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1章アンチチート編
第11話:知の収奪者
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第11話:知の収奪者
ゾティークを弔って数日。亜智は少し困り眉で告げた。
「悪いけど、しばらくの間私から離れておいて」
劉斗も困ったような顔で返事をする。
「……え、俺、なんかしたか?」
亜智は首を振る。
「違う。アンチチートのせいで、私の『愚者の黄金』の精度が低下するの。
全身からチートを垂れ流してる自覚はある?」
「ないけど、悪いな」
安堵したのか、亜智から遠ざかる。
北部の前線では、魔王軍の奔流とクラウドナインC9率いる正規軍が激突していた。
正規軍は盾として魔王軍の勢いを完璧にいなす。その突出部が限界まで伸び切る。
「出るぞ。ユゴス」
伊織が立ち上がった、突出部を横から切り崩す。
剣聖と呼ばれる伊織はチートで底上げされた身体能力と、
剣術の組み合わせのイメージが強い。
だが戦場では蹴りや投げの崩し、投石や棒手裏剣、弓矢などの飛び道具、
二刀流を併用する。
手段を選ばず、最短で相手を倒す。戦場の『合理主義者』である。
作り物のような、美青年のユゴスが伊織に続く。
「どの本にしようか?『マンティコアの針』」
右手がマンティコアの尻尾へと変異し、電撃を帯びた無数の毒針を撒き散らす。
「次の本はこれ」
腹部に火龍の頭部が構成され、火焔が魔物たちを焼く。
「ミノタウルス・パンチ」
針と火炎に耐えても、剛力の拳がある。
彼は元人間で、チートにより、クトゥルフ神話のロードショゴスになった。
無限の可塑性で、吸収した魔物を再現、攻撃する能力、セラエノ図書館。
複数の心臓、複数の脳、複数の感覚器を生成する彼に死角や急所はない。
退屈そうに言う。
「ここに蔵書に値するものはない」
伊織だけが、相棒の異変に気づいた。
隠れ里。亜智が満面の笑みで、劉斗に赤い結晶を差し出した。
「贋作師一世一代の傑作よ」
劉斗はそれを受け取る。
「ガラスの盾みたいなもの?」
「ゾティークおじさんのお守り、もしもの時の保険」
チートを解析し、再現した『不死の欠片』。
見られている気配は実体化した。目の前に現れたのは、人形のような子供。
「あーあー。少し話しにくい」
子供の体が揺らぎ、あの青年へと変貌する。
「亜智君、久しぶり。元気そうで何より」
人形のような顔、作り物の笑顔。亜智の声は警戒しきっている。
「ユゴス、何をしにきた」
「亜智君。怖い顔をしたら、端正な顔が台無しだよ。お願いがあるんだ」
劉斗は身を震わせる。
「知り合い?魔王軍じゃなくて?」
亜智は淡々と答えた。
「C9の人間をやめた、知の収奪者よ」
「僕の図書館に加えたい稀覯本(きこうぼん)を見つけてね。
劉斗君を、ぜひ我が『セラエノ図書館』に迎えたい。では僕の蔵書をお見せしよう」
色香を放つ女悪魔(サキュバス)にユゴスが変異する。
「あちらの老紳士様に」
サキュバスは少し離れていたゲンゾウへ、投げキッスをする。
「たまらんのう……!!」
ゲンゾウは恍惚の表情で悦に入る。
サキュバスの魅了か、彼の『素』かは判断がつかない。
「次は劉斗君……」
サキュバスが劉斗を見つめると、黄金の散弾が降り注ぐ。
亜智は言い切った。
「帰って」
だが、ユゴスは軽い口調で返す。
「いきなり痛いじゃないか、亜智君。お願いだよ?
