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2回目:小さい頃
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5月4日日曜日、1:00。スマホの画面を見るとそう表示されている。バイトが終わって、帰り道。今日はファミレスに行かずに真っ直ぐ帰っている。この間の女性に会わないように。
…と思ってたのに、急に目の前にその女性が現れた。
「やあ、先週ぶりだね。」
夜道だし、暗くて気づかなかったフリをしよう。俺は、彼女の横を通り過ぎる。
「ちょちょちょ!待ってよ!」
彼女は急いで俺の前に行き、立ち塞がる。
「俺ですか?」
「そう。小林創太に用があるの。」
「誰ですか?ちょっと暗くて…人違いじゃないですか?」
「未来のファンを舐めないでほしいな。あなたは間違いなく小林創太。あ、そっか。」
彼女は、カバンから懐中電灯を取り出し俺の顔に光を当てる。眩しい。
「最初から光を当てれば良かった。」
「眩しいからやめろ。」
「観念した?私の前で嘘ついても無駄だから。」
彼女は自分の顔に光を当てる。
「私を知らないフリをしないように、先に顔を見せとくね。先週の未来人だよ。」
それだと幽霊みたいだけどな。
「まあ、これじゃ幽霊か。」
うわ、同じこと思ってた最悪。というか、未来人も分かるんだな。
「今日はファミレスじゃないんだね。」
「ファミレスじゃなかったら、現れないと思ったのに…。」
「残念、私は君の前に現れるように設定してるからね。」
彼女は懐中電灯の光を道に当て、一緒に歩き始める。
「暗い中よく歩けるね。」
「もう何度もここ歩いてるし。」
「家まであとどんぐらいなの?」
「あと30分ぐらい。」
「えー!疲れちゃうよ、小林くんの家で休もうと思ったのに。」
「ファンは家にあがらないでください。」
「家の近くに駅とかバス停とかないの?」
「あるけど、お金がもったいないんだよ。だから、歩くの。」
というか、お金がないんだ。
「まあ、運動になるしたまには歩かないとなあ。」
「嫌なら、帰ってもらって——」
「帰るわけないじゃん!推しと喋れる時間を大切にしないと。」
真の目的忘れてるぞ。俺がそう思うのも変だけど。
「そういえば、先週のフライドポテトどうしたの?」
「1人で食べたよ。お金貰っちゃってるし。」
「美味しかった?」
「え?普通かな。」
「へえ。あー、私も食べたかったなあ。」
変なタイミングで頼むのが悪い。
「あ、鯉のぼりが落ちてる。」
彼女はそう言って、地面に落ちてる手に持てるサイズの小さい鯉のぼりを取った。
「子どもが落としちゃったのかな。」
懐かしい、久しぶりに見たな。俺も子どもの頃、このサイズの鯉のぼり貰ったっけ。
「はい、あげる。」
彼女は、俺に鯉のぼりを渡してきた。
「え、なんで。」
「ここに置いといても、誰かに捨てられるだけでしょ。」
「落とした子どもが取りに来るかもしれないだろ。」
「こどもの日にまた誰かから貰うでしょ。はい。」
彼女は、俺の手を取って手のひらに鯉のぼりを置き、勝手に握らせた。俺だって捨てる可能性あるだろ。
「忘れてたけど、ゴールデンウィークだもんね。明日はこどもの日か。」
まだみどりの日始まったばっかりだけどな。
「ずっと博士のとこにいるから、休みの感覚なかったよ。日付感覚もないから、今日ここに来ること忘れそうになってたし。」
そのまま忘れてて欲しかったけどな。
「ねえ、こどもの日に金平糖貰わなかった?」
「え?」
彼女に唐突な質問をされた。
「貰わなかっけど…。」
柏餅を食べた記憶はあるけど、金平糖はないな。
「みんなそう言うんだよね。私、小さい頃はよくこどもの日に金平糖貰ってたんだけどなあ。伯父さんに。なんでだろ。」
「金平糖が好きだったとか?」
「そんなことないんだよ?好きだって言った覚えないし。でも、あの金平糖美味しかったなあ。」
子どもは金平糖好きだろうなっていう伯父さんの偏見から渡したんじゃない?と言おうとしたけどやめた。
「まあ、その伯父さんが、今の博士なんだけどね。」
…ん?
