『転生したら木でした』 一万年後、世界樹はエルフの杖となる――

鬼神柴犬

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転生者は木と成り杖となる

16話 王城・禁書庫

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奪われた資格

王城・禁書庫。

王族とごく一部の賢者しか立ち入れぬ場所。

レオンハルトは一人、燭台の灯りの中で古文書をめくっていた。

《勇者選定の記録》
《対魔王戦・装備目録》

指先が止まる。

歴代勇者パーティが魔王討伐時に装備していた五つの“意志持つ武具”――インテリジェンスウェポン。

・聖剣エクスカリバー
・魔道書グリモワール
・必中の弓アルテミス
・反撃の盾イカロス
・絶望のリング
武具は所有者を選ぶ。

だが選定条件は「勇者」だけではない。

「……適合率」

レオンハルトの瞳が細くなる。

記録によれば、歴代勇者は“完全適合”ではなかった。

むしろ武具と対話し、認められ、磨き上げていった。

つまり。

最初から勇者だったのではない。

「選ばれたから勇者なのか。勇者だから選ばれたのか」

紙を閉じる。

答えは曖昧だ。

だが一つ確かなことがある。

――武具は、存在する。

魔王討伐後、封印・散逸・紛失。

王国は所在を曖昧にしてきた。

理由は明白。

再び“勇者”が現れた時のため。

レオンハルトは呟く。

「ならば先に手に入れればいい」

勇者が農民であろうと関係ない。

武具を揃えた者こそ、象徴になる。

象徴が王子ならば。

民はどちらを信じる?

扉が軋む。


代わりに現れたのは、王国密偵長。

「殿下。お呼びと」

レオンハルトは振り向かない。

「五つの武具の所在を洗え」

密偵長の眉が動く。

冷たい声。

「特に聖剣エクスカリバーの封印地点」

密偵長が小さく息を呑む。

「記録は曖昧だ」

レオンハルトは続ける。

「魔道書グリモワールは禁忌魔法図書塔の地下。
弓アルテミスは精霊森の奥地。
盾イカロスは飛び回るとある」

密偵長が慎重に言う。

「殿下、」

その瞬間、レオンハルトの視線が鋭く向く。

「勇者とは誰だ」

沈黙。

「農民か?」

密偵長は答えられない。

レオンハルトは静かに告げる。

「勇者は象徴だ。象徴は国家が管理する」

その言葉には、もはや嫉妬の熱はない。

あるのは冷徹な再定義。



王城・回廊

第二王子アレクシスが駆け寄る。

「兄上、何をなさるおつもりですか」

レオンハルトは歩みを止めない。

「国を守る」

「それは勇者の役目です」

「違う」

振り向く。

「勇者など不要だ」

アレクシスは震える。

「兄上は、変わってしまわれた」

レオンハルトは静かに微笑む。

「いや、やっと理解した」

勇者は偶然生まれる。

王は作られる。

「私は作る側に回る」

アレクシスの声が掠れる。

「農民の青年を……どうするのですか」

一瞬の沈黙。

「保護する」

その答えは、半分本当で半分嘘。

「象徴として利用する」

そして不要になれば。

その先は、まだ言葉にしない。





レオンハルトは一人、剣を握る。

「聖剣エクスカリバー……」

もし自分が握れば。

もし武具が応えれば。

選ばれなかったという事実は、書き換えられる。

インテリジェンスウェポンは、力だけでなく“心”と意思がある

彼はもう止まらない。

勇者を否定するのではない。

勇者の意味を、奪い取る。

それが彼の選んだ道。

闇は激情ではなく、

理論と野心の形をして、王子を包み込んでいく。
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