理想世界の創り方

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超時空世界で密かに成長する体験強者たち……とその後の体験世界

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不自由な世界では、体験者たちのほとんどが「体験の牢獄」に閉じ込められていた。

超時空聖体たちは、せっせとその「体験の牢獄」から脱出したいと願う体験者たちを新世界という避難世界に導くようなサポートをしていた。

しかし、不自由な世界群には、妙な体験者たちが少数ながらいた。

彼らは、自らの意志でわざと苦行と呼ばれる修行などを好んで行い、自分で自分の息を止めて死にそうになったり、何週間も断食したり、洞窟に一人でこもり続けたり……その他、ありとあらゆる普通の体験者たちが望まないような苦しみを伴うはずの体験群を望んで体験し、そうしたことを趣味としていたのだ。


超時空聖体たちは、そうした体験者たちをどう扱うべきかと思案し……超時空聖体会議などでも議論になっていた。


「我々、知性と意志を持つあらゆる体験者同胞は、すべての体験者たちが望まぬ体験から解放されることを目指し、その条件を満たした上で、すべての体験者がそれぞれの望む体験を最大限自由に安全に楽しみ続けることができる世界の実現を目指す」



という目標が当初は設定されていたのだが、何度かの超時空聖体会議で議論された結果、


「我々、知性と意志を持つあらゆる体験者同胞は、自ら望んで選ぶ苦難を尊重しつつ、すべての体験者たちが望まぬ体験から解放されることを目指し、その条件を満たした上で、すべての体験者がそれぞれの望む体験を最大限自由に安全に楽しみ続けることができる世界の実現を目指す」


という目標に書き換えられた。


つまり、「自ら望んで選ぶ苦難を尊重しつつ」という文言が追加された。



その理由は超時空世界の未来予測システムによって、以下のような未来が確認されたからだった。



彼らは体験強者と呼ばれ、ありとあらゆる酷い体験を、「そう願うなら」むしろ楽しめるようになっていった。
そして、そうした体験強者たちは、後にありとあらゆる倫理的に問題ある体験者たちの酷い体験の被害者役をするというサービスなどを始めることになる。


それによってどうしても実際の被害者がいなければ満足できない……などという悪党たちの多くが彼らによって満足させられてしまい、ついには、自分たちも立派な体験強者になるぞという思いを持つようになった。


体験強者たちは演技力も徹底的に学んだために、それが演技だとほとんど誰も見抜けないほどの演技能力を身につけた者もいた。
彼らはどうしようもない悪党たちをそうして自分たちの弟子や生徒にしてしまった。

体験強者たちが、その迫真の演技を打ち切る時にする「なーんちゃって!」という言葉が意識世界に流行することになった。


そこには体験者としての意識とその体験者を俯瞰して冷静に眺める意識が同時に存在していた。
彼ら体験強者たちは、そうした意識状態を自由自在に臨機応変に使い分けできる自由な意識を獲得していた。


彼らは「良い体験、悪い体験というものはない。ただその体験を楽しめるかどうかしかない。楽しもうと思えば、ほとんどありとあらゆる体験を楽しめるようにもなるのだぞ……ただし他者にそうなるようにと強制してはならぬぞ……あくまで自分自身の楽しみとしてその訓練や修行をするがよい……」などとその弟子や生徒たちに教えていた。


超時空聖体たちは、当初、そうした体験強者たちを変態集団と呼んでいたが、実際に酷い体験を心から楽しんでいる様を確認してしまうと、苦々しい顔をしつつも、渋々その変態修行をする自由を容認した。


だが、実は、その後、この変態集団である体験強者たちによって、新たなる体験選択自由自在の新世界が創造されることになる。彼らは退屈するマンネリ世界の壁をぶち破ることになる……


彼らは、最大限の望ましい体験群が提供される世界だけではまだ不十分だと理解して、さらに自分自身の体験耐性を訓練することでさらに自力で楽しめる体験を無数に増やす道を切り開いたのだ……


彼らはありとあらゆる過去の悲惨な体験群を楽しみ……最後に「なーんちゃって!」と馬鹿笑いするのだ。
その様を目撃した体験者たちは、いつしか、我も、私も……と体験耐性や演技力を自力で獲得するための修行をはじめるようになっていったのだ……
そしてついには超時空聖体たちまでも……その修行に参加するようになる。
体験者たち全体が健やかに倫理的に成長してもはや指導や管理が不要になってくると、超時空聖体たちも暇になってしまったのだ。

それは生ぬるい湯につかっているだけよりも、サウナ風呂と冷水風呂を交互に楽しめるようになればもっと楽しめる……みたいな感じだった。
つまり、熱すぎる体験は良くない、冷たすぎる体験も良くない……という価値観が、消滅していった。