「え?」
「何?」
「お前の博士、親戚なのかよ!」
「うん、そうだよ。え、そんなに驚くこと?」
「まさか、親戚だとは思わないだろ…。」
「まあ、確かに博士が親戚なの珍しいよね。」
まず、博士という存在が珍しいだろ。…いや、未来だと多いのか?
「あ!」
急に彼女は大きな声でそう言った。
「何?」
「さっきのよく考えたら、めっちゃ良いツッコミだったよ!流石、ツッコミ芸人だ。ごめん、もう一回言って!」
「はあ?」
「録音するからさ!」
彼女はカバンからボイスレコーダーのようなものを出し、俺に向ける。
「言うわけないだろ。」
「ちぇっ。推し活チャンスだったのに。」
何だ推し活チャンスって。お前のやってること、ほとんどストーカーと一緒だと思うけどな。ストーカーチャンスの間違いだろ。…何だ、ストーカーチャンスって。
「というか、博士に聞けばいいじゃん。何でこどもの日に金平糖渡してきたのか。」
「えー、今更恥ずかしいよ。それに、覚えてないかもしれないじゃん。」
まあ、わざわざ聞くような話でもないか。
「あ!」
また、彼女は急に大きな声でそう言った。
「今度は何?」
「この道、確か…。」
彼女は、分かれ道の俺の家の方向じゃない方を見てそう言った。
「何?」
「私、ここ知ってるかも!」
「え?」
「ちょっと、ついてきて!」
彼女は違う方向に走っていく。じゃあ、俺はその間に逃げ——
「逃がさないよ。」
彼女は俺の腕を掴んでそう言った。懐中電灯の光が俺の顔に当たる。怖っ、警察かよ。
「行こう!」
俺を引っ張って、走っていく。
「どこに向かってんだよ。」
「私の好きなところ!」
何で俺がそこに行かないといけないんだ。そもそも、未来にある場所がこの時代にあるかどうかわからないだろ。
「えっと、こっちかな。」
彼女は、俺を引っ張ってどんどん進んでいく。
「確か、こっち?」
…あれ。
「うーん、こっち。」
これ、本当に向かってるのか?
「こっちだ。」
さっきからすごい曲がってますけど。
「こっちだろうな。」
おい。
「まあ、こっちでしょう。」
「さっきから、適当に進んでるだろ!」
どこだよここ、本当に着くのか?
