【完】ＢＬゲームに転生したオレは鬼畜王子から逃げだしたい

ろくじゅう

    「やあ、元気にしてる？」
診療所の片付けをしてたら聞き覚えのある声が聞こえた。
「アルフォンス！？」
「閣下に見つかっちゃったって聞いたからさ、会いに来ても大丈夫かなって思ってね｣
アルフォンスは待ち合い室のソファにかけながらニヤニヤした。
「情報が早いな」
オレはその顔に布巾を投げつけた。
「そこのテーブルを拭け！」
人遣いが荒いとブツブツ言いながら拭いている。文句を言いながらも手伝ってくれるいいヤツだ。うん。
「で、オレの顔を見にきたってんじゃないんだろ？」
布巾を洗って帰り支度をする。
「まあ、ついでだね。単なる旅行で来たら、居場所がバレたって聞いて。なら会いに行こうって思ったんだ」
外に出て鍵を閉めた。
「わざわざここまで？」
「隣国に来たから。せっかくだから君の国にも来てみた。宿を取ってるんだ。晩ごはん食べようよ」
オレ達はアルフォンスの宿へと足を向けた。

    「研究室に戻ることにしたんだ」
アルフォンスの言葉にオレは眉を顰ひそめた。
「国の仕事は、学校の先生とかはいいのか？」
「王族とはいえ傍流だからね。兄もいるし、僕は好きにさせてもらえる。教師もねぇ。貴族の学校じゃ教えがいがないよ」
アルフォンスは肩を竦すくめて見せた。
「悪役令嬢もヒロインも幸せにしてる。攻略対象の御役御免を願いでてもいいだろう？」
笑ってるけど、何か裏のある顔をしてる。
「他にもあるんだろ？」
アルフォンスの眉がへにょりと下がった。
「君じゃないけど、全力で逃げているんだ」
オレは無言で続きを促うながした。
「他の攻略対象だった子から。現宰相の息子で、次期宰相の最有力候補からね」