『転生したら木でした』 一万年後、世界樹はエルフの杖となる――

鬼神柴犬

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転生者は木と成り杖となる

27話 四天王城砕きのヴァルグラム進軍

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魔王城、玉座の間。

静寂の中、魔王がゆっくりと口を開く。

「勇者一団がアイゼルに滞在している」

影の中からアザリエルが進み出る。

「確認済み。今なら町ごと潰せます」

魔王は顎に手を当て、低く笑う。

「ヴァルグラム」

柱の陰から巨体が現れる。

三メートルを超える魔族。

巨大なバトルアックスを背負い、静かに膝を折る。

魔王は視線をまっすぐ向ける。

「アイゼル交易町を壊せ。勇者を仕留めろ」

一拍。

「恐怖を残せ。希望は砕け」

ヴァルグラムが立ち上がる。

「承知した」

アザリエルが横目で見る。

「手加減は無用だぞ、ヴァルグラム」

斧を担ぎ、巨体が踵を返す。

「最初からそのつもりだ」

扉が開く。

重い足音が遠ざかる。

魔王は玉座に深く座り直す。

「さて……勇者はどこまで抗う」

三日後。

アイゼル交易町からほど遠い見張り台が異変を捉える。

地平線が黒い。

いや――動いている。

砂煙。

地鳴り。

双眼鏡を握る兵の手が震える。

「魔物……軍勢です!」

大型個体ばかり。

オーク。
オーガ。
サイクロプス。
ミノタウロス。

A級、B級相当がざっと五百。

その先頭を歩くのは、五メートルを超える巨体。

城砕きのヴァルグラム。

斧を引きずるたびに地面が削れる。

一直線。

隊列を乱さない。

「報告いそげ!」

ギルド内。

緊急鐘が鳴る。

ギルドマスターが即断する。

「ドワーフ領メタロリア王国へ援軍要請!」

早馬が出る。

数時間後。

メタロリア王国、王城。

玉座の間で報告を受けた国王ガルムが立ち上がる。

「小さいとは言えアイゼルは交易の要。」

即断。

「近衛三百を出す」

背後から重い足音。

戦士長トールヴァン。

背には巨大な戦槌――トールハンマー。

「城砕きか。面白い」

ガルムがうなずく。

「時間がない、町を守れ」

鋼の鎧が鳴る。

ドワーフ近衛兵三百が進軍を開始する。



アイゼル交易町。

ギルドマスターはさらに命じる。

「冒険者全員に招集をかけろ!」

町に滞在していたAランクパーティが名乗りを上げる。

「これをしのいだらSランク昇格だ、やるぞお前たち!」

さらに、偶然立ち寄っていたドワーフ族のSランクパーティも応じる。

「我が国に攻め入った事、後悔させてやろう」

空気が変わる。

町が戦場になる。

石造りの防壁の上から見えるのは、押し寄せる五百の大型魔物。

地面が震える。

ソフィアが息を整える。

トールヴァンが指揮を取り配置を振り分ける。

「正面はドワーフ近衛。両翼を冒険者で抑える。ヴァルグラムは……」

トールヴァンが、こちらを見る。

「勇者の一団、任せて良いか?」

「もちろん了解だ!」

遠くで、ヴァルグラムが立ち止まる。

斧を肩に担ぎ、町を見上げる。

「砕き甲斐がある」

号令。

魔物軍が進軍を始める。

地面が揺れる。

戦争が始まる。

地平線を埋める黒い波。

オークが盾を並べ、
オーガが棍棒を振り上げ、
サイクロプスが巨岩を担ぎ、
ミノタウロスが地面を蹴る。

その中央に、城砕きのヴァルグラム。

斧を肩に担ぎ、ただ真っ直ぐに進む。



アイゼル交易町。

門は閉ざされ、弓兵が並ぶ。

トールヴァンが怒鳴る。

「前衛構築! 魔導士は二列目!」

重厚な盾壁。

戦士長トールヴァンがトールハンマーを担ぎ、前へ出る。

「押し返すぞ!」

金属がぶつかる音。

軍勢が衝突する。



最初の接触。

サイクロプスの投げた巨岩が防壁を揺らす。

魔導士隊が迎撃魔法を放つ。

火球が炸裂し、オーク隊が吹き飛ぶ。

だが止まらない。

オーガが盾列に突っ込む。

ドワーフ近衛の盾が軋む。

「踏ん張れ!」

トールヴァンが飛び出す。

戦槌が振り下ろされ、オーガの頭蓋を粉砕。

血と鉄の匂いが混じる。



町外周、左翼。

Aランクパーティがミノタウロスの突撃を受け止める。

双剣が閃き、脚を断つ。

背後から矢が突き刺さる。

だが数が多い。

一体倒しても、三体来る。



右翼。

ドワーフ族Sランクパーティが陣形を組む。

巨大盾と戦斧。

岩壁のように動かない。

サイクロプスの棍棒を受け止め、足を払う。

地響き。

巨体が倒れる。



その中央。

ヴァルグラムが歩みを止めない。

ソフィアとアルが同時に速射魔法ファイアフレイムをガトリング状に連発。

広範囲の魔物が朽ちてゆく。

総力戦は続く。

トールヴァンが吠える。

「中央を支えろ! ヴァルグラムを勇者達に集中させろ!」

ギルドマスターが叫ぶ。

「回復班、前に出るな! 後方固定!」

カズマが駆ける。

聖剣エクスが閃き、魔物を薙ぐ。

「村人、過労死するぞこれ!」

エクスが怒鳴る。

(黙って振りなさい!)