「というか、本当にここら辺にあるのか?その、お前が行きたいところ。」
「もう、お前って呼ばないでよ。『ミク』って呼んで。『カヌレ』でもいいけど。」
「…じゃあ——」
「あ、ちょっと待って!よく考えたら、推しに呼んでもらう名前なんだからちゃんと考えなきゃじゃん私!この考え抜けてたー!何で先週浮かばなかったのよ。ちょっと考えさせて。」
何だこいつ。そんなことしてたら、時間なくなるぞ。まあ、俺的にはありがたいけど。…いや、困るな。ここどこかわかんねえし。
「とりあえず、教えろよ。どこに行こうとしてたのか。」
「『マカロン』か…?いや、『マフィン』の方が可愛いか。」
「お前、そんなことしてる時間ないだろ!」
俺はそう言い、彼女にスマホの画面を見せる。
「え?あー、やばい!時間、あと10分ぐらいしかないじゃん!迷いすぎたー、名前。」
「名前、もだけど、道もだろ!早くどこに行こうとしてたか教えろ。」
「いやー、それが名前がわかんないんだよね。お店の名前。」
彼女はそう言った。
「はあ?」
「しょうがないじゃん!その店行ったの、小さい頃だけだもん!」
「何だよ、そんな曖昧な記憶じゃあ本当にこの近くあるか分かんないだろ。」
「あるよ!絶対ある!だって、カエルの置物にカラフルな屋根の家がある道なんて普通ないでしょ!?」
え?…あー、確かにあの分かれ道通る時あるな。暗くて忘れてたけど。
「だとしても、その店があるとは限らないだろ。」
「あるよ。だって、昔からある店だって博士言ってたし。」
そんなこと言われてもなあ…。この近くにあって、昔からありそうな店…。
「…あ。お団子屋さんか?」
「そう!え、わかるの?」
「大通りに出ればあるところなら。」
昔から有名なお団子屋さんだって、相方から聞いたことあるな。頼んでないのに教えてきたお団子屋さんが、たまたま家近くだったんだよな。
「行こう!」
俺はお団子屋さんに向かう。彼女は後ろからついていく。しばらく歩くと、大通りに出る。
「…着いたよ。」
「そう、ここだよ!」
彼女はそう言った。もちろん、深夜だからお団子屋さんは開いていない。
「まあ、開いてないよな。」
「懐かしいなあ、小さい頃、親戚の集まりで博士に会った時にお団子よく買ってもらってたんだよね。」
「へえ、美味しいの?」
お団子屋さんがあるのは知ってるけど、ここのお団子食べたことはないからなあ。
「うん。未来に帰ったら、買いに行こうかなあ。」
「未来にもまだあるの?」
「…あ、それは教えない掟なんで。」
「いや、変わった家の存在言ってる時点で掟守れてないだろ。」
「それは小さい頃の話だからいいの!それに、あるかどうか知らないし。」
「知らないのかよ。」
「だって、小さい頃以降行ってないんだよ?もしかしたら、無くなってるかも。」
彼女は、お店の近くにあるベンチに座る。
「はあ、いつまでもその頃のままってわけじゃないもんね。」
「…そうだな。」
「はあーあ!ずっと子どものままでいたかったなあ!」
彼女は、伸びをしながらそう言った。
「子どもの頃は、早く大人になりたいって思ってたのにね。大人になったら、行きたいところにいっぱい行けて、美味しいものいっぱい食べることができて、夢も叶えられると思ってた。」
夢も…そうだな。
「実際に大人になると、何でもできるわけじゃなくて。『これでいいのかなあ』と思うことばっかりだよ。」
「…未来人も、同じようなこと思うんだな。」
「きっと、時代関係なく思ってる人いると思うよ。…分かんないけどさ。」
俺も、彼女から1つ間隔を空けてベンチに座る。
「私、小学生ぐらいの頃までは和菓子屋さんになりたかったんだよね。ここのお団子が好きだったのもそうだけど、甘いもの好きだしさ。」
…の割には、さっき自分の名前の候補で出してた名前は洋菓子だったと思うけど。
「でも、料理なんて全然できないしさ。私は、作るより食べる専門でいたい!と思って。」
「そこから、何で博士の助手になったんだよ。」
「…え?気になるの?」
「気になるというか、全然種類違うから。」
「んー、よく覚えてないけど、博士の家の手伝いしてたらいつの間にね。博士、ずっとダラダラしてたからね。タイムマシン作り出したの2年前だし、ほぼニートみたいなものだったしね。」
タイムマシンを2年で作ったのかよ。すごすぎるだろ。