君は本の序文や目次を読み飛ばすタイプかな?それはダメだよ、
本の一部なんだから。もしかしてインキュバス(男夢魔)の方が好みだった?」
ユゴスが茶化すように言うと、再び亜智の黄金の散弾が降り注ぐ。
一方、遠く離れた最前線。
伊織は、「縮んで」いく相棒をジロリと睨みつけた。
「ユゴス。どう見ても縮んでいるぞ」
「ダイエット中でね」
ユゴスは平然と言う。
再び里
亜智が冷たく言う。
「誘惑してお願いはない」
ユゴスが首肯した。
「そうだね。じゃあ真面目にするよ――この本から」
ユゴスが右手を巨大なミノタウルスの剛腕へと変異させようとした。
その刹那、劉斗の剣が一閃し、変異中の腕を切り落とす。
ドサリ、と地面に落ちた腕。しかし、それは即座に本体へとつながる。
「再生はしたが、筋力が低下している。指が思うように開かない。
これがアンチ・チート。実に興味深い!」
ユゴスは不全を起こしたミノタウルスの腕を強引に振り回し、
劉斗を吹き飛ばそうと大振りに殴りつけた。
「次はこれ、『岩竜(グラビティ・ドレイク)の肺』」
ユゴスの胸部が大きく膨らみ、不可視の衝撃波が放たれる。二人は膝を突く。
「次はこれ。『マンティコアの針』」
ふざけた口調とは裏腹に、ユゴスの攻撃は一切の無駄を排し、
確実に二人を「詰み」へと追い込んでいった。
電撃を帯びた針が、立ち上がろうとする二人の四肢を貫き、神経をマヒさせた。
「同じ本はマンネリ?いや偉大なマンネリだ」
動けない劉斗に、ミノタウルスの剛拳が降り注いだ。
「……知識が散逸する前に、収蔵しよう」
ユゴスの姿が、原形質の粘液へと変貌し、一瞬にして劉斗の全身を包み込む。
「死亡確認。――『稀覯本・劉斗』、吸収を開始」
ユゴスは勝利を宣言する。
「劉斗――!!」
亜智の叫びが里に響き渡る。
ゾティークを弔って数日。亜智は少し困り眉で告げた。
「悪いけど、しばらくの間私から離れておいて」
劉斗も困ったような顔で返事をする。
「……え、俺、なんかしたか?」
亜智は首を振る。
「違う。アンチチートのせいで、私の『愚者の黄金』の精度が低下するの。
全身からチートを垂れ流してる自覚はある?」
「ないけど、悪いな」
安堵したのか、亜智から遠ざかる。
北部の前線では、魔王軍の奔流とクラウドナインC9率いる正規軍が激突していた。
正規軍は盾として魔王軍の勢いを完璧にいなす。その突出部が限界まで伸び切る。
「出るぞ。ユゴス」
伊織が立ち上がった、突出部を横から切り崩す。
剣聖と呼ばれる伊織はチートで底上げされた身体能力と、
剣術の組み合わせのイメージが強い。
だが戦場では蹴りや投げの崩し、投石や棒手裏剣、弓矢などの飛び道具、
二刀流を併用する。
手段を選ばず、最短で相手を倒す。戦場の『合理主義者』である。
作り物のような、美青年のユゴスが伊織に続く。
「どの本にしようか?『マンティコアの針』」
右手がマンティコアの尻尾へと変異し、電撃を帯びた無数の毒針を撒き散らす。
「次の本はこれ」
腹部に火龍の頭部が構成され、火焔が魔物たちを焼く。
「ミノタウルス・パンチ」
針と火炎に耐えても、剛力の拳がある。
彼は元人間で、チートにより、クトゥルフ神話のロードショゴスになった。
無限の可塑性で、吸収した魔物を再現、攻撃する能力、セラエノ図書館。
複数の心臓、複数の脳、複数の感覚器を生成する彼に死角や急所はない。
退屈そうに言う。
「ここに蔵書に値するものはない」