体験者本人が、その体験を心から楽しめればどんな体験も良いのだ……という価値観に変化していったのだ。
この体験はダメ、あの体験もダメ……という保護主義的な価値観から、この体験も良い、あの体験も良い、ただし被害者が誰もいなくて、体験者本人がその体験を心から楽しめれば……という価値観に体験世界の価値観が変化しゆく……


「体験の牢獄」から魂たちを解放することが目的だった時代から、「体験の牢獄」にわざわざわざと入って楽しむ意識が多数派になってしまう時代に変化するのは、もっとずっと後のことではあるのだが……段階的に、意識世界はそうした進化をしていった。


こうして自由に選択できる無数の素晴らしい体験を最大限に創造するだけでなく、体験者自身の体験耐性能力を高める道も開かれてゆく……


体験強者たちの中には、最悪級の酷い体験のクライマックスで大爆笑することを趣味とする者などもいた。
あまりの酷い体験に気が狂ったのだと周囲には思われていたが、実は体験強者たちがお忍びでそうした酷い体験に時空を超えて参加して楽しんでいたこともあった。

なぜそんなことができるのかというと、体験強者たちは、彼らは体験耐性を高めただけでなく、耐えがたい拷問体験をいつでも自分の意志で自由に無効化できる能力を獲得していたからだ。

しかし、物事には順序というものがあるので、まずは望まれない体験が恣意的に強制されてしまう体験強制世界=不自由な世界に組み込まれていた「体験強制システム」や「体験強制装置」から魂たちを解放する必要があった。


自ら望んだわけではない拷問的な体験群の強制行為によって、多くの体験者たちがその精神が破壊され「良心」を失い続けていたからである。

つまり、体験者たちに望まれない拷問的な体験や苦難の体験群の強制は、大意識世界全体で全面禁止になっていった。





※その禁止理由を超時空体験図書館様は、次のように説明した。


「恣意的な拷問苦難の体験の強制行為全体が、教育目的だとすることで無条件で認められるとすれば、教育目的だと言うだけでどんな不条理な拷問苦難の体験でも無制限で強制しても良いということになってしまう。

それは他者よりもより強ければ、必要な試練であるとか、教育目的だと言うだけで、他の弱者すべてにどんな不条理なことでも何をしてもいいという価値観を体験世界全体に広めてしまうことになる。

そしてそのような価値観が体験世界全体に広まり、実行され、乱用されることになれば、あらゆる体験者たちがその価値観によって望まない拷問苦難の体験を永遠にでも強制され続けるような未来が遅かれ早かれ実現してしまうことになる。


よって、この道理を理解するならば、望まれない体験の強制は、今後、一切、禁止とすべきである


ただし、望まれない体験をこうした道理を伝えてもなお確信犯で故意に他の体験者に強制し続ける者においては、因果応報、自業自得のその倫理的責任を問い、それでもどしても改めなかった者に限定して、自業自得の範囲で望まれない体験をその体験者に与えることを、自らの為した行為の残酷さや過酷さを自ら同じ苦痛レベルの体験を味わうことをもって理解させるため、という教育的目的に限定して認める。

ただし、望まれない体験群を強制したいと思うようになる本能や欲望や衝動や気分や感情や価値観……等をわざと故意に体験者たちに与えるような行いが背後でなされている場合は、そのような行いを故意に為した者たちに最大の自業自得の倫理的責任があると判断しなければならない。

その場合、そうした本能や欲望や衝動や気分や感情や価値観……等を故意に心からの納得同意なく与えられていた体験者たちの自業自得の責任は、その体験者がその自由意志で自らの行いを選べる自由度の程度に応じて情状酌量され減じられるべきである。

例えば、肉食本能を無理やり生まれた段階から植え付けられた体験者がいる……ようなケースで、その本能に抗うことがほぼ不可能な体験者などがあった場合には、そうした本能を故意に与えた者にその肉食本能から発生した被害者たちの苦難の体験全体に対する自業自得の責任が発生し、肉食本能を回避不可能な状態で与えられた体験者の責任は、その本能に抗える自由度が0ならばその自業自得の責任は問わないこととする。

必要十分な理性や判断力や自制力をはじめから与えようと思えば与えられたのに故意に提供しなかった責任は、そうした能力を故意に与えなかった者たちの責任となる。
よってそうした倫理的な判断能力や平和的な本能や欲望……などがはじめから与えられなかった体験者たちには、そうした能力を提供するための良き導きや良き治療が必要だと判断すべきである。

こうした道理を理解し、今後、新しい世界や新しい生命や新しい体験感受システムを創造しようとする者たちは、体験者すべてに理性や知性や自由意志や倫理的な判断能力や平和的な本能や欲望……等を生得的に世界創造行為や生命創造行為や体験感受システム創造行為のはじめから提供するようにせねばならない」


そのように超時空体験図書館に世界創造、生命創造、体験感受システム創造における守るべきルールが後に書き加えられた。


超時空体験図書館を含むありとあらゆる世界群を含む大意識世界全体は、そうした感じでどんどん進化してゆくこになる……
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