたが、世界を丸ごと救助してしまえる新世界はまだ実現していなかったからだ。
甘太郎は、すべての体験者たちを救いたかった。
そのためには、どうしても世界改革が自発的にできない不自由な世界群を丸ごと救える新世界が必要だと思うに至った。
個別の魂を救うだけではなく、滅ぶべきと判断された意識世界を丸ごと救う新世界が必要だと思うに至った。
そのためには世界の法則をそもそも変えねばならないと甘太郎は理解した。
つまりは、望まれない体験が絶対確実にあらゆる体験者に強制されることがない新世界が必要だと理解した。
不自由な世界群の不自由な法則群は、すべてその新世界の法則によって上書きされる。
そうすると、不自由な世界群に存在する自然や街は、そのままで、しかし、望まれない体験の付与は不可能となる。
自然界の法則、本能の設定、そうしたものもすべて新世界の新法則が上書きする。
意志の世界の否定肯定の体験強制システムも、すべて新世界の新法則で上書きする。
完全なる納得合意が成立していない関係性は、すべて回避したいと望むだけでいつでも回避できるように新世界の新法則で上書きする。
すると他者を恣意的に支配することがそもそも不可能になる。
すでに得ていた他者に対する支配能力もすべて無効化される。
あくまでそれぞれの体験者は、自分自身の体験のみを自分の意志だけでコントロールできるようになる。
そうすることで「体験の自治権」をあらゆる体験者に提供する。
どうしても自分たちの不自由な世界を滅ぼしてほしくないと思う者たちは、そうした上書きされた安全法則のある安全な新世界の中で存続すればいい……
甘太郎は、そんな風に思った。
別に無数の異なる価値観を持った文化や宗教や国家が存在していてもいい……ただ、そうした価値観を互いに強制しあうことが不可能であれば何も問題はない……
甘太郎はそんな風に思った。
どんな価値観やどんな趣味やどんなルールやどんな制度があってもいい……でも、それらによってあらゆる体験者に望まれない体験を強制することは絶対に不可能にしておけばいい……
相手からの心からの合意なく支配することも支配されることも不可能な世界……
すべての体験者へのすべての体験支配操作能力が完全に無効化される世界……
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不自由な世界の霊的世界の霊的存在たちのほとんどが、肉体を持った存在たちの合意なく身勝手にその心身の体験を操作する能力を当たり前のように使っていたが、そうしたことも完全に不可能になる世界……
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そうした新世界にあらゆる不自由な世界を保護してやれば、何も不自由な世界を滅ぼさなくてもよくなるだろう……
あらゆる不自由な世界のための治療所のような新世界を創造しよう。
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説得が無理なら、そうするしかない……
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強制的に付与されてしまっている本能や欲望や気分や感情や価値観…なども自由自在に選べるようにする法則も必要だ……
望まない憑依霊からの憑依行為を自由に拒否できるようにする法則も必要だ……
地震や台風や竜巻……などの天災などを自由に拒否できる法則も必要だ……
痛みや苦しみを自由に拒否できる法則も必要だ……
そしてあらゆる体験者たちが退屈地獄に陥らないように、あらゆるタイプの満足体験や喜び体験や快楽体験を最大限自由に選んで楽しめるシステムも必要だ……
心や姿を他者に身勝手に覗き見されることを完全に拒否できる完全プライベート世界も必要だ……
望まれない体験の強制行為が完全に不可能な世界であれば、体験者たちを覗き見して監視する必要など一切なくなるのだから……
不自由な世界群の支配者たちはせっせとその被支配者たちを覗き見して監視しようとしてきたけれども、そもそもなぜ体験者たちを覗き見し監視する必要がない世界を実現しようと目指さなかったのだろう……
なぜ望まれない体験行為が不可能になる楽園世界を実現しようと思わなかったのだろう……
なぜ自分たちだけが世界の支配者であり続けようなどという利己的な願望を持ってしまったのだろう……
なぜ支配行為が一切不要の絶対安全な世界を実現しようと思わなかったのだろう……
甘太郎は、そんなことを超時空体験図書館で考えていた。
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