5 / 28
1章アンチチート編
第5話:バグ
しおりを挟む
第5話:バグ
「愚者の黄金・散弾!」
魔女は触媒を解放する。
それは劉斗の無謀な突撃を支援するための、せめてもの足掻き。
アルベルトは白い燐光に包まれる。チートを発動し、避けようともしない。
「残念、100%外れ」
彼への攻撃は、100%外れという結果になる、はずだった。
アルベルトの白い燐光が、劉斗の文字化けした燐光に触れる。
アルベルトの燐光を侵食した。
「……え!?」
魔女の口から漏れた。
絶対に外れるはずの散弾のうち数発が、アルベルトに当たった。
「う……!?」
劉斗の剣先がアルベルトの頬を切り裂いた。
魔女は目の前の現実から思考を始めた。
昨晩、劉斗の近くで自分のチートの精度が落ちた。
だからアルベルトの確率操作も同じく精度が落ちて命中。
昨晩のあの悪夢、アルベルトのサイコロはなぜ「1つ」だった?
あの男なら、10個のサイコロを振ってすべて「1」にするはず。
魔女は悪夢の原因の、脳内桃色預言者に感謝した。
結論、1度に1つの事象しか操作できない。シングルタスク!
『神のサイコロ』は1つずつしか振れない。
つまり回避と無詠唱を同時に100%にできない。
「劉斗!そいつは回避と攻撃は同時にできない!反撃されてもガラスの盾がある。
攻撃しなさい!」
「……血?俺が現地人のガキと贋作師に?」
アルベルトが再度チートを発動し、無詠唱魔法で反撃しようとした瞬間。
「愚者の黄金・狙撃」
100%回避できたから今まで無敵だった。相手の体力切れや魔力切れを待てばいい。
今は一定確率で攻撃が命中する。彼は理解した、自分が削られる側になったのだと。
「あ……あぁ……っ!!」
血を吐くアルベルトは、完璧なチートの穴をつかれた元絶対者。
「ホント、笑えるくらい完璧」
魔女は運河の壁にアルベルトを追い詰めた。
侵入者を拒む「返しのついた壁」で囲われ、等間隔に配置された見張り塔には、
弓兵たちが詰めている。
彼らの任務はあくまで運河の安全。壁の内側を脅かさない限り、彼らは何もしない。
アルベルトの顔には恐怖と屈辱。
魔女は淡々と言う。
「自分を『最強』だと勘違いして、
勘違いでこの子の村を焼いて、
勘違いで私の『彼氏』なんて茶化して
私が『クラウドナイン』入りなんて勘違いまでしてる」
魔女の手から、黄金の輝きが漏れ出す。それは殺意の輝き。
「自分の勘違いする確率を、ゼロにすれば良かったのに。これで仕留める。
劉斗、あわせて!!」
閑話C9の計算外な日常1
王宮のティールーム。情報交換会という名の、女子会。
優雅な室内には、スコーンの香りと、エスプレッソの香りが満ちている。
オラクルが語り始める。
「皆様ご存じかしら?彼女が私たちのもとを去られた理由」
レギーナの手が、一瞬だけピクリと止まる。
「何だったの」
「運命ですわ」
オラクルは断言する。
「啓示にはこうありました。『運命、人』と。昨日、スカイラウンジで、
彼女と青年が食事をしているのを見かけました。そして、工業都市の最新の啓示!」
扇に映し出されたのは、建設現場で崩落する鉄骨から、魔女を必死にかばう青年の姿――。
「身を挺して守る。尊すぎます。このような、真実愛に出会ってしまったから。
……私、決めましたわ。陰ながらお二人を支えようと思います」
「いいんじゃない?」
レギーナは心底、安堵(あんど)した表情を浮かべた。
「異世界来て、駆け落ちとか、本当バカじゃない?
ねえフリーダ、どこがいいのかしらね」
フリーダは、オラクルの見せる画像を冷めた目で見る。
「……動機は別に。いい話です。小説、いや舞台?」
「ナノハがいるのは珍しいよね?」
と、レギーナが部屋の隅にいたナノハに水を向ける。
「戦況、安定しているから」
深い青色の髪、小柄で軍服を着ている少女。
ナノハは表情を変えず、コーヒーに口をつけ、地図に並ぶチェスの駒を見ている。
レギーナは思い出したように口を開いた。
「そういえば、アルベルトはどこ?」
「ウルフギャングを訪ねて工業都市ですわ」
オラクルが答える。
レギーナは笑う。
「何で?あいつ、引きこもりのウルフギャングと気が合うわけ?」
「新作ゲームが出来たそうよ」
フリーダが、手元の書類から目を上げずに補足した。
「パッサージュでの販売を検討中なの。工業都市のリソースを割かせた以上、
開発費の倍以上の回収を期待してるわ。エンタメも集金システム」
「異世界で新作ゲームとか、マジ受ける!あいつら本当、根っからのオタクよね」
レギーナはおかしそうに笑い飛ばした。
かつての教室で、スクールカーストの頂点からオタクたちを弄んでいた時と同じ、無邪気な笑いだ。
「そもそも、確率操作(アルベルト)と一時停止(ウルフギャング)で
ゲームなんて成り立つの?バグって終わりじゃない」
「愚者の黄金・散弾!」
魔女は触媒を解放する。
それは劉斗の無謀な突撃を支援するための、せめてもの足掻き。
アルベルトは白い燐光に包まれる。チートを発動し、避けようともしない。
「残念、100%外れ」
彼への攻撃は、100%外れという結果になる、はずだった。
アルベルトの白い燐光が、劉斗の文字化けした燐光に触れる。
アルベルトの燐光を侵食した。
「……え!?」
魔女の口から漏れた。
絶対に外れるはずの散弾のうち数発が、アルベルトに当たった。
「う……!?」
劉斗の剣先がアルベルトの頬を切り裂いた。
魔女は目の前の現実から思考を始めた。
昨晩、劉斗の近くで自分のチートの精度が落ちた。
だからアルベルトの確率操作も同じく精度が落ちて命中。
昨晩のあの悪夢、アルベルトのサイコロはなぜ「1つ」だった?
