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1章アンチチート編
第4話:賢く諦めろ
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第4話:賢く諦めろ
1.街道
王都から工業都市へと続く街道は運河が並走してる。
魔女は運河沿いの壁と、等間隔に並ぶ塔を指差す。
「見張り塔は見える?」
塔の兵士たちの視線は、常に運河と運搬船だけに注がれている。
「壁の天端には『返し』がついている。あれは運河という『富のライン』に、
触れさせないため。塔の兵士は、運河の安全を脅かさない限り、動かない。
彼らには、街道はただの風景」
魔女の言葉は、どこか自嘲気味だった。
「……1年ほど前、この街道はもっとにぎやかだった」
魔女は閑散とした街道を見やった。
「高低差と水流を利用した自動物流。
その代償に御者たちは『片道分』の仕事を失った。
そこにあった暮らしは、最初から計画に含まない。
今は『第二運河』を作るか、運河を拡張するか検討してる」
劉斗は唇を噛んでいる。
「御者も船頭も失業した。彼らがどこへ行ったか、気になる?
工業都市に行けばわかる」
2.工業都市
工業都市に着くと、一団の男を魔女が指差した。
彼らはボロボロの服ではなく、清潔な制服を着ている。
巻き上げ機から降ろされた箱。それを彼らはただ次の工程へと受け渡す。
「あれが答え。彼らは『労働者』になった。失業者は遊休資産。
仕事の代わりに、飢えない程度の賃金と『やるべきこと』を与える。
そうやって不満の芽を摘み、治安を維持している。
反対する理由がないほど『完璧』でしょ?」
魔女が冷笑する。
「あの箱を見て」
整然と並べられた木箱。すべて同じサイズ、同じ書体の文字
――ステンシルで番号が書かれていた。
「箱は中身が違っても、サイズは同じ。開けなくても番号で中身はわかる。
便利でしょう?」
「……便利かもしれないけど」
劉斗は、黙々と荷物を運ぶ労働者たちと、積み上げられた箱を見つめた。
「なんだか、同じ顔の人が並んでいるみたいで、少し怖いな。
番号で管理される箱みたいに。つまり彼らはこの都市の部品になった」
劉斗の声は、鐘の音にかき消される。交代の時間、男たちが入れ替わる。
「太陽ではなく、鐘の音が時の基準。安価な灯りを手にすれば、
ここは不夜城になる」
予言のように魔女が言う。
3.作業現場
二人は第2運河の作業現場にいた。地形を書き換えようとしている、その最前線。
見上げるような高さの鉄骨が組み上げられ、空を切り取っている。
その時、重苦しい金属のきしむ音。
「――っ!魔女さん、危ない!」
頭上で、資材が固定を失う。
劉斗はその身を盾にするようにして彼女に覆いかぶさった。
「……え?」
資材が劉斗の頭上、わずかのところで停止した。
工業都市・監視塔
その光景を、遠見の水晶越しに眺める男がいた。
「この都市で事故は起こらない、不要だ」
C9一員のウルフギャングのチート能力――『事象の未確定』。
崩落という「結果」が確定する前に事象を一時停止させ、静止画へと変える。
「時よ止まれ、汝は美しい」
彼は水晶に映る二人に視線を送ることすらなかった。
だが、その「瞬間」を、熱狂的に見つめる者がいた。
オラクルの執務室
「まぁ!本日も『供給』が届きましたわ!」
オラクルは「工業都市で危機一髪!」という啓示を受信した瞬間、
勢いよく扇を広げた。扇の面に浮かび上がるのは、静止した鉄骨の下、
決死の表情で魔女を抱きしめる少年の姿。
「この守護の構図!昨日はしっかり徳を積みましたからね。ご褒美ですわ!」
彼女はうっとりと頬を染め、堪能していた。
4.愚者の選択
「……ねえ、劉斗。まだ、アルベルトと戦うつもり?」
工業都市の門を抜け、見通しの良い街道に出たところで、魔女は足を止めました。
「……魔女さんは、俺に賢く諦めろって言いたいんだな」
「あいつを倒すことは、この秩序を壊すこと。世界中を敵に回して何ができる?
せっかく拾った命、大事にして」
劉斗は首を縦には振らない。
「……もう、見せるものはない。理解できないなら、あんたはただの馬鹿」
劉斗は迷いなく答える。
「……届かなくても、俺は行く」
魔女は深いため息をつき、少年にいくつかのガラス玉を押し付けた。
「……これ、お守り。『愚者の黄金・ガラスの盾』。
一発攻撃を受ければ割れるけど、勝手に発動するわ」
それは、彼が復讐を諦めない以上、彼女なりの精一杯の「餞別」だった。
「……ありがとな、魔女さん」
アルベルトの嘲笑が聞こえる。
「お、贋作師じゃん。それウワサの彼氏?プッ、お似合いの村人A」
指さしてヘラヘラと笑う。アルベルトにとって、目の前の少年は有象無象。
「……村人は正解。あんたが焼いた村の唯一の生き残り」
その瞬間、アルベルトの顔から笑いが消えた。
彼が恐れたのは、C9の「虐殺禁止」のルールだ。
自分の行った虐殺が露見すれば「追放」されかねない。
「……なるほどね。告発して、C9に入るつもり?性悪だなぁ」
彼は即座に、自分の罪を「策謀」へとすり替えた。
彼にとって平穏を脅かすものは消去する。
「殺す!!」
劉斗は剣を抜きアルベルトに突進する。
1.街道
王都から工業都市へと続く街道は運河が並走してる。
魔女は運河沿いの壁と、等間隔に並ぶ塔を指差す。
「見張り塔は見える?」
塔の兵士たちの視線は、常に運河と運搬船だけに注がれている。
「壁の天端には『返し』がついている。あれは運河という『富のライン』に、
触れさせないため。塔の兵士は、運河の安全を脅かさない限り、動かない。
彼らには、街道はただの風景」
魔女の言葉は、どこか自嘲気味だった。
「……1年ほど前、この街道はもっとにぎやかだった」
魔女は閑散とした街道を見やった。
「高低差と水流を利用した自動物流。
その代償に御者たちは『片道分』の仕事を失った。
そこにあった暮らしは、最初から計画に含まない。
今は『第二運河』を作るか、運河を拡張するか検討してる」
劉斗は唇を噛んでいる。
「御者も船頭も失業した。彼らがどこへ行ったか、気になる?