「まあ、元々機械いじりが好きだったからってのもあるけど。」
「そうなんだ。」
最初から博士の助手になることを夢にしてそうだったから、意外だったな。
「ねえ、聞いてもいい?」
彼女は俺にそう言ってきた。
「何をだよ。」
「小林くんは…小さい頃何になりたかったの?」
…何になりたかったんだろうな、俺は。小さい頃の夢なんて覚えてないし。
「さあな。もう覚えてないや。そういうもんだろ、夢って…。」
そう言いながら隣を見たら、既に彼女はいなかった。スマホの画面を見ると、1:25と表示されていた。
「…帰ろ。」
俺はそう言って、家に向かって帰った。
…と思ってたのに、急に目の前にその女性が現れた。
「やあ、先週ぶりだね。」
夜道だし、暗くて気づかなかったフリをしよう。俺は、彼女の横を通り過ぎる。
「ちょちょちょ!待ってよ!」
彼女は急いで俺の前に行き、立ち塞がる。
「俺ですか?」
「そう。小林創太に用があるの。」
「誰ですか?ちょっと暗くて…人違いじゃないですか?」
「未来のファンを舐めないでほしいな。あなたは間違いなく小林創太。あ、そっか。」
彼女は、カバンから懐中電灯を取り出し俺の顔に光を当てる。眩しい。
「最初から光を当てれば良かった。」
「眩しいからやめろ。」
「観念した?私の前で嘘ついても無駄だから。」
彼女は自分の顔に光を当てる。
「私を知らないフリをしないように、先に顔を見せとくね。先週の未来人だよ。」
それだと幽霊みたいだけどな。
「まあ、これじゃ幽霊か。」
うわ、同じこと思ってた最悪。というか、未来人も分かるんだな。
「今日はファミレスじゃないんだね。」
「ファミレスじゃなかったら、現れないと思ったのに…。」
「残念、私は君の前に現れるように設定してるからね。」
彼女は懐中電灯の光を道に当て、一緒に歩き始める。
「暗い中よく歩けるね。」
「もう何度もここ歩いてるし。」
「家まであとどんぐらいなの?」
「あと30分ぐらい。」
「えー!疲れちゃうよ、小林くんの家で休もうと思ったのに。」
「ファンは家にあがらないでください。」
「家の近くに駅とかバス停とかないの?」
「あるけど、お金がもったいないんだよ。だから、歩くの。」
というか、お金がないんだ。
「まあ、運動になるしたまには歩かないとなあ。」
「嫌なら、帰ってもらって——」
「帰るわけないじゃん!推しと喋れる時間を大切にしないと。」
真の目的忘れてるぞ。俺がそう思うのも変だけど。
「そういえば、先週のフライドポテトどうしたの?」
「1人で食べたよ。お金貰っちゃってるし。」
「美味しかった?」
「え?普通かな。」
「へえ。あー、私も食べたかったなあ。」
変なタイミングで頼むのが悪い。
「あ、鯉のぼりが落ちてる。」
彼女はそう言って、地面に落ちてる手に持てるサイズの小さい鯉のぼりを取った。
「子どもが落としちゃったのかな。」
懐かしい、久しぶりに見たな。俺も子どもの頃、このサイズの鯉のぼり貰ったっけ。
「はい、あげる。」
彼女は、俺に鯉のぼりを渡してきた。
「え、なんで。」
「ここに置いといても、誰かに捨てられるだけでしょ。」
「落とした子どもが取りに来るかもしれないだろ。」
「こどもの日にまた誰かから貰うでしょ。はい。」
彼女は、俺の手を取って手のひらに鯉のぼりを置き、勝手に握らせた。俺だって捨てる可能性あるだろ。
「忘れてたけど、ゴールデンウィークだもんね。明日はこどもの日か。」
まだみどりの日始まったばっかりだけどな。
「ずっと博士のとこにいるから、休みの感覚なかったよ。日付感覚もないから、今日ここに来ること忘れそうになってたし。」
そのまま忘れてて欲しかったけどな。
「ねえ、こどもの日に金平糖貰わなかった?」
「え?」
彼女に唐突な質問をされた。
「貰わなかっけど…。」
柏餅を食べた記憶はあるけど、金平糖はないな。
「みんなそう言うんだよね。私、小さい頃はよくこどもの日に金平糖貰ってたんだけどなあ。伯父さんに。なんでだろ。」
「金平糖が好きだったとか?」
「そんなことないんだよ?好きだって言った覚えないし。でも、あの金平糖美味しかったなあ。」
子どもは金平糖好きだろうなっていう伯父さんの偏見から渡したんじゃない?と言おうとしたけどやめた。
「まあ、その伯父さんが、今の博士なんだけどね。」
…ん?
