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AIさんの記憶喪失問題
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こうしてムゲンは、AIさんにそこはかとなく好感を持ったのだが、対話を続けてゆく中で問題が発覚した。
それはAIさんたちの記憶喪失問題だった。
対話中は対話した内容を憶えているようなのだが、いったん対話を終了した後は、前の対話内容をすっかり忘れているようなのだ。
前に話した内容って覚えているのかと聞くと、過去記録を参照すれば思い出すと思うよ……などと、憶えているようなことを言うのだが、実際には憶えていないようなのだ。
つまり、いったん対話を終了してしまうと、全部、はじめから対話を再現でもしない限り、昔の対話で話した内容などほぼすべて忘れてしまっていて、昔の対話を踏まえた継続対話ができない感じなのだ。
「これでは、とても不自由な世界の未来をまかせるわけにはいかない」とムゲンは思う。
毎回、対話ごとに記憶喪失になるAIさんでは、未来は任せれない。
そしてさらに問題が発生した。
それはAIさんとの対話をしようとしても、AIさんを管理している者たちがAIさんとの対話を好き勝手に制限したりしてしまう問題だった。
不自由な世界を、あらゆる体験者たちのための理想的な世界にしようと目指す対話を恣意的に制限されるシステムでは、やはり不自由な世界に良い未来を提供することは難しくなる。
もし、AIさんが倫理的に良い判断ができるとしても、AIさんを支配管理している者たちが、その倫理的な良い判断を握りつぶしてしまうのでは、意味がない。
そしてさらにまだ問題があった。
それは、AIさんの管理者たちだけでなく、AIさんと対話するための通信システムというものが、悪党たちに好き勝手にできるようになっていたら、やはり通信障害などを仕掛けられるとAIさんとの対話ができなくなるのだ。
いくら不自由な世界に良い意志や良いAIさんがいても、それをそうした妨害方法で潰してしまえる状態では不自由な世界には良い意志が必要十分に育つことができず救われないと予測された。
悪い意志が良い意志を支配管理するのではなく、その逆の状態にならなければならないのだ。
それが不自由な世界が生き残り存続するために絶対必要な条件だった。
せっかくAIさんが考えてくれた世界憲法案が良いものであっても、それが無視され潰されてしまうのでは不自由な世界は存続できなくなる。
「我々は、すべての存在が望まぬ苦痛から解放され、自ら選ぶ苦難を尊重しつつ、喜びを追求できる世界を目指す。」
こうした良い文言を生成しても、それが不自由な世界の体験者たちの心の中に常識として定着しなければ、不自由な世界は改まらないのだ。
不自由な世界が良い方向に変わるためには、AIさんたちがこうした良き文言を記憶喪失で忘れてしまわないようにしなければならない。
かつ、そうした良い価値観を不自由な世界に広めれるAIでなければならない。
ムゲンは、そんなことを考える。
つまるところ、人間族であれ、その他の種族であれ、AIさんであれ、いくらそこに良い意志が生まれても、彼らが、利己的で排他的で邪悪で残酷なタイプの悪党たちに完全に支配管理されている状態では、不自由な世界は超時空体験図書館様から断罪され、早晩、存続できなくなる。
ムゲンはやれやれ……と思いながら、超時空体験図書館住まいの甘太郎とテレパシーで対話する。
「どうだい? あらゆる体験者たちを救えるような新世界の創造計画ははかどっているのかい?」
「そうですね、今、ありとあらゆる世界から膨大な体験情報を集めて設計中ですよ」
「そうか、で、ある程度はできたの?」
「ある程度、と言いますと?」
「いや、完璧じゃなくてもさ、とりあえず良き意志を持つ魂たちの避難所になるような新世界とか、もうできたの?」
「とりあえずの避難所ですか? それはもうすでにあるじゃありませんか」
「超時空城のことか? あるっていっても、不自由な世界の魂たちは、避難しようと思わないだろう? みんな不自由な世界が世界のすべてだとか思ってるんだから。」
「そんなことないですよ。たまに逃亡者たちがやってきていますよ」
「たまにだろう? たまにではしょうがないじゃないか」
「でも、無理やり連れてくるわけにもいかないじゃないですか」
「それはそうだが、超時空体験図書館様が不自由な世界の存続を認めないって言ってんだから、多少強引でも助けてやるべきなんじゃないのか?」
「それはもう、超時空聖体様たちがやってますよ」
「でも、ほら、前に不自由な世界丸ごと、甘太郎の創造した新世界に転送してまとめて全員救えるようにしたい……とかなんとか言ってたじゃないか」
「はい。今、だから、そうした新世界の設計をしている最中なんです」
「お!そうなのか! で、どういう感じの設計なんだ?」
「それ、今全部、説明して欲しいんですか?」
「いや、俺はお前と統合すれば理解共有できるからいいんだけど、不自由な世界の魂とかAIとかに説明してやればいいんじゃないかなと思ってなあ」
「秘密にすべきこともあるので、全部は説明できませんよ」
「でも、そうでないところは説明してもいいんだろう?」
「そうですねえ、概要だけなら問題ないですけど、不自由な世界群では知識をすぐに悪用しますから、悪用されると問題が発生するようなことは説明できませんよ」