あの男なら、10個のサイコロを振ってすべて「1」にするはず。
魔女は悪夢の原因の、脳内桃色預言者に感謝した。
結論、1度に1つの事象しか操作できない。シングルタスク!
『神のサイコロ』は1つずつしか振れない。
つまり回避と無詠唱を同時に100%にできない。
「劉斗!そいつは回避と攻撃は同時にできない!反撃されてもガラスの盾がある。
攻撃しなさい!」
「……血?俺が現地人のガキと贋作師に?」
アルベルトが再度チートを発動し、無詠唱魔法で反撃しようとした瞬間。
「愚者の黄金・狙撃」
100%回避できたから今まで無敵だった。相手の体力切れや魔力切れを待てばいい。
今は一定確率で攻撃が命中する。彼は理解した、自分が削られる側になったのだと。
「あ……あぁ……っ!!」
血を吐くアルベルトは、完璧なチートの穴をつかれた元絶対者。
「ホント、笑えるくらい完璧」
魔女は運河の壁にアルベルトを追い詰めた。
侵入者を拒む「返しのついた壁」で囲われ、等間隔に配置された見張り塔には、
弓兵たちが詰めている。
彼らの任務はあくまで運河の安全。壁の内側を脅かさない限り、彼らは何もしない。
アルベルトの顔には恐怖と屈辱。
魔女は淡々と言う。
「自分を『最強』だと勘違いして、
勘違いでこの子の村を焼いて、
勘違いで私の『彼氏』なんて茶化して
私が『クラウドナイン』入りなんて勘違いまでしてる」
魔女の手から、黄金の輝きが漏れ出す。それは殺意の輝き。
「自分の勘違いする確率を、ゼロにすれば良かったのに。これで仕留める。
劉斗、あわせて!!」
閑話C9の計算外な日常1
王宮のティールーム。情報交換会という名の、女子会。
優雅な室内には、スコーンの香りと、エスプレッソの香りが満ちている。
オラクルが語り始める。
「皆様ご存じかしら?彼女が私たちのもとを去られた理由」
レギーナの手が、一瞬だけピクリと止まる。
「何だったの」
「運命ですわ」
オラクルは断言する。
「啓示にはこうありました。『運命、人』と。昨日、スカイラウンジで、
彼女と青年が食事をしているのを見かけました。そして、工業都市の最新の啓示!」
扇に映し出されたのは、建設現場で崩落する鉄骨から、魔女を必死にかばう青年の姿――。
「身を挺して守る。尊すぎます。このような、真実愛に出会ってしまったから。
……私、決めましたわ。陰ながらお二人を支えようと思います」
「いいんじゃない?」
レギーナは心底、安堵(あんど)した表情を浮かべた。
「異世界来て、駆け落ちとか、本当バカじゃない?
ねえフリーダ、どこがいいのかしらね」
フリーダは、オラクルの見せる画像を冷めた目で見る。
「……動機は別に。いい話です。小説、いや舞台?」
「ナノハがいるのは珍しいよね?」
と、レギーナが部屋の隅にいたナノハに水を向ける。
「戦況、安定しているから」
深い青色の髪、小柄で軍服を着ている少女。
ナノハは表情を変えず、コーヒーに口をつけ、地図に並ぶチェスの駒を見ている。
レギーナは思い出したように口を開いた。
「そういえば、アルベルトはどこ?」
「ウルフギャングを訪ねて工業都市ですわ」
オラクルが答える。
レギーナは笑う。
「何で?あいつ、引きこもりのウルフギャングと気が合うわけ?」
「新作ゲームが出来たそうよ」
フリーダが、手元の書類から目を上げずに補足した。
「パッサージュでの販売を検討中なの。工業都市のリソースを割かせた以上、
開発費の倍以上の回収を期待してるわ。エンタメも集金システム」
「異世界で新作ゲームとか、マジ受ける!あいつら本当、根っからのオタクよね」
レギーナはおかしそうに笑い飛ばした。
かつての教室で、スクールカーストの頂点からオタクたちを弄んでいた時と同じ、無邪気な笑いだ。
「そもそも、確率操作(アルベルト)と一時停止(ウルフギャング)で
ゲームなんて成り立つの?バグって終わりじゃない」
0
あなたにおすすめの小説
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
追放令嬢と【神の農地】スキル持ちの俺、辺境の痩せ地を世界一の穀倉地帯に変えたら、いつの間にか建国してました。
黒崎隼人
ファンタジー
日本の農学研究者だった俺は、過労死の末、剣と魔法の異世界へ転生した。貧しい農家の三男アキトとして目覚めた俺には、前世の知識と、触れた土地を瞬時に世界一肥沃にするチートスキル【神の農地】が与えられていた!