「え?」
「何?」
「お前の博士、親戚なのかよ!」
「うん、そうだよ。え、そんなに驚くこと?」
「まさか、親戚だとは思わないだろ…。」
「まあ、確かに博士が親戚なの珍しいよね。」
まず、博士という存在が珍しいだろ。…いや、未来だと多いのか?
「あ!」
急に彼女は大きな声でそう言った。
「何?」
「さっきのよく考えたら、めっちゃ良いツッコミだったよ!流石、ツッコミ芸人だ。ごめん、もう一回言って!」
「はあ?」
「録音するからさ!」
彼女はカバンからボイスレコーダーのようなものを出し、俺に向ける。
「言うわけないだろ。」
「ちぇっ。推し活チャンスだったのに。」
何だ推し活チャンスって。お前のやってること、ほとんどストーカーと一緒だと思うけどな。ストーカーチャンスの間違いだろ。…何だ、ストーカーチャンスって。
「というか、博士に聞けばいいじゃん。何でこどもの日に金平糖渡してきたのか。」
「えー、今更恥ずかしいよ。それに、覚えてないかもしれないじゃん。」
まあ、わざわざ聞くような話でもないか。
「あ!」
また、彼女は急に大きな声でそう言った。
「今度は何?」
「この道、確か…。」
彼女は、分かれ道の俺の家の方向じゃない方を見てそう言った。
「何?」
「私、ここ知ってるかも!」
「え?」
「ちょっと、ついてきて!」
彼女は違う方向に走っていく。じゃあ、俺はその間に逃げ——
「逃がさないよ。」
彼女は俺の腕を掴んでそう言った。懐中電灯の光が俺の顔に当たる。怖っ、警察かよ。
「行こう!」
俺を引っ張って、走っていく。
「どこに向かってんだよ。」
「私の好きなところ!」
何で俺がそこに行かないといけないんだ。そもそも、未来にある場所がこの時代にあるかどうかわからないだろ。
「えっと、こっちかな。」
彼女は、俺を引っ張ってどんどん進んでいく。
「確か、こっち?」
…あれ。
「うーん、こっち。」
これ、本当に向かってるのか?
「こっちだ。」
さっきからすごい曲がってますけど。
「こっちだろうな。」
おい。
「まあ、こっちでしょう。」
「さっきから、適当に進んでるだろ!」
どこだよここ、本当に着くのか?
「というか、本当にここら辺にあるのか?その、お前が行きたいところ。」
「もう、お前って呼ばないでよ。『ミク』って呼んで。『カヌレ』でもいいけど。」
「…じゃあ——」
「あ、ちょっと待って!よく考えたら、推しに呼んでもらう名前なんだからちゃんと考えなきゃじゃん私!この考え抜けてたー!何で先週浮かばなかったのよ。ちょっと考えさせて。」
何だこいつ。そんなことしてたら、時間なくなるぞ。まあ、俺的にはありがたいけど。…いや、困るな。ここどこかわかんねえし。
「とりあえず、教えろよ。どこに行こうとしてたのか。」
「『マカロン』か…?いや、『マフィン』の方が可愛いか。」
「お前、そんなことしてる時間ないだろ!」
俺はそう言い、彼女にスマホの画面を見せる。
「え?あー、やばい!時間、あと10分ぐらいしかないじゃん!迷いすぎたー、名前。」
「名前、もだけど、道もだろ!早くどこに行こうとしてたか教えろ。」
「いやー、それが名前がわかんないんだよね。お店の名前。」
彼女はそう言った。
「はあ?」
「しょうがないじゃん!その店行ったの、小さい頃だけだもん!」
「何だよ、そんな曖昧な記憶じゃあ本当にこの近くあるか分かんないだろ。」
「あるよ!絶対ある!だって、カエルの置物にカラフルな屋根の家がある道なんて普通ないでしょ!?」
え?…あー、確かにあの分かれ道通る時あるな。暗くて忘れてたけど。