笑いと怒号と爆音。

それでも陣形は崩れない。

ヴァルグラムが唸る。

「面白い」

斧を握り直す。

その圧力が増していく。

ノエルが反撃の盾で押し返す。

ノエルが剣を握る。

「守り切る!」

総力戦は、ここから本番だ。

戦場は混沌だった。

鉄が砕け、魔法が弾け、怒号が空を裂く。

だが――

その中心で、城砕きのヴァルグラムが動きを止める。

血に濡れた斧を肩に担ぎ、ゆっくりと首を巡らせる。

赤い瞳が、戦場をなぞる。

そして――止まる。

低く、喉を鳴らす。

「見つけたぞ」

「勇者一団」

巨大な足が一歩、踏み出され
地面が沈む。

次の瞬間。

「今よ!」

カズマが飛び込む。

聖剣エクスが蒼く閃く。

一閃。

ヴァルグラムの左腕が宙を舞う。

血が噴き上がる。

エクスが叫ぶ。

(ちょっと! どこ狙ってるのよ!勇者なら、真っ二つでしょ!)

カズマが叫び返す。

「無理言うな! 俺は村人だぞー!」

荒いが速い。

だが――

ヴァルグラムは止まらない。

片腕を失いながらも、右手の大型バトルアックスを握り締める。

「……聖剣エクスカリバーか。面白い。腕の一本くれてやろう。代わりに術者の命をもらう」

地面を蹴る。

巨体が弾丸のように迫る。

進路上の魔物を踏み潰し、
立ち塞がるトールヴァンを蹴散らしながら、
一直線にソフィアへ。

「来る!」

ソフィアが叫ぶ。

巨体が一気に迫り、大きなバトルアックスが振り抜かれる。

ソフィアの顔が強張る。

アルが警告する。

(まずい、ノエル!)

その瞬間。

「やらせるか!」

ノエルがソフィアの前に滑り込み盾を構える。

ソフィアは瞬時に魔法を重ね掛ける。

筋力強化。
骨格強化。
衝撃分散。

アルが衝撃流路を分散固定する。

ノエルの身体が淡く光り輝く。

激突。

爆発音。

大地が半球状に潰れ、ノエルの身体は腰まで地中にめり込む。

ノエルの足元を中心に、円状に地面が崩落する。

岩盤が砕け、土が噴き上がり、石片が弾丸のように飛び散る。

衝撃が逃げ場を求めて地中へ叩き込まれる。

衝撃波が走り、空気が震える。

同時に、ソフィアの詠唱が途切れない。

淡い光がノエルを包む。

ヒール。


盾を押し出す。重心を落とす。

ヴァルグラムの影が覆いかぶさる。

衝撃はまず盾に来た。
次に腕。
そして肩。
最後に、骨の奥。

踏み締めた地面が砕ける。

靴底が滑り、踵が沈む。

それでも足は退かない。

ソフィアの魔力が背に触れる。

筋力強化が重なる。
骨格強化が軋みを抑える。
衝撃分散が体内の流れを整える。

同時にヒールが走る。

裂けかけた筋繊維が繋がる。

ヴァルグラムが力を込める。

斧の刃がわずかに押し込まれる。

盾の縁が歪む。

腕が震える。

「どけ!イカロス。」

低い声が落ちる。

ノエルは歯を食いしばる。

退けば終わる。

後ろにいる。

それだけが支えだった。

足元で、抑えきれなかった圧が地中へ逃げる。

岩盤が内側から砕ける感触が伝わる。

次の瞬間、地面が弾けた。

中心から円を描くように土が盛り上がり、放射状に亀裂が走る。

衝撃が外へと広がる。

だがノエルは、その中心に立っている。

沈みかけた膝を伸ばす。

盾を押し返す。

「通さない」

(主、反動が来る。耐えろ)

足元の地面が沈む。

膝が折れかける。

その衝撃を二倍にして至近距離で叩き返す。

地面が爆砕。

二倍の衝撃が逆流する。

ヴァルグラムの巨体が弾き飛ばされ、地面を削りながら転がる。

土煙が上がる。

その隙を逃さない。

「今だ!」

その一瞬。

「悪いな」

カズマが背後から跳ぶ。

聖剣エクスが一直線に振り下ろされる。

縦一閃。

ヴァルグラムの巨体が、真っ二つに裂ける。

沈黙。

遅れて爆ぜる血煙。

城砕きのヴァルグラムが、崩れ落ち大きな魔石が残る。

地面に広がる巨大な陥没跡。

その中心で、ノエルが息を吐く。

ソフィアが駆け寄り、再びヒールを重ねる。

すかさず、カズマはノエルに肩を貸す。

「ノエル、良く耐えたな。」

「あぁ死ぬかと思った。」

エクスが不満気に怒鳴る。

(あなた、真正面から切りなさいよ私は聖剣なのよ!)

風が吹く。

粉塵が晴れる。

城を砕いた魔族は、
ここで終わった。
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