「この力があれば、家族を、この村を救える!」
俺が奇跡の作物を育て始めた矢先、村に一人の少女がやってくる。彼女は王太子に婚約破棄され、「悪役令嬢」の汚名を着せられて追放された公爵令嬢セレスティーナ。全てを失い、絶望の淵に立つ彼女だったが、その瞳にはまだ気高い光が宿っていた。
「俺が、この土地を生まれ変わらせてみせます。あなたと共に」
孤独な元・悪役令嬢と、最強スキルを持つ転生農民。
二人の出会いが、辺境の痩せた土地を黄金の穀倉地帯へと変え、やがて一つの国を産み落とす奇跡の物語。
優しくて壮大な、逆転建国ファンタジー、ここに開幕!
【完結】婚約者?勘違いも程々にして下さいませ
リリス
恋愛
公爵令嬢ヤスミーンには侯爵家三男のエグモントと言う婚約者がいた。
先日不慮の事故によりヤスミーンの両親が他界し女公爵として相続を前にエグモントと結婚式を三ヶ月後に控え前倒しで共に住む事となる。
エグモントが公爵家へ引越しした当日何故か彼の隣で、彼の腕に絡みつく様に引っ付いている女が一匹?
「僕の幼馴染で従妹なんだ。身体も弱くて余り外にも出られないんだ。今度僕が公爵になるって言えばね、是が非とも住んでいる所を見てみたいって言うから連れてきたんだよ。いいよねヤスミーンは僕の妻で公爵夫人なのだもん。公爵夫人ともなれば心は海の様に広い人でなければいけないよ」
はて、そこでヤスミーンは思案する。
何時から私が公爵夫人でエグモンドが公爵なのだろうかと。
また病気がちと言う従妹はヤスミーンの許可も取らず堂々と公爵邸で好き勝手に暮らし始める。
最初の間ヤスミーンは静かにその様子を見守っていた。
するとある変化が……。
ゆるふわ設定ざまああり?です。
異世界ランドへようこそ
来栖とむ
ファンタジー
都内から車で1時間半。奥多摩の山中に突如現れた、話題の新名所――「奥多摩異世界ランド」。
中世ヨーロッパ風の街並みと、ダンジョンや魔王城を完全再現した異世界体験型レジャーパークだ。
26歳・無職の佐伯雄一は、ここで“冒険者A”のバイトを始める。
勇者を導くNPC役として、剣を振るい、魔物に襲われ、時にはイベントを盛り上げる毎日。
同僚には、美人なギルド受付のサーミャ、エルフの弓使いフラーラ、ポンコツ騎士メリーナなど、魅力的な“登場人物”が勢ぞろい。
――しかしある日、「魔王が逃げた」という衝撃の知らせが入る。
「体格が似てるから」という理由で、雄一は急遽、魔王役の代役を任されることに。
だが、演技を終えた後、案内された扉の先にあったのは……本物の異世界だった!
経営者は魔族、同僚はガチの魔物。
魔王城で始まる、まさかの「異世界勤務」生活!
やがて魔王の後継問題に巻き込まれ、スタンピードも発生(?)の裏で、フラーラとの恋が動き出す――。
笑えて、トキメいて、ちょっと泣ける。
現代×異世界×職場コメディ、開園!
【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました
あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。
そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。
平民出身のヒロインの「善意」、
王太子の「優しさ」、
そしてそれらが生み出す無数の歪み。
感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。
やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。
それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。
なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。
これは、
「断罪される側」が最後まで正しかった物語。
そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。
無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった!
「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」
主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!
婚約破棄されたので、隠していた聖女の力で聖樹を咲かせてみました
Megumi
恋愛
偽聖女と蔑まれ、婚約破棄されたイザベラ。
「お前は地味で、暗くて、何の取り柄もない」
元婚約者である王子はそう言い放った。
十年間、寡黙な令嬢を演じ続けた彼女。
その沈黙には、理由があった。
その夜、王都を照らす奇跡の光。
枯れた聖樹が満開に咲き誇り、人々は囁いた。
「真の聖女が目覚めた」と——
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる