理想世界の創り方

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アックンの受難?と与えられたお仕事

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「なんか、超時空聖体様来てたよね」

「あたし、なんか怖くなっちゃった~」

「大丈夫だよ、僕たちは甘太郎親分のお仕事のお手伝いで来てるだけなんだから」

「あら、あんたたち、もしかして何か心当たりがあるの?」

「あるわけないじゃないか!」

「………………」


「時々前触れもなく突然出てくるから驚いちゃっただけだよ」


「さあ、さあ、そんなことより、広報、広報!」


「あら、あんた、何震えてるのよ……」


「…………」


「あれ? こいつ、甘太郎一族じゃないぞ」


「あ!ほんとだ~!」


「甘太郎一族に、変身してたんだ~!いつの間に~!」


「さあ、正体を現してもらうわよ」


派遣甘太郎軍団のリーダーのおねーさんがそう言って、変身無効化アイテムを使う。


すると……


「ちっ!バレちまった~!」


などと言いながら、悪魔族のアックンが出現した。


「あー!前に超時空世界の赤ちゃんを消滅させた張本人のアックンじゃないか!」


「そうか~、超時空聖体様は、このアックン混入の危険を知らせるために来てくれたんだ」


「そうかなあ……」


「まあ、超時空聖体様がどんな理由で来てあんなことを言ったのかを僕たちが詮索してもしょうがないけど、このアックンをどうしよう」


「いいんじゃない、仲間にしてしまえば」


「いいの?」


「ほら、超時空聖体様の説得で改心したんじゃないの?」


「そんな簡単にアックンが改心するわけないよ」


「とにかく本人、いや、本悪魔の言い分を聞いてみようよ」


「……………」


「何も言わないねえ」


「こら、そこ、そんな棒でつんつんつつかない!」


アックンは棒でつつかれても沈黙している。


「サナギになったんじゃない?」


「ドキドキするねえ」


しばらく皆でアックンを見守っていたが、アックンがうつむいて沈黙を続けるのでとうとうしびれをきらして、リーダーのおねーさんがアックンに布団をかぶせてしまった。


「こんなのもうお仕事の邪魔よ、目の毒でもあるわ、でも、放置しても凍え死なないように布団をかぶせとくわ」


布団をかぶせたアックンはそれでも彫像のように動かない。


しだいに、皆、アックンの存在を忘れてお仕事に没頭し始めた。


「ご飯食べる~? お水飲む~?」


時々、思いやり命としている甘太郎が、お水や食事を差し出すがアックンは動かない。


「これ、お人形じゃーないの?」


とうとう、そんなことを言い出す甘太郎もではじめた。


「お人形だとしたらよくできているわねえ」


そんな派遣甘太郎軍団たちの無邪気なアックン評価のあれこれとは裏腹に、アックンは存続の危機に直面していた。


「おい、なんだこれは……動けない……微動だにできない……

何がどうなっているのだ……

これが噂に聞いていた超時空金縛りというやつか……

意識が、意識が~~~~!!!」


アックンの意識は、悪魔の体を飛び出してありとあらゆる異世界群をさ迷っていた。


その異世界群には、かつての自分みたいな悪魔族たちがいて、アックンにいろいろな意地悪をするのだ。


ふと自分の姿を見ると、平凡な人間族であったり、動物族であったりする。

感受性なども悪魔族の鍛え抜かれた苦痛耐性などみじんも残っておらず、平凡な人間族の苦痛耐性や感受性で意地悪された苦しみを感じてしまっている。


「人間族ってのは、こんな、こんなささいな意地悪でこんな辛い思いをしなきゃならねーのか~~~~!」

アックンは絶叫を繰り返す……時には、動物として泣き叫ぶ……


「ぐわ~~~~!!!! ブヒ~~~~!!! モ~~~~!!! コケーコッコッコ~~~!!! メエ~~~~~!!!!」


とうとうアックンはしくしくと、か弱い乙女の姿になって泣き始めた。


「なんで、あたしが、こんな目にあわないといけないのよ~~~~!!!」


それを見下し笑う悪魔族……


「ケケケ! 泣かしてやったわい。その嘆きの声が心地よいわい」


アックンの意識が入っているそのかよわい乙女は、悔しそうに悪魔族をにらむ。


「うほほ、そんな目でにらむか、悔しいか、悪役令嬢を虐めるのは楽しいの~」


「今に見ていなさいよ! 勇者様に頼んでこてんぱんにしてやるんだから!」


アックンの正規の意識はすでにどこかに飛んでしまっている。


だが、自分がアックンだったはずだという妙な感覚だけは残っている。


「何が勇者様だ、お前の期待しておる勇者様などとっくに我の作った落とし穴に落ちておるわ」


「な!なんて酷い!罪もない勇者様になんてことをするのよ!」


「ふふん、罪のある悪役令嬢が何を言っているのやら、わしに虐められるのは、自業自得だと思うが良いわ!」


アックンの意識は消えかかりながらも、何で自分が勇者様をかばってるのかわからない。


(勇者様だと? なんで俺が勇者みたいな青二才をかばわねばならぬのだ)