工業都市に行けばわかる」
2.工業都市
工業都市に着くと、一団の男を魔女が指差した。
彼らはボロボロの服ではなく、清潔な制服を着ている。
巻き上げ機から降ろされた箱。それを彼らはただ次の工程へと受け渡す。
「あれが答え。彼らは『労働者』になった。失業者は遊休資産。
仕事の代わりに、飢えない程度の賃金と『やるべきこと』を与える。
そうやって不満の芽を摘み、治安を維持している。
反対する理由がないほど『完璧』でしょ?」
魔女が冷笑する。
「あの箱を見て」
整然と並べられた木箱。すべて同じサイズ、同じ書体の文字
――ステンシルで番号が書かれていた。
「箱は中身が違っても、サイズは同じ。開けなくても番号で中身はわかる。
便利でしょう?」
「……便利かもしれないけど」
劉斗は、黙々と荷物を運ぶ労働者たちと、積み上げられた箱を見つめた。
「なんだか、同じ顔の人が並んでいるみたいで、少し怖いな。
番号で管理される箱みたいに。つまり彼らはこの都市の部品になった」
劉斗の声は、鐘の音にかき消される。交代の時間、男たちが入れ替わる。
「太陽ではなく、鐘の音が時の基準。安価な灯りを手にすれば、
ここは不夜城になる」
予言のように魔女が言う。
3.作業現場
二人は第2運河の作業現場にいた。地形を書き換えようとしている、その最前線。
見上げるような高さの鉄骨が組み上げられ、空を切り取っている。
その時、重苦しい金属のきしむ音。
「――っ!魔女さん、危ない!」
頭上で、資材が固定を失う。
劉斗はその身を盾にするようにして彼女に覆いかぶさった。
「……え?」
資材が劉斗の頭上、わずかのところで停止した。
工業都市・監視塔
その光景を、遠見の水晶越しに眺める男がいた。
「この都市で事故は起こらない、不要だ」
C9一員のウルフギャングのチート能力――『事象の未確定』。
崩落という「結果」が確定する前に事象を一時停止させ、静止画へと変える。
「時よ止まれ、汝は美しい」
彼は水晶に映る二人に視線を送ることすらなかった。
だが、その「瞬間」を、熱狂的に見つめる者がいた。
オラクルの執務室
「まぁ!本日も『供給』が届きましたわ!」
オラクルは「工業都市で危機一髪!」という啓示を受信した瞬間、
勢いよく扇を広げた。扇の面に浮かび上がるのは、静止した鉄骨の下、
決死の表情で魔女を抱きしめる少年の姿。
「この守護の構図!昨日はしっかり徳を積みましたからね。ご褒美ですわ!」
彼女はうっとりと頬を染め、堪能していた。
4.愚者の選択
「……ねえ、劉斗。まだ、アルベルトと戦うつもり?」
工業都市の門を抜け、見通しの良い街道に出たところで、魔女は足を止めました。
「……魔女さんは、俺に賢く諦めろって言いたいんだな」
「あいつを倒すことは、この秩序を壊すこと。世界中を敵に回して何ができる?
せっかく拾った命、大事にして」
劉斗は首を縦には振らない。
「……もう、見せるものはない。理解できないなら、あんたはただの馬鹿」
劉斗は迷いなく答える。
「……届かなくても、俺は行く」
魔女は深いため息をつき、少年にいくつかのガラス玉を押し付けた。
「……これ、お守り。『愚者の黄金・ガラスの盾』。
一発攻撃を受ければ割れるけど、勝手に発動するわ」
それは、彼が復讐を諦めない以上、彼女なりの精一杯の「餞別」だった。
「……ありがとな、魔女さん」
アルベルトの嘲笑が聞こえる。
「お、贋作師じゃん。それウワサの彼氏?プッ、お似合いの村人A」
指さしてヘラヘラと笑う。アルベルトにとって、目の前の少年は有象無象。
「……村人は正解。あんたが焼いた村の唯一の生き残り」
その瞬間、アルベルトの顔から笑いが消えた。
彼が恐れたのは、C9の「虐殺禁止」のルールだ。
自分の行った虐殺が露見すれば「追放」されかねない。
「……なるほどね。告発して、C9に入るつもり?性悪だなぁ」
彼は即座に、自分の罪を「策謀」へとすり替えた。
彼にとって平穏を脅かすものは消去する。
「殺す!!」
劉斗は剣を抜きアルベルトに突進する。
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