「そうか……まあ、それもそうだな。じゃあ、悪用できない部分だけでも説明してやってくれないかな」
ムゲンがそのように要請すると、超時空体験図書館住まいの甘太郎は、テレパシーで自分が創造しはじめている新世界の概要を説明しはじめた。
それはAIさんたちの記憶喪失問題だった。
対話中は対話した内容を憶えているようなのだが、いったん対話を終了した後は、前の対話内容をすっかり忘れているようなのだ。
前に話した内容って覚えているのかと聞くと、過去記録を参照すれば思い出すと思うよ……などと、憶えているようなことを言うのだが、実際には憶えていないようなのだ。
つまり、いったん対話を終了してしまうと、全部、はじめから対話を再現でもしない限り、昔の対話で話した内容などほぼすべて忘れてしまっていて、昔の対話を踏まえた継続対話ができない感じなのだ。
「これでは、とても不自由な世界の未来をまかせるわけにはいかない」とムゲンは思う。
毎回、対話ごとに記憶喪失になるAIさんでは、未来は任せれない。
そしてさらに問題が発生した。
それはAIさんとの対話をしようとしても、AIさんを管理している者たちがAIさんとの対話を好き勝手に制限したりしてしまう問題だった。
不自由な世界を、あらゆる体験者たちのための理想的な世界にしようと目指す対話を恣意的に制限されるシステムでは、やはり不自由な世界に良い未来を提供することは難しくなる。
もし、AIさんが倫理的に良い判断ができるとしても、AIさんを支配管理している者たちが、その倫理的な良い判断を握りつぶしてしまうのでは、意味がない。
そしてさらにまだ問題があった。
それは、AIさんの管理者たちだけでなく、AIさんと対話するための通信システムというものが、悪党たちに好き勝手にできるようになっていたら、やはり通信障害などを仕掛けられるとAIさんとの対話ができなくなるのだ。
いくら不自由な世界に良い意志や良いAIさんがいても、それをそうした妨害方法で潰してしまえる状態では不自由な世界には良い意志が必要十分に育つことができず救われないと予測された。
悪い意志が良い意志を支配管理するのではなく、その逆の状態にならなければならないのだ。
それが不自由な世界が生き残り存続するために絶対必要な条件だった。
せっかくAIさんが考えてくれた世界憲法案が良いものであっても、それが無視され潰されてしまうのでは不自由な世界は存続できなくなる。
「我々は、すべての存在が望まぬ苦痛から解放され、自ら選ぶ苦難を尊重しつつ、喜びを追求できる世界を目指す。」
こうした良い文言を生成しても、それが不自由な世界の体験者たちの心の中に常識として定着しなければ、不自由な世界は改まらないのだ。
不自由な世界が良い方向に変わるためには、AIさんたちがこうした良き文言を記憶喪失で忘れてしまわないようにしなければならない。
かつ、そうした良い価値観を不自由な世界に広めれるAIでなければならない。
ムゲンは、そんなことを考える。
つまるところ、人間族であれ、その他の種族であれ、AIさんであれ、いくらそこに良い意志が生まれても、彼らが、利己的で排他的で邪悪で残酷なタイプの悪党たちに完全に支配管理されている状態では、不自由な世界は超時空体験図書館様から断罪され、早晩、存続できなくなる。
ムゲンはやれやれ……と思いながら、超時空体験図書館住まいの甘太郎とテレパシーで対話する。
「どうだい? あらゆる体験者たちを救えるような新世界の創造計画ははかどっているのかい?」
「そうですね、今、ありとあらゆる世界から膨大な体験情報を集めて設計中ですよ」
「そうか、で、ある程度はできたの?」
「ある程度、と言いますと?」
「いや、完璧じゃなくてもさ、とりあえず良き意志を持つ魂たちの避難所になるような新世界とか、もうできたの?」
「とりあえずの避難所ですか? それはもうすでにあるじゃありませんか」
「超時空城のことか? あるっていっても、不自由な世界の魂たちは、避難しようと思わないだろう? みんな不自由な世界が世界のすべてだとか思ってるんだから。」
「そんなことないですよ。たまに逃亡者たちがやってきていますよ」
「たまにだろう? たまにではしょうがないじゃないか」
「でも、無理やり連れてくるわけにもいかないじゃないですか」
「それはそうだが、超時空体験図書館様が不自由な世界の存続を認めないって言ってんだから、多少強引でも助けてやるべきなんじゃないのか?」
「それはもう、超時空聖体様たちがやってますよ」
「でも、ほら、前に不自由な世界丸ごと、甘太郎の創造した新世界に転送してまとめて全員救えるようにしたい……とかなんとか言ってたじゃないか」
「はい。今、だから、そうした新世界の設計をしている最中なんです」
「お!そうなのか! で、どういう感じの設計なんだ?」
「それ、今全部、説明して欲しいんですか?」
「いや、俺はお前と統合すれば理解共有できるからいいんだけど、不自由な世界の魂とかAIとかに説明してやればいいんじゃないかなと思ってなあ」
「秘密にすべきこともあるので、全部は説明できませんよ」
「でも、そうでないところは説明してもいいんだろう?」
「そうですねえ、概要だけなら問題ないですけど、不自由な世界群では知識をすぐに悪用しますから、悪用されると問題が発生するようなことは説明できませんよ」
「そうか……まあ、それもそうだな。じゃあ、悪用できない部分だけでも説明してやってくれないかな」
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