伊織だけが、相棒の異変に気づいた。
隠れ里。亜智が満面の笑みで、劉斗に赤い結晶を差し出した。
「贋作師一世一代の傑作よ」
劉斗はそれを受け取る。
「ガラスの盾みたいなもの?」
「ゾティークおじさんのお守り、もしもの時の保険」
チートを解析し、再現した『不死の欠片』。
見られている気配は実体化した。目の前に現れたのは、人形のような子供。
「あーあー。少し話しにくい」
子供の体が揺らぎ、あの青年へと変貌する。
「亜智君、久しぶり。元気そうで何より」
人形のような顔、作り物の笑顔。亜智の声は警戒しきっている。
「ユゴス、何をしにきた」
「亜智君。怖い顔をしたら、端正な顔が台無しだよ。お願いがあるんだ」
劉斗は身を震わせる。
「知り合い?魔王軍じゃなくて?」
亜智は淡々と答えた。
「C9の人間をやめた、知の収奪者よ」
「僕の図書館に加えたい稀覯本(きこうぼん)を見つけてね。
劉斗君を、ぜひ我が『セラエノ図書館』に迎えたい。では僕の蔵書をお見せしよう」
色香を放つ女悪魔(サキュバス)にユゴスが変異する。
「あちらの老紳士様に」
サキュバスは少し離れていたゲンゾウへ、投げキッスをする。
「たまらんのう……!!」
ゲンゾウは恍惚の表情で悦に入る。
サキュバスの魅了か、彼の『素』かは判断がつかない。
「次は劉斗君……」
サキュバスが劉斗を見つめると、黄金の散弾が降り注ぐ。
亜智は言い切った。
「帰って」
だが、ユゴスは軽い口調で返す。
「いきなり痛いじゃないか、亜智君。お願いだよ?
君は本の序文や目次を読み飛ばすタイプかな?それはダメだよ、
本の一部なんだから。もしかしてインキュバス(男夢魔)の方が好みだった?」
ユゴスが茶化すように言うと、再び亜智の黄金の散弾が降り注ぐ。
一方、遠く離れた最前線。
伊織は、「縮んで」いく相棒をジロリと睨みつけた。
「ユゴス。どう見ても縮んでいるぞ」
「ダイエット中でね」
ユゴスは平然と言う。
再び里
亜智が冷たく言う。
「誘惑してお願いはない」
ユゴスが首肯した。
「そうだね。じゃあ真面目にするよ――この本から」
ユゴスが右手を巨大なミノタウルスの剛腕へと変異させようとした。
その刹那、劉斗の剣が一閃し、変異中の腕を切り落とす。
ドサリ、と地面に落ちた腕。しかし、それは即座に本体へとつながる。
「再生はしたが、筋力が低下している。指が思うように開かない。
これがアンチ・チート。実に興味深い!」
ユゴスは不全を起こしたミノタウルスの腕を強引に振り回し、
劉斗を吹き飛ばそうと大振りに殴りつけた。
「次はこれ、『岩竜(グラビティ・ドレイク)の肺』」
ユゴスの胸部が大きく膨らみ、不可視の衝撃波が放たれる。二人は膝を突く。
「次はこれ。『マンティコアの針』」
ふざけた口調とは裏腹に、ユゴスの攻撃は一切の無駄を排し、
確実に二人を「詰み」へと追い込んでいった。
電撃を帯びた針が、立ち上がろうとする二人の四肢を貫き、神経をマヒさせた。
「同じ本はマンネリ?いや偉大なマンネリだ」
動けない劉斗に、ミノタウルスの剛拳が降り注いだ。
「……知識が散逸する前に、収蔵しよう」
ユゴスの姿が、原形質の粘液へと変貌し、一瞬にして劉斗の全身を包み込む。
「死亡確認。――『稀覯本・劉斗』、吸収を開始」
ユゴスは勝利を宣言する。
「劉斗――!!」
亜智の叫びが里に響き渡る。
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