【完】BLゲームに転生したオレは鬼畜王子から逃げだしたい

たれぽんた

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はちじゅうはち

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    いつだったか、アルフォンスに聞いたことがある。
「前世のことって、どれくらい覚えてる?」
「字が書けるようになった時から色々書きとめてるから割と。クラウスは?」
オレは頬杖をついた。
「なんか、曖昧な部分が多いんだよなー。一番分からないのがオレ自身のこと。アルフォンスは自分のこと、ハッキリしてるか?」
「自己紹介できるよ。風早かざはや蒼天そうま、大卒で営業職、家族構成は父、母、兄、姉、趣味はサーフィン」
アルフォンスは目線を下げた。
「享年24才、死因は列車事故。彼女は・・・泣いてくれたかな?」
「悪い、変なこと聞いた」
「死んだから転生してるんだし、気にしなくていいよ。クラウスは覚えてないのか?」
「妹にゲームをやらされてたんだから、妹はいたんだろうな。名前とか年とか家族とか、そこらへんはまったくダメ。かと思うとど〇兵衛は肉うどんが好きだとかコーヒーはブラックとか。いらん事を覚えてる」
見てたテレビ番組はアルフォンスと似通ってるから、同じ時代に生きていたんだろう。スマホを持ってたけど、キャリアや機種は分からない。どんな仕事してたとか、友だちはいたかとか、死因とか。ぜんぜん覚えてない。そのくせゲームの内容はしっかり覚えてるんだから、オレって閣下のことをどれくらい好きなんだ?閣下の想い人に転生したはずなのに、そこに愛は無いなんて想像もしなかったよ。
    オレはふうっとため息をいた。
「人生ってままならないものだな」
「そうだね・・・」
アルフォンスは前世の彼女のことを考えてる?寂しそうに頷いて、でも、と顔をあげた。
「その分、今生は長生きしようと思ってるよ」
「オレは大往生だったかもしれないけどねー」
ニヤつくオレを殴る振りをする腕をよける。

    オレ達は今生のワインで乾杯した。
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