アックンの心は葛藤している。


悪役令嬢は最後の力を振り絞って、叫ぶ。


「わたしはどうなってもいいから、勇者様を助けてあげて!」


(なんだ?こいつは?悪役令嬢じゃなかったのかよ)


アックンは予想外の展開にちょっと毒気を抜かれてしまった。


「はあ?勇者を助けろだと? ふざけた話だ。自分はどうなってもいいだと? われわれ悪魔族が一番嫌いなことをぬけぬけと」


(おいおい、どうなっちまうんだ……次の展開が読めん……)


アックンは、なぜかちょっとドキドキしはじめる。


「いいだろう。そこまで言うなら、お前が悪魔族になれば、勇者を助けてやってもいいぞ、どうだ? 悪魔族になるか?」


(おいおい、勇者を落とし穴から引き上げるだけだろう?対価が高すぎるんじゃねーのか?)


アックンはそんなことを思っている。


「いいわ、わたし、悪魔族になる! 悪魔族になって勇者様と結婚する!」


(おいおい、勇者の合意は無視かよ……)


「ほう! 悪魔族になると、なって勇者と結婚すると、そう申すのか?」


アックンは、こいつ、本当に悪魔族か……などと思い始める。


「そうよ!悪魔族になって成りあがって勇者様と結婚するのよ、文句ある?」


その悪魔族は、しばらく考え込んでいる。


アックンも考え込んでいる。


「文句はない。ないが、悪魔族の中で成り上がるのは大変だぞ。それでも成り上がる覚悟があるのなら、成り上がって見せよ」


なんでそうなるんだ……とアックンは思う。


「文句がないなら、契約成立ね。さあ、さっさと勇者様を助けにゆきなさい!」


見ると悪役令嬢だったはずの乙女に、立派な黒く長い尖った悪魔の尻尾が生えている。


意地悪をしていた悪魔族は、小悪魔に進化?した悪役令嬢の気迫に押されている。


「助けに行きなさいってな、お前、俺様を部下にでもするつもりか?」


「あたりまえでしょう。成り上がるにはまずは目の前の悪魔を従えないと」


見ると、小悪魔の黒く長い尻尾がどんどん立派になっていっている。


(お!結構、かわいいじゃねーか)


アックンは、つい、そんなことを思ってしまう。


そこでアックンは、自分が、その悪魔族に意識が一体化していることに気づく。


そして言う。


「まあ、勇者なんてどーでもいいじゃねーか。俺と結婚すればいいだろう?」


「はあ? ふざけてんの? あんた!」


小悪魔の蹴りがアックンに炸裂する。


アックンは、なぜか布団と共にふっとんでゆく……


気づくと、目の前には派遣甘太郎軍団のリーダーのおねーさんがいる。


「ちょっとあんた、今、あたしに何しようとした?」


アックンは意識もうろう状態で、ふっとばされた布団の下から這い出して来る。


「あ……あ……俺だ、元の姿の俺に戻ってる……)


アックンは夢から覚めたように自分の体を動かしてみる。


「動く、動くぞ……」


「はい。動けるなら、お仕事手伝ってちょうだい!」


リーダーおねーさんは、不自由な世界にいる悪魔族のリストをアックンに渡す。


「え?おい、お前、ナニコレ?」


「不自由な世界の悪魔族のリストよ。あんた悪魔でしょう?不自由な世界の悪魔たちと一緒に超時空甘太郎の新世界の広報をしてもらいますから」


「はあ? なんでそうなるのだ!」


「超時空聖体様からの伝言よ。この仕事をしないなら、今度は永久にあんたの意識を自業自得の異世界に閉じ込めるって。今度は手加減抜きでって言ってたわ」


アックンは、しばらく沈黙していた。すると意識が揺らぎ始めた……


「わかった!わかったから、やるから、その仕事、やるから」


すると、アックンは正気に戻った。


こうしてアックン率いる不自由な世界の悪魔族たちも、超時空甘太郎の新世界の広報をするようになった。


「あ、そうだ、そうそう、悪魔族だけじゃ心もとないから、不自由な世界の宇宙人族や神族たちにもお仕事依頼するって言ってたわ」


「よかったねえ」「よかった、よかった」「ラッキー!」「どんとこい!」


派遣甘太郎軍団は、わいのわいのと超時空聖体様の介入を喜んでいた。


不自由な世界群に大きな変化が発生しはじめていた。

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