「だとしても、その店があるとは限らないだろ。」
「あるよ。だって、昔からある店だって博士言ってたし。」
そんなこと言われてもなあ…。この近くにあって、昔からありそうな店…。
「…あ。お団子屋さんか?」
「そう!え、わかるの?」
「大通りに出ればあるところなら。」
昔から有名なお団子屋さんだって、相方から聞いたことあるな。頼んでないのに教えてきたお団子屋さんが、たまたま家近くだったんだよな。
「行こう!」
俺はお団子屋さんに向かう。彼女は後ろからついていく。しばらく歩くと、大通りに出る。
「…着いたよ。」
「そう、ここだよ!」
彼女はそう言った。もちろん、深夜だからお団子屋さんは開いていない。
「まあ、開いてないよな。」
「懐かしいなあ、小さい頃、親戚の集まりで博士に会った時にお団子よく買ってもらってたんだよね。」
「へえ、美味しいの?」
お団子屋さんがあるのは知ってるけど、ここのお団子食べたことはないからなあ。
「うん。未来に帰ったら、買いに行こうかなあ。」
「未来にもまだあるの?」
「…あ、それは教えない掟なんで。」
「いや、変わった家の存在言ってる時点で掟守れてないだろ。」
「それは小さい頃の話だからいいの!それに、あるかどうか知らないし。」
「知らないのかよ。」
「だって、小さい頃以降行ってないんだよ?もしかしたら、無くなってるかも。」
彼女は、お店の近くにあるベンチに座る。
「はあ、いつまでもその頃のままってわけじゃないもんね。」
「…そうだな。」
「はあーあ!ずっと子どものままでいたかったなあ!」
彼女は、伸びをしながらそう言った。
「子どもの頃は、早く大人になりたいって思ってたのにね。大人になったら、行きたいところにいっぱい行けて、美味しいものいっぱい食べることができて、夢も叶えられると思ってた。」
夢も…そうだな。
「実際に大人になると、何でもできるわけじゃなくて。『これでいいのかなあ』と思うことばっかりだよ。」
「…未来人も、同じようなこと思うんだな。」
「きっと、時代関係なく思ってる人いると思うよ。…分かんないけどさ。」
俺も、彼女から1つ間隔を空けてベンチに座る。
「私、小学生ぐらいの頃までは和菓子屋さんになりたかったんだよね。ここのお団子が好きだったのもそうだけど、甘いもの好きだしさ。」
…の割には、さっき自分の名前の候補で出してた名前は洋菓子だったと思うけど。
「でも、料理なんて全然できないしさ。私は、作るより食べる専門でいたい!と思って。」
「そこから、何で博士の助手になったんだよ。」
「…え?気になるの?」
「気になるというか、全然種類違うから。」
「んー、よく覚えてないけど、博士の家の手伝いしてたらいつの間にね。博士、ずっとダラダラしてたからね。タイムマシン作り出したの2年前だし、ほぼニートみたいなものだったしね。」
タイムマシンを2年で作ったのかよ。すごすぎるだろ。
「まあ、元々機械いじりが好きだったからってのもあるけど。」
「そうなんだ。」
最初から博士の助手になることを夢にしてそうだったから、意外だったな。
「ねえ、聞いてもいい?」
彼女は俺にそう言ってきた。
「何をだよ。」
「小林くんは…小さい頃何になりたかったの?」
…何になりたかったんだろうな、俺は。小さい頃の夢なんて覚えてないし。
「さあな。もう覚えてないや。そういうもんだろ、夢って